思惟石

懈怠石のパスワード忘れたので改めて開設しました。

【読書メモ】2010年6月 ①

2018-12-25 10:46:47 | 【読書メモ】2010年
<読書メモ 2010年6月 ①>
カッコ内は、2018年現在の補足コメントです。

『シンセミアⅡ』阿部和重
うん、おもしろいです。でもあと2冊あるのかあ…。
読み始めると一気に読んじゃうけど、次に手を出すのが億劫な感じ。
なんでだろう。


『死神の精度』伊坂幸太郎
短編集として読みやすくておもしろかった。
それぞれの回で、人に寄せていたり、設定が凝ってたり、
振れ幅があったのも良かった。

(主人公は、千葉と名乗るビジネスライクでちょっと変な死神。
 彼と、「死」の調査対象者たちの、6つの短編集。
 伊坂作品は、個人的に好き嫌いの振れ幅が大きいんですが
 これは好きな作品です。長編の『死神の浮力』も読もうかな。
 第57回日本推理作家協会賞 短編部門(2004)を表題作で受賞。
 2006年本屋大賞 第3位。ついでに直木賞候補にもなっています)


『ザ・スコット・フィッツジェラルド・ブック』村上春樹
フィッツジェラルドや『グレートギャツビー』には
大して思い入れが無かったのだけど、
読んでいるうちにだんだん好きになってきた。
フィッツジェラルドというよりハルキがすごい。

(村上春樹ファンほいほいの叢書、
 中央公論新社の村上春樹翻訳ライブラリーの一冊です。
 フィッツジェラルドゆかりの地を巡る紀行文、
 彼の妻でなかなか強烈な個性を持つゼルダの伝記、
 村上訳の短編『自立する娘』『リッチ・ボーイ』と年譜。
 とにかく村上さんのフィッツジェラルド愛がほとばしり溢れまくる
 一冊である。これだけ愛されるフィッツジェラルド、ホントすごいな。
 ちなみに単行本の初版は1988年。村上さんが38歳の頃の作品だそうです。
 なんか自分の年齢を顧みて考えさせられるな…)


『変愛小説集』岸本 佐知子
からだが宇宙服になってしまう病気の話しが良かった。
いきなり「木」に恋に落ちるのも良かった。

(翻訳家が自分の好みでセレクトした「変」な「愛」の短編集。
 エキセントリックな愛情や、設定がヘンテコなものも多いけど、
 なんというか、この執着する感情は、ある種の「純愛」でもある
 気がしないでもなくなくなくないな…みたいな、
 読んでるうちに「愛」がよくわからなくなったりもするけど
 とにかくおもしろかった。
 木に恋するのは、アリ・スミス『五月』
 宇宙服になるのは、レイ・ヴクサヴィッチ『僕らが天王星に着くころ』
 (この人だけ2篇収録されています))
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【読書メモ】2010年5月

2018-12-21 14:08:43 | 【読書メモ】2010年
<読書メモ 2010年5月>
カッコ内は、2018年現在の補足コメントです。


『シンセミアⅠ』阿部和重
思ってた以上に面白くて、すいすい読めた。
が!文庫上下だと思ってたら、1~4まであった!
読み切るかしら…

(第15回 伊藤整文学賞 小説部門(2004)受賞。
 第58回 毎日出版文化賞 第1部門(2004)受賞。
 『ニッポニア・ニッポン』と同じく「神町」が舞台。
 神町の歴史と、「パンの田宮」一族の歴史と、
 50人を超える登場人物による群像劇。
 って、おもしろそうですね。内容をあまり覚えてないけど…)


『黄金旅風』飯嶋 和一
なかなか進みませんでした。
とらえどころがないというか、感情移入がしにくかった。
うーん。

(『始祖鳥記』で文句を言いつつ、
 この作家のことが気になったのでしょうね。
 そして同じような感想を抱くという笑)


『吉本隆明×吉本ばなな』吉本隆明/吉本ばなな
親子対談の本。
軽い会話の中に、父による「なるほどー」と思える
ばなな論があったり、ごくごくふつーの家庭の話しが
あったりで、お得感のあるおもしろさ。


『絲的メイソウ』絲山 秋子
恋のトラバターがすごくいい。
道端に円楽が落ちてても立ち止まらないで彼の元へ!って。
恋ですねいいですね。

(エッセー集です。自虐と毒と照れ隠しみたいなものが
 良い感じにブレンドされていて、おもしろいです)


『ばかもの』絲山 秋子
友人が手土産にくれた単行本。
『袋小路の男』の方が好きだけど、悪くない。
アル中と年上女のエキセントリックな恋愛話。
ネユキの人物像が、よかった。

(友人が、我が家で酒盛りをしたさいに
 「飲み代」として持ってきてくれました。
 主人公がアル中になる恋愛小説を…。おい)

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ディック・フランシス『利腕』ハードボイルド~

2018-12-20 12:02:35 | 日記
ディック・フランシスは、イギリスの人で、障害競走の元騎手。
競馬会界隈のハードボイルドミステリで定評のある作家です。
以前から気になっていて、読もうと思っていた作家さんです。

