思惟石

懈怠石のパスワード忘れたので改めて開設しました。

山本一力『あかね空』狭い話しなのに面白い

2018-06-22 21:36:20 | 日記
第126回直木賞(2001年)作品の
山本一力『あかね空』です。

江戸時代モノです。
おもしろかった。

20代半ばで京都から江戸に来た豆腐職人・永吉と
その家族の物語です。

文字通り、「家庭の内輪の話し」なんですが、
それが不思議とおもしろいのです。
すごい。

商売が軌道に乗るまではハラハラしていて、
逆にそのあとはダレるかなあと思っていたら
そんなこともなく。
淡々とした筆致で進みつつも、
明日はどうなる?!と思って目が離せない。

結局、ぐいぐいと一気に読みきってしまいました。

ちなみに描かれている時代は
松井今朝子『料理通異聞』とほぼ同時期ですね。
どちらも町民相手に食を提供する立場のお話しですが。
『あかね空』の深川で営む小さな豆腐屋の視点と、
『料理通異聞』で一代で名を馳せた八百善主人とでは
同時代に生きた人間でも考え方や時代の捉え方が異なりますので、
読み比べると面白いと思います。
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瀬尾まいこ『春、戻る』ほっとする安定感

2018-06-20 10:55:00 | 日記
瀬尾まいこ『春、戻る』です。
一日で読み切ってしまった。
次に読む予定の本が無いのに……。

主人公さくら36歳の前に突然
24歳の自称「お兄ちゃん」が現れるという
理解が追い付かない設定から始まるお話しです。

いや、もうね、私はベタな人間なので
「死んだお父さんかなあ」なんて思いましたが
そんなベタベタな設定なわけありません、もちろん。
(この流れ弾が当たる先は『凍りのくじら』です)

どう畳むんだろ、と思いつつ、
読んでいるうちに主人公も周囲も読者である私も
ふつーに「お兄ちゃん」を受け入れてしまっている
瀬尾まいこマジック……。
すごい。

お兄ちゃんも良い味出していますが、
婚約者の山田さんも良い人で
初春から春の終わりに向けたお話しを読んでいると
心地よく感情を揺さぶられるな、と思います。
淡々と読むのでもなく、驚きながら読むのでもない、
程よい、気もちのゆらぎがあるというか。

しかしな、読むのが心地良すぎてな。
一日で読み切ってしもうた。
予想外。
次、何を読もうかと途方に暮れています……。
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【読書メモ】2008年12月

2018-06-19 16:39:54 | 【読書メモ】2008年
<2008年12月>
『北方謙三 水滸伝』(全17巻)キャンペーン中だったので、
それ以外のタイトルが少ないですね。
カッコ内は、2018年現在の補足コメントです。


『図書館戦争』有川浩
ライトノベル出身らしい軽い文章だけど、軽すぎないのが良い。
設定がおもしろかったです。

(これ、初・有川浩作品だったと思います。
 「図書館の自由に関する宣言」と「メディア良化委員会の検閲」
との戦いって発想が、斬新で面白いなあと思いました。
子どもの頃から図書館が大好きだったので、
他人事じゃない感がありました。一方的に)


『ユージニア』恩田陸
マルホランドドライブっぽい?
わかりにくいのが美学のようで、「ユージニア 解説」で検索したら
「無粋である」みたいなコメントページばかり出る。
理解できなくてもうしわけない。

(旧家の大量毒殺事件の真相はいかに、的なやつ。
 恩田陸あるあるですが、なんか、そこそこ楽しく読了するのですが
いまいちスッキリしないんですよね……。
で、また懲りずに他作品を読むというスパイラル)


『しゃばけ』畠中恵
ドラマのメイキング番組を見ていたので、そのイメージで読んだ。
妖が予想を裏切るへなちょこで、いい。

(やなりが可愛いですよね)
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宮内悠介『スペース金融道』おもしろかった!

2018-06-17 13:50:39 | 日記
なんか、SF続きではありますが、
宮内悠介『スペース金融道』を読みました。

おもしろかった!

