まず私が株式会社パスモ(以下パスモと記す)が発行している、犯罪的としか言いようのない金融商品によって受けた損害の経緯を明らかにしよう。
8月19日、私はフィットネスクラブで財布を盗難された。盗難された財布の中には記名式PASMOカードを入れていた。記名式PASMOは私鉄各駅の券売機で購入できる無記名式カードと異なり、記名本人しか使えないことになっており、チャージ残高が2000円を切った時点で、記名式PASMOを発行した私鉄の系列クレジット会社が発行したクレジットカードから原則3000円が自動的にチャージされる仕組みになっている。確かに便利な仕組みと言えなくはない。
ただしその便利さは、PASMOを紛失したり、盗まれたりしないことが前提で、万一紛失したり盗まれたりした途端、とんでもない犯罪誘発機能に変質するのである。
私が3月中旬、私の住居の最寄り駅の構内で記名式PASMOの勧誘をしていたクレジット会社の営業社員から説明を受けた内容は次の3点である。
① クレジットカードとオートチャージ機能付きのPASMOを同時に申し込めばなにがしかのポイント(その私鉄系のデパートやスーパーで現金同様に使用できる金額の付与)が貰える。
② オートチャージの機能が付いているので、いちいち券売機で現金チャージする面倒くさいことをしなくてもよい。
③ 従来のパスネットは私鉄でしか使えなかったが、PASMOはJRでも使える。
実はPASMOにはもう一つのメリットがあって、財布や定期入れの中に入れたまま改札機の読み取り部にタッチすればいいのだが、その説明がなかったため、かなりの期間私はPASMOを財布から出して読み取り部にタッチしていた。そのことはクレジット会社の説明責任を問うほどのことではない。問題はPASMOがより便利になったパスネットとは決定的に違う、という危険性を説明しなかったことである。だがその責任はクレジット会社にあるのか、それともPASMOという極めてリスキーで不正使用を防止する機能がゼロの、実質的に金融機能を持った商品を発売しながら、クレジット会社に説明責任を果たす義務を求めなかったパスモにあるのか、それはPASMOの金融商品としての機能を管轄する経済産業省(列車の運賃支払い機能は国土交通省の管轄)の判断に任せるしかないが、私は全責任はパスモが負うべきだと考える。ただしPASMOの発行を行っている電鉄会社及びその電鉄系のクレジット会社もPASMOの危険性を熟知しながら自己の利益のためにPASMOのリスク説明を意図的にしてこなかったことがはっきりしたので、この2社もパスモの共同正犯である。その理由は後で詳しく述べる。
さて券売機で購入する無記名式PASMOは07年3月18日からサービスが開始されていたが、私が申し込んだカードは、まずクレジットカードは4月5日に発行され(これは確認済み)、PASMOは申し込んでから約1ヶ月後ごろに発行されたという(これは大手私鉄の駅員の証言)。
その後、これも私の責任だが、今回フィットネスクラブで盗難にあう以前に財布を紛失したことがある。。たぶんどこかで落としたか、どこかの店で買い物をした後財布からお金を出して支払いをしたあと、財布をそのままレジの前に残して立ち去り、レジ係の店員もそれに気づかず次の客がちゃっかりいただいたのかもしれないと思うのだが、その辺の記憶が定かでないため、泣き寝入りするしかなかった。幸いだったのは財布に少額の金しか入れていず、この時はPASMOを不正使用されることもなかった。ただ何枚かのクレジットカードも財布に入れていたためクレジット会社に連絡し、使用停止を伝えて再発行を申し込んだが、クレジット会社によっては再発行手数料525円がかかると言われ、「ではカードの使用停止だけお願いします。再発行はしていただかなくても結構です」と言い、事実上そのクレジットカードの解約をしたことがある。それ以降、クレジットカードの再発行手数料がかかるカードは財布に入れないようにしている。基本的に電鉄系のクレジットカードは私が調べた限りではすべて再発行手数料がかかるようで、電鉄系カードはその電鉄系デパートやスーパーで買い物をする目的がない日は財布に入れないようにしたほうがリスク回避につながる。その分例えば家電量販店などでかなりの高額商品をクレジットカードで購入する場合、私は自分の財布に入れている再発行手数料がかからないカードを使うことになるから、再発行手数料を取るカードは結果的にビジネスチャンスを逃がすことになる。そうしたことも承知で電鉄系カード会社は再発行手数料を取ることで自らビジネスチャンスを放棄しているのだろうから私がとやかく言うべきことではない。だから私はPASMOのオートチャージ用の大手私鉄系のクレジットカードは財布に入れていなかった。偶然といえば偶然だが、こうした私のリスク回避策からパスモの、豊田商事に匹敵するするといっても過言でない悪質な商法がすべて明らかになったのである。
