思惟石

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【読書メモ】2014年8月 ③ 今月の西澤保彦

2021-01-29 11:55:08 | 【読書メモ】2014年
<読書メモ 2014年8月 ③>
まだまだ西澤保彦を読みまくってますね。
カッコ内は、2021年現在の補足コメントです。


『収穫祭』西澤保彦
おもしろかったけどさあ、、、
いわゆる「道がついた」からって、殺し過ぎです!さすがに!
結局、女の物語なのですね。
伊吹くんとカンチはどうでもいいと。

(閉ざされた村で起きた大量殺人事件が始まりで。
 という冒頭はおもしろそうなんですが、
 なんだかなあ…。
 個人的には『聯愁殺』と同じ感想


『死者は黄泉が得る』西澤保彦
初期の名作のひとつらしい。
時系列の錯誤は良かったけど、最後はどうだろうか。
ちょっと綻びができてしまっているような気が。

(アメリカにある、死者が蘇るという謎の館が舞台。
 SFミステリ作品)


『腕貫探偵』西澤保彦
狂言回し的な探偵がいる短編集。
おもしろかった。
最後の一編はいただけなかったけど。よくわからん。
そして相変わらず頻繁に記憶喪失になる登場人物たち。
いや、おもしろかったですよ。

(とはいえこのシリーズは、ちょっと軽いな、と思ってます。
 だいぶ短めの短編だから、読みやすいんですけどね)


『黒の貴婦人』西澤保彦
4人シリーズの短編集。
ウサコ一人称がかわいいよ。

(<タック・タカチ>シリーズの短編集。
 時系列的には長編のスキマにあたる5篇。

 このシリーズの長編は、以前も書いたけど前半の作品が良くて
 『彼女が死んだ夜』
 『麦酒の家の冒険』
 『仔羊たちの聖夜』
 『スコッチ・ゲーム』
 ここまでが良い。
 後半の『依存』『身代わり』(2009)は、まあ、うん、
 トラウマを解決できて良かったね、というやつ。
 作者的にもこれにてミソギ終了!という感じなのでしょうか。
 長編は以降、出版されていません。

 一方で、短編集は4人のファン向けっぽい存在になっていて、
 (というわけでシリーズ初読の人には食いづらい)
 2016年にもう一冊『悪魔を憐れむ』が刊行されています。
 お、これは未読だ。読もう。
 結局このシリーズが好きなんだな)
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【読書メモ】2014年8月 ②

2021-01-28 16:14:55 | 【読書メモ】2014年
<読書メモ 2014年8月 ②>
カッコ内は、2021年現在の補足コメントです。


『グランド・ミステリー』奥泉光
おもしろい。すごい。
途中のメタ展開のグルーヴ感はさすがです。
SF的な要素も鬱陶しくなく気持ちよく読めた。
一冊目と二冊目が重なっている部分があったけど、
連続ではなくレイヤーみたいなことかしら。
『出口のない海』で回天の話しを読んだばかりなので、
カタセ氏は回天なんか開発して長生きする一冊目よりも
硫黄島で死んでしまう二冊目の方が良かったのかもしれない
と、勝手に思ってしまったけど、どうでしょう。

(冒頭は昭和16年の日本、真珠湾攻撃直後。
 『雪の階』『神器』とともに昭和20年前後の軍部が
 描かれているので、比較評価されることが多いようです。
 奥泉光作品では『シューマンの指』の次に好き)


『臨場』横山秀夫
検死官の短編集。

(現場に出向いて自殺か他殺かを判断する、
 「終身検死官」と呼ばれている男が主人公。
 短編8話。
 ジギタリスの句がおもしろかった。
 「よきこときく」みたいだ)


『誰か』宮部みゆき
うまいしおもしろかった。
のですが。
読者の解釈や先読みを一切許さないというか、
私の良き手順で書くのだから黙って読みなさいという印象を受けた。
完全に被害妄想だけど笑

(<杉村三郎>シリーズの第1作です。
 小さな出版社勤めから、一転、大企業会長の娘婿になり
 妻にも子どもにも恵まれた「平凡」&「幸福」&「善良」な人
 杉村三郎さん。
 という設定の時点で、私は気持ちがざわざわしてしょうがなかったです。
 だって、これ、宮部みゆきでしょ?
 絶対、酷い目(もしくは辛い目)に会うじゃん…!!!
 という思いがあったせいかもしれませんが、
 読んでいる間ずっと気持ちが不穏だったのです笑
 「平凡な幸せに浸ってるとミヤベが来るぞー!!」と笑)
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『HHhH プラハ、1942年』凄まじい本でした

2021-01-27 17:19:15 | 日記
なんか凄まじいもん読んだな、という感想。
凄い、というか、凄まじい本。
ローラン・ビネ『HHhH プラハ、1942年』。

副題でお察しかもしれませんが、
ナチスにまつわる本です。

ナチスの高官で冷血漢の大量殺人鬼で鼻持ちならない高慢ちき野郎の
あ、脱線した、ハイドリヒです、ハイドリヒの暗殺計画。
通称<類人猿計画>が主題の小説。

小説?かな?

