思惟石

懈怠石のパスワード忘れたので改めて開設しました。

魯迅『阿Q正伝・狂人日記 他十二篇(吶喊)』

2018-11-15 17:11:09 | 日記
おもむろに魯迅を読みなおしました。

といっても読んだことがあったのは、
多分、遠い昔に国語の教科書に載っていた
『故郷』だけだったと思う。
(ヤンおばさんの印象だけが残ってるけど)

竹内 好による翻訳の、岩波文庫版。
改版ですが、それでも1981年の出版。
日本における中国文化の浸透も浅かったのかな、
注釈がめちゃくちゃ多くて、ものすごく丁寧です。
丁寧すぎて、「え…、うん」みたいなことも多少あります。

新訳をがんばっている光文社古典新訳文庫からは、
藤井 省三による新訳が2009年に出ています。
こちらも評判が良いみたいで、あとで読み比べておきたいです。

魯迅の代表作でもある表題作を始めとした初期短編集。
と言っても、多作な人ではないので、
魯迅を読むイコールこの短編集、という人が多いのではなかろうか。
(あ、でも光文社の藤井版『酒楼にて/非攻』は気になる。
 おもしろそうです)

『阿Q正伝・狂人日記 他十二篇(吶喊)』は、
なんというか近代中国の悲しさ虚しさ非力さみたいなものが
文章の端々から匂い立っていて、
なんとも言い難い切ない気分にさせられます。

それはイヤな気分というわけではなくて、
ちょっと、自分の人生とか、
自分ではどうにもできない所属する社会とか
を振り返って、考えさせられるというか。

それはさておき、『故郷』は良い。圧倒的に良い。
国語の教科書で読んだときは、
こんなに良い小説だとは思えなかった。若かったもんな…。
ていうか10代にはわからないでしょ。なんで学生に読ませるのよ。
いや、名作だからですけどね。反語。

主人公と閏土(ルント−)の関係性。その次世代の関係性。
そして締めの文章。すごく良いです。

「思うに希望とは、
もともとあるものともいえぬし、
ないものともいえない。
それは地上の道のようなものである。
もともと地上には道はない。
歩く人が多くなれば、それが道になるのだ。」


作者は自序にもあるように「寂寞」という言葉をよく使うけれど、
ついでに編集の指示もあったというけれど、
それでも希望の方を向こうとする姿勢がある人だと思う。

大人になって読み返して良かったです。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 【読書メモ】2010年3月  | トップ | 佐藤亜紀『スウィングしなけ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

日記」カテゴリの最新記事