すでに書いたが、PASMOは単にパスネットをより便利にした列車運賃の自動支払い機能だけを持ったカードではなかった。そのことを私が知ったのは財布を盗難された8月19日である。その当日PASMOを発行した駅に盗難届を出した時、実はPASMOは「電子マネー」だったことを初めて知ったのだ。つまりPASMOにチャージされている残高金額の範囲で、PASMOの残高金額を読み取れる装置を備えたコンビニや自動販売機で、本人確認をされずPASMOで何でも買えるのだ。しかもチャージ残高が2000円を切った時点で、PASMOで駅の改札を通過した途端3000円が自動チャージされ、そのチャージ金額の限界は1日2万円という大金だということも初めて知らされた。
ではその自動チャージをストップできる方法があるのか、というと、それがまったくないのである。
実際に私が財布の盗難にあった日の。損害を最小限にとどめるためにとった行動を時系列で明らかにする。ここで私が盗難にあった時点では私はPASMOが実は「電子マネー」であって、しかもクレジットカードのように紛失した(あるいは盗難された)時点から2ヶ月以内にクレジット会社に連絡すれば、その間にカードが不正使用されたとしても損害はクレジット会社が補償してくれるようなリスク防止策が全くとられていないということを、一切どこからも(パスモからもクレジット会社からも)知らされていなかったことをハッキリしておく。
私がその日(8月19日)とった行動を時系列で明らかにする。
① まず財布に入れていた3枚のクレジットカードの発行会社に被害にあったことを伝え、カードの使用停止と再発行を依頼した。
② 財布に入れていなかったため手元にあったPASMOオートチャージ用の電鉄系クレジット会社に電話してPASMOが盗難にあったことと、クレジットカードは無事であることを伝えた。PASMOを盗難されたことで何か不利なことが生じるのではないかという予感がしたからである。しかし、クレジット会社の社員は私が大変なリスクにさらされていることを一切教えてくれず、その電鉄の最寄り駅に届けて再発行の手続きをとるように、と言ってくれただけだった。
③ クレジット会社社員のアドバイスによりPASMOについては何のリスクもないと判断し、交番に行って被害届を出し、最後にその電鉄の駅に行ってPASMOの使用停止の手続きを取った。その時はじめて実はPASMOが「電子マネー」で、PASMOにチャージされている金額の範囲でコンビニなどで現金と同様に物品が買えるという事実を知った。びっくりした私はいまPASMOにチャージされている残高を調べてほしいと頼んだが、明日にならないとわからないと言われ、腑に落ちないまま帰宅した。
④ 翌日(20日)駅から電話があり、現在のチャージ残高が840円であることを知った。私が盗難にあう前のチャージ残高はわからなかったので、いくら不正使用されたのか知りたいと思い、PASMOの使用履歴を調べてほしいと頼んだが、PASMOの再発行の手続きを取らないと調べられないと言われ、釈然としないまま、再発行の手続きを保留にすることにした。なお再発行には1000円かかるということだった(カード代500円+再発行手数料500円)。
⑤ その翌日(21日)、再発行手数料500円取られるくらいなら別の電鉄系でPASMOを新規発行すればカード代500円だけで済むし、その電鉄系のクレジットカードからのオートチャージ契約をすれば、カード代500円以上のサービスが得られるかもしれないと思い、某電鉄系クレジット会社に事情を話し、どんなサービスが得られるのか聞いたが、今は特別のサービスはしていないということだった。それでも再発行ではなく新規発行だからカード代500円だけですむということだったが、私が盗難にあったPASMOにチャージされている840円の残高は新規発行のPASMOに移行チャージすることはできないと言われた。しかもチャージ残高の840円は、PASMOを再発行しなければ戻してもらえないという説明も受け、だったらチャージ残高の840円は一体だれのものなのか、とパスモに対して初めて不信感を抱いた。このことがパスモの豊田商事に匹敵するくらいの悪徳商法を解き明かすきっかけになったのである。その悪徳商法を解明するため、駅で『PASMOご利用案内』なるパンフレットを入手し、PASMOのホームページでパスモがPASMOのリスクについてどれだけ情報開示しているか調べ始めた。
