実際に実現するかどうかはわからない。が、6月12日、NHKは「ニュース7」で国会での岸田総理の並々ならぬ決意表明を報道した。NHK によれば、岸田総理の発言趣旨はこうだ。
「マイナンバーカードと健康保険証の一体化をめぐり、12日の参議院決算委員会で、野党側が今の健康保険証の存続を求めたのに対し、岸田総理大臣は一体化が進むことで、より良質な医療を提供することができるようになるとして、来年秋の廃止に向けて取り組みを進める考えを強調しました」
岸田総理は来年秋には今の健康保険証を廃止してマイナンバーカードに一本化するつもりだ。すでにマイナンバーカードに記入された保険情報を読み取る装置を設置しているクリニックもあるが、「うちはそんなことやれる余裕がない」と読み取り装置導入に後ろ向きの小さなクリニックや調剤薬局も少なくない。
実はマイナンバーカードは「国民皆背番号カード」である。政府は過去、何度も国民皆背番号制の導入を試みてきた。が、その都度野党や国民の反対で法案は潰されてきた。
が、いま簡単に国民皆背番号制度のツールとしてマイナンバーカードが導入されている。実は政府にマイナンバーカード導入のきっかけを与えてしまったのが私だ。忸怩たる思いもあるが、政府による「悪用」は許すことが出来なという思いで、緊急告発することにした。
●自転車事故で大けがをして救急車で搬送された病院で~
私が自転車で転倒し、左手小指とこめかみに大けがをして救急車を呼んだのは2012年の12月(日にちは覚えていないが、午後9時前だった)。救急車の職員が対応できる病院を探してくれて私立の医学大学系の総合病院に搬送してくれた。その日はたまたま整形外科医が当直だったからのようだ。
搬送先の病院ではすぐにMRIでこめかみ個所の画像を撮影し、左手小指のほうはレントゲン撮影してくれた。指は骨折していなかったが皮膚がほぼ半分以上めくれてしまっており、直ちに縫合手術をしてくれた。「完全に皮膚がくっつくかどうかは分からない」との説明は受けたが、手術が終わった後「今日は形成外科医はだれもいませんから、いったんお帰りになって明日形成外科に来てください」と言われた。
こめかみ部の骨折は、私は頭蓋骨だと思っていたが、頬骨の一部だったようだ。その個所の手術は形成外科の担当らしい。
担当がどうであれ、頭の骨の骨折だ。私は「今日対応できないにしても、入院させてほしい」と頼んだが、「形成外科病棟は私たちの管轄外なので無理です」と断られた。「なら、せめて今晩だけでも整形外科病棟に入院させてくれないか」と頼んだが、「整形外科としての処置は終わっており、入院しなければならない状態ではないので」と断られた。
やむを得ずその日はタクシーで帰宅し、翌日またタクシーでその病院の形成外科で診療を受けた。手術は翌日ということになったが形成外科病棟には入院できた。その病棟での出来事が、マイナンバーカードにつながるアイデアを生んだ。
もちろん「お薬手帳」は持って行ったが、入院日当日、担当看護士、薬剤師、麻酔医師が入れ代わり立ち代わり入院中の私のベッドに来て、まったく同じことを繰り返し聞くのだ。あきれ返って最後に来た麻酔医師に「カルテはどうなっているのか」と聞いたところ、麻酔医師は「私は最近この病院に入ったのですが、ここはまだカルテが電子化されていません。私もびっくりしましたけどね」とのことだった。しかも整形外科と形成外科ではカルテも共有されていないということだった。
で、私が思いついたアイデアをメールで首相官邸ホームページの「ご意見・ご感想」欄から送信した。以下、そのアイデアの部分を掲載する。まさか、この提案がマイナンバー法に悪用されるなどとは想像すらしなかった。
なお、私が首相官邸にメールしたのは2013年2月20日。いわゆる「マイナンバー法(国民皆背番号法)」の成立は同年5月24日、交付は5月31日である。
●私が提案したのは「健康カーだ」だった
(前項で記述した経験から私が)思いついたのは『世界共通の医療カルテ』の開発です。
形はカード(クレジットカードや金融機関のキャッシュカードなどと同じです)で、ICチップを搭載します。ICチップには服用中の薬やサプリメントの成分と、現在治療中の内容、潜在的なものも含めた持病など、個人の健康情報を事実上の国際語である英語で読み取れるよう暗号化して入力できるようにします。すでに完治して健康情報として不必要なものは医師や薬剤師等の判断で削除できるようにします。病院や診療所、クリニック、調剤薬局のコンピュタと、個人が加入している健康保険証の発行元のコンピュータとオンラインで接続し、健康保険証の発行元でバックデータを保存します。
そのシステムを構築すれば、旅行先でも海外でも、何かの病気にかかったり、事故にあったりしても「健康カード」1枚で個人の健康状態が医師や看護師にすぐわかり、適切な対処ができるようになります。さらにその「健康カード」に加入保険情報も入力できるようにすれば、少なくとも国内ではすべての医療機関で、いかなる状況でも保険治療が可能になります。
