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思惟石

懈怠石のパスワード忘れたので改めて開設しました。

はてなブログに引っ越します

2025-04-28 12:36:42 | 日記
思ったよりも長く使っていたgooブログ。
終わっちゃうのかあ。
さみしい。

とはいえ自分の読書メモの管理は
ブログ形式にすると便利なのでつづけたいと思い、
はてなブログへ引っ越しました。

こちら

スタンスは何にも変わりませんが、
良い機会なのでもう少し見た目とかなんとかできないものかと。
(改行のやりかただけマスターした)

『11/22/63』 過去は改変を求めない

2025-04-22 13:34:54 | 日記
『11/22/63』
スティーヴン・キング
訳:白石朗

ハリー・ボッシュ仲間の先輩と久しぶりに飲んだ際、
お薦めされたので、さっそく読みました。
すごく久しぶりにミステリ(SF?)を読んだかも。

そもそも私はスティーブン・キングって
ほとんど読んだことがないのです。
なんか、物心ついた頃から売れすぎてるというか。
ハリウッド映画とか、小説作品以外の情報が多すぎるというか…。

なので、ほぼ初キング。
む。文章うまいな。読みやすいな。そしておもしろいな。
さすが大御所…。

『11/22/63』は、一言でいうとタイムトラベルもの。
過去の特定の時間と場所にだけ通じている
時空の穴(通称「兎の穴」。アリスね)がありまして。
・過去は改変を好まない
・改変しようとすると抵抗する(エンストから大事故まで)
・一旦、未来に戻り、再び過去に行くと、前回の改変はリセットされる
・過去の衣類・食料・金などは持ち帰れる
というルール。

最後の固有物が時空をジャンプできるのだけが解せぬ。
お金の通し番号とか、牛肉のカロリー(リセット後に過去にいけば
まったく同じ牛肉が買える)とか、どうなってるんだろう。

まあとりあえず受け入れまして。
このルールで何をするか。

主人公は「ケネディ暗殺の阻止」を託されます。
託されるものが大きすぎ〜。

ちなみに小説の「現在」は2011年。
穴が通じているのは1958年。
ケネディ暗殺が1963年です。
(タイトルの11/22/63って、それぞれの年代を
表しているのかと勘違いしてましたが、これは
ケネディ暗殺の日の英語表記。63年11月22日のこと)

というわけで主人公は5年ほど、
暗殺犯の身辺調査をしたり
田舎で英語教師(本職)暮らしをしたり。

いや、5年は長いよ…。
主人公もバタフライエフェクトとか
時空の「共振現象」とか自覚しているけれど、
教師として学生の人生に関わっちゃうし、
恋もしちゃうし、バタフライ飛ばしまくりです。

読んでるこちらも「過去に干渉しすぎ〜!!!」と
ハラハラしまくりーのです。

で、クライマックスがケネディ暗殺の阻止でしょ。
時空が歪むよ〜!と思いながら下巻は一気に読んでしまった。

エンディングはそう来るか〜!
というのもコミで、さすがのベストセラー作家だぜ!と唸る。
うーん、ジェイクの人生に幸あれ。
あとルートビア(名前とは裏腹にノンアルコールの甘い炭酸飲料。
高野さんがイスラム圏で勘違いして飲んでキレてた)飲んでみたいな。

『北アジア史』 護雅夫・神田信夫:編

2025-04-16 15:07:24 | 日記
『北アジア史』 護雅夫・神田信夫:編

遊牧民関連で読みまくっている護雅夫先生が
編者を務める『北アジア史』。
1981年初版。
山川出版社の<世界各国史>シリーズの12。
中国史に加えて西アジア史、北アジア史で一冊ずつ出している。
慧眼である。

まずは北アジア(主にシベリア・モンゴル)の古代文化。
続いて
「遊牧民族」(匈奴、突厥、ウイグル)「モンゴル」「満州(女直人)」
それぞれの民族から見た歴史を描きます。
なので、繰り返しになるところもある(唐、五代、宋は何度も出る)が、
多視点からのアジア史が見えておもしろいです。
一方の意見と他方の意見は違うよね〜、という当然のことが
よく分かります。

