小林紀興の「マスコミに物申す」

第三の権力と言われるマスコミは政治家や官僚と違い、読者や視聴者の批判は一切無視、村社会の中でぬくぬくと… それを許せるか

日本は朝鮮半島の緊張を緩和できるはずなのに~ なぜしないのか?

2023-07-20 02:09:43 | Weblog
 北朝鮮情勢が緊迫しつつある。北朝鮮が7月12日、液体燃料式より迅速に発射できる固体燃料式ICBM(大陸間弾道ミサイル)「火星18型」の発射実験を成功させた。19日未明にも弾道ミサイルを2発発射した。
固体燃料は推進力には優れているが制御が困難で、日本も宇宙ロケットには第1段目は固体燃料式、2段目以降は液体燃料式を使っている。北朝鮮は固体燃料式だけでかなり正確に飛行させるICBMの開発に成功したとすると、相当な技術力を身につけつつあると考えていいだろう。

●北朝鮮のミサイルは日本にとって脅威か?
北朝鮮と日本はいま国際関係において拉致問題を別にすると特に問題を生じているわけではない。安倍元総理がモリカケ問題で窮地に陥っていた時、北朝鮮が初めて日本の領空域(襟裳岬上空)を通過するミサイル発射をしたことがある。安倍氏にとっては「棚ボタ」的な北朝鮮からのプレゼントになったが、これ幸いと突然「国難突破」解散に打って出て選挙に大勝して1強体制を築くのに成功した。安倍元総理は北朝鮮方向には足を向けて寝ることはできなかったはずだ、たぶん。
北朝鮮はなぜあえて日本領空域を通過するミサイルを発射したかの説明をしていないので、私の推測だが、通常角度でミサイルを発射した場合の理論上の計算値を実質的に確認したかったのではないかと考えている。
北朝鮮がミサイル開発を初めて最初に発射実験を行ったとき、「人工衛星打ち上げのための宇宙ロケットの実験だ」と見え透いたウソ説明を行った。日本はすでに宇宙ロケットを実用化しているが、宇宙ロケットの開発技術はすぐにでもミサイル開発に転用できる。衛星を打ち上げるためだけだったら、アメリカやEU、中国の宇宙ロケットに打ち上げを頼んだほうがはるかに安くつく。現に日本人を宇宙船に送還するためのスペースシャトル・タイプのロケットなどを日本は開発する目的すら持っていない。使い捨て型の宇宙ロケットの開発や打ち上げ実験にのみ血道を上げているのは、その目的が軍事転用可能だからだ。
今回、北朝鮮が打ち上げた「火星18型」ICBMは最高速度6648.4キロまで上昇し、1001.2キロの距離を74分51秒かけて飛行したという。着弾地点はほぼ正確に目標地域だという。だとすれば、このミサイルを通常のミサイル軌道で発射した場合、アメリカ全土が射程範囲に入るらしい。ただ、これはあくまで理論上の計算値であって、実際に通常発射角度での実権を行うのはほぼ不可能だ。あえて通常角度での発射実験をするとしたら北極方面か南米大陸南端方向しかない。
が、北極に着弾するミサイルを発射したら国際的非難が集中するだろうし、南米大陸南端方向に発射する場合は日本の陸地上空やオセアニア諸島上空を通過するしかない。
仮に通常軌道でのミサイル発射実験に成功したとして、北朝鮮にとって残る課題は、このミサイルに搭載できる小型核弾頭の開発だけとなる。
なぜ、そこまでして、全面戦争になったら絶対に勝てっこないアメリカを標的にした核・ミサイル開発に北朝鮮は狂奔するのか。少なくとも日本を標的にするのであれば、そこまで飛距離にこだわる必要性はない。
実際、北朝鮮は日韓米3国の安全保障体制の構築に神経を尖らせており、今秋予定されている最大規模の米韓合同軍事演習に対する対抗手段、自衛行動だと明言している。日本政府はいたずらに北の脅威をがなり立てえるのではなく、それこそ米・韓・北の緊張をほぐすための「橋渡し」をすべきではないのか。

●北が挑発しているのではなく、米が北を挑発するから高まる緊張
そもそも北朝鮮のような非力な国をアメリカがきちがいのようになって挑発し始めたのは2002年1月29日、ジョージ・W・ブッシュ大統領が一般教書演説(日本の国会冒頭の首相の「施政方針演説」に相当)で、北朝鮮・イラン・イラクの3国を名指しで「ならず者国家」「悪の枢軸」「テロ支援国家」と非難を公にしたことがきっかけだ。
その前年01年9月11日にアメリカに激震が走った。同時多発テロである。が、このテロには3国は関与しておらず、アメリカはアフガニスタンを支配していたイスラム過激派のタリバンによると断定、タリバンを攻撃した。
さらにブッシュは03年3月19日にはフセイン・イラクが大量破壊兵器を保有していると勝手に思い込み、米英連合軍でイラクを攻撃、フセイン体制を崩壊した。この時日本の自衛隊もPKO活動以外の戦争に初めて参加した(戦闘行動は行っていない)。
が、戦後占領したイラク中を探し回ったが、イラクは大量破壊兵器など全く持っていなかった。フセイン後のイラクでは「イスラム国」(IS)と称する過激派イスラム教徒のテロが活発化し、多くの犠牲者や難民を生んだ。その責任をアメリカはとろうともしないし、まして謝罪もしていない。日本はそういう国の属国になることで安全保障を得ているのだ。
北朝鮮の国力からしたら、いくらもがいたところでアメリカと戦争して勝てる見込みなど毛頭ないことは百も承知のはず。にもかかわらず自国民の生活を犠牲にしてまで核・ミサイル開発に狂奔するのはなぜか。
独裁政権を維持する手段として「仮想敵国」の脅威を煽り立てて政権への求心力を高めるといったことは歴史上数限りなく行われてきた。その意図が北朝鮮の金正恩政権にないとは言えない。
が、米韓側から見ると北朝鮮への挑発を繰り返すことによって北朝鮮に「窮鼠、猫を噛む」暴走を起こさせようという意図も十分に考えられる。つまり北朝鮮を暴発させて、それを口実に朝鮮半島全域をアメリカの支配下におこうと考えている可能性も否定できない。
朝鮮戦争の時は日本を占領していた米軍が「国連軍」と称して韓国軍を支援した。太平洋戦争の勝者は連合国軍であったが、戦後に国連が設立されたことで日本を占領・支配していた連合国軍(実態は米軍)は朝鮮戦争に参加するに際して「国連軍」を詐称したに過ぎない。もし、米軍が正式に国連安保理で「国連として北朝鮮が起こした朝鮮内乱を軍事的に制圧するために国連軍を結成する」などと提案していたら、常任理事国であるソ連(当時)と中国が拒否権を行使していたはずだ。
が、米軍がどさくさに紛れて「国連軍」を詐称してしまったため、中国は表立って北朝鮮を支援するわけにはいかず、「義勇兵」が北朝鮮軍に加わり米韓軍とたたかった。この時期は中北関係は極めて良好であり、事実上の同盟関係にあった。とはいえ、日米、米韓のようなあからさまな従属的関係ではない。