⑥ 実はこの間、私はPASMO問題にだけ没頭していたわけではなかった。少し前から預託金商法を野放しにしてきた政府の責任を追及するブログを書いていた。その記事『ネズミ講を禁止した政府はなぜ預託金商法を野放しにするのか』は25日に投稿したが、その続編『詐欺的預託金商法に手を貸した金融機関の罪』に取り掛かっていた。その最中の28日夕刻、盗難されたPASMOの電鉄の駅の主任からとんでもない電話がかかってきた。「小林さんが盗難届を出された時、小林さんのPASMOは明日午前0時までは使用停止できないという説明は受けましたか」と言うのである。
当初私は主任が何を言っているのかわからなかった。だから「どういう意味ですか」と聞いた。すると驚くべき返答が返ってきた。「実はPASMOはクレジットカードなどと違って、使用停止処置が即座にはできないんです。だから盗難にあった日の翌日午前0時までは盗難届を出されて、駅でPASMOの使用停止処置をとってもその日のうちなら駅の改札で限度額2万円まではオートチャージできますし、チャージされた金はPASMOが電子マネーとして使えるコンビニなどで物品を買えるんです。すぐクレジット会社にオートチャージ停止を申し出ていただければなりませんでした。そのことを担当者がご説明しなかったことは大変申し訳なく思います」
⑦ 私は茫然とした。「そんなバカな」というのが、その時抱いた最初の疑問だった。私は電子マネーを使ったこともないし、ほとんど知識もない。そこでとりあえずウィキペディアで「電子マネー」を検索してみた。ウィキペディアの解説の重要の部分を引用する。「電子マネーの発達によって、従来は紙幣や貨幣、あるいは各種クレジットカードやプリペイドカード・キャッシュカードといった様々な物品を一元管理して、携帯性が向上することが期待されているほか、決済の迅速化・確実性の向上も期待されている。他にも認証手段の導入により、紛失時の経済的損失の防止や個人認証手段としての利用、または既存のクレジットカードが持つ社会信用度(クレジット)照明手段など、様々な利便性も指摘される」こうした電子マネーの信頼性・利便性を100%否定してしまったのが電子マネーとしてのPASMOだった。PASMOが生み出した社会的損失は、PASMOの不正使用によって経済的損害を蒙った私のような個人の問題では済まない。私がこの事実を明らかにすることで電子マネーそのものの信頼性が根本的に失われ、セキュリティ問題が完全に解決できるまで少なくとも電子マネーの普及は10年は遅れることになるだろう。パスモとパスモの事業に加担した電鉄会社、電鉄系クレジット会社の罪は重い
⑧ そこでパスモと同社に加担した電鉄会社や電鉄系クレジット会社の消費者無視の悪徳商法を告発し、関係省庁やマスコミ、各政党に通告すべく、私のPASMOが不正使用されてからの経緯をブログで公表することに決めたのが30日の午後3時ごろ。で、私がPASMOとクレジットカードを同時に申し込んだ日を知るため、クレジット会社に電話したとき電話口に出た同社社員は、それまで何人ものクレジット会社社員と話をしてきたが、おそらく社内で一番PASMOのオートチャージの仕組みを熟知している社員だった。その人からまた驚くべき話を聞かされた。その社員の説明によるとクレジット会社のコンピュータとパスモのコンピュータはつながっていず、クレジット会社が私のクレジットカードの使用を停止してもPASMOのオートチャージを止めることはできないという信じがたいような説明を受けた。つまりいかなるセキュリティ対策もPASMOにはないという事実が明らかになったのである。その社員が言うには「だから私どもとしては駅に行って再発行の手続きを取ってくださいとしか言えないんです。当社にはあなたのPASMOの不正使用を止めるいかなる手段もないんです」。もはや何をか言わんや、である。
ここまでが私が財布を盗まれ、PASMOの不正使用を止められなかった経緯である。ここからパスモの悪質ぶりを、同社がパンフレットとホームページで公開している情報はPASMO利用者に対してフェアであるかどうかを明らかにしよう。結論を先に述べれば、もはやパスモは解体し、PASMOの不正使用によって損害をこうむった利用者に、同社の全役員が私財のすべてを投じてでも弁済するしか社会が許さないだろう。