が、

ハヤカワ・ミステリ文庫の表紙が
ものすごいダサさなのです…。
ひと昔前のオジサン好みっていうか。
これを電車で読むのは、ちょっと、勇気が要るなあ…
というレベルの。
一度、図書館で『興奮』を借りてみたんですが、
あまりの表紙のダサさに、持ち歩く勇気が出なくて
未読のまま返却してしまいました。
ブックカバーかければ良いんですけどね。

(ちなみに『ハイペリオン』も初めて手に取ったとき
 「だっさああぁぁ!!!」と思いましたが、
 なんですかね、読んでるうちに謎の愛着が湧いてくるんですよね。
 読み終わる頃には、ダン・シモンズの世界観、
 この画風以外で考えられないなあみたいな。
 作画は生頼 範義。映画ポスターとかでも有名な人でした。
 ダサいって叫んですみません)

とはいえ、そろそろ読んでおこうかなと思い。
『利腕』を読みました。
ブックカバーをかけてね。

おお、読んでみてよかった!
おもしろいです。
シッド・ハレーかっこいい。

一度、恐怖に屈服して失った何かを、
最後の最後に、ディーンズゲイトから取り返したラスト、
本当に良かったです。

あと、元妻も、元雇い主の妻も、とんだヒス女だなと思って
ムカムカしていたのですが、
まあ、元妻の言い分はわからなくもない。

この作者のシリーズで評判の良い『興奮』と『大穴』も
読んでおこうと思います。
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ハミルトン『解錠師』おもしろかった

2018-12-19 16:04:25 | 日記
ちょっとタイトルで損している気がしますが、
そんなことは関係なく華やかな受賞歴をお持ちの
スティーヴ・ハミルトン『解錠師』を読みました。

このミステリーがすごい! 2013海外編 第1位。
週刊文春海外ミステリーベストテン海外部門 第1位。
MWA賞最優秀長篇賞、CWA賞スティール・ダガー賞など
世界のミステリ賞も獲得しているとのこと。
すごいですね。

あらすじは、
8歳のときの事件がきっかけで声を失った主人公マイクルが、
ひょんなことからプロの金庫破りになってあれこれあって…
そんな自分の人生を振り返って語ります。

というあらすじだと、長いスパンでの成長譚かと思うのだけど、
実際に語られるのはほとんど一年ちょっとの出来事です。
17歳と18歳。
高校2年生の普通の少年が恋をしつつ
不穏な世界に徐々に巻き込まれてしまう話しと、
プロの解錠師として犯罪者たちと仕事をしながら
ずぶずぶ泥沼に溺れつつどうにか脱出を試みる話しが、
交互に語られています。

たった2年弱の凝縮された期間の話し。
それがまた、密度高いなあ…って感じの読み応えである。

ミステリというより、成長譚且つ恋愛ストーリーな気もするけど、
後半の疾走感はハラハラしたしおもしろかった。
読書中も楽しいですし、読後感も良い感じです。
人に薦めやすい良品。

しかしまあ、奇跡の少年で声を失っていて美少年で
絵が上手くて金庫破りもできて初恋も成就しててって、
なんかマイクルのスペックすごくないか。

あと、しつこいですが、タイトルで損してると思うけど、
原題も『The Lock Artist』なのでしょうがないのかな。
翻訳は越前敏弥。『ダヴィンチ・コード』で有名な人だそうです。
タイトルでグッと来なかった人には、
ハヤカワ・ミステリ文庫の表紙を参照するのがおススメかと。
やわらかいイラストが小説の内容やトンマナを
よく捉えていると思います。
ハヤカワ・ポケッ・トミステリはちょっとソリッドすぎないか。
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ケイト・モートン『忘れられた花園』

2018-12-19 15:23:23 | 日記
青木 純子 (翻訳)、創元推理文庫で上下巻。

第3回翻訳ミステリー大賞の受賞作。
作者にとっては第二作目の小説だそうです。売れるの早いですね。

1913年、オーストラリアに入港したイギリス船で
ひとり取り残された記憶の無い4歳の少女。
という、謎めいた導入から、2005年の現在、1975年前後、
1903年前後と、年代・場面が切り替わりながら
3人の女性の生き様を軸に、物語が進みます。

とはいえ、本格ミステリって感じではないですね。
場面の切り替わりで、ちょっとした謎の解明がブリッジになったりして、
いい具合に時空が接続して、お話しは進んでいきます。
そこそこページ数がありますが、通勤読書で細切れに読むのに
ちょうどいいテンポ感と密度の物語。

まあまあ面白く読みましたが、気になる部分も多くて、
足し引きすると、平均点に落ち着く感じかな。



以下、ネタバレの感想を書きますよ~



ミステリしすぎないのは良かったけど、
ネルの母親はメアリでは?のミスリード?寄り道?は
要らなかったですよね。
誰もそこに期待していないというか。

イライザがどうなったか、という点にも終始一貫して
想像力を働かせなさすぎではないでしょうか。
「なぜおばさまは4歳のネルを見捨てたのか」という思考から
動けないのは、ちょっとどうかと。
船に戻れない事情・事故が発生した。という仮説を
まるごと放置したままエンディングまで行くのは
不自然だと思うのだけど。

というマイナスがありつつ、3つの時代の3人の女性の物語の
並走感は良かったです。
飛び過ぎて混乱することもなく、スッと読み進められた。

まあ、星みっつ、かな。
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