作者が小説の在り方を追求する文学、と言った方がいいのかも。

とにかく最初から最後まで作者が「僕はこう思う」
「僕は納得がいかないけれど」「僕は」「僕は」
「ちなみにガールフレンドのナターシャは」…
めっちゃ出てくる笑

作者のローラン・ビネは、若い頃から類人猿計画に興味を抱き、
執拗かつ偏執的とも言える情熱で資料を調べまくったそうです。
執筆は30代になってからですが、
これ以上は自分の中に収集した事実たちを溜め込みきれない、
という勢いで書いている感があります。
凄まじいわ。

ナチス界隈のエピソードはどういう描き方をされても
読むと暗澹たる気持ちにしかならないけれど、
それでもなお、ものすごいボリュームの文章を
読み切らせる作品となっています。
次のページは、次の章は、って、ページをめくっちゃうんですよね。

この不思議なタイトル『HHhH』は、
ドイツ語の「ヒムラーの頭脳はハイドリヒと呼ばれる」
という一文の頭文字をとった略語だそうです。
作者はフランス人で、原著もフランス語ですが。
ちなみにタイトルに関しては、作品のだいぶ前半(p118)で
「類人猿(エンスラポイド)計画」以外考えたことはない
と断言していますが、まあ、見ての通り。

とにかく「僕」が思考しながら資料を追って、
短い章を積み重ねていく。
歴史と小説の違いは。
小説とはなにか。
史実とはなにか。
メルセデスは緑だったのか?そんな資料はどこにもない!云々。

これは小説なのかな?ルポなのかな?
カポーティーの言う「ノンフィクション・ノベル」なのかな?
作者は「基礎小説(アンフラ・ロマン)」と表現していたけど、
文学の系譜みたいなものに詳しくない私は、やっぱり、
「なんか凄まじいもん読んだな」と思った。
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森絵都『みかづき』塾家族の大河ドラマ

2021-01-25 16:20:46 | 日記
森絵都の『みかづき』。
大島家の三世代物語です。
戦後すぐに塾教育を始めた吾郎さん千明夫婦と、
大島家の三姉妹と、現代の孫世代まで。
大河ドラマですねえ。

前半の吾郎さん中心の章は、千明夫人の激烈さが
若干、鼻について読みにくかったかなあ。
三姉妹にシフトしてからはすいすい読めました。
次女の蘭、一郎の章が特におもしろかった。

教育にまつわる世の中の変遷も追体験できて
なかなかおもしろかったです。

学校と塾の確執から始まって、
団塊世代のひとクラス60人時代から
受験戦争、ゆとり世代、内申点の主体評価等々…。

私個人の人生体験で言うと
小学校にはやたら威圧的な老先生がまだ存在していて、
いつの間にか週休二日になっていて、
ついでに中学でブルマが撲滅されてホッとした。
大学はセンター試験で、AI入試という単語の出始めで、
ついでに地元は北辰テストというご当地試験がありました。

とはいえ、学生時代も今も、教育理念とか大きな視点で
「教育」というものを考えたことがないから
ピンと来ない部分も多くあった気もします。
(好きな先生の教科をがんばる!みたいなのはあったけど)

大島家はそれぞれが濃淡あるけれど、
教育というものの在り方に真正面から向き合って
がっぷり四つに組んでいる人たちなんだなあ、と。
素直に感心してしまう。

『みかづき』は第12回中央公論文芸賞(2017)受賞作で、
同年の本屋大賞2位です。
ついでに王様のブランチ・ブックアワード2016。

地味なライフハックですが、
図書館にて、本屋大賞1位作品を予約した場合
一生借りられないだろうなと思える予約数なのですが
本屋大賞2位だと、意外とするっと借りられます。
世の中とはそういうものだな。しみじみ。
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【読書メモ】2014年8月 ①

2021-01-22 18:31:31 | 【読書メモ】2014年
<読書メモ 2014年8月 ①>
カッコ内は、2021年現在の補足コメントです。


『99%の誘拐』岡嶋二人
昭和63年でこのパソコン活用っぷりはすごいと思う。
ところでなぜ金塊は沈んだんだろう。
もしくはなぜ沈めたのだろう。
浮き輪偽装したのはなんでだろう。
うーむ。

(二部構成の物語。
 前半は、1968年の誘拐事件を被害者の父が綴ったもの。
 後半は、19年後の1987年の誘拐事件。
 2つの事件の関連が気になって、一気に読める
 岡嶋二人らしいミステリ)


『聯愁殺(れんしゅうさつ)』西澤保彦
なんかこの人、(ネタバレ的なので文字色反転)
追いつめられてむきーっとなって
トンデモをやらかす女性がよく登場するな。
最初はこういう人を描くのが上手いなと思ってたけど、
あまりにもよく出てくるので女に恨みでもあるのかしらん
(ここまで)
と心配してしまう。

(数年前に暴漢に殺されかけた主人公が
 未解決事件の真相を探るために謎解き大好き団体「恋謎会」に
 推理を頼みます。
 で、著者が得意のロジカルゲーム的推理合戦。
 もうちょっと明るくとぼけたトーンだったら良かったなあ〜と
 個人的には思ってます)


『十時屋敷のピエロ』東野圭吾
31歳の作品らしい。
そんなに登場人物が魅力的じゃないし
肝心のトリックもどっかで見たようなものだけど、
31歳かあ〜。すごいな。
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