思惟石

懈怠石のパスワード忘れたので改めて開設しました。

『繁栄』 うんちくコスパ高い本

2022-10-31 16:07:47 | 日記
『繁栄』
マット・リドレー
大田直子・ 鍛原多惠子・ 柴田裕之:訳

何かと「悲観主義」なマスコミや社会論者にうんざりした作者が、
様々なデータ分析によって主張する「合理的楽観論」の本。
「FACTFULLNESS」が好きなら好き、と言われがち。

章ごとにポイントとなるデータの図解があって、
読みやすいですね。
しかしページ数が多かったなあ。

シャーデンフロイデ(他人に不幸を喜ぶ気持ち)とか、
環境クズネッツ曲線(所得が上がると環境汚染が高まるが、
一定の所得を超えると低まる逆U型の傾向)とか、
うんちくトリビアがたくさんあるので、
コスパが良い(?)本です。

繰り返し主張されるのは
「自給自足は繁栄につながらない」
「孤立(分業や交換の否定)がテクノロジーの縮小を引き起こす」
ということ。
極端なネイチャー至上主義は環境に悪い、
みたいなデータはおもしろかった。

以下、
個人的な「へえ」メモ。

・イースタリンのパラドックス
所得が高い人の方が幸福度が高い傾向にあるが、
一国が経済成長して所得が上がっても幸福度はほとんど変化しない
というパラドックス。
リチャード・イースタリンが1974年に発表した論文。
今ではサンプル数の少なさ等が指摘されて、否定されてるらしいけど。
「みんなで金持ちになっても、幸せを感じない」
ってことかな。いじわるな見方をするとね。
いろんな解釈のできるパラドックス説ではある。

・『格差の世界経済史』
グレゴリー・クラーク
富裕者の「珍しい姓」に比べて、貧困者の「珍しい姓」は残りづらい。
ってどういう意味?と二度見してしまった。
「社会経済的成功の要因として家系や継承がどれほど重要か」
「社会の流動性と、親の所得・資産・教育にどれほどの相関関係があるか」
という視点で、「珍しい姓」に着目して、
その一族が数世代に渡ってどう変遷するかを調査したみたいです。
例えば、勘解由小路(かでのこうじ)家みたいな、
一族全員見つけられるようなレア苗字さんを10世代以上に渡って
学歴職歴所得を追いかけるみたいな感じです。
大変そう…。
結果として「社会流動性は、社会学者や経済学者が一般に考えている
水準よりはるかに低い」そうです。
むう。

・収穫逓増(しゅうかくていぞう)
経済学用語。
固定あるいは可変の入力のある生産システムで、
製品をより生産するのにかかるコストは減少していく。
うん?
前半がよくわかんないけど、後半はわかる。かも。

・ヘンリー・ソロー
アメリカのネイチャー系さきがけ作家。
『ウォールデン 森の生活』が有名。
アウトドア大好きな人の必読書なイメージ。
(私は究極のインドア人間なので一生読まないと思う)
ちなみに「ゆる言語学ラジオ」でいじられることが多い。
『繁栄』でもこすられがち。
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『ハムネット』シェイクスピアの妻の物語

2022-10-27 16:24:19 | 日記
『ハムネット』
マギー・オファーレル
小竹由美子:訳

書籍紹介では
「シェイクスピアは、なぜ亡き息子の名を戯曲の題にしたのか?」
と書かれているのだけれど、
まさにこの一行を400ページの物語にしたような一冊。

シェイクスピアとその家族に関しては、
史実とされる資料が残っている部分は少ないみたいで、
よくこんなにたっぷり描けたなあ、と感心してしまった。
ちょっと『カラマーゾフの妹』を思い出すかな。

主人公はシェイクスピアの妻アグネス
(資料だとアン・ハサウェイと書かれることが多い)で、
彼女の視点とその周囲から描かれる。
シェイクスピアは「彼」「ラテン語教師」「ハムネットの父」といった
一枚挟んだ表現で、なにげに名前が出ないのも良い感じ。

17世期のイギリス郊外の暮らしってこんな感じだったのかな、
と思える風景風俗の描写がとても良かった。

しかし11歳の子供が死ぬ話を長々と読まされるのは、
意外としんどかったな。
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【読書メモ】2016年10月 ②

