思惟石

懈怠石のパスワード忘れたので改めて開設しました。

『諸子百家』渡辺精一

2024-07-11 14:15:23 | 日記
『諸子百家』渡辺精一

私、「諸子百家」というのは
「三国志」「封神演義」みたいな中国古典文学だと
思っていました…。
違った…。

諸子百家:
孔子を筆頭に、老子、荘子、孟子、荀子、韓非子、孫子……など、春秋戦国時代の古代中国では、数多くの思想家が現れた。彼らは「諸子百家」と総称される。
(Amazonの商品説明より抜粋)


思想家の人々を指す表現だったのか…。

というわけで角川ソフィア文庫の『諸子百家』。
中国古典文学研修者の著者による、
諸子百家の有名どころ(孔子とか老子とかいわゆるな人)の
思想をわかりやすく解説した一冊です。
聖書を読まずに阿刀田高を読む私にピッタリの本だな!

以下、個人の解釈です。

孔子。
レジェンド。

老子。
なるようにしかならない。「運命論」の人。

荘子。
夢見がち。

孟子。
「孔子いわく〜」と言いがち。性善説。
おかあさんが教育ママ。
熱弁おじさん。

荀子。
孟子にめちゃ怒ってる。
性悪説。
理屈っぽい。

韓非子。
例え話がうまい、故事成語メイカー。
兄弟弟子に妬まれて投獄される。

孫子。
孫武か孫臏かどっちやねん。
孔子や荘子が君主に理想論を語る同時代に、
兵法家として戦にめっちゃ勝つ。
思想的には老子と被る。

みんな面白い人たちだな!という感想です。
中国史っておもしろい。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『医学の歴史』 門外漢でも楽しいし、世界史としても面白い!

2024-07-10 16:28:42 | 日記
『医学の歴史』
梶田昭

講談社学術文庫
Amazonの解説には「人間味溢れる新鮮な医学史」とありますが、
人間味というか、おもしろ知識エピソードが溢れている笑

この先生、元医科大学教授なんですが、
めちゃくちゃ広範囲の知識が豊富で(読書量もえげつなかろう)
医学に限らず、歴史や古典のエピソードがたくさん出てきて
門外漢でも楽しめる「医学史」になっています。

始まりが「古代の治癒神」な感じからして、
この本、当たりだな!ってなりますよね。
古代中国は伏犠、神農、黄帝(ここらへんはギリ知っている)
エジプトはイムホテプ(知らない)
ギリシアはアスクレピオス(知らない…、
でも杖と蛇が絡み合ってる医学シンボルは知ってる〜!)
と、つかみが強い笑

で、ギリシア科学の発展があって
(ギリシアの植民都市イオニアの繁栄は、科学・哲学・数学と幅広い)
ヒポクラテス(前460−375)が生まれて、
(ちなみにソクラテスと同時代人だって。へえ〜)
ローマ帝国が栄えてガレノス(129-199)が生まれる。
ガレノスは、ギリシア医学の最後の華にして、
ヒポクラテスを神聖化した人である。

わかりやすくておもしろい!

ビザンツ医学、中世のペスト禍、仏教と中国医学、
中国のヒポクラテス(扁鵲(へんせき)「韓非氏」に出る)、
ペルシア領の繁栄(ジュンディーシャープール)、
解剖学が進化したのは戦争で火薬が使われるようになったから
(イタリア戦争には有名な外科医パレ(フランソワ1世)も
解剖学者ヴェサリウス(カール5世)も従軍している)、
近代ヨーロッパの科学者にはプロテスタントが多い
(ウェーバー『プロテスタンティズムの倫理と資本主義』)、
等々。

楽しい!

感染症が解明される前夜は、
ミアスマ(瘴気)説と、コンタギオン(接触伝染)説の対立があり。
パストゥール(1822-1895)が低温殺菌を発見し、ワクチンを命名し、
コッホ(1843-1910)が細菌の発見と特定、
そして「微生物の狩人」の時代へ。
(北里柴三郎も活躍した時代。ところで新札に全然出会えない)

いやあ、医学の歴史って、人類の歴史ですよね。
そりゃそうだ、ではあるけれど。

『砂糖の世界史』や『疫病と世界史』を読んだときも思ったけど、
歴史を見る角度をちょっと変えてみるのって
面白いものですね。
現代の中東や南米の小中学校で習う「歴史」って
どんなストーリーなんだろう?
知りたくなってしまった。

ちなみにこの知識無双で縦横無尽な梶田先生、
著作があまり多くないんですよ。
そして、この本の原稿を推敲する前に亡くなってしまったそうです。
もっといろいろ読みたかった。
合掌。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『日本の近代建築 下: 大正・昭和篇』藤森照信

2024-07-08 15:48:12 | 日記
『日本の近代建築 下: 大正・昭和篇』藤森照信

そんなこんなで下巻です。
大正・昭和になり、
国内の建築家が育ち始めます。

ざっくり言うと
歴史主義派と、
歴史主義から脱却した派に分かれます。

脱却派はさらにいろんな主義に別れる。
表現派とかモダニズムとかバラック装飾社(MAVO)とか。

モダンデザイン変遷は以下。
19世紀末:アール・ヌーヴォー(植物的、官能性)
→10年代:キュビズム、初期表現派(鉱物性)
→20年代:バウハウス(白と直角、幾何学)
→デ・スティル、コルビュジェ(ピューリスム、コンクリ打ち放し)
→ミース(ガラスと鉱物の均質空間)

個人的には横河民輔(1864-1945)が好きですね。
まだ歴史主義全盛の時代の辰野門下で、
卒業設計は官公庁や金融系の象徴的な大建築を扱うものなのに
「町屋」をテーマにして辰野先生を絶句させたそうです。
かっこよ。

卒業後に渡米して鉄骨技術を学んだことで
地震大国日本に鉄骨造建築をいち早く導入。
元々がエンジニア気質&実業家らしく、
エレベーターや空調のために横河電機研究所、
鉄骨橋梁を専門とする横河ブリッジ、
家具用の人造皮革を開発する横河化学研究所など
創業しまくった人。
そして本職の建築デザインには特に興味がないので
逆に優秀な建築デザイナーが事務所で育ったそうです。
かっこよ!

