天皇条項について、説明します。
自民党草案はこうなっています。
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第一章 天皇
(天皇)
第1条 天皇は、日本国の元首であり、日本国及び日本国民の統合の象徴であって、その地位は、主権の存する日本国民の総意に基づく。
(第2条略)
(国旗及び国歌)
第3条 国旗は日章旗とし、国歌は君が代とする。
2 日本国民は、国旗及び国家を尊重しなければならない。
(元号)
第4条 元号は、法律の定めるところにより、皇位の継承があったときに制定する
(天皇の権能)
第5条 天皇は、この憲法を定める国事に関する行為を行い、国政に関する権能を有しない。
(天皇の国事行為等)
第6条 天皇は国民のために、国会の指名に基づいて内閣総理大臣が任命し、内閣の指名に基づいて最高裁判所の長である裁判官を任命する。
(2~3略)
4 天皇の国事に関するすべての行為には、内閣の進言
を必要とし、内閣が責任を負う。ただし、衆議院の解散については、内閣総理大臣の進言による。
5 第一項及び第二項に掲げるもののほか、天皇は、国又は地方自治体その他の公共団体が主催する式典への出席その他の公的な行為を行う。
(第7~8略)
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元首については、自民党の改正理由に、「天皇が元首であることは紛れもない事実」とありますが、憲法学説ではむしろそれとことなる考えが多数であり、立論の出発点に問題があります。
元首の要件で特に重要なものは、外国に対して国家を代表する権能(条約締結とか、大使・公使の信任状を発授する権能)であるが、天皇は外交関係では・・・・形式的・儀礼的行為しか憲法上は認められていない。したがって、伝統的概念によれば、日本国の元首は、内閣または内閣総理大臣となる。(岩波・憲法)
日の丸・君が代は、多くの国民は違和感をもっていないかもしれません。しかし、そう感じない人がいることも事実です。
それならば、ことさら憲法に明記すべきことではありません。
元号は、今の元号法(昭和54年法律43号)と同じです。あえて、憲法に格上げする必要もないものです。
進言という言葉ですが、進言という言葉は本来、目上の者に対して意見を述べるときに使う言葉です。上下関係を意識させることは、天皇の権能を強化し、国民主権を後退させることでしょう。
草案第6条第5項で、天皇の公的行為を新たに規定しています。天皇の権能の拡大につながりかねません。