思惟石

懈怠石のパスワード忘れたので改めて開設しました。

小川洋子『人質の朗読会』

2021-01-07 10:39:32 | 日記
2020年最後の読書本は、
小川洋子の『人質の朗読会』でした。
すっかり更新するのを忘れて年を跨いでしまった。

WOWOWでドラマ化されたりして話題になったので
フォーマットも有名なのかもしれませんが。
「普通の人の心の中にある経験(物語)」
の短編が、8人分(プラス1)描かれています。

その8人の設定が特殊でして。
彼らは、遠い国の辺境の地で観光中、突然、
反政府ゲリラに人質として長期的に囚われた人質。
その長い囚われ生活の中で、語り合った物語。

一篇ずつのクオリティも高いのですが、
その背景を踏まえて読むとまた違う凄みを感じます。

以下、年末のメモ。

今年最後にすごい本を読めた。

ちょっと不思議な短編集として仕上げることも可能だけれど、
作者はそこで満足しない。
なぜこのような物語を話者が紡いだのか。
そのフォーマットが、また、凄い。
話者に人質としての設定を与え、自分の中を振り向かせる。
残酷な厳しさかもしれないし、救いとなりうる優しさかもしれない。
小川洋子は本当に凄い。

”考えるのは、いつになったら解放されるのかという未来じゃない。
自分の中にしまわれている過去、
未来がどうあろうと決して損なわれない過去だ。
それをそっと取り出し、掌で温め、言葉の舟にのせる。
その舟が立てる水音に耳を澄ませる。”


個人的にはABCクッキーの話(やまびこビスケット)と
冬眠中のやまねが好きだ。
でも死んだおばあさんもB談話室も杖も花束も、みんな好きだ。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 2020年の読書ふりかえり | トップ | 今村昌弘『屍人荘の殺人』す... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

日記」カテゴリの最新記事