あと小ネタですが。
関東大震災(1923)によって耐震性に優れた
鉄骨造・鉄筋コンクリート造が普及します。
鉄骨造だと火災で鉄が溶けることもあり、
鉄筋コンクリートの方が評価は高かったそうで。
コンクリでできた壁や橋を「万年壁」「万年橋」と呼ぶのは
耐久性への期待感からだそうです。

「文化包丁」「電気ブラン」みたいなネーミングで、好き。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『日本の近代建築 上: 幕末・明治篇』 近代建築史のバイブルです

2024-06-28 10:29:41 | 日記
『日本の近代建築 上: 幕末・明治篇』
藤森照信

近代建築の名著と言えばこれですよ。
すさまじい取材力と知識量で綴られている
建築史の決定版。

コロニアル様式の東西ルートと冒険商人の関係。
イギリス派とドイツ派の違い、
(マンサード屋根のボリューム感とか
 何回見てもわからないんだ)
クラシック様式とゴシック様式の差。

学生時代の私は「なるほど!」「すげ〜わかりやすい!!」
と感動しながら、結局、何も覚えていないダメ学生でしたが
読んだ時のときめきだけは鮮やかに残っています。
ありがとう藤森先生!

何度読んでもオーダーの構成比が覚えられないけれど、
ドーリア式・イオニア式・コリント式の柱頭飾りだけは
覚えました藤森先生!!

というわけで20年ぶり(!)に読み直しています。

うん、相変わらず
「ドイツ派の武張ったフォルム」とかわからない。
辰野金吾がデザインあまり上手くなくて、
妻木頼黄の調和を生み出すデザインバランス力の差もわからない。
写真を見比べてもわからない…。

(でも私は妻木派です。
辰野と喧嘩して議事堂のすったもんだして負けちゃって
代表作は「橋」(日本橋)って感じの不器用さを応援したい)

学生の頃に読んだときは、海外から来たコロニアル様式や
(東回りルートのヴェランダ式と西回りルートの下見板張りがある)
その後に続く擬洋風建築が好きで、
西郷従道邸(明治村に移築されている)や
開智学校(現存してる、というか国宝になってる!)を
観に行ったものです。

今ならコンドル先生の作品巡り
(鹿鳴館、三菱一号館、岩崎久弥邸、等々)
がしたいなあ。
あと片山東熊(唯一のフランス派)巡り
(奈良帝室博物館、京都帝室博物館、赤坂離宮)もしたい。

ちなみに私、コンドル晩年の作品・旧古河邸(古河庭園)
の近くに2年弱住んでいたことがあり、
定番の散歩コースでした。
(なにしろ150円で広大な庭園に入れるのだ)
贅沢な散歩コースだったな。

幕末・明治の動乱とともにあった大型建築の役割
(イデオロギー的な)なんかも
再読すると昔とは味わい方が変わるものですね。
伊東忠太の交友関係が心配だよ。

そんなこんなで、下巻に続く。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『異国トーキョー漂流記』 人間関係が愛しくなるエッセイ

2024-06-27 14:08:39 | 日記
『異国トーキョー漂流記』
高野秀行

毎度おなじみ(すごい勢いで読んでいる)辺境冒険家の
高野秀行さんの、なんと、国内に関するエッセイ。

と思ったら、日本国内で出会った8人の「外国人」とのエピソード。
さすがのコンセプト。

まず、出会い方も高野さんらしい。
辺境を旅するために語学学習の目的で外国人に声かけたり
紹介してもらったり。
他にも帰国する飛行機で出稼ぎ(大したツテもなく)に来た
自称日系人を拾ったり。

私だったら一度遭遇したとしても
以降の付き合いが続かないだろうなという始まりから、
高野さんは高野節で人間関係を築いて行くんだよなあ。
明確な目的があるわけでも、打算があるわけでもなく、
自然な感じで人と接している。
うらやましいなと思う。

めちゃくちゃ仲良し!というわけでもないけれど
コンゴの実家に伺ったり、
わざわざフランスで再会したり、
高学歴無職イラク人のバイト先を探してあげたり。
いやもう、なんかうらやましい。

8人それぞれクセつよな個性を持った性格で
個人的に仲良くなれるかは自信ないのだけれど(失礼)、
このエッセイを読んじゃうと、好きになっちゃうんだよな。

ちなみに、高野さんが10年以上住んでいた
三畳間(野々村荘)がちょこちょこ登場します。
こちらも『ワセダ三畳青春記』を読んじゃったので、
好きなんですよ笑
人間でないどころか、貸間だけど。
「お、元気か?相変わらず三畳か?」とか思っちゃう。

ちょっと元気がない時に読むと元気になれるし、
人間関係に疲れた時に読むと、多分だけど、
人間のめんどくささもちょっと愛しくなると思います。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする