思惟石

懈怠石のパスワード忘れたので改めて開設しました。

奥泉光作品と、私の好み

2018-03-30 17:29:28 | 日記
先日も書いたのですが、
奥泉光作品、
個人的に合う合わないが
パッキリしています。

作家としてはすばらしい人だと思いますし、
文章の巧さはすごいなと思っています。

それはさておき、合う合わないがあるのです。
なんでだろう。

以下、既読作です。

『鳥類学者のファンタジア』
良い!
初めて読んだ奥泉作品です。
10年以上前、学生の頃に読んだと思います。
当時はあまり読書量も多くなかったので
世界観や構成も新鮮で、楽しく読みました。

『バナールな現象』
ちょっと合わなかった。。。
なんでだろう?
2011年に読みましたが、当時の読書メモには
「嫌いじゃないしおもしろかったけど、無駄に長い」
と。
ううむ、まったく合わないわけではないな。
今読むと、また違うのかな。

『シューマンの指』
すごくおもしろかった!
これも2011年に読みました。
このころにはミステリ的爽快感
(すべてがスッキリ!な謎解きクライマックスというか)
を求めるべき作品と、求めるべきでない作家(主に恩田陸)
があると学習してましたので。
同級生ん殺人事件には何の期待もせずに読みましたよ。
(個人的に、その読み方で正解だと思っています)
音楽と幻想文学のお話しとして、
とても楽しめました。

『グランドミステリー』
これもおもしろかった!
戦争末期に開発された「回天」とカタセ氏の話しとか
『出口のない海』(横山秀夫)を読んだばかりだったので
興味深く読みました。
メタというかパラレルっぽい構成モノなのですが、
それが良い味を出していて読みやすかったです。

『桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活』
これだ。
これ、ぜんぜん合わなかった。
『モーダルな事象』の前に読んだのですが、
「すごい!ぜんぜんおもしろくない!」と思ってしまいました。
ある種の強烈な驚きが今だに記憶に残ってます。
太字も意味がわからないし
(モーダルを読んだ後に見ると、そこは面白味があるかも)
低偏差値女子学生の言動もおもしろいとは思わなかった。
そもそもキャラにもセリフにもリアリティが無かったし、
魅力もなかったですね。
奥泉氏には最も縁遠い人種だからですかね。
作中のギャグらしきものも全く理解できなかった。
なんか、悲しい記憶しかないな、この本。


というわけで、振り返ってみて、よく分かりました。
作者が作者らしからぬことに取り組んだクワコーの続編が
燦然と輝く「合わない本」だったということが、
よく分かりました。
それが記憶に残りすぎていて混乱してた。


次は、
『黄色い水着の謎 桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活2』
には絶対に手を出さず
『「吾輩は猫である」殺人事件』
を読むことにします。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

アイザック・アシモフ『鋼鉄都市』SF金字塔!

2018-03-29 23:22:34 | 日記
アシモフといえば、HONDAのアシモの名前の由来。

って、私は知らなかったですが。
言われてみれば、オマージュを捧げたくもなる大御所ですね。

『鋼鉄都市』はアシモフの最初のロボット長編作品です。
1953年の作品。

アシモフといえば、あの有名すぎる
「ロボット工学3原則」の生みの親でもあります。
(編集者との共作らしいですが)
この原則にのっとった世界観をほぼ全ての作品で貫いていますが、
『鋼鉄都市』はそのなかでも評価の高い作品。

ちなみにこの作品、SFやロボット系だけでなく、
ミステリとしても、高評価です。

うむ、たしかに面白かった!
これは読んでおいて損のない作品です。

舞台はちょっとだけ近未来で、
地球は人口過剰でシステマティックな
(なんだか共産主義的な匂いのする)
超過密都市になっています。

で、宇宙人という外的存在がいるのだけど
それは、ほんの少し前に惑星移住を遂げた元地球人
(生態的にちょっと変化してる)で、
それでも「異なる者」としての嫌悪感を抱く地球人の感情があり
ついでに、ロボットにも「人の職を奪う者」としての憎悪があり
そんな複雑な地球社会で、宇宙人が殺されるという事件が起きて・・・

という、ミステリが軸にあるお話です。

主人公の刑事イライジャ(人間)と、
宇宙側から送られて来たパートナー、
R・オリヴォー(高性能ロボット)の
でこぼこコンビな感じはとても良いです。

イライジャは、地球人の例に漏れず
ロボットに嫌悪感を抱いていますが、
クレバーであり自分で考えるタイプの人。

宇宙人(早々に宇宙へ開拓に出た、元地球人)に
広い視野での宇宙論を語られると、
「今までの自分」を固辞しつつ、
何が自分たちの未来(イライジャには年頃のこどももいる)にとって
大事かということを考える柔軟さも持っている。

でも、妙なところが頑固で、ヘンテコな推理したりして、
なかなか愛らしい主人公です。

作者は科学者としても高名ですので
世界観の設定にも説得力あるし、
作家としても一流なので
キャラクターとストーリーも魅力的。
読んでいてい本当に納得できるし、楽しいです。