古代に遡ると、紀元前7〜5世紀にはモンゴル高原に
遊牧経済ができていたそうです。
ギリシア人は「スキタイ」、ペルシア人は「サカ」と呼んでいた。
スキタイといえば黒海沿岸でアケメネス朝ペルシアと
わちゃわちゃやってたイメージ。
モンゴル高原全体に散在していたのかな。

まあ、北アジアにおいては最初の主人公は遊牧民族ということです。
紀元前3世紀には匈奴が登場。
中国人には「夷狄(いてき)」と呼ばれたそうです。
中華“じゃない”人を表す「四夷」の「北狄+東夷」ですね。

匈奴→鮮卑→柔然→突厥→ウイグル
ここらへんは護先生の『古代遊牧帝国』にまとめられてます。

10世紀の北アジアの覇権は、
沙陀(さだ、トルコ系)vs.契丹(タタル=モンゴル系)。

沙陀は、トルコ系、西突厥の末裔。
沙陀人国家が「晋」「後晋」「後漢」「北漢」。

契丹は「遼」。
同じくタタル系で外モンゴルの烏古(ウクル)、阻卜(ツプク)を支配。
部族名(?)がかっこいい笑
政治的に管理するための部族単位は石烈(シレ)、彌里(ミリ)。
領民的組織単位は幹魯朶(オルド)。
厨二心をくすぐる単語が怒涛のように出てくるのよ笑

阻卜(ツプク)内のケレイト部族が力をつけてケレイト王国に。
ケレイト王に引き立てられて当時弱小だったモンゴル部族が発展。
ここでモンゴル部からテムジン(チンギス=ハーン)が登場。
有名人が来た!

で、元になるのが、モンゴル的視点。
そもそもは弱小部族の名だった「モンゴル」が民族を表し、
モンゴル平原・モンゴル人民共和国という広い範囲を表す言葉へと
出世(?)したわけです。

次は、満州的視点。
「満州」も元々は古代中国人が「東夷」と呼んでいた民族の名。
ツングース系と言われている。
紀元前まで遡ると、「貊(ばく)」狩猟牧畜民、「穢(わい)」漁労民がいて、
貊人が「扶余(ふよ)」という国家を建てたのが始まりらしい。
扶余に続いて前1世紀にできたのが高句麗。
おお、有名国がきた!

高句麗は、中国エリアの前漢、後漢にちょっかい出したり
モンゴル系の鮮卑(前燕)と遼東地方を奪い合ったり。
満州系だと、挹婁(ゆうろう)、勿吉(もつきつ)、靺鞨(まつかつ)が
力をつけていきーの。

713年、靺鞨人が渤海(ぼっかい)建国。
奈良時代の日本に使者を送って修好していたそうです。
聖武天皇の時代ね。
その割に印象が薄いのですが、そんな渤海支配下にいたのが
女直族(女真族)で、12世紀に「金」を建国。
遼(契丹)も宋もやっつけてぶいぶい言わせます。
が、13世紀にチンギス=ハーンに滅ぼされる。
モンゴル強い〜。

とはいえ女直人は羈縻体制で自治をつづけ、
李氏朝鮮になったり、ヌルハチが後金をつくって
清国になったりする。

最後の章ではロシア進出前のシベリアの民族分布が
取り上げられていて、それもおもしろいんですよ。
ヤクート、ツングース、エスキモー、カムチャダール(イテルメン)、
それぞれに独自文化がある。
『ゴールデンカムイ』に繋がってそう〜。

いや〜、北アジアは広い。広いです。
そしていろんな人が住んでいる。
いろんな歴史がある。
楽しいね!

『カルロス四世の家族』 博覧強記おじさんの美術エッセイ

2025-04-11 18:54:54 | 日記
『カルロス四世の家族』
井上靖

古本屋で買ったまま積読していた本。
1989年の中公文庫で、巻頭カラー図版が数ページついて
定価420円(古本屋で200円)。
ううむ、安い。

値段はさておき。
井上靖の美術に関するエッセイをまとめたものです。
副題は「小説家の美術ノート」で、
題材は以下。

ゴヤ「カルロス四世の家族」
桂離宮
レオナルド・ダ・ヴィンチ小論
顔真卿の「顔氏家廟碑」
「信貴山縁起絵巻」第一巻

洋の東西を問わず、博学な人である。

桂離宮に関しては、どんな人がどんな気持ちで
この建物をつくったのかなあ、という観点で
小説家っぽいおもしろさがあります。
周囲を借景する気のない塀囲みをする、その気持ち。
確かに考えてみると謎なような、共感もあるような。

