思惟石

懈怠石のパスワード忘れたので改めて開設しました。

『喜べ、幸いなる魂よ』 佐藤亜紀さん新作出たよ!(半年前に)

2023-01-30 14:27:16 | 日記
『喜べ、幸いなる魂よ』
佐藤亜紀

18世紀のフランドル地方の話。
現在のベルギーのあたり。
当時はハプスブルク領の飛地だったので、
ほぼほぼ自由都市みたいなエリアかな。

半聖半俗の女性が集って暮らすベギン会というのは
言葉自体も初耳で、おもしろかったです。

お隣のフランスで革命が起きたり、
イギリスでは産業革命(失業者も増える)が進行していたり
時代がぐいぐい変化していく頃。

暮らしている人々は大変だろうなあ、
と思うけれど、
主人公のヤンと天才ヤネケは
飄々と、したたかに、頼もしく生きている。
すごく素敵。

そんな激動の時代の、図太い二人の、
半世紀ほどの物語。

レオがこんなにも女性憎悪な性格になっちゃったのは
解せないなあ(ちゃんと愛されて育ってると思うけど)
と首を傾げていたが、
ヤネケのせいじゃねえか的な会話がぽんっとあって、
笑ってしまった。

佐藤亜紀作品としてはめちゃくちゃ読みやすいから、
万人に薦めたいんだけど、
読んでくれそうな人が周りにいなくて寂しい…。
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『ヒト、数学に出会う―公式をめぐる49の物語』

2023-01-26 10:58:54 | 日記
『ヒト、数学に出会う―公式をめぐる49の物語』
リヨネル・サーレム /コラリー・サーレム/フレデリック・テスタール
深川洋一:訳


数学の定理や法則を2ページ程の小話っぽく書いたもの。
挿絵もかわいくて、読みやすいです。
安野光雅さんの「すうがく」シリーズを彷彿とさせる本です。

サインコサインタンジェントの図解は
わかりやすくてありがたかった。
こういう感覚で捉えておけば、
暗記公式頼みでヒイヒイ言わなくて良かったのか〜。
と、数学Ⅱで頭を抱えていた数十年前の私に教えてあげたいです。

円周率パイの求め方を説明するケーキの話と、
一次方程式を絵画の面積で例えた章も良かった。
わかりやすくて「そうそう!そうだった!」と
改めて理解できて、楽しいです。
今なら、自力で円周率を導けそう!
(すぐ忘れる可能性も高いけど)

ちなみに
オイラーの法則とか、読み解いてもらっても
ちんぷんかんぷんなものもありました。
私の限界が見えた。

とはいえ面白かったです。
一応、数学を学ぶ学生向けなのかな?
邦訳は1994年だけど、今は絶版みたいですね。
文庫にしたら良いのにな〜。
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『女王陛下のユリシーズ号』 英国海軍ムネアツ本

2023-01-23 17:20:13 | 日記
『女王陛下のユリシーズ号』

アリステア・マクリーン
村上博基:訳


第二次世界大戦後期。
ソ連に援助物資を届けるイギリス船団の護衛艦ユリシーズ号の物語。

ユリシーズ号が主人公というか、
ユリシーズ号の中の男たちの物語というか。
最初から最後まで詰んでる雰囲気のユリシーズ号の最後を、
月曜から一週間、詳細に描いています。

これは史実かな?と思ったら、架空の巡洋艦らしい。
へえ〜。
ゴリゴリに無骨な『終戦のローレライ』という雰囲気か。
人間模様とかリアルでおもしろい。

イギリス北部から北極海を経てソ連に物資を運ぶ航路で、
ナチスドイツのUボートが襲ってくる、という構図。
36隻の船団が、ドイツ軍の執拗な攻撃によってどんどん減っていく。
救援を打診してもなかなか来ない。
このボロボロの船団を囮にして、
ドイツの戦艦ティルピッツ(実在する)を誘い出し、叩きたい、
というイギリス海軍本部の企みが垣間見える。
くぅ〜!っとなってもどかしいし、ずーっとピンチでハラハラする。

