思惟石

懈怠石のパスワード忘れたので改めて開設しました。

『図説 英国執事』ビジュアル(のわかりやすさ)はパワーである

2022-09-30 16:45:50 | 日記
『図説 英国執事 貴族をささえる執事の素顔』
村上リコ

河出書房から出ている、図説やイラストたっぷり系叢書
<ふくろうの本>の一冊です。

というわけでビジュアル資料がたくさんあって、
読みやすくわかりやすい!
(にしてもパンチの戯画が多かったな)
英国執事、と言いつつ
「執事」「家令」「従者」はそれぞれ違うそうです。
へえ〜。
みんなまとめて「ジーヴス」だと思ってた。
(というか私の脳内では「ジーヴス」という単語が男性使用人の抽象概念になってる)
あと「フットマン」って何する人?というのもわかりやすかった。
身長や見た目(特にふくらはぎ!)が重要なんだな。
知らんかった〜。

男性使用人は女性の22分の1しかいないらしく(!)
したがって資料も少ないとか。
一方で、回想録を書く人は一定数いるみたいで、
よく出る名前もある。

いずれにしろ、様々な資料をあたったのだろうなあと、
作者の苦労が垣間見えます。
おつかれさまです!

執事(というか男性使用人)の仕事内容は
収入(チップの方がはるかに多い)、キャリアアップ、
恋愛事情、抱えやすい問題(盗癖やらアルコールやら)、
いろんなアプローチで述べられていて
おもしろかったです。
羨ましい側面も、同情したくなる側面もある。

同じ作者が書いている英国メイド篇も読もうかな。
というか、<ふくろうの本>シリーズは
「妖怪画」とか「ヨーロッパの紋章」とか「アラビアンナイト」とか、
めちゃおもしろそうな本がいっぱいある!
テーマ設定がすごいな!
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『バッタを倒しにアフリカへ』ただただ応援したいバッタ博士

2022-09-29 16:05:27 | 日記
『バッタを倒しにアフリカへ』
前野ウルド浩太郎

おもしろバッタ博士による、
アフリカ滞在エッセイです。

やってることも考えてることもおもしろいんですが、
とにかく文章がうまい。
おもしろい。
ずるいわ〜!

バッタ博士は、
ファーブルに憧れて昆虫学者への道まっしぐらに育ち、
30歳手前ポスドク無職リーチにして「後がない」と気づき、
一発逆転を狙ってアフリカの国モーリタニアへ
サバクトビバッタの研究へ旅立つ。
作者、かっこいいなあ。
というか何から何までおもしろいなあ。

元々は室内研究がメインで、
フィールドワークが得意という感じでもない作者ですが、
大自然(というか砂漠である。過酷である)の中で
生き生きと昆虫に触れ合う姿は、
「向いてるよ!良かったね!」と思わざるを得ない。

もしくは、読者にそう思わせるくらい文章がうまい。

とにかく前向きだし生き生きしてるしユーモアあるし、
読んでいるこちらも楽しいですありがとうございます!
と、なぜか御礼申し上げたくなる。

昆虫観察生活も良いけれど、
後半の研究助成金打ち切り(無収入)からの
京大白眉プロジェクト受験までの頑張りも胸を打つ。
ただただ応援したい。
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『ダメをみがく』女子力と縁を切る生き方

2022-09-28 15:53:23 | 日記
『ダメをみがく ―“女子”の呪いを解く方法―』
津村記久子
深澤真紀

自称「ダメ」な二人の対談エッセイ。
深澤さんは編集者件コラムニスト。
「草食男子」という言葉をつくった人らしい。

津村さんのひとまわり上なので、
深澤さんが話をリードする感じはあるかな。
相性が良い二人の対談という感じ。
テンポ良く気持ちの良い応酬が楽しめます。

「仕事篇」では、お二人のパワハラ体験話がなかなか。
それはしんどいよなあ…と思うし、
私にも二アリーなことあったよなあ、とか
働く全ての女性の心を揺さぶるんじゃなかろうか。

