鮎川俊介の「幕末・明治の日本を歩く」

渡辺崋山や中江兆民を中心に、幕末・明治の日本を旅行記や古写真、研究書などをもとにして歩き、その取材旅行の報告を行います。

「企画展 渡辺崋山・椿椿山が描く 花・鳥・動物の美」について その5

2013-10-29 05:51:34 | Weblog
谷文晁が、自分が見た作品や風景、器物をスケッチし、縮図冊として保管し、後に作画の参考としているように、崋山も多くの縮図冊を作成し、それを保管し、作画の参考にしています。崋山の縮図冊としては、「客坐録」や「客坐掌記」などが知られていますが、それに目を通してみると、崋山がさまざまな作品を模写し、また日常生活や旅先等で興味・関心を抱いたものを、丹念に記録しスケッチしていることがわかります。その興味・関心の範囲は実に幅広い。たとえば「客坐録」の「天保二年八月全楽堂」を紐解いてみると、花鳥や人物のスケッチ以外に、農民の農作業風景が描かれており、崋山はそれぞれの農機具なども克明にスケッチしています。これなどを見ると、崋山は農民たちの農作業風景よりも、むしろ彼らが使っている農機具そのものに興味関心を持ってスケッチしていると思われるほどです。「運派塚 三尻村」というスケッチがあることを考えると、これらの農作業風景や農機具等のスケッチ類は、崋山が藩祖の旧領調査のために訪れた、武州中山道熊谷宿近くの三ヶ尻村あるいはその近辺で描かれたものではないかと推測することができます。 . . . 本文を読む