これが1953年の作品かあ〜
っと、しみじみ驚きます。

ちなみにルンバをつくった会社の名前
「アイロボット」も、アシモフ作品への
オマージュのネーミングらしいですよ。

アシモフ、ロボット界隈で愛されすぎ!
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ボーヴ『きみのいもうと』ダメ男ふたたび

2018-03-24 09:38:57 | 日記
エマニュエル・ボーヴ『きみのいもうと』です。

『ぼくのともだち』の続編とも言えるような内容。
主人公の名前は違いますけど、
『ぼくのともだち』に続いて出版された作者の第二作で、
まあ、主人公のやることなすこと、
お前、アルマンって名前変えてるけど、バトンだろ!
とつっこみたくなるくらいの地続き感。

今回も訳者(もちろん前作同様の渋谷豊氏である)のあとがきが
ふるっています。
数年前にフランスで刊行された『ボーヴ作品集』についての言及、

そこには、ありとあらゆるタイプの<甲斐性なし>が出揃っていて、
まさに<手にするだけで気が滅入る>という稀有な一冊になっている。


って、あんた本当にボーヴを広める気はあるのか笑
あるんだろうな。
ある種の愛が溢れるコメントである。

当初の原稿では主人公の名前が「マルセル」だったのだけど、
出版元の編集長の名前も「マルセル」で、
彼が主人公の改名をしないと出版したくないと言ったのも
まったくもってうなずけます。

というくらいダメ男のアルマン(いや、バトンに違いない)が
相変わらずダメダメ生活を送ってますが、
前作ほどお笑い要素はなかったです。
とはいえ相変わらずくそまじめに「ダメ男」思考を
滔々と述べていて、つっこみどころ満載。

そして相変わらず貧乏描写が容赦なくうまい。細かい。

ダメ男メイカーの作者作品のなかでも、
『ぼくのともだち』と『きみのいもうと』の2冊が
特に評価が高いようです。

私は『ぼくのともだち』の方がイチオシです。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

中島京子『平成大家族』これはいい!

2018-03-21 19:56:33 | 日記
中島京子さん、遠い昔に「エンジン」を読んで、
イマイチだなあ…と思っていたのです。

私の目が、底なしの節穴だったわけです。

『桐畑家の縁談』でおっと思って
『小さいおうち』でこれはやばいと思って
『平成大家族』を読みました。

やばい。
すごい面白い。

作品としても良いですが、
作家としての相性が、どんぴしゃです。
『エンジン』を読んだ当時の自分をぶん殴りたい。

既読の作品内では『平成大家族』がぶっちぎりで
おもしろいと思います。

家族のすったもんだの物語なんですが、
飄々とした語りで、笑えるし、愛しい。

私は10代の物語ってのが鳥肌がでるくらい嫌いなんですが、
中学生のさとるくんの章は、すごく温かい気持ちで読めたし、
灰色の過去しか持たない私も励まされる内容でした。

なによりも良かったのは、最終章。

一家の主人である龍太郎が、家族のあれこれを描こうとするのですが
「吾輩は猫ではない」という言葉に全てが凝縮されているというか。
猫以下って、きづいちゃったね!おとうさん!!
というコミカルさと、
文学的なクライマックスというか。
うむ、良かった。楽しかった。

現役作家さんで、全作読むよ!新作楽しみ!
という人が増えるのはうれしい極みですね。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

レックス・スタウト『毒蛇』おもしろかった

2018-03-19 14:24:44 | 日記
私立探偵ネロ・ウルフ シリーズの第一作目です。
訳は佐倉潤吾のハヤカワミステリ文庫で読みました。
表紙のイラストが良いなと思ったら、和田誠。
さすがです。
現在は絶版なのかな?
ざんねん。

ずいぶん昔に『料理長が多すぎる』を読んだ気がするのですが
ほとんど記憶になく(ぽんこつなもんで!)
おかげさまで純粋な気持ちで読めたよ!
楽しかったよ!

ご存知の方も多いと思いますが、
ウルフシリーズは
美食と蘭を愛する巨漢探偵のネロ・ウルフ
(安楽椅子探偵ってやつですね)が主役。
ワトスン役のアーチーがよく動き、よくしゃべり、
ついでに物語の一人称も担当します。

読み始めの前半で思ったのが、
ちょっと訳が古いのか、
それとも計算尽くなのか、
アーチーの一人称がラフすぎやしないか
ということ。

なんですが、
読んでいるうちに慣れてきました。

良い歳したアーチーの驚きのセリフが「えーっ」ですよ。
こっちが「えーっ」だよ!
と思っていたのも束の間で、なんか可愛くなってきた。
〜なんだ。等の語尾も、何かと「ニヤッと」笑うのも味わい深くなってきた。

『料理長が多すぎる』も
和田誠イラストのハヤカワミステリで読もう!
と思ったら、訳者が変わってますね。
どんな感じなんでしょう(記憶ゼロ)。

なにはともあれ、読んでみます。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする