素浪人旅日記

2009年3月31日に35年の教師生活を終え、無職の身となって歩む毎日の中で、心に浮かぶさまざまなことを綴っていきたい。

『犬百人一首』

2012年02月02日 | 日記
 先日、いつものようにTSUTAYAに定期購読の“和時計をつくる”を受け取りに行った時、NHKのコーナーでカルチャーラジオの“文学の世界・江戸庶民のカルチャー事情”というテキストに目が留まった。今、強く関心を持っているのが明治以前の文化。特に、江戸時代は興味深いのでとびついた。

 1月から3月までの12回シリーズで、それぞれのテーマは次のようになっている。
第1回:江戸の読書事情    第2回:雑学・教養の宝庫「往来物」  第3回:神様はまず天神様     第4回:男性は敵討ちが好き
第5回:和歌はまず「百人一首」第6回:物語はまず「源氏物語」    第7回:わが住む地にも「うた」を 第8回:大江戸ベストセラー
第9回:旅する江戸庶民    第10回:小さい秋を見つけよう  第11回:江戸の同好ネットワーク 第12回:江戸庶民は物知りだった?


  第1回の“江戸の読書事情”では文芸を楽しむための最低限の知識・教養が必要であり、その大前提となる“文字が読める”ということがどれくらい普及していたのかについて具体的な資料をもとに解説されている。

 大阪の“本屋為助”が安堂寺橋に出店するにあたって作成された「引き札」や歌川国貞画「栄草当世娘」の中にある裕福な家のお嬢様の手習いの絵などを見るとずい分教育熱心であったことが伝わってくる。娘の床に置かれた「女今川」や「女大学」は手習いのテキストの代表的なものであったらしい。その手習いを休憩して手にしているのが「百人一首」。

 当時「百人一首」も基礎教養として広く行き渡っていたという。それは「百人一首」をパロディ化した「犬百人一首」の存在が証明している。パロディ、風刺などのジョークを理解、楽しむためには、素になっている歌、物語、事象を知っている必要があるからである。

 テキストでは、本屋で売っている“草双紙”は安いので、買う人がうれしいという意味の「犬百人一首」を紹介している。

本屋安売(ほんやのやすうり)
 売るからに草双紙(くさぞうし)でも安ければ むべ買う人のうれしといふらむ 


この歌は、小倉百人一首の文屋康秀(ふんやのやすひで)の詠んだ
吹くからに秋の草木のしをるれば むべ山風を嵐といふらむをふまえてつくられている。

 和歌のみならず詠者をふくめて小倉百人一首をもじっていることにオッ!と思い。百人すべて?という素朴な疑問が湧いた。いろいろ調べてみたら
HARP:Hirosima Associated Repository Portal(広島県大学共同リポジトリ)に呉工業高等専門学校での授業で使われた「犬百人一首」の全注釈付きの報告を見つけた。すべての「犬百人一首」に、【本歌】【語釈】【現代語訳】【補説】があるのでよくわかる。30枚あまりになるがプリントアウトして楽しませてもらった。
 


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