チョイ悪逆転術 山崎隆之vs中川大輔 2009年 第57期王座戦 挑戦者決定戦 その2

2024年06月08日 | 将棋・シリーズもの 中編 長編

 前回の続き。
 
 2009年、第57期王座戦挑戦者決定戦

 中川大輔七段山崎隆之七段との一戦は相掛かりから、両者らしい力戦模様の戦いになっている。

 


 
 
  

 山崎が▲36にくり出して、△33桂悪形を強要すれば、中川はその間に金銀をくり出し、△14歩から△13角で上部からの殺到をねらう。

 ここから先手は▲24歩△同歩手筋の打ち捨てで△13角を緩和させ、▲45歩△56歩▲65歩△53銀
 
 そこで▲79玉と自陣に手を入れ、ねじり合いの時間が始まった。

 

 

 

 

 何度見てもステキな中川先生。

 

 そこから駒がぶつかり合って、この局面。
 
 
 
 
 
 
 中川が△64銀と上がったところ。
 
 自陣がうすくなって指しにくいが、次に△75銀から△86歩が、かなりのきびしさ。
 
 後手の攻めがすべて良いところに利いており、どう受けるのかというところだが、ここからの山崎は軽快だった。

 

 


 
 
 
 

 ▲53歩と打つのが、筋中という一着。
 
 放っておくのは気持ち悪すぎるが、かといってこれが、どう応じても味が悪いという困った
 
 △同銀引はありえないし、△同銀上は自陣がうすくなる。
 
 かといって△51歩は利かされすぎだし、なにより歩切れになってしまっては、今度は攻めの方が心配になってしまう。


 山崎といえばNHK将棋講座でもおなじみの「ちょいワル逆転術」だが、いかにもそれっぽい雰囲気。
 
 いやー、これはマジで悩む
 
 中川はかまわず△75銀と出るも(きっとすごい駒音だったに違いない)、そこで今度は▲76金打の強防。
 
 
 
 
 
 
 攻めを呼びこんでいるようだが、このパワーショベルによる重たいブロックで、先手陣は意外と寄らないのだった。
 
 ▲53歩の借金を残す後手は、攻め続けるしかないと△86歩
 
 ▲同金上△同銀▲同金△57金の食らいつきに、▲55角と出るのが、すこぶるつきに感触の良い手。
 

  
 
 

 フトコロを広げながら、8筋で目標にされそうなを飛車取りの先手で、大海にさばいていく。

 ▲53歩のタラシで嫌がらせをし、やや無理気味に動いてきたところをいなしていき、敵の戦線が伸び切ったところで、その裏をついて一気のカウンター

 このあたりは、山崎の戦上手なところが発揮されているところだ。 
 
 △64銀と必死の防戦にも▲73銀と飛車取りに打って、△92飛▲64銀成△同歩
 
 そこで▲72歩がまた軽妙手で、攻めがつながっている。
 
 
 
 
 
 
 
 図は▲72歩に、△51歩と打ったところ。
 
 局面は山崎勝ちの流れだが、中川ものタイトル戦を前に、簡単にはまいらない。

 底歩一発で「ねばりまくってやるぞ!」と宣言しているのだが、ここで三たび軽妙手が飛び出して、山崎勝ちが決まるのだ。
 
 
 
 
 
 
 
 ▲52歩成△同歩▲83銀先手勝勢
 
 打ったばかりの底歩を無効化させる歩の成り捨てが、やはりこの際の手筋だった。
 
 △同玉とは指し切れないから△同歩だが、これで飛車を取りに行けば、後手玉は受ける形がない。
 
 一方の先手玉は右辺から攻められても、8筋9筋の非常階段に逃げこめば、まず捕まらない。
 
 中川は△31玉から執念の逃走劇を見せるが、▲23歩と退路封鎖し、以下丁寧な寄せで後手のねばりを振り切った。
 
 こうしてついに、待ちに待った山崎隆之のタイトル戦登場となった。
 
 ようやっとという感じだが、これはもちろん、まだまだ道半ば
 
 このレベルの棋士だと、挑戦だけして「おめでとう」とはならない。「取ってナンボ」なのである。
 
 しかし、それが簡単ではないのが、皆も知るところ。
 
 待ち受けるのは最強の男である羽生善治王座
 
 しかも現在、王座を17連覇中という、とんでもない看板を引っ提げての登場だ。

 
 (続く

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