思惟石

懈怠石のパスワード忘れたので改めて開設しました。

皆川博子『開かせていただき光栄です』で2017年読み納め

2017-12-31 10:35:04 | 日記
傑作です。
本格ミステリー大賞受賞作。

と言っても、ミステリーのためのミステリーでなく、
物語や人物造形や、18世紀初頭のロンドンの風物が重厚で
とても良い小説です。

今年も良い本たくさん読めてよかった。
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柳 広司『ジョーカー・ゲーム』と忘年会

2017-12-28 17:08:36 | 日記
今年は忘年会がめちゃ少なかったんですよ。
(酒は好きだけど大勢の会が続くと疲れるので、
 差し引きではラッキーと思ってる)

と、うっかり口をすべらせたら
上司(私の酒量をよく知っている)が
「かわいそうなヤツ」と思ったらしく
軽く飲みに行こうか、と誘ってくださいました。

えー、年末進行で忙しいんですけど……

と思いつつのこのこ飲みに行きました。
ついでに同じ部署の先輩と同期女子も
のこのこ付いてきました。
そこそこ呑みました。
少人数のさく飲みって楽しいよね!!

って感じで、忘年会が無いなりに飲んでる年末です。

……飲みすぎました。

それは良いとして、
さく飲みだと帰りの電車で
「私の意識はクリアである!」
という錯誤が生じて、本を読んだりするのです。

勿論それなりに呑んだくれてはいるので
後日つづきを読むと、ちょっとストーリーがあやふやなんですよね。
ただでさえポンコツな記憶力なのにな!

そんなこんなで柳広司の『ジョーカー・ゲーム』です。

途中で記憶が飛んでるのです。
困ったもんだ。
ははは。

まあ、でも、
良い具合にそれぞれが独立している短編集なので
読みやすかったです。
スパイ養成機関(通称D機関)というものがあって、
そこのボスである結城中佐という謎の多いオッサンがいて、
それぞれの章はD機関に関わった人間が軸になって
お話しが展開します。
毎回、主人公的な人間が変わっていて、
重複して登場するのも結城中佐くらいです。
良い意味で登場人物のキャラクターに愛着を持ちすぎずに読めます。

ジョーカー・ゲームの第一作目が、ちょっと、
キャラや設定が漫画っぽいかなあと思いまして。
このまま同じフォーマットが続くなら
もう読まなくていいかなと不安を覚えたのですが、
そういった要素は惜しげもなく捨てて、
章ごとにまったく違う設定や登場人物を出してくれます。
作者、懐深い。
それぞれの話を、それぞれ楽しめました。

まあ、だいぶ酔っ払ってたけど!

続編が出ているようなので、
そちらはちゃんとシラフで読みます。
(あ、記憶が飛んでる部分はもちろん読み直してます)
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北大路公子『生きていてもいいかしら日記 』生きろ。

2017-12-23 16:40:28 | 日記
北大路公子氏の『生きていてもいいかしら日記』です。
エッセーというか、
日々のことの徒然というか、
飲んだくれ40代(実家住まい)の魂のつぶやき(叫びではない)というか、
とにかくすごいです。

すごい、生きてる。

あと、すごい、笑える。

あちこちの書評等で電車で読むなと書いてあるものの
「とはいえねえ…」とあなどって通勤途中で盛大に吹き出したのも
良い思い出です。

この人、何がすごいって、
肩書きはフリーライターですが、
どう見てもあまりライター業に本腰入れておらず、
かと言っていつかは作家として!という野望も垣間見得ず、
のんべんだらりと実家で暮らす日々を綴った
本当に、日記のような、エッセーの一本勝負というところ。

あとがきの編集者との対談でも
「ある種の人々に嫉妬される」
と書かれている作者。

私も、なんだか、うまく説明できないけど、
そこはかとなく羨ましいぞ!!