顔真卿(がん・しんけい)は、唐代末期の書家、政治家。
腐敗しつくした唐の王室において
(玄宗が楊貴妃といちゃついていた時代)
謹厳実直、不正はついつい指摘しちゃう、みたいな人だったらしく、
何回も地方に飛ばされている。
そして書の方も「真面目!」って感じの上手さである。
おもしろい人だ。

最後の「信貴山縁起絵巻」もおもしろかった。
第一巻は詞書(ことばがき、絵巻の説明文)がないのですが、
じゃあ想像してみよう!ということで
井上靖があらすじを書いてみた、って内容。
なんか楽しそうだな。
別名「山崎長者の巻」と言われていて、
不思議な鉢が長者さまの蔵を盗むという、
「何言ってんの?」となる内容です笑
もうちょっと絵巻の図版があってもよかったな。

テーマも書き方もバラバラではありますが、
なんというか、井上靖って博覧強記おじさんだなあっと
改めて思う一冊。

『馬車が買いたい!』 フランス文学読まなくちゃ!

2025-04-07 09:46:33 | 日記
『馬車が買いたい!』鹿島茂

本のベースは、雑誌『ふらんす』(1986)に連載された
「19世紀のフィジオロジー<我らが主人公>たちのパリ」。
こちらのタイトルの方が本の内容はわかりやすい。

作者が<我らが主人公>と設定しているのは
『ゴリオ爺さん』のラスチニャックや
『感情教育』のフレデリック・モローなど、
田舎から19世紀パリに上った若者たちです。

我らが主人公の作品を列挙すると
『ゴリオ爺さん』『幻滅』『あら皮』『浮かれ女盛衰記』
『感情教育』『レ・ミゼラブル』『赤と黒』。
お恥ずかしいことにひとつも読んでないのですが…。

彼らを通じて、パリに行き、パリを体験できる一冊。
視点が新鮮!
解像度が高い!!
すごくたのしい!!!

詳述されるパリの風景は19世紀半ば。
ナポレオン後の王政復古期、七月王政からの
第二共和政あたりまで。

まずは田舎からパリに向かいます。(そこから?)
徒歩の他に、大型乗合馬車(ディリジャンス)と
郵便馬車(マル=ポスト)。
後者は4人分しか客席がなくて貸切が容易なので
隠密旅行向き。へえ〜。

ちなみに鉄道がフランスに敷設されたのは1837年。
ロスチャ一族の資金による。

さて、パリに着いたらまずオシャレをします(まずそこか?)。
上昇志向の塊のような我らが主人公は、
生活費一年分相当をダンディーなファッションにぶち込みます。
おい。

とはいえパリで上流階級とのツテができる
チュイルリー公園は、オシャレじゃないと歩けない。

しかもパリって汚物まみれじゃないですか当然。
なので、公園なり劇場なりカフェなりの行き来に
徒歩は有り得ない。
オシャなズボンも靴も愛人のでっかいスカートも
一撃で汚物まみれになるので、
馬車は上流ライフの必須アイテムなのである。

というわけでタイトルに帰結します。
なるほど〜!おもしろ!!

馬車を買ったら、馬も必要だし
見栄を張るためには足の綺麗な従者(馬車の後ろに立たせる)
も必要だし、なんなら昼用(無蓋、二人乗り)と
夜用(屋根付き、四人乗り)の馬車も必要だし。
上を見たらキリがねえ〜〜〜。

バルザックは現実でも「馬車が買いたい!」と言って
暮らしていた人らしくて、
我らが主人公の中でも特にバルザックの登場人物は
どいつもこいつも「馬車が買いたい!」と悶絶しています。
俄然読みたくなってきた笑

馬車の種類の解説も詳細。
クーペ、ベルリーヌ、キャブリオレ、カレーシュ、ランドー。
それぞれに階級や財力の記号性がある。
えー、おもしろいじゃないですか!

さらに当時の貨幣価値(フランとリーヴルが混在している)も
解説してくれています。
めっちゃ古典文学の解像度あがる!!!
はやく原典を読みたい!!
この歳までフランス文学の名作を
ひとつも読んだことなかったのが功を奏した気がします!