まずこれまで述べてきたことだが、電子マネーとしてのPASMOにセキュリティ対策が全く施されていないことを箇条書き的に列記しておく。
① オートチャージ式PASMOは金融機関のキャッシュカードやクレジットカードと同じく記名式になっており、『PASMOご利用案内』(以下パンフレットと記す)の9ページに記名PASMOについて「記名人のみが利用できるPASMOです。紛失時には再発行できます」と説明され、その下には小文字で「購入時にお客さまのお名前・性別・生年月日・電話番号の登録が必要です」「紛失再発行には、手数料が必要です」と注意書きが明記されている。しかも駅員の説明によるとPASMOには金融機関のキャッシュカードのようにICチップが搭載されており(キャッシュカードのICチップはカード表面に搭載されているが、PASMOのICチップはカードの中に埋め込まれていて、当然不正使用を防ぐための個人情報が記録されているはずだが、実際には他人(私の場合は盗難者、つまり犯罪者)の不正使用を防止するためのセキュリティ対策は全くとられていない。しかも紛失・盗難の届けを駅に届けてもパスモのコンピュータは何十年か前の中古品のようで、即座にPASMOの使用(列車の運賃自動支払いおよび電子マネーとしてコンビニや自動販売機での物品購入)や改札機でのオートチャージを停止することはできない欠陥コンピュータであることも判明した。この重要なリスク情報はパンフレットやパスモのホームページのどこにも記載されていない。
② PASMOに多くの利便性があることは私も認める(ただし私がPASMOとオートチャージ用の電鉄系クレジットカードの発行を申し込んだときには、まだ電子マネーとして使える店や自動販売機がなかったからだと思うが、クレジット会社の社員から電子マネーとしての機能があるとの説明は受けていない。さらに電子マネーとして広く使用できるようになってからも、クレジット会社から送られてくる請求明細書にはいろいろな保険の勧誘パンフレットやツアー・物品販売のチラシは同封されているが、電子マネーとして広く利用されるようになったことの案内と、それに伴ってリスクも増大したが、リスク回避の手段は全く講じられていないことの注意義務はまったく果たされていなかった。ましてPASMO利用者の個人情報をすべて入手しているパスモからもそうした案内は一切なかった。これは完全に告知義務違反である。利用者一人一人にそうした案内をするにはコストがかかりすぎるというなら、駅の随所に大きなポスターを貼ってPASMOを財布に入れている人に危険性を告知すべきだった。だが、パスモには利用者のことを考慮する人(役員およびすべての社員)は一人もいないようだ。パスモは解体するしかないと、私が考えている最大の根拠である。パスモを社会的に評価できる健全な企業に立て直すには、利用者のほうに顔を向けた役員やかなりの権限を付与されている社員(部課長級)が最低でも数人はいないと無理だが、そういう人が皆無のパスモを健全化することは絶対に不可能である。
③ パンフレットにもホームページにも「PASMOの特徴」が書いてある。この個所でPASMOのメリットを強調するのは決して不正な行為ではない。どの会社も商品の「特徴」として強調するのはメリットだけでデメリットは別の個所に虫めがねを使わないと読めないような超小文字で記載するのが常套手段である。はっきり言えば商品の購入者や利用者にできれば知らせたくないことを、意図的に、購入者や利用者が読む気がしないような超小文字でしかも極めて難解な文章で記載している。そうした行為は、例えばソフトバンクの携帯電話の広告やNTTの番号案内の社員が相手先に直接つなぐサービスの手数料の案内を十分していなかったということで、公取委から摘発されたことは周知の事実である。また生保や損保の、加入者に不利になる可能性についての告知をパンフレットには明記せず、だれも読まないような約款に超小文字で難解な文章で記載してきたことも問題になり、今では加入者にとって不利になる可能性がある重大な情報はパンフレットで、しかもかなり強調して記載するようになった。そうした社会的風潮を私も重視し、パスモのパンフレットは31~42ページにわたって超小文字かつ難解な文章で約款を載せているが、この約款に記載されているかもしれないPASMO利用者へのリスク告知は一切無視することにした(実際私は同社約款には一切目を通していないから約款でリスク告知をしているかどうかも知らない)。