『ナニワ金融道』の宇宙版とでも言いましょうか、
”宇宙だろうと深海だろうと、核融合炉内だろうと零下190度の惑星だろうと取り立てる”
がモットーの新星金融の取り立て担当社員のお話しです。

新星金融の基本理念は、
”バクテリアだろうとエイリアンだろうと、返済さえしてくれるなら融資をする。
そのかわり高い利子をいただきます”
ということで、アンドロイドから、コンピューター内の知的生命体や、謎の植物まで
様々な連中から借金を取り立てる主人公「ぼく」と上司のユーセフ。

鬼畜上司やアンドロイド擁護派の女教授に振り回されて
常に酷い目に遭うのが「ぼく」の仕事でもあります。

主人公も優秀なプログラマなのですが、
不幸な目に遭うことに慣れきってる感があって
なんか、読みながらツッコミ入れつつ応援したくなります。
トラックに轢かれそうになって
”そっと目を閉じた”ところとか、電車の中で笑ってしまいました。
諦めるなよ!

全体的にコミカルなんですが、通貨や貨幣経済の概念や
人工知能のジレンマや暴走など、考えさせられる内容も満載です。

この宇宙では、ギャンブルにハマるのはアンドロイドが多いという
設定と理屈付けとか、なるほどなあと思います。
主人公もネットゲームをせっせとやってるけど。
どうでもいいですが、そのゲーム、中国が舞台で
レアアイテム「玉(ぎょく)」は白菜のかたちなのだそうです。
もう一つのレアアイテムは角煮ですね、きっと。

ちなみに鬼畜上司ユーセフの専攻である「金融工学」とやらは
架空の学問かと思いきや、普通に実在していた。
小説内の噛み砕いた会話ですら理解できなかった私は
投資とか本当に向いてないと、しみじみしました……。

この作家さんはコメディタッチな方なのかな?と思ったら、
直木賞候補になっている作品は、シリアスな作風のようです。
他の作品も読んでみようっと。
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アルフレッド・ベスター『虎よ、虎よ!』合わなかった

2018-06-11 13:59:52 | 日記
アルフレッド・ベスター『虎よ、虎よ!』です。
「一度は読むべきSF10選」みたいなやつで
必ずと言っていいほどタイトルが上がっている作品ですが、
個人の感想ですが、表題の通りでした。申し訳ない。

舞台は24世紀。
人類は宇宙の各地に進出しており、
外惑星同盟と、内惑星連合が、戦争状態にあります。
もうひとつキーになるのが、人類に備わっている
「ジョウント」というテレポーテーション能力。

そんな背景の元、主人公のガリー・フォイルが
宇宙に漂流して、通りすがりの宇宙船に見殺しにされつつ、
なんとか生き残って、
無学の一技術者から、資本やら装備やら肩書やら学門やら
フルスペックにして復讐劇を展開するよ。

という話しです。
モチーフは『モンテ・クリスト伯』だそうです。

って聞くと、おもしろそうだなと思ったのですが。

実際に読んでみると、なんかいろいろ、ピンと来ない。

主人公の「復讐したい」想いとかいまいちピンと来ないし、
その手法も、行き当たりばったり感も、ピンと来ない。
いきなり「恋しちゃった」ってのもピンと来ないし、
「良心が」とか「虎が」とかもピンと来ない。
総じてピンと来ない。

「疾走感」というワードで評されることが多い気がしますが、
その分、惑星間戦争や社会文化や地球における政治
(あの3人がすべての決定権持ってるっぽいの、おかしくないか)
の背景設定がぼんやりしてる気がしますし、
ちょっと残念……。

ちなみに『虎よ、虎よ!』を読みながら、
ずーっと、マルドゥックっぽいなあ合わないなあと思ってました。
『マルドゥック・スクランブル』も性に合わなくて、
途中で放り出してしまったのです。
私、「疾走感」というやつが苦手なんですかね……。

(『光圀伝』も『天地明察』も大好きですが)

クライマックスに出てくるような
タイポギミックも苦手なんですよね……。
頭が固いもので。
『ロールシャッハの鮫』(スティーヴン・ホール)を
思い出しましたが、こちらは作家が元タイポアーティスト
ってことで、そんなに引っかからずに読みました。
というバイアスのかかりぐあいからして、
我ながら、頭が固いと思います。


ところで私、SFが好きだという意識はまるでないし
どう転んでもSFファンではないのですが。
(多分、「古典」「名作」というキーワードが好きなんだと思う)

「読んでおくべき」「傑作選」「名作ベスト10」みたいなやつで
よく見るタイトルは、そこそこ読んだかなと思うので、
SFファンじゃない身から見た感想でもまとめようかなと。
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