小林紀興の「マスコミに物申す」

第三の権力と言われるマスコミは政治家や官僚と違い、読者や視聴者の批判は一切無視、村社会の中でぬくぬくと… それを許せるか

実効法人税率の引き下げでは、日本経済の活性化は期待できないという、それなりの理由。

2014-06-25 08:01:28 | Weblog
 安倍総理が昨夜(24日)、首相官邸で記者会見を行い、同日の臨時閣議での「新成長戦略」の決定を受け、「今後、成長戦略を大胆にパワーアップさせていく」と胸を張った。
 成長戦略には、成果主義賃金制度(残業代ゼロ政策)の導入、混合医療の適用範囲の拡大、外国人労働者の活用、JA全中を中核とする硬直化した農協体制の改革など盛りだくさんの内容が盛り込まれた。が、これらの成長戦略の核と位置付けているのが「実効法人税率の引き下げ」で、安倍総理は「来年度から数年間かけて実効税率を現在の約35%から20%台に引き下げる」とした。
 これらの成長戦略は、すでに方向性が打ち出されたものばかりで、特に目新しいものはないが、閣議決定で確定したことの重みが加わった。
 私はこれまで、成果主義賃金制度の導入については条件付きで支持するブログを複数回書いてきたし、混合医療の全面的導入についても一刻も早く推進すべきだと主張してきた。外国人労働者の活用と、農協改革については「もう少し具体的内容が見えてきたら書くことを読者にお約束してきた。その約束は必ず果たす。現時点で言えることだけ書いておこう。
1.外国人労働者の活用…現在は技能実習生制度の下で限定された職種(建設や農業など)にのみ認められているが、一定の条件を満たせばあらゆる産業分野で認めるべきだと、私は考えている。ただし、女性労働力の活用、若年労働者の「正規社員」の壁を厚くしている企業に対する罰則を科すること、同一労働同一賃金制を完全に原則化し、外国人労働者が過酷な条件下でこき使われている実態に対する救済策を策定することなどをとりあえず考えている。
2.農協組織の改革については、私は1991年11月に青春出版社から上梓した『日本が欺くコメ、ブッシュが狙うコメ』で、農協組織が小規模・零細農家を食い物にして組織の拡大を図ってきたことを明らかにしたことがあるが、自民党農水族の抵抗をどれだけ排除できるかの視点で具体策が提案された時点で書きたいと考えている。実は、この著書は書店ではあまり売れなかったが、テレビ出演や講演の依頼が一番多かった本である。全中が発行している新聞からは酷評されたが…。

 たった今ワールド・カップ1次リーグの最終戦が始まった。いま時々テレビに目線を走らせながらブログを書いている。日本が決勝リーグに進出できる可能性は、コートジボワールがギリシャに負けるか引き分けることが絶対条件である。
 メディアは日本がコロンビアに勝利することを「絶対条件」としているが、これは間違い。野球を知っている人は理解できると思うが、終盤の優勝争いが激化してくると「マジックが点灯した」とか「消えた」あるいは特定のチーム
について「自力優勝はなくなった」といった報道がよくされる。「自力優勝がなくなったチーム」が優勝するための「絶対条件」は、そのチームが残り試合を全勝することではない。ライバルのチームが取りこぼして、再び「自力優勝の可能性が復活する」ことが、そのチームにとって優勝戦線に残れる絶対条件なのである。日本が強豪コロンビアに100点という大差をつけて勝ったとしても、コートジボワールがギリシャに1点差でも勝利すれば、最大の指標である勝ち点で日本はコートジボワールに絶対追いつけない。政府が「絶対条件」などと定義したわけでもないのに、メディアがそろって「日本がコロンビアに勝つことが絶対条件」としていることに、疑問を感じる人がメディアにはいないのだろうか。(※いま、ちらっとテレビに目を走らせたらコロンビアに先制点をとられたようだ。日本の可能性は、大学の数学教授がスーパーコンピュータで計算したら、天文学的確率になっているだろう)