そうした前提でパスモが強調した「PASMOの特徴」の5つを検証する(パスモのパンフレット3ページに記載。なおホームページで紹介されている「PASMOの特徴」もほぼ同一である(ホームページでは6つの特徴が紹介されているが、パンフレットに記載された5つの特徴のうち一つを二つに分けただけで実質的には同一である)。問題なのは同社が強調した「PASMOの特徴」の二つに重大なウソが書かれていることである(ウソは告知義務違反ではない。故意の虚偽情報を利用者に伝えた詐欺行為である。当然告知義務違反どころではない重大犯罪である)。が、フェアに検証するためパスモが強調した5つの「特徴」を一応列記しておこう。
★ 電車もバスもタッチするだけで。(定期入れから出さずに。PASMOを駅の改札機やバスの読み取り部にタッチするだけでご利用いただけます)
★ のりこしも、改札機の自動生産でスムースに。(チャージしてあれば、定期券ののりこし運賃も、改札機にタッチするだけで自動的に清算できます。精算機で精算する必要はありません)
★ お財布代わりに使えて、お買い物も便利。(下記マーク{省略}のあるお店や自動販売機でもご利用いただけます)
★ 紛失の際もご心配なく。(万一紛失しても再発行できるので、安心です。もよりの駅やバス営業所にお申し出ください。
★ カードを繰り返し使うから、環境にもやさしい。(チャージしたり定期券を継続購入したりすれば、同じ1枚のカードを繰り返し使えます)
もう賢明な、このブログの読者はパスモが主張する「特徴」すなわちPASMOのメリットが、利用者にとってのメリットではなく、事業者すなわちパスモと鉄道会社、オートチャージをする電鉄系クレジット会社にとってのメリットでしかなく、事業者メリットのあくなき追求のためには利用者の犠牲もやむなしという判断が最初から事業者3者の合意のもとになされていた(実はPASMOの危険性については電鉄会社もクレジット会社も熟知していたことを私は既に確認している)ことから、PASMO利用者を食い物にしてきたのはパスモだけでなく、電鉄会社も電鉄系クレジット会社も共同正犯なのである。
もう賢明な読者はしつこいと思われるかもしれないが、パスモが強調した5つの「特徴」のうち3番目と4番目がPASMOの最大の問題であることを最後にもう一度再確認しておく。
まず3番目。「お財布代わりに使えて、お買い物にも便利」という事業者にとってのメリットは、PASMO利用者の全く知らされていない巨大なリスクの上に生じていることは、すでに書いた私が受けた被害で明らかである。私が盗まれたPASMOは駅に盗難にあったことを届け、使用停止処置を取ってもらったにもかかわらず、実際にオートチャージが不可能になるのも、またチャージされた金で物品を購入できなくなるのも翌日の午前0時からで、それまではPASMOの紛失・盗難届が出されていてもPASMOの不正使用はストップできないのである。電子マネーは最近携帯電話などいろいろな形で普及しつつあるが、電子マネーのチャージはその所有者しか知らない暗証番号を使わないとできないのが一般的である。もし携帯電話を拾った人が暗証番号など知らなくても自由にチャージ出来たりしたら社会的に大問題になる。PASMOはまさにそういう性質の電子マネーなのだ。不特定多数の第3者が全く自由に、ただ駅の改札を通過するだけでチャージでき、しかもPASMOに内蔵されているICチップに記録されている真の所有者の確認も受けずに本物の現金と同様に使えてしまうのである。こんな危険極まりない電子マネーを経済産業省はなぜ認可したのか不思議だ。
次が4番目の「紛失の際もご心配なく」という虚偽記載である。最近大手スーパーはクレジットカードで支払いをする時、一定の金額まではノーチェックでOKになっている。クレジットカードの場合はすでに書いたが紛失あるいは盗難の届けをクレジット会社にすれば、過去2ヶ月間に不正使用された金額はすべて補償されることになっている。だからスーパーも一定の金額までの支払いについてはノーチェックでクレジットカードの利用を認めているのである。ところがPASMOの場合、紛失あるいは盗難によって第3者が不正使用しても、一切補償がない。それなのに「紛失の際もご心配なく」と、いけしゃあしゃあとウソをついているのである。これは船場吉兆などの賞味期限偽造をはるかに上回る悪質極まりない虚偽記載である。なぜか。船場吉兆が売った賞味期限切れの食品は、船場吉兆の料理長がいつまでだったら間違いなく腐ったり食中毒を起こしたりはしないという絶対の自信を持って賞味期限を改ざんしていた。だから賞味期限切れの船場吉兆の食品で食中毒を起こしたといったケースは一つもない。それでも船場吉兆は、客が食べ残した料理を使い回ししていたことも発覚し、廃業に追い込まれた。その船場吉兆のケースに比べ、パスモはPASMOが不正使用されないためのセキュリティ策も一切整備せず、クレジットカードのように不正使用された時の補償もせず、「紛失の際もご心配なく」と謳ったのである。船場吉兆とどっちが悪質か、もはやこれ以上多言の必要はあるまい(了)
