思惟石

懈怠石のパスワード忘れたので改めて開設しました。

【読書メモ】2011年12月

2019-11-29 13:59:02 | 【読書メモ】2011年
<読書メモ 2011年12月>
カッコ内は、2019年現在の補足コメントです。


『クラブ・ポワブリエール』森福都
いつもの中国トーンの方がおもしろいな。
全編通じての謎が旦那のアレって。
最初の章で分かってた気がするんだけど。

(冒頭でいきなり妻が失踪し、残された5通のメールにまつわる物語が
 それぞれ主人公を変えて描かれます。
 それぞれの物語がそれなりに面白いので、
 妻の失踪は、まあ、そんなに大層なミステリーでなくて良いじゃないか、
 と、当時の私にお伝えしたい)


『猫のつもりが虎』丸谷才一
(メモなし。
 ウンチクたっぷりなのに軽く読める、
 お得なエッセイ17篇が収録されています。
 お得だね!
 しかも和田誠の挿画つき(表紙じゃなくて、中身!カラー!)
 お得ですよ!!
 10代の頃は和田誠といえば星新一で、
 20代になると『お楽しみはこれからだ』の人でしたが、
 近年では丸谷才一のイメージです。
 丸谷才一訳で和田誠が表紙の『ボートの三人男』
 もめちゃくちゃオススメです。
 仕事で好きな人と好きなことやってんな〜!って思える。
 うらやましい大人である)


『マンガ親』吉田戦車
いいなあ、伊藤理佐。

(感想がこの一言である。大丈夫か。
 個人的には伊藤理佐の方を尊敬していて、
 「いいなあ吉田戦車」なわけですが。大丈夫か私)
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文庫の値段…

2019-11-28 11:28:23 | 日記
野上弥生子の『秀吉と利休』を読んでるんですが。

読めども読めども、ページがすすまない…。

内容の問題ではなくて、私がちょっと古い中公文庫で読んでいるからです。
級数がめっちゃ小さい頃の。
1ページの密度が、ものすごい高いやつ。

これ、いまどきの字詰めにしたら上下巻くらいいくんじゃないのか?
ふと思いついて裏表紙を見たら、定価500円だった。
…や、安い!っ!!
野上弥生子の一文字の値段、いくらですか!!!

古い中公文庫って本当に密度高いですよね。
読む人間としては、コスパ高すぎでありがたかったですが。
学生時代には本当にお世話になりました。
(岩波文庫も密度高かった気がする。あと価格がページ数で目に見えて違う。
 学生時代はお金がないから、薄さでチョイスして買ってました。
 『春琴抄』とか、『方法序説』とか…)

ちなみにいま読んでいるのは昭和46年初版のやつで、
昭和63年(1988)13版、定価500円。

調べてみたら、1996年(大河ドラマ『秀吉』の年)に
改めて出版された中公文庫版は定価1300円でした。

おお、たった8年で価格が2倍以上に…。
と、条件反射的に驚いてしまいましたが、
適正価格になった気もするな。
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『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』ちょうどブレードランナーの今に

2019-11-27 17:06:24 | 日記
フィリップ・K・ディック『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』
朝倉久志訳のハヤカワ文庫1994年版で読みました。
初版は1968年、邦訳は1969年(文庫化は1977年)、
あの有名すぎる映画『ブレードランナー』は1982年です。

原作と映画はだいぶ異なる内容ですが、
あの映画の舞台は2019年11月のLAなのです。
あれ?今じゃん!
今まさにリックが酸性雨降りしきる多国籍都市 LAで
レイチェルに翻弄されながらアンディー(映画ではレプリカント)を
追いかけてるのか!!
なんたる偶然。

いや、まあ、小説は映画とはだいぶちがうんですが。
こういうのがあると読書のテンションも上がるもんですね。

ざっくりストーリーは警察に所属する賞金稼ぎのリックが
逃亡アンドロイド8体(うち2体は処分済み)を
追いかけるというもの。

アンドロイド技術はものすごく進化していて、
もはやパッと見では人間との区別がつかないレベル。
見分ける方法としては「フォークト=カンプフ感情移入度測定法」
というものが用いられています。
質問項目は生命動物に対する感情の希薄さだったり、
共感性を問うているものが多いイメージですが。
なんか、知能パワーで偽装できそうなファジーな内容だし、
アンディーにはもはや感情がしっかり芽生えているのではと思える言動が多く、
小説内の社会はとっくに危うい状態な気がします。

