論理の芸術 湯川博士&門脇芳雄 『秘伝 将棋無双 詰将棋の聖典「詰むや詰まざるや」に挑戦!』 その2

2021年10月06日 | 詰将棋・実戦詰将棋

 前回(→こちら)に続いて、『秘伝 将棋無双 詰将棋の聖典「詰むや詰まざるや」に挑戦!』(湯川博士著 門脇芳雄監修)について。

 江戸時代の名人である三代伊藤宗看の創った百題の図式集『将棋無双』。

 詰将棋ファンなら、だれしもが知っているが、一般には、いやさ市井の将棋ファンにも、その実態は知られていない。

 だが、この『秘伝 将棋無双』を読めば、その奥深さ、そして何百年も前に作られたとは思えないほどの、おそろしいほどのレベルの高さを、まざまざと見せつけられることとなる。

 以下ネタバレになるんで、『将棋無双』を自力で解いてみたい人(いるのかな?)は飛ばしてほしいが、各作品の手順がきれいなだけでなく、



 「打ち歩詰め回避」

 「中合い」

 「ならずもの」

 「馬鋸・竜鋸」


 なんていう、ハイレベルな詰将棋に出てくるトリッキーな筋が出てくるところからが、この作品集の本領。

 たとえば、こんな問題で、これは「将棋無双 第21番

 

 

 

 初手から、▲72銀、△同玉、▲52竜、△62歩、▲73歩成と自然に追うと、△81玉、▲91角成、△同玉、▲82銀、△92玉、▲93歩打ち歩詰。

 

 

 これでダメなんだけど、ここで詰将棋独特のトリックが出る。

 打ち歩詰め回避には、「あえて玉の逃げ道を作る不成」が手筋。

 ▲52竜、△62歩合に、▲73歩不成がある!

 

 

 

 実戦では、まず間違いなく出てこない形だが、なんとこれで詰みなのだ。

 以下、△81玉、▲91角成、△同玉、▲82銀、△92玉、▲93歩。

 

 

 

 ▲73にいるのが、と金でないため、ここで△82玉とできるのが、歩不成の効果。

 

 △82玉▲62竜、△93玉、▲94歩、△同玉、▲64竜、△93玉、▲94竜、△同玉、▲84金まで。

 

 

 

 

 これを見たとき、まさにのけぞりましたよ。

 「歩不成」なんて、どう見たってただの誤植にしか見えない。

 それが唯一無二の正解なんだから、ちょっと常軌を逸している。

 なんというか、あきれてものが言えません。すごい作品だ。

 

 (「歩不成2連発」編に続く→こちら




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