思惟石

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『その昔、N市では』 めちゃ良い不思議な短編集!

2023-06-09 18:08:29 | 日記
『その昔、N市では』
マリー・ルイーゼ・カシュニッツ
酒寄進一:訳

ドイツの女性作家カシュニッツの短編を集めた一冊。
全15作の短編集。
ちなみに訳者の酒寄氏はシーラッハ『犯罪』を訳した人です。

カシュニッツは、1901年ドイツ生まれ、1974年没。
不思議で、ちょっと不安定で、すごく気になる世界観。
どれもこれも良いんですが、船の話しとN市が特に良かった!

以下、各篇のメモ。

「白熊」
暗闇のなかで帰宅した夫の不可解な言動。
川上弘美のクマとピクニック行く話しを思い出した。
全然ちがいますけど。
(初期作品の『神様』です。305号室にくまが引っ越してきたっていう)

ちなみに表紙も「熊」っぽくて良いんですよ。
(銅版画家・村上早さんの「おどり」という作品だそうです)

「ジェニファーの夢」
娘の不思議な夢に不安を感じる母の話。

「精霊トゥンシュ」
殺人なの?呪いなの?民俗学なの?
と混乱するおまわりさんかわいそう。

「船の話」これ、好き。
資産家の妹君が乗った船が実在しなかった。
ある日、妹からの手紙が届き、という。
不思議で不安で良い。

「ロック鳥」
部屋にでっけえ鳥が来た!という話。

「幽霊」
旅行先のロンドンの劇場で知り合った兄妹の家に
お邪魔したら幽霊だったぽいよ!
イギリス幽霊屋敷の王道感ある〜。

「六月半ばの真昼どき」
旅行から帰ったら隣人から
「あなたは死んだと言う女が来た」と言われる。
なにげに怖い。

「ルピナス」
ユダヤ人収容所に搬送される途中で逃げた少女の話。
ドイツの話をあまり書かない作者にしては珍しい。

「長い影」
旅行先で両親にも妹たちにもうんざりしてる思春期女子の話。

「長距離電話」
通話形式で物語が進む。おもしろいな。
主人公(?)の女性の魅力が全然わからないけれど。

「その昔、N市では」
これは良い。最高に良い。
「灰色の者」というゾンビを多用した街の末路。
ほどよく怖くて不思議でゾワッとする。

「見知らぬ土地」
訳者によると占領軍の兵士と市民の交流話らしいけれど、
そういう時代背景はあまりわからない書き方になっている。

「いいですよ、わたしの天使」
これは悲しい。エヴァをぶん殴りたい。

「人間という謎」
バスで隣に座った女性が変な妄想の話をする。
承認欲求の表れかな?と思ったけどそうでもないっぽい。
と言うオチがいい。

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