思惟石

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フェルディナント・フォン・シーラッハ『犯罪』おもしろい

2018-02-07 22:16:43 | 日記
タイトル通り「犯罪」をテーマにした短編集なんですが、
これ、おもしろいです。すごいです。

作者はベルリンで刑事事件弁護士として
働いていた人物。

とはいえ、こちらは実際の事件をモチーフにした
ものではありません。
「元FBI捜査官の事件簿」みたいな
血生臭さや怖いもの見たさのものではありません。

ついでに言うとミステリーという感じでもない。

じゃあ、なんなんだ、というと、
人間の物語、なんでしょうかね。

ストーリーの核は、人が罪を犯したお話しです。

でもそこには、罪があって、法があって、人がいて、
それらが絡み合って、とても複雑で不思議で
人間というものの本質的な不可解さがある物語です。

文庫化の際に序文が加えられたらしいのですが、
「私たちは、生涯薄氷の上で踊っているのです」
から始まる一説が、すごく良いです。
文学的なような、妙に真理を突いた写実感があるような。

どの短編も、人の「業」みたいなものや
一概に説明できない複雑さを捕まえていて、
不思議な読後感を味わえます。

そして、それ以上に味わい深い
秀逸なストーリーテリング。

『タナタ氏の茶盌』では、
非行少年の写実から物語が始まります。
これ、どう展開して茶盌に行くんだろう、って
思わず引き込まれます。
全編そんな感じで、本のどのページを開いても、
続きが読みたくなる巧みな構成です。

序文の上手さからもわかりますが、
文章や表現も端的で上手で、
個人的には、短編集では珍しく一気読みしました。
(大抵、波があって中断したりするんですよね)

この、人の心の襞を見つめる作者の視点、
すごいな、怖いな、と思いながら
一気読みしてしまいました。
すごいな。

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