●中国が北朝鮮を防衛しなくなった理由
朝鮮民族は過去、日本が併合するまでの長い歴史の中で他民族の支配を受けたことが一度もない(豊臣秀吉による朝鮮征伐はあったが、侵略されるには至らなかった)。日本も先の大戦で敗北して連合国(実質的にはアメリカ)に占領されていた期間を除いて他国の侵略を受けたことはなかった。
日本の場合は四方を海という自然の要塞に囲まれていたため、他国の侵略を容易には許さなかったという事情があったが、朝鮮の場合はユーラシア大陸の一部をなしており、常に大陸からの侵略の危機にさらされていた。そのため「風見鶏外交」で常に近隣の強国に対して従属的立場をとって侵略の危機を防いできた。時には漢民族、時には蒙古族、ロシアにさえ媚を売って独立を守り抜いてきた。
そういう北朝鮮にとって国家そのものが分裂しかねない時期が生じた。1956年、フルシチョフによるスターリン批判をきっかけに西側との平和協調路線を明確にしたソ連に毛沢東が猛反発。それまで一枚岩だった社会主義陣営が真っ二つに割れた。この時北朝鮮の金日成は従来のようなやり方で北朝鮮の生き残りを図った。具体的にはどちら側にもつかず、独自の社会主義思想「主体思想」を唱えて中ソと一定の距離感を保つことにした。その結果、北朝鮮の絶対的保護国だった中国が北に対して一定の距離感を持つようになった。
日本や韓国が、もし核戦争に巻き込まれたときにアメリカが大きなリスクを冒して日本や韓国を「核の傘」で守ってくれるかどうかは不明だが、北朝鮮の場合、リップサービスであっても「何かあったら我が国が核で守ってあげるよ」という国がない。
しかもブッシュ以降、アメリカは北朝鮮に対する敵視政策をとり続けている。トランプは北朝鮮についてブッシュの定義(ならず者国家・悪の枢軸・テロ支援国家)を明言したし、もし日本がアメリカの「核の傘」で守られず、中国やロシアから「ならず者国家」「悪の枢軸」「テロ支援国家」などとあからさまな敵視政策をとられたら、自国防衛のために核・ミサイル開発に日本も狂奔する。そういう意味で私は北朝鮮の核・ミサイル開発を擁護するつもりはないが、北の自衛権は認めざるをえない。

●日本は米・韓VS北の「橋渡し」ができるか
周知のように、日本は国連で採択された「核兵器禁止条約」への参加をかたくなに拒んでいる。その一方「核不拡散条約」からは離脱せず、「核保有国と非保有国の橋渡しをする」ことを世界から核をなくすための基本方針としている。が、事実上、日本がこれまで核保有国と非保有国の間で「橋渡し」をしたこともなければ、こころみすらしたことがない。
核不拡散条約は米・英・仏・ロ・中の5か国のみに核保有の権利を認め、それ以外の国の核開発・核兵器保有を禁じた国際条約だ。この5か国は言うまでもなく国連安保理で拒否権を有する常任理事国である。
しかも核不拡散条約の致命的な欠陥は条約成立時での保有核は認めるが、以降、新しい核兵器の開発・実験・行使を禁じていなかったことだ。
そのうえ、アメリカに近いイスラエルやインド、パキスタンの核に対しては一切制裁措置をとらず、同盟国のイスラエルや韓国と敵対関係にあるイランやイラク、北朝鮮にのみ制裁を科すという、だれが考えても公平・平等とは言えない政策をとっていることだ。
そういう状況下で朝鮮半島の緊張をほぐす役割を日本ができるとすれば、日本海や黄海の北朝鮮近海での共同軍事演習はやめるよう米韓両国に申し入れること。さらにいわば兄貴分の中国に対して軍事同盟を結んで北が攻撃を受けたら中国の核で守ってやるから、国民生活を犠牲にしてまでどのみちアメリカの核に対抗なんかできっこない核・ミサイルの開発などやめろと金正恩を説得するよう習近平に働きかけることだ。そうすれば朝鮮半島の緊張は一気に収まる。
「橋渡し」とはそういう外交手段を意味する言葉だ。アメリカの言いなりになったり、アメリカのために代弁をしたりすることではない。

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