この「健康カード」1枚あれば、たとえば転居した場合などに持病でクリニックを変更しなければならなくなった時も、それまでかかっていた医師の診断書も必要なく、同じ治療が継続して受けられるようになります。また医師や薬剤師の負担も大幅に軽減し、その分医師も本来の患者治療に専念できますし、薬の飲み合わせによる副作用も医師や薬剤師の知識に頼らなくても、コンピュータが自動的に判断して医師や薬剤師にアドバイスすることも可能になります。
さらにTPP交渉の如何にかかわらず、近い将来、日本でも混合医療が不可避になります。その場合も「健康カード」があれば、保険治療と自費治療の区別や治療費の請求方法の区別化も簡易にできます。
このシステムを構築するにはカルテの電子化をすでに行っている総合病院と、技術力に優れたシステム開発会社、健康保険証の発行元などの共同開発が必要です。(以下、省略)
●岸田首相の「悪だくみ」は最終的に挫折する
岸田内閣が推進しようとしているのは、私が提案した「健康カード」とは全く違う。私は保険証は財布に入れて持ち歩いているが、マイナンバーカードは紛失したり盗難にあったりした場合極めてリスキーだから財布に入れていない。
そもそも、マイナンバー法が野党も反対せずにスムーズに国会を通過したのは、法案を提出したとき政府が「健康情報の一元化のため」という口実を使ったからだ。「お薬手帳」や治療中の健康情報を含まない保険証機能だけをなぜマイナンバーカードに搭載しなければならないか、疑問がわんさとある。
政府の狙いははっきりしている。国民のあらゆる個人情報を政府が一元的に把握することがマイナンバー法の本当の狙いだから、とりあえず保険証機能をマイナンバーカードに移行した後、様々な個人情報を次々にマイナンバーカードに取り込もうというのだ。
だからマイナンバーカード取得時にクレジットカード・ポイントを5000円分、保険証機能を搭載した場合にはさらに1万5000円分も大盤振る舞いしたのだ。詐欺とまでは言わないが、かなりあくどい「悪だくみ」であることは間違いない。
実際にはすべての医療機関や調剤薬局がマイナンバーカード保険証しか受け付けないなどという患者無視のやり方に応じるとは考えにくいし、従来の保険証と併用するようになるだろう。問題は各自治体が政府に屈して保険証の発行を廃止するようになった時だが、自治体の首長は選挙で選ばれた人たちであり、政府の言いなりになるとは思えない。結局健康保険証のマイナンバーカーへの全面移行は挫折することになる。
「マイナンバーカードと健康保険証の一体化をめぐり、12日の参議院決算委員会で、野党側が今の健康保険証の存続を求めたのに対し、岸田総理大臣は一体化が進むことで、より良質な医療を提供することができるようになるとして、来年秋の廃止に向けて取り組みを進める考えを強調しました」
岸田総理は来年秋には今の健康保険証を廃止してマイナンバーカードに一本化するつもりだ。すでにマイナンバーカードに記入された保険情報を読み取る装置を設置しているクリニックもあるが、「うちはそんなことやれる余裕がない」と読み取り装置導入に後ろ向きの小さなクリニックや調剤薬局も少なくない。
実はマイナンバーカードは「国民皆背番号カード」である。政府は過去、何度も国民皆背番号制の導入を試みてきた。が、その都度野党や国民の反対で法案は潰されてきた。
が、いま簡単に国民皆背番号制度のツールとしてマイナンバーカードが導入されている。実は政府にマイナンバーカード導入のきっかけを与えてしまったのが私だ。忸怩たる思いもあるが、政府による「悪用」は許すことが出来なという思いで、緊急告発することにした。
●自転車事故で大けがをして救急車で搬送された病院で~
私が自転車で転倒し、左手小指とこめかみに大けがをして救急車を呼んだのは2012年の12月(日にちは覚えていないが、午後9時前だった)。救急車の職員が対応できる病院を探してくれて私立の医学大学系の総合病院に搬送してくれた。その日はたまたま整形外科医が当直だったからのようだ。
搬送先の病院ではすぐにMRIでこめかみ個所の画像を撮影し、左手小指のほうはレントゲン撮影してくれた。指は骨折していなかったが皮膚がほぼ半分以上めくれてしまっており、直ちに縫合手術をしてくれた。「完全に皮膚がくっつくかどうかは分からない」との説明は受けたが、手術が終わった後「今日は形成外科医はだれもいませんから、いったんお帰りになって明日形成外科に来てください」と言われた。
こめかみ部の骨折は、私は頭蓋骨だと思っていたが、頬骨の一部だったようだ。その個所の手術は形成外科の担当らしい。
担当がどうであれ、頭の骨の骨折だ。私は「今日対応できないにしても、入院させてほしい」と頼んだが、「形成外科病棟は私たちの管轄外なので無理です」と断られた。「なら、せめて今晩だけでも整形外科病棟に入院させてくれないか」と頼んだが、「整形外科としての処置は終わっており、入院しなければならない状態ではないので」と断られた。