孤独を癒す共鳴ボックスだの、感情をコントロールする情調オルガンだの
本物そっくりの電気羊を必死に世話して飼うだの、
生産性ないなあって思ってしまう日々を送っている人間たちに対し、
たった4年しか寿命が無いのにも関わらず
命がけで火星を脱出して自由に生きようとするアンディー
という皮肉な対比も気になります。

(アンディーにも、やっぱり、誤魔化しようの無い情緒的欠陥があるのだけど)

レイチェルも、なんというか、めちゃくちゃ複雑な心理構造だよなあ。
すでに「感情」はあるけれど、「感情移入」が苦手、ということなのかな。
それって処分しなければならないレベルなのかな。

考えちゃいますね。
作者に見事に転がされてるのかな。

何はともあれ、この年のこの時期に偶然読んだのは
良いことだったと思う!よかった!
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多和田葉子『献灯使』ヘビイだ。

2019-11-25 12:11:38 | 日記
『献灯使』は震災後の日本と思しき近未来が舞台の
“ディストピア文学”というジャンル分けがされています。

英訳版が全米図書賞(2014)を受賞して話題になりましたね。
(ちなみに図書館の予約数も未だに多いです)
震災のあとに再度大地震が起きて、回復不可能なレベルまで放射能汚染された
と想像できる日本が舞台です。

って、小説のなかでは「地震」とか「原発」とかは明言されないし、
「民営化」された政府や外来語の排斥運動や、
病弱な子供たちの生態も、死ねない(?)老人たちの生態も、
なんとなく霞みがかっているのに頑然と存在している、不思議な状態。
その未来設定に戸惑いつつも、有り得なくもなくなくない、か?と思うような
ちょっとゾワっとする感じの物語です。

表題作がページの半数以上を占める中篇で、
短編『韋駄天どこまでも』『不死の島』『彼岸』『動物たちのバベル』も収録。

『献灯使』は死ねない(?)老人の義郎(よしろう)を中心に、その世界を描きます。
若ければ若いほど虚弱で、その代表としてのひ孫・無名(むめい)がいて。
外来語は使用禁止になってヘンテコな日本語が増え
(インターネットがなくなった祝日は<御婦裸淫(オフライン)の日>
って、当て字に遊びがあっておもしろい)、
東京には資産価値がなくなり、食料は手に入りにくい。

文章も静かでソリッドで、読んでいるとなんとも不安な気持ちになります。
良い作品なんだけど、ちょっと、寂しい気持ちにもなる。

一方で、『韋駄天どこまでも』は作者らしい飄々とした文章で、
漢字遊びが繰り返されていておもしろかった。
漢字遊びも良いんですが、一番良かったのは「カマンベールのような月」
という表現だな。おいしそう。
作者も気に入ったのかな?2回出てきました。

物語の大前提として、「日本の住環境はもはや回復不可能」という雰囲気があって、
現実にそうなりかねないくらい危うい地に
私たちは住んでいるのかもしれないと思います。
それでも私は、さてさて外国に移住しようかなと思えない。
怠惰なのか、のんきなのかわからないけれど。
難しいですね。
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三浦しをん『あの家に暮らす四人の女』高尚な平和感!たのしい。

2019-11-23 11:28:29 | 日記
三浦しをん『あの家に暮らす四人の女』です。

なにこれ!
たのしい!!

文章がめっちゃ高尚なのに、
ものすごくくだらない考察とか会話してる。
でもなんとなく説得されてしまうというか、
にやにやしてしまいます。
たのしい。

前半の雪乃が転がり込む顛末とか
多恵美も転がり込む顛末とか
節々に人生のしょっぱさや学びがあるんだけど、
なんというか、読後感として、
なんか良い文章読んだなあというにやにやに収束する。
良い意味で学ばないというか、まあそういうこともあるであろうと受け流せるというか。

38歳!の腰の座り方というんですかね。
ちがうか。

中盤、おもむろにカラスが語るのも良い感じです。
と思ったら、最終的にさらに面白い語り部が登場して
こうきたか!という感じも楽しい。
タイトルがまどろっこしくて損してないかと思ってたんですが、
読了すると納得できます。

事件とかまったくない…わけでもないけど、
長い人生のなかの、ザ日常の日々の、わずか半年程度のお話し。
劇的な変化もなく、この小説以前も存在し、以降も続くであろう物語、という感じ。

文章力にも磨きがかかってるというか、脂ノリノリというか(失礼か?)
さすが織田作之助賞受賞作の語りで
作者と同世代と思しき主人公佐知38歳の思考とか
ついでに雪乃の田舎出身思考とか
私は心当たりがありすぎてうなずきながらもやっぱりにやにやしてました。

良いもん読んだな…と思う!
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