8月19日、私はフィットネスクラブで財布を盗難された。盗難された財布の中には記名式PASMOカードを入れていた。記名式PASMOは私鉄各駅の券売機で購入できる無記名式カードと異なり、記名本人しか使えないことになっており、チャージ残高が2000円を切った時点で、記名式PASMOを発行した私鉄の系列クレジット会社が発行したクレジットカードから原則3000円が自動的にチャージされる仕組みになっている。確かに便利な仕組みと言えなくはない。
ただしその便利さは、PASMOを紛失したり、盗まれたりしないことが前提で、万一紛失したり盗まれたりした途端、とんでもない犯罪誘発機能に変質するのである。
私が3月中旬、私の住居の最寄り駅の構内で記名式PASMOの勧誘をしていたクレジット会社の営業社員から説明を受けた内容は次の3点である。
① クレジットカードとオートチャージ機能付きのPASMOを同時に申し込めばなにがしかのポイント(その私鉄系のデパートやスーパーで現金同様に使用できる金額の付与)が貰える。
② オートチャージの機能が付いているので、いちいち券売機で現金チャージする面倒くさいことをしなくてもよい。
③ 従来のパスネットは私鉄でしか使えなかったが、PASMOはJRでも使える。
実はPASMOにはもう一つのメリットがあって、財布や定期入れの中に入れたまま改札機の読み取り部にタッチすればいいのだが、その説明がなかったため、かなりの期間私はPASMOを財布から出して読み取り部にタッチしていた。そのことはクレジット会社の説明責任を問うほどのことではない。問題はPASMOがより便利になったパスネットとは決定的に違う、という危険性を説明しなかったことである。だがその責任はクレジット会社にあるのか、それともPASMOという極めてリスキーで不正使用を防止する機能がゼロの、実質的に金融機能を持った商品を発売しながら、クレジット会社に説明責任を果たす義務を求めなかったパスモにあるのか、それはPASMOの金融商品としての機能を管轄する経済産業省(列車の運賃支払い機能は国土交通省の管轄)の判断に任せるしかないが、私は全責任はパスモが負うべきだと考える。ただしPASMOの発行を行っている電鉄会社及びその電鉄系のクレジット会社もPASMOの危険性を熟知しながら自己の利益のためにPASMOのリスク説明を意図的にしてこなかったことがはっきりしたので、この2社もパスモの共同正犯である。その理由は後で詳しく述べる。
さて券売機で購入する無記名式PASMOは07年3月18日からサービスが開始されていたが、私が申し込んだカードは、まずクレジットカードは4月5日に発行され(これは確認済み)、PASMOは申し込んでから約1ヶ月後ごろに発行されたという(これは大手私鉄の駅員の証言)。
その後、これも私の責任だが、今回フィットネスクラブで盗難にあう以前に財布を紛失したことがある。。たぶんどこかで落としたか、どこかの店で買い物をした後財布からお金を出して支払いをしたあと、財布をそのままレジの前に残して立ち去り、レジ係の店員もそれに気づかず次の客がちゃっかりいただいたのかもしれないと思うのだが、その辺の記憶が定かでないため、泣き寝入りするしかなかった。幸いだったのは財布に少額の金しか入れていず、この時はPASMOを不正使用されることもなかった。ただ何枚かのクレジットカードも財布に入れていたためクレジット会社に連絡し、使用停止を伝えて再発行を申し込んだが、クレジット会社によっては再発行手数料525円がかかると言われ、「ではカードの使用停止だけお願いします。再発行はしていただかなくても結構です」と言い、事実上そのクレジットカードの解約をしたことがある。それ以降、クレジットカードの再発行手数料がかかるカードは財布に入れないようにしている。基本的に電鉄系のクレジットカードは私が調べた限りではすべて再発行手数料がかかるようで、電鉄系カードはその電鉄系デパートやスーパーで買い物をする目的がない日は財布に入れないようにしたほうがリスク回避につながる。その分例えば家電量販店などでかなりの高額商品をクレジットカードで購入する場合、私は自分の財布に入れている再発行手数料がかからないカードを使うことになるから、再発行手数料を取るカードは結果的にビジネスチャンスを逃がすことになる。そうしたことも承知で電鉄系カード会社は再発行手数料を取ることで自らビジネスチャンスを放棄しているのだろうから私がとやかく言うべきことではない。だから私はPASMOのオートチャージ用の大手私鉄系のクレジットカードは財布に入れていなかった。偶然といえば偶然だが、こうした私のリスク回避策からパスモの、豊田商事に匹敵するするといっても過言でない悪質な商法がすべて明らかになったのである。
