前回(→こちら)の続き。
第二外国語はなにを選ぶべきかで、私は人生の先輩として、こういう真理を示した。
「フランス語はやめとくのが無難」
オシャレなイメージで軽く選んでしまうと、後悔は必至。
こんなもん、どうせ身に付かないんだから、わざわざ自分でハードルをあげることはない。
一応ことわっておくが、私は別に
「フランス語は役に立たない」
「つまらない言語」
と言っているわけではない。
当講座の主眼はあくまで
「単位が取りやすい(私の時代には取りやすかった)かどうか」
にあるだけで、フランス語(もちろん他の諸言語も)自体を、くさしているわけではありません。
ラクできるかどうか、というだけのちょぼこい話なのです。念のため。
では、フランス語以外ではどんな言語があるのかと問うならば、次に聞いたのがこんな意見。
「ロシア語取るヤツ超絶勇者」
これは、私にもなんとなく、わかるところはあった。
というのは、私もドイツ語学習者の端くれとして、千野栄一先生の『外国語上達法』。
また講談社現代新書の『外国語をどう学んだか』、など様々な「外国語学習法」読んだのであるが、そこに共通して書かれていることが、
「ロシア語って、マジ激ムズ」
ロシア語といえば、まず文字がわからない。
我々がなじみがある外国の文字といえば、漢字とローマ字であるが、そのローマ字アルファベットでも、ドイツ語のウムラウト(aとかuの上に点々がついているアレです)を見ただけで「げ、なにこれ」と拒否反応を示す人もいる。
そこに、あの宇宙の言語みたいなキリル文字。
Rを反対にしたみたいなのとか、どうやって読むんやーと、まず第一印象からして取っつきにくい。
おまけに文法は難解だし、名前が男女で変化するし、とにかく学びにくいことこの上ない。
なんといってもおそろしいことに、ロシア語は栄えある
「世界三大難しい言語」
に入閣しているのだ(他の2つは諸説あるが、ハンガリーのマジャール語と日本語、次点にギリシャ語などが入る)。
おまけに使うところもない。
今どきトルストイやドストエフスキーもないもんだし、共産主義もお亡くなりになった。
そんなもん、だれが勉強しますねんと。
しまいには、外国語学習者には
「ロシア語ノイローゼ」
というのがあるとの噂まで聞かされたもの。
あまりの学習のしんどさに、学生がついには精神的にやられてしまうらしい。
ちなみに留学生の話によると、彼らには
「日本語ノイローゼ」
というのもあるそうな。
漢字や敬語、男女の話し言葉の乖離など、とにかくややこしい日本語学習とタメをはれるというのだから、ロシア語ってもう大変。
このような経緯があるので、ロシア語は一番人気がなかった。
嘘か本当か、私の代はこの話が広まりすぎて、履修者少なすぎでクラスが開けなかったとか。
それくらいに、敬遠されていたのだ。かわいそうだなあ。
そんな中、わざわざロシア語を取るヤツは酔狂というか豪気というか、とにかく勇者である。
「敵が強ければ強いほど燃える」
という、少年マンガ的性格でないと、やめておいた方が無難であろう。
ところが、世の中にはそんな勇気ある者というのがいるもので、友人トサボリ君は、数少ない絶滅危惧種のロシア語履修者であった。
彼曰く、
「勉強はたしかに大変やけど、数が少ないから先生らは、すごくやさしい」
とのことで、
「けっこう点数には下駄はかせてくれた」
なるほど、困難の中、あえて少数派に飛びこむとそういう展開もあったか。
そら、先生もうれしいよなあ。
「ロシア語を取ってくれてありがとう」
涙ながらに、間違いだらけの課題でも「可」をくれたそうだ。
まさに、人情の勝利であるといえよう。
(中国語編に続く→こちら)