ちなみにプロローグですでに過酷な航行続きで
船内でプチ反乱が起きています。
もうね、冒頭から不穏じゃないですか。
P40、なんとか出航した際の表現が
「火山に閉じぶたは冠されたが、鳴動は決してやんではいないのだった」
って、ハードモードすぎて辛い。

ページをめくる度にさらなるハードな事案が続くし、
ずーっと「詰んでる〜」って状態だし、
ユリシーズ号がんばれ!!死ぬな〜!!と思いながら
最初から最後まで読み続けることになった笑

でも読んじゃう。
ムネアツ本。

初版は1955年、邦訳は1967年。
訳文の評価も高いようです。
読みやすかったし、ムネアツだった。
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『贋作 吾輩は猫である』 初版がすごい

2023-01-20 17:59:32 | 日記
内田百閒の『贋作 吾輩は猫である』
私はデザインが素敵で、且つ、旧仮名の旺文社文庫を持ってる!
と自慢げな気分だったのですが。

ちょっと調べてみたら、初版本が凄かった。



猫本専門書店さんの写真です)

これ、オリジナルの夏目漱石『吾輩は猫である』の初版本オマージュなんですよ。
というか、ゴリゴリに、そのまんまじゃないか。
さすがにこれが許されるのは愛弟子内田百閒くらいだろうなあ、と。
(こちらの古書店リンクに画像があります)

行屎走尿とか、医師の甘木氏(縦読みすると某氏になる)とか、
漱石先生の独自の言い回しや言葉遊びも踏襲していますし、
ラストは池を淵を「右へ」行くし(オリジナルは「左へ」)、
漱石のことほんと好きだな!と思う。

ちなみに甘木氏は百閒随筆によく出るんですが
(小田扉の江豆町を読んだときも、百閒ネタかな?と思った)
漱石が先だったとは知らなかった。

「ラール・プール・ラール」(芸術至上主義)に引っ掛けて
「ビール・プール・ビール」と言ってみたり、
ライネケ狐を例え話を放り込んできたり、
ドイツ語ギャグを色々言ったり(旧仮名だからか、解読できなかった)
百閒ワールドも濃くて良い。

良い本だよなあ。
しみじみ。
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『贋作 吾輩は猫である』 元祖の贋作!

2023-01-18 10:01:45 | 日記
『贋作 吾輩は猫である』
内田百閒

夏目漱石の愛弟子でもある百鬼園先生による
『吾輩は猫である』の「贋作」であります。

猫が水瓶に落ちて、這い上がった後の、お話し。

吾輩っぽさもあるけど、でもちゃんと内田百閒!って感じで
超おもしろい。
好きすぎてつらい!

オリジナルの猫宅、苦沙味先生のモデルは夏目漱石なように、
こちらの新・猫宅、五沙味先生は内田百閒です。
来る客がみんな貧乏で遠慮なく飲んだくれて、
五沙味先生もそれに負けず劣らず貧乏で、すごい笑

奥さんも、手持ち不如意ですわね〜つって
さらりと隣人から借金してくる。
借りた金でお酒も買ってくる。
五沙味先生が借りた金を弟子に恵んでも泰然としている。
奥さん、かっこいい…。

ちなみに私が読んだのは表紙が超絶素敵な旺文社文庫。
古本市で見つけて数冊買ったうちの、一冊。
1979年から84年にかけて全39作が刊行された
内田百閒の旺文社文庫シリーズです。
あとがきは全てヒマラヤ山系こと平山三郎氏が書いているっぽい。

旺文社文庫は旧かなづかいで漢字も古い表記が多く、
これこれ!これぞ百閒!!という心地よさがある
(新字旧かなと言うらしい)。
この後に文庫を出している福武、岩波、新潮、中公、ちくまは
ほとんど新仮名遣いのようです。
ならば旺文社でぜんぶ揃えたい。

へえ〜旺文社シリーズ、
古本市場では値上がりしてるのか〜。

…あの古本市で見かけたやつ、買い占めるべきだった!!
く、悔しい〜!!!
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