コンビニの店員やコピー機担当の人との交流話は
ほっこりする。
仕事との距離感。職場の人との距離感。
めっちゃ参考になるなあ…!!
リモート勤務だけど。

副題の「“女子”の呪いを解く方法」は
被害者っぽい感じがして、津村さんらしくないなと思った。
あとがきでも、本人が言及してたけど。

オードリー若林氏のエッセイが「ダメを肯定する」感があったけど、
こちらはもう、「ダメをみがく」とこまで行ってて
清々しかった。
私もメイリオ大好きだし。
ヒラギノ角ゴシックも好きですが。

そういえば津村さんの日々のディテールが
浮遊霊ブラジル』『現代生活独習ノート』あたりの
短編ディテールそのまんまじゃん!
という津村ファンには二度おいしい内容ですね。

『アイトール・ベラスコの新しい妻』(浮遊霊ブラジル)の
目立たない海外スポーツ選手の翻訳記事ブログとか
『地獄』(浮遊霊ブラジル)
コンテンツ消費しすぎ地獄に落ちた主人公の日常が
まんま津村さんだった笑、とか
『給水塔と亀』(浮遊霊ブラジル)や『ポースケ』で
ひたすら自転車こぐシーンが気持ちよく描かれてるのも
作者の日常じゃないですか、と。
読んで得した気になる笑

『台所の停戦』(現代生活独習ノート)
には、ご本人の親子関係がちょっと垣間見える。
『牢名主』(現代生活独習ノート)
のメインテーマである架空の共依存(?)症例の
「A群B群」というのは、津村さんのパワハラ体験が
ベースにある気がする。
お互いが「加害者」「被害者」(もしくは精神的な
「搾取」「被搾取」かな?)の関係性にしかならないような、
最悪の相性の人っているよな〜!!
と、短編を読んだ時にびっくりした。
このエッセイでもそういった人間関係の話しが出るんですが
深澤さんは
「相性最悪、逃げた方がいい、“運命の黒い糸”」
「仲良くなるのと、“支配・被支配の関係”は紙一重」
などと返していて、会話のフットワークと表現力が高え!!
と密かに感動しました。
感動するところ違うかもしれんけど。
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『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』

2022-09-27 16:44:06 | 日記
『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』
若林正恭

オードリー若林さんの
独り海外旅行デビューにまつわるエッセイ。

なのだが、新自由主義とか格差社会とか勝ち組負け組とか、
社会システムと自分の暗黒時代への深くめんどくせえ考察が
読み応えあります。
めんどくせえ人だな笑

行き先は、キューバ、モンゴル、アイスランド。

キューバって南アメリカかと思ってました。
西インド諸島の島国なんだよね。
元々はスペイン植民地で、独立戦争のごたごたの末
アメリカの傀儡政権時代が続き、チェ・ゲバラとキューバ革命へ。
現代ではコーラとか飲めるらしい。

というエピソードが出るあたりに現地の空気感があって、
すごく良い。

旅にまつわる作品が表彰される“斎藤茂太賞”受賞。
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『スモールワールズ』 善悪を適量

2022-09-26 16:07:22 | 日記
『スモールワールズ』
一穂ミチ
第165回直木賞候補作。

なんというか、うまい、連作短編集。
『ネオンテトラ』『魔王の帰還』『ピクニック』
『花うた』『愛を適量』『式日』
の5篇。

連作というほど連なってはいないけれど、
最初と最後の繋がりは良い。
横顔の描写がきちんと押さえられているのが良かった。

ちょっと怖かったり、悲しかったり、
人の心の深いところを撫でるようなお話しなのだけど、
前向きな気持ちとかユーモアを忘れない作者なんだなと思う。

個人的には『魔王の帰還』が最高に良かった。
あと『愛を適量』。

空気感的には
夜空に泳ぐチョコレートグラミー』を思い出したな。
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