思惟石

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『医学の歴史』 門外漢でも楽しいし、世界史としても面白い!

2024-07-10 16:28:42 | 日記
『医学の歴史』
梶田昭

講談社学術文庫
Amazonの解説には「人間味溢れる新鮮な医学史」とありますが、
人間味というか、おもしろ知識エピソードが溢れている笑

この先生、元医科大学教授なんですが、
めちゃくちゃ広範囲の知識が豊富で(読書量もえげつなかろう)
医学に限らず、歴史や古典のエピソードがたくさん出てきて
門外漢でも楽しめる「医学史」になっています。

始まりが「古代の治癒神」な感じからして、
この本、当たりだな!ってなりますよね。
古代中国は伏犠、神農、黄帝(ここらへんはギリ知っている)
エジプトはイムホテプ(知らない)
ギリシアはアスクレピオス(知らない…、
でも杖と蛇が絡み合ってる医学シンボルは知ってる〜!)
と、つかみが強い笑

で、ギリシア科学の発展があって
(ギリシアの植民都市イオニアの繁栄は、科学・哲学・数学と幅広い)
ヒポクラテス(前460−375)が生まれて、
(ちなみにソクラテスと同時代人だって。へえ〜)
ローマ帝国が栄えてガレノス(129-199)が生まれる。
ガレノスは、ギリシア医学の最後の華にして、
ヒポクラテスを神聖化した人である。

わかりやすくておもしろい!

ビザンツ医学、中世のペスト禍、仏教と中国医学、
中国のヒポクラテス(扁鵲(へんせき)「韓非氏」に出る)、
ペルシア領の繁栄(ジュンディーシャープール)、
解剖学が進化したのは戦争で火薬が使われるようになったから
(イタリア戦争には有名な外科医パレ(フランソワ1世)も
解剖学者ヴェサリウス(カール5世)も従軍している)、
近代ヨーロッパの科学者にはプロテスタントが多い
(ウェーバー『プロテスタンティズムの倫理と資本主義』)、
等々。

楽しい!

感染症が解明される前夜は、
ミアスマ(瘴気)説と、コンタギオン(接触伝染)説の対立があり。
パストゥール(1822-1895)が低温殺菌を発見し、ワクチンを命名し、
コッホ(1843-1910)が細菌の発見と特定、
そして「微生物の狩人」の時代へ。
(北里柴三郎も活躍した時代。ところで新札に全然出会えない)

いやあ、医学の歴史って、人類の歴史ですよね。
そりゃそうだ、ではあるけれど。

『砂糖の世界史』や『疫病と世界史』を読んだときも思ったけど、
歴史を見る角度をちょっと変えてみるのって
面白いものですね。
現代の中東や南米の小中学校で習う「歴史」って
どんなストーリーなんだろう?
知りたくなってしまった。

ちなみにこの知識無双で縦横無尽な梶田先生、
著作があまり多くないんですよ。
そして、この本の原稿を推敲する前に亡くなってしまったそうです。
もっといろいろ読みたかった。
合掌。
コメント
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