やむを得ずその日はタクシーで帰宅し、翌日またタクシーでその病院の形成外科で診療を受けた。手術は翌日ということになったが形成外科病棟には入院できた。その病棟での出来事が、マイナンバーカードにつながるアイデアを生んだ。
もちろん「お薬手帳」は持って行ったが、入院日当日、担当看護士、薬剤師、麻酔医師が入れ代わり立ち代わり入院中の私のベッドに来て、まったく同じことを繰り返し聞くのだ。あきれ返って最後に来た麻酔医師に「カルテはどうなっているのか」と聞いたところ、麻酔医師は「私は最近この病院に入ったのですが、ここはまだカルテが電子化されていません。私もびっくりしましたけどね」とのことだった。しかも整形外科と形成外科ではカルテも共有されていないということだった。
で、私が思いついたアイデアをメールで首相官邸ホームページの「ご意見・ご感想」欄から送信した。以下、そのアイデアの部分を掲載する。まさか、この提案がマイナンバー法に悪用されるなどとは想像すらしなかった。
なお、私が首相官邸にメールしたのは2013年2月20日。いわゆる「マイナンバー法(国民皆背番号法)」の成立は同年5月24日、交付は5月31日である。
●私が提案したのは「健康カーだ」だった
(前項で記述した経験から私が)思いついたのは『世界共通の医療カルテ』の開発です。
形はカード(クレジットカードや金融機関のキャッシュカードなどと同じです)で、ICチップを搭載します。ICチップには服用中の薬やサプリメントの成分と、現在治療中の内容、潜在的なものも含めた持病など、個人の健康情報を事実上の国際語である英語で読み取れるよう暗号化して入力できるようにします。すでに完治して健康情報として不必要なものは医師や薬剤師等の判断で削除できるようにします。病院や診療所、クリニック、調剤薬局のコンピュタと、個人が加入している健康保険証の発行元のコンピュータとオンラインで接続し、健康保険証の発行元でバックデータを保存します。
そのシステムを構築すれば、旅行先でも海外でも、何かの病気にかかったり、事故にあったりしても「健康カード」1枚で個人の健康状態が医師や看護師にすぐわかり、適切な対処ができるようになります。さらにその「健康カード」に加入保険情報も入力できるようにすれば、少なくとも国内ではすべての医療機関で、いかなる状況でも保険治療が可能になります。
この「健康カード」1枚あれば、たとえば転居した場合などに持病でクリニックを変更しなければならなくなった時も、それまでかかっていた医師の診断書も必要なく、同じ治療が継続して受けられるようになります。また医師や薬剤師の負担も大幅に軽減し、その分医師も本来の患者治療に専念できますし、薬の飲み合わせによる副作用も医師や薬剤師の知識に頼らなくても、コンピュータが自動的に判断して医師や薬剤師にアドバイスすることも可能になります。
さらにTPP交渉の如何にかかわらず、近い将来、日本でも混合医療が不可避になります。その場合も「健康カード」があれば、保険治療と自費治療の区別や治療費の請求方法の区別化も簡易にできます。
このシステムを構築するにはカルテの電子化をすでに行っている総合病院と、技術力に優れたシステム開発会社、健康保険証の発行元などの共同開発が必要です。(以下、省略)
●岸田首相の「悪だくみ」は最終的に挫折する
岸田内閣が推進しようとしているのは、私が提案した「健康カード」とは全く違う。私は保険証は財布に入れて持ち歩いているが、マイナンバーカードは紛失したり盗難にあったりした場合極めてリスキーだから財布に入れていない。
そもそも、マイナンバー法が野党も反対せずにスムーズに国会を通過したのは、法案を提出したとき政府が「健康情報の一元化のため」という口実を使ったからだ。「お薬手帳」や治療中の健康情報を含まない保険証機能だけをなぜマイナンバーカードに搭載しなければならないか、疑問がわんさとある。
政府の狙いははっきりしている。国民のあらゆる個人情報を政府が一元的に把握することがマイナンバー法の本当の狙いだから、とりあえず保険証機能をマイナンバーカードに移行した後、様々な個人情報を次々にマイナンバーカードに取り込もうというのだ。
だからマイナンバーカード取得時にクレジットカード・ポイントを5000円分、保険証機能を搭載した場合にはさらに1万5000円分も大盤振る舞いしたのだ。詐欺とまでは言わないが、かなりあくどい「悪だくみ」であることは間違いない。
実際にはすべての医療機関や調剤薬局がマイナンバーカード保険証しか受け付けないなどという患者無視のやり方に応じるとは考えにくいし、従来の保険証と併用するようになるだろう。問題は各自治体が政府に屈して保険証の発行を廃止するようになった時だが、自治体の首長は選挙で選ばれた人たちであり、政府の言いなりになるとは思えない。結局健康保険証のマイナンバーカーへの全面移行は挫折することになる。