2022-10-26 18:10:52 | 【読書メモ】2016年
<読書メモ 2016年10月>
カッコ内は、2022年現在の補足コメントです。
この頃は、読書量が少ないですね。
仕事が忙しかったのかな。


『ブレイクスルー・トライアル』伊園旬(いぞの・じゅん)
2006年「このミステリーがすごい!」大賞作品。
たくさんのキャラクターが登場して、それぞれ魅力的で、
おもしろかった。
セキュリティ突破というお題は最初からわかっていたけど、
宝石泥棒の関わり方が良かった。
コーヒーショップでナンパしようと思った主人公の
躱し方が良かったなあと思った
(いつもはディープなミステリ読んでるのに、
その日に限ってゼクシィ読んでるって、なんだそれ)。
結構たのしめたのだけど、アマゾンのレビューは辛口…。
あ、そう…。

(とある研究所の自動警備システム突破に懸賞金をかけた
 イベントが舞台の、ミステリというより人間模様ストーリーかな。
 ハッキングとか泥棒テクニックとか、そういう専門的技術的な
 学びはあまりないんですが、
 スカッとかる〜く読める一冊です。
 そんなに悪くないと思うんだけどなあ、
 Amazonレビュー、厳しいなあ…笑)


『株価暴落』池井戸潤

(メモなし。
 ワンマン会長が一代で成長させたスーパーチェーンを狙った
 連続爆破事件。
 え?刑事ドラマ?社会派ミステリ?
 と思うけれど、池井戸潤なので、銀行マンが主役です。
 大企業のメインバンクである白水銀行の担当者が主人公。
 犯人は?動機は?というミステリ的王道ストーリーに加えて、
 銀行内で「経営再建(追加融資)」か「倒産(債務超過してるし)」かの
 駆け引きが熱い。
 銀行パート、ミステリ要素がかすむくらい熱い笑
 やはり池井戸潤だった。
 あ、もちろんおもしろいですよちゃんと)
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『あの素晴らしき七年』イスラエル作家の素晴らしきエッセイ!

2022-10-25 17:35:20 | 日記
『あの素晴らしき七年』
エトガル・ケレット
秋元孝文:訳

すごい良いエッセイ!

息子が生まれた年から父が亡くなるまでの7年間を綴ったエッセイ。
エトガル・ケレットはイスラエル在住の作家。

冒頭テロで始まり、「戦争中」になるイスラエルという国のこと。
両親ともにホロコーストを生き延びたユダヤ人であるということ。
背負っているものだけ書けばハードなのに、
エッセイの内容はカラッとして、ユーモアとシニカルさに溢れていて、
とにかく面白かった。

面白いのに、泣ける。
すごい。

ちょいちょい妄想的な方向に爆走する感じは
岸本佐知子さんのエッセイが思い出されます。

何かと鋭いツッコミを入れる妻も、
口が達者な息子のレヴィも、良い感じ。

小説作品も読まねば(すでに読んでると思ってた)!!
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『ブラッド・ブラザー』ソシオパス小説

2022-10-24 16:02:21 | 日記
『ブラッド・ブラザー』
ジャック・カーリイ
三角和代:訳

この作者の作品、どれもこれも
表紙やタイトルからして、サイコパスミステリっぽいんです。

どうしよっかな〜と思ってたんですが、
評価高めの第4作を試しに読んでみました。

お、いけるぞ!
結構おもしろいぞ!

主人公はアメリカ南部の町モービルのカーソン刑事。
今作は、突然NYPDに呼び出されるところから
ゴリゴリの連続殺人事件が続きます。
カーソン刑事の兄貴も連続殺人鬼なんですが、
NY市警には秘密にしたまま捜査を続け…。

みたいな、結構、お約束的なスタートだったけれど、
二転三転の良いリズムでプロット展開して、
おもしろく読めました。
表紙で忌避するほど陰惨な描写が多くはなかった。
ついでに、サイコパスではなくソシオパスだった。
どっちでも良いのかもしれないけど。

次に評判が高そうな第二作『デス・コレクターズ』も
読もうと思います。

惜しむらくは、訳文でわかりにくい文章が散見されたこと。
直訳なのかな?
そこは、読者に理解でいるような意訳でも良いんじゃないかな。
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