思惟石

懈怠石のパスワード忘れたので改めて開設しました。

『運命の日』

2023-09-27 14:35:30 | 日記
『運命の日』
デニス・ルヘイン
訳:加賀山卓朗

第一次大戦直後のアメリカの物語。
このミス3位とからしいですが、
特にミステリ要素はないですかね。
ミステリ作家が書いた社会派小説という感じ。

警察官のダニーと黒人ルーサー、
それぞれを軸に物語が紡がれています。
1918年から1919年にかけて。
ロシア革命の影響で共産主義や社会主義が台頭したり、
労働運動が盛んになったりした時期だそうです。
舞台となるボストンでは爆発テロもストライキ&暴動もあった時期。
ついでにインフルエンザ(作中でも猛威を奮っていた)が
パンデミックを起こした年でもある。
(日本では米騒動の年でもある。ただの余談だけど)
さらに移民問題やら黒人差別やら労働者問題やら。

とにかく複雑な近代アメリカ事情が細かく描かれていて
ピンと来るものもあれば、よくわからないこともある。
意外と読んでいて疲れました。

ところで、ベーブ・ルースがちょこちょこ
出てくるのは何なんだろう。
このエピソードはいるのか?という感じではあったけれど、
アメリカ的にはおもしろいのかもしれません。
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『続 横道世之介』 なんか知らんがハッピーです

2023-09-26 18:18:25 | 日記
『続 横道世之介』
吉田修一

これ、作者は書くのが楽しかったんじゃないかな〜、
と思える文章なんですよね。
もちろん読んでいても楽しい。

こういう作品は良いてすよね!
全員ハッピーだ!

冒頭、急いでどこに行くのかと思ったら
パチンコ屋かよ!と、
そんなの世之介じゃない!と思ったけど、
まあ、安定の世之介でした笑

横道世之介プータロー24歳の1年間。
なのに悲壮感ゼロ!
ほんと、すごい奴だ。

主な舞台は1993年なのだけれど、
ちょこちょこと2020年の登場人物たちが
世之介を回想するシーンが挿入される。
みんなに懐かしがられる世之介はどうなっちゃうの?
と、ダラダラした日常の合間に私が勝手にハラハラできる構成。

うまいですよねほんと。
と思ったら、世之介の人生の顛末は前作で既出らしい。
ただ忘れていただけだった…。

この『続』は、文庫化の際に
なぜか『おかえり横道世之介』に改題されたそうです。
さらに『永遠と横道世之介』が刊行されているらしい。
タイトルは紛らわしいが、なにはともあれ読まねば!
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『傑作はまだ』 疲れたときの栄養補給に

2023-09-25 17:56:07 | 日記
『傑作はまだ』
瀬尾まいこ

50歳、ほぼひきこもりの小説家の元に、
会ったことのない25歳の息子がやってきた。
というお話し。

あれ?読んだことある?
なんだこの既視感?

と思ったのは『春、戻る』でした。
36歳女性の前に20代前半の自称お兄ちゃんが現れるという話。
ちょっと似てる?そうでもないか?

まあ、そういう唐突な設定も、
瀬尾作品だとなんとなく受け入れられちゃうというか、
納得しちゃうというか、
本質はそこじゃないからいいんだよ!と思うというか。

そんなこんなで、今作もほっこり良い気分で
あっという間に読み切りました。
世界はお前が勝手に思い込んでいるよりも、結構良いもんだぞ。
と、勝手に読み解いて勝手に反省したりスッキリしたり。

瀬尾作品は、
疲れている時に読むサプリなのです(きっぱり)。
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『さくらんぼの性は』 母の魅力と愛と腕力が最高です

2023-09-22 18:21:13 | 日記
『さくらんぼの性は』
ジャネット・ウィンターソン
訳:岸本佐知子

白水Uブックス。
ロンドン、テムズ川で拾われたジョーダンと
継母ドッグ・ウーマンの物語。

並はずれた大女で怪力無双なドッグ・ウーマンが
すごくかっこいい。
岸本さんが大好きなキャラクターと言うのも
全力でうなずけるかっこよさ。

舞台はピューリタン革命のころ、
チャールズ国王が断罪・処刑されてしまう不穏な時代。

ドッグ・ウーマン(母)は、そんな不穏な世の中と
息子への愛と心配を(怪力で無双しながら)語る役。

そんな息子は夢見がちな冒険少年から冒険青年へ。
時空も不確かで不思議な冒険譚を語る役。

キャラとしてファンタジーの域に達しているのは
母なのだけど(素手で人の首もちぎっちゃうし象も吹っ飛ばすよ!)
本質はすごく現実的(ずっとジョーダンの心配だけをしている)。

一方で「普通」な青年に育ったジョーダンは
童話の王女様みたいなのを追いかけて幻想の国に行って
悶々と何かを憂いている。
ぜんぜん地に足ついてない笑

その対比がすごくおもしろい。愛おしい。

ディテールのエピソードや思考のかけらたちも、
すごく面白い。
変な作者だなあと思います。

他作品は
灯台守の話』『フランキスシュタイン
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『世界の台所探検』 ゆるふわじゃない系の世界の台所

2023-09-21 16:31:53 | 日記
『世界の台所探検
料理から暮らしと社会がみえる』
岡根谷実里

サブタイトルは学び系の新書っぽいけれど、
意外とメインタイトル通りの「世界の台所探検記」です。
ライトに読みやすい。

が、想像以上に出入国の難しそうな国や
たどり着くのが大変そうな辺境に行ってらっしゃる…っ!!

北欧とかヨーロッパの「女子の憧れ」みたいな
キッチン探訪じゃないの〜?という予想は
見事に裏切られます。
(表紙がそれっぽい写真なのもな)

「本場のロイコペやイッタラの食器かわいい〜」
「マリメッコのテーブルウェア〜」
は出てきません、どころか、
まな板も出てこない笑
そういう場所をメインに巡っています。

なんかすごいぞこの人…。

作者は、東大大学院を卒業後、クックパットに勤めながら、
世界のあちこちのご家庭にお邪魔しているらしい。
「友達のつて」「友人の友人」の幅がめちゃくちゃ広いよ、
太いよ、さすがですよ。

辺境メシ』にも出てくる料理を体験しているってのもすごい。
薄い生地をひたすらミルフィーユ状に焼くフリア。
アルバニアの郷土料理らしいですが、
著者はコソボの家庭で体験。
『辺境メシ』の高野さんもフリアはコソボのソウルフードと
紹介しています。

また、イスラエルに封鎖されている
パレスチナの家庭にもお邪魔しています。
著者の目的は「台所探検」なので、
紛争の背景や現状をレポートするわけではないですし。
一読すると、するんっと台所に入って料理してる風なのだけど。
パレスチナは入るのも出るのも大変でしょ…?
なんかすごいなこの人。

パレスチナの状況は『紛争地の看護師』が
わかりやすく説明してくれています。
著者の白川さんが国境なき医師団で派遣されていた国
というだけでも、行きやすい国ではないということです。

そんなこんなで、意外と辺境系やレアな国の
リアルな台所や食事風景が見れて楽しい一冊。
続編が出たら、また読みたい。
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