 本題に戻る。安倍内閣の「実効法人税率引き下げ」政策である。私は昨夜NHKのニュースを見たあと某新聞社の読者窓口に「実効税率」とはどういうことを意味するのかをきいた。ウィキペディアで調べてみたが、かなり難しい計算が必要なようで、まったく理解できない。私が知りたかったのは税制は国によって違うので、仮に日本の法人税制を他の主要国の税制に当てはめて計算した場合、他国の法人税率は日本と比べて有利になるのか不利になるのかが知りたかったのだが、結局分からなかった。単純に名目税率を比較しても意味がないからだ。企業が稼いだ利益から、「引当金」などの名目の控除がされているから、実効税率という以上、そういう控除がなかったとして利益の何%が課税されているのかの国際比較をしてくれないと、私には判断のしようがない。
 実は「実効税率」という言葉に私が引っかかったのは、竹下内閣時の消費税導入、橋下内閣時の消費税増税の際、政府はウソをついていた。そのウソをメディアが「意図的に暴くことをやめた」とまでは私も考えてはいないが、少なくとも理解力がゼロに等しかったことだけは指摘しておきたい。

※いま、サッカーは前半終了直前に岡崎がシュートを決めて同点に追いついた。一方ネットでギリシャ―コートジボワールが1点取って前半を終了した。スポーツは「下駄を履くまで分からない」というが、日本に「自力優勝」の可能性が生じた。この時点で、先に述べた「絶対条件」は、もしギリシャがこのまま1点差で勝ってくれれば、日本がコロンビアに勝利することに変わった。

