長谷川晶一『プロ野球12球団ファンクラブ全部に10年間入会してみた! 涙と笑いの球界興亡クロニクル』

2018年03月17日 | スポーツ
 長谷川晶一『プロ野球12球団ファンクラブ全部に10年間入会してみた! 涙と笑いの球界興亡クロニクル』を読む。

タイトルの通り、「ファンクラブの大人買い」という、なかなかマニアックな突撃企画。

 12球団それぞれにあるファンクラブの特典や、オリジナルグッズなどを比較検討し、レビューするという作りだが、これがなかなかに興味深かった。

 こういうところでメンバーになると、「タダ券もらえる」のイメージが強いが、実際のところは各球団、集客のためにそれ以外も、あれやこれやと仕掛けを考えているのだ。

 たとえば、グッズの充実から各種サービスの総合力は西武ライオンズがダントツで、これは商売上手な西武グループのイメージ通りか。

 阪神が意外と(?)事務処理の手際や客対応がグッドで、ジャイアンツはさすが球界の盟主ということで、お金もかけて企画にもリキはいっている。

 一方、横浜はチームの低迷と比例するように、ファンクラブの質も低空飛行(ただしDeNAになってからは大きく改善)。日本ハムは悪くはないけど良くもないという、キャラが立ってないのがレビューしにくい。

 中日は悪くないけど、「前監督(落合博満さんのこと)の悪口」を冊子に延々と書き連ねるのはいかがなものか。

 などなど、実際に金を払って入会してみないと知る機会のないトピックスが、いちいちおもしろい。

 中には、野球ファンでもない私でも「うーん、これはほしいかも」なんて思わせるオリジナルグッズがあったりして、食指も動いてくる。

 たとえば、巨人だと「黒ひげ危機一髪のジャイアンツバージョン」。

 なかなかマヌケでいい。他のところでなく、球界の盟主がやっているところがキモであろう。樽の中にいるのが、渡辺恒雄さんでないところが残念ではあるが。

 カープだとやはり、「カオシマ」シャツ。

 これはなんのことかといえば、カープは毎回オリジナリティーあふれるアイデアが売りというか、感性がおかしいというか、独特の不思議なグッズが特徴。

 ある年など、ユニフォームのホームとアウェーでそれぞれ違う「カープ」とロゴの入ったバージョンと、「広島」とあるバージョンを左右半分ずつ組み合わせたオリジナルユニを制作したのだが、なんせ違うロゴの半分ずつなので、右半分が「CA(RP)」左半分が「(HIR)OSHIMA」。

 で、それをくっつけるから胸の文字が「CAOSHIMA」になって、それどこの国のチームやねん! と。正直、意味はよくわからないが、制作側のいちびりぶりは伝わってくる。

 ちなみに、カープのファンクラブの名前というのが

 「吾輩ハ鯉(Carp)デアル」。

 いや、漱石、広島関係ないやん! 鯉と猫も全然かかってへんし。こういうヘンチクリンなノリが、カープファンクラブの味らしい。変なチーム。

 中日には日本で唯一「ファンクラブのマスコットキャラ」がいるそうな。

 野球ファン以外にも結構知られているドアラは「球団のマスコットキャラ」だが、ドラゴンズにはファンクラブにもゆるキャラがいるというのが豪華だ。

 しかも、そのデザインが宮崎駿(!)というのだから、なにげにすごいではないか。全然知らなかった。

 名前は「ガブリ」。もちろん、スタジオジブリとかかっているわけですが、それはいいとして、そのエリートな出自にもかかわらず、知名度的にはファンクラブの会員以外、ほとんど知られてないのでは?

 デザインも別に、ジブリ色もさほどなく普通というか、これだったら大枚はたいて(るはずでしょ、きっと)宮崎駿に頼むより、中日新聞のデザイン担当の人でも間に合った気もしないでもない。

 そんな、おもしろグッズや「ファンクラブあるある」なども愉快だが、この本のなにより良いところは、著者が全力でこの企画を楽しんでいることであろう。

 もともとはただの趣味だったそうだから、それもむべなるかなだが、著者のワクワク感が読んでいるこちらにも伝染して、なんだか楽しくなってくる。

 野球ファンのみならず、なんか最近元気がないなーという人にもオススメ。本全体からパワーがみなぎっていて、ちょっとテンションが上がりますよ。





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