末長く、このペースで、生き続けてほしいです本当に。
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原田マハ『楽園のカンヴァス』 なんだかなあ

2017-12-18 16:07:31 | 日記
美術ミステリーです。
と言っても、『写楽殺人事件』や『ひまわりの祝祭』のように
人が死んだりはしません。
複雑に絡み合う物語でもありません。

ルソーへの愛と知識にあふれた、いたってシンプルなお話しです。

歴史的事実をベースにしたフィクションとして
読みやすくて良い小説のではないでしょうか。




個人的な感想を言わせて頂くとですね、
なんだかなあ、な出来です。

とにかく読んでいて困ったのが、
作中作が拙いということ。
設定として、学の無い人物が綴った物語、とのことですが
それで逃げちゃダメだろ、ってくらい魅力が無い。
歴史的新事実と言ってもいいようなエピソードが
書かれているはずなのですが、魅力が無いので、説得力もない。
それを世界トップレベル(?)のルソー研究者がマジメに
夢中になって読みこんだとか言っているのも、なんだかなあ。
私は「『アラビアの夜の種族』って名作だったよなあ…」などと
現実逃避しながら読んでいました。

加えて、世界トップレベルの研究者とやらが、
研究者としての良識もプロとしてのプライドも無いような言動を
物語のあちこちでやらかしています。

特にクライマックスでの、でまかせピカソ説。
フランクなディスカッションならまだしも
10分しかないワンチャンスの講評の場で
恋しちゃったから仕事は適当なこといってぶん投げちゃう、って、
究極の悪手でしょう。
しかもすぐに前言撤回する、言動への責任の無さ。
人として大丈夫か。
これで世界トップレベルって、その世界は大丈夫か。

ついでに言うと、プロローグがあれで良かったのだろうか。
要らないんじゃないの。


まあ、エンターテイメント小説ってことで
良いのではないでしょうか。


え?
これ、山本周五郎賞なの?
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殊能 将之『美濃牛』読了しました

2017-12-13 13:22:42 | 日記
ネットを散策すると、賛否両論ある作品なんですね。

私は嫌いではないです。おもしろかったです。

通勤読書としては少々重かったですが(中身ではなく重量が)、
さくさく読める軽妙な文章と内容なので
さほど苦にはならなかったです。

まあ、王道のミステリかと言われると
そうではないので(逆説ミステリ?とかなのか?)
そういうものを求めて読む人には
まどろっこしい部分も多々あるような気が。

アメリカのクラシックポップ論とか
正岡子規(作者、お好きなんでしょうねえ)の話しとか
横溝正史が詠んだ句とか(知らなかった)
何かと横道に逸れまくる上に、
最初の死人が出るまでに150ページ弱。
こういうところが好みの分かれ目なのかもしれません。

あと、作者の殊能氏は書評家でもあったそうで、
小説の「お作法」とか「技」みたいなものを
きっと色々知っていた人なんだと思います。
ミスリードのためのミスリード、
伏線のフリをした挿話、みたいな描写が
結構あったように見受けられました。

村長の「都合の悪いことは忘れる」癖とか、
ミステリ好きにはもう「深読みしてね!」って感じですよね。
私も深読んだよ!ぐぬぬ。

あ、そろそろネタバレなことを書き始めます。
未読の方はお気を付けください。

タイトルの美味しそうな『美濃牛』に
Minotaurという英文字がひっかけられているように
小説内の名称もギリシャ神話のミノタウロス伝説から
いくつかひっかけられているようです。

ヒロインの窓音(まどね)は、アリアドネ
主人公(?)の天瀬は、テセウス
舞台の暮枝村は、クレタ島
ってのはわかるのですが、
郷土史家の代田先生は、ダイダロスなのだろうか…。
なんか作ってたかな、先生。俳句か。

そうそう、作中で登場人物たちが詠む句も、
それぞれのキャラがちゃんと出ていて良かったです。
作者は芸達者ですね。
石動の
E=mc2 秋の暮れ
がふざけてて良いですが、先輩が詠んだ句の
クラシック音楽の翻訳センスもすごく良い。

三兄弟と父の異様な関係性は気になっていましたが、
読了後、
「そういえば三兄弟そろって“年寄り”って呼んでたな」
という腑に落ち感は気持ちよかったです。

あと三兄弟、業が深すぎ!
窓音と真犯人も含めて羅堂家の人間、怖すぎ!

天瀬くんの将来が心配です。
(もう手遅れだと思うけど)

ところで哲史くんはおじいちゃんの変化に気づかなかったのかな?
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