 自民党政府は消費税導入に際して、日本の高額所得者に対する累進課税は過酷すぎる、として高額所得者への課税の軽減化と引きかえに消費税を導入・増税してきた(※今年4月の消費税増税の目的は社会福祉制度を維持するためであり、だからおそらく世界で例を見ない増税に対する国民の支持があった)。が、その高額所得者に対する累進課税が過酷すぎる、という当時の政府説明がウソ
だったことを安倍内閣がばらしてしまった。
 私は、安倍内閣が高額給与所得者に対して2段階に分けて給与所得控除を減額すると発表した時、すぐそのことに気がついてブログを書いた。が、私のブログはメディア関係者や政治家のかなりの人たちが読んでいるはずなのに、竹下・橋下内閣のウソを告発しなかった。安倍内閣がばらしているのにだ。(※たった今後半が始まった。ニッポン、がんばれ!)
 安倍内閣が高額給与所得者の「給与所得控除」を減額したので調べてみたが、給与所得控除は累進的に控除額が増額する制度になっていることが分かった。簡単に言えば、年収500万円のひとより年収1000万円の人の方が給与所得控除額がはるかに大きいのだ。ある意味ではそうした高額所得者に対する優遇税制によって「過酷」とされてきた日本の累進課税制のバランスをとっていた、と言えなくもない。
 日本の大きなメディアは海外主要国に総局や支局を置いている。当然現地人も採用している。その人たちに、日本の税制を適用した給与を払っているのか。そんなことはありえない。現地人に対する給与だけでなく、海外に転勤している日本人社員の給与も、その国の税制に従って支払っているはずだ。だからメディアは、竹下内閣・橋下内閣の「日本は高額所得者に対する課税が過酷だ」という主張のウソが分かっていたはずだ。いや、ひょっとしたら、日本政府のウソに気づかないほど無能な記者を海外に転勤させるのが、日本のメディアの人事方針なのかもしれない。
※いま後半に入ってすぐ、コロンビアにまたリードを奪われた。いったん灯った日本の「自力優勝」の可能性はまた消滅した。自力優勝どころか「他力本願」も危うくなった。でも、まだ時間は残されている。がんばれ、ニッポン!
 そういうわけで、安倍内閣が日本企業の競争力を高め、また海外からの企業進出への誘い水に、実効法人税率の引き下げがなるのかどうかの不信感がどうしてもぬぐえない。消費税導入時に自民党政府はウソをついた前歴があるからだ。
 実効法人税率を引き下げるには、まず主要国(米独英仏伊韓など)の法人税の仕組みを明らかにして、いったん同じ基準に変換して日本の実効税率と比較すべきだろう。そういう手順を踏んで初めて日本の法人税制の見直しも含めた実効税率の引き下げを行うべきだろう。その肝心の説明や各国の税制とのフェアな比較検証作業なしに、法人税だけを引き下げ対象にするというのは、またウソにまみれた税制改正につながりかねない。
 かつて日本はバブル景気と、その後の「失われた20年」を経験した。バブル
景気の原因はいろいろ検証されているが、経済学者たちが意図してか、あるいは頭が悪いためか、金融緩和のせいだとか、土地神話が強調されすぎたせいだとか、東京がアジアの金融センターになりオフィスが圧倒的に足りないといったうわさをだれかが流した(長谷川慶太郎氏という説が有力)とか、さまざまな理由があげられているが、肝心な問題に背を向けている。
※いまコロンビアに3点目が入った。もうギリシャを応援しても無駄な状況になってしまった。まだ試合は続いているが、日本が絶望的状況になったことは否定しようがない。
 それは、カネがないところでは絶対にバブルは生じないという基本的な経済原則である。現在中国のバブルがはじけつつある状況が報道されているが、世界第2位の経済大国にのし上がった中国のバブルが崩壊したら、世界経済がどれだけ大打撃を受けるか、安倍内閣はその日に備えた手を講じるべきだろう。※コロンビアに4点目が入り、点差は3に広がった。NHKのアナウンサーは「日本は苦しい状況になりました」と悲鳴を上げたが、苦しい状況どころか「心肺停止」状態だ。
 はっきり言って「バブル景気」はバブルを生み出すだけの豊富な資金力がなければ絶対に実現しない(※試合終了。日本は1次リーグで敗退が決定。残念)。そしてバブルを生み出した豊富な資金力は、消費税導入・増税と引きかえに実行に移された高額所得者への課税軽減政策であった。高額所得者は、すでに必要なものはすべて持っている。有り余った可処分所得がどこに向かうか、子供でも分かる話だ。彼らが飛びついたのは銀行預金より有利な株や不動産やゴルフ会員権や絵画などの芸術品、貴金属といったたぐいである。これらのうち、芸術品や貴金属類は国際相場が形成されており、バブル時代でも日本だけの事情で高騰することはないが、株や不動産、ゴルフ会員権は日本固有の事情で相場が左右される要因が大きい。一時は東京都23区の時価総額でアメリカ全土が買えるという、常識から考えたらありえないほどの状況になり、海外からも日本への投資が急増した。バブル景気の本当の理由はそこにあったということを経済学者やメディアが指摘しないから、安倍内閣は実効法人税率を引き下げたらどうなるか、を考える思考力を失ったままとしか言いようがない。
 日本経済新聞の23日「電子版」によれば、企業の内部留保が増え続け、2013年度には304兆円と過去最高を更新した。もちろん企業はその余剰資金を銀行に預けたり金庫にしまっているわけではない。その内部留保がどこに向かっているのか。大和総研の調査によると「海外企業への投資」に向かっているようだ(日本経済新聞)。
 そういう傾向が大企業中心に定着しているとなると、実効法人税率を引き下げても、日本経済の活性化に結びつくのかという疑問が当然生じる。むしろバブル景気の原動力になった高額所得者の可処分所得の増大と同様、法人の内部留保が膨れ上がり、そのカネが海外に流出して、かえって日本経済活性化の足を引っ張りかねないという危惧が生まれる。安倍内閣は、そうなる可能性も織り込み済みで法人優遇税制を実行に移そうとしているのだろうか。
 政府の成長戦略の中には、「企業が内部留保をため込むのではなく、新たな設備投資などに活用していくことが期待される」と盛り込まれている。言っておくが、企業は内部留保を「銀行預金や金庫の中に」貯めこんだりしていない。そんなバカな経営者はたちまち株主総会で罷免される。
 実効法人税率の引き下げというアメをしゃぶらせるのなら、政府は企業の内部留保の使い方にも目を光らせ、使い方によってはムチをふるうことも成長戦略に盛り込まないと、モラルのひとかけらもない日本企業がまたバブル景気を演出しかねないことに気付くべきだ。
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