すでに書いたが、PASMOは単にパスネットをより便利にした列車運賃の自動支払い機能だけを持ったカードではなかった。そのことを私が知ったのは財布を盗難された8月19日である。その当日PASMOを発行した駅に盗難届を出した時、実はPASMOは「電子マネー」だったことを初めて知ったのだ。つまりPASMOにチャージされている残高金額の範囲で、PASMOの残高金額を読み取れる装置を備えたコンビニや自動販売機で、本人確認をされずPASMOで何でも買えるのだ。しかもチャージ残高が2000円を切った時点で、PASMOで駅の改札を通過した途端3000円が自動チャージされ、そのチャージ金額の限界は1日2万円という大金だということも初めて知らされた。
ではその自動チャージをストップできる方法があるのか、というと、それがまったくないのである。
実際に私が財布の盗難にあった日の。損害を最小限にとどめるためにとった行動を時系列で明らかにする。ここで私が盗難にあった時点では私はPASMOが実は「電子マネー」であって、しかもクレジットカードのように紛失した(あるいは盗難された)時点から2ヶ月以内にクレジット会社に連絡すれば、その間にカードが不正使用されたとしても損害はクレジット会社が補償してくれるようなリスク防止策が全くとられていないということを、一切どこからも(パスモからもクレジット会社からも)知らされていなかったことをハッキリしておく。
私がその日(8月19日)とった行動を時系列で明らかにする。
① まず財布に入れていた3枚のクレジットカードの発行会社に被害にあったことを伝え、カードの使用停止と再発行を依頼した。
② 財布に入れていなかったため手元にあったPASMOオートチャージ用の電鉄系クレジット会社に電話してPASMOが盗難にあったことと、クレジットカードは無事であることを伝えた。PASMOを盗難されたことで何か不利なことが生じるのではないかという予感がしたからである。しかし、クレジット会社の社員は私が大変なリスクにさらされていることを一切教えてくれず、その電鉄の最寄り駅に届けて再発行の手続きをとるように、と言ってくれただけだった。
③ クレジット会社社員のアドバイスによりPASMOについては何のリスクもないと判断し、交番に行って被害届を出し、最後にその電鉄の駅に行ってPASMOの使用停止の手続きを取った。その時はじめて実はPASMOが「電子マネー」で、PASMOにチャージされている金額の範囲でコンビニなどで現金と同様に物品が買えるという事実を知った。びっくりした私はいまPASMOにチャージされている残高を調べてほしいと頼んだが、明日にならないとわからないと言われ、腑に落ちないまま帰宅した。
④ 翌日(20日)駅から電話があり、現在のチャージ残高が840円であることを知った。私が盗難にあう前のチャージ残高はわからなかったので、いくら不正使用されたのか知りたいと思い、PASMOの使用履歴を調べてほしいと頼んだが、PASMOの再発行の手続きを取らないと調べられないと言われ、釈然としないまま、再発行の手続きを保留にすることにした。なお再発行には1000円かかるということだった(カード代500円+再発行手数料500円)。
⑤ その翌日(21日)、再発行手数料500円取られるくらいなら別の電鉄系でPASMOを新規発行すればカード代500円だけで済むし、その電鉄系のクレジットカードからのオートチャージ契約をすれば、カード代500円以上のサービスが得られるかもしれないと思い、某電鉄系クレジット会社に事情を話し、どんなサービスが得られるのか聞いたが、今は特別のサービスはしていないということだった。それでも再発行ではなく新規発行だからカード代500円だけですむということだったが、私が盗難にあったPASMOにチャージされている840円の残高は新規発行のPASMOに移行チャージすることはできないと言われた。しかもチャージ残高の840円は、PASMOを再発行しなければ戻してもらえないという説明も受け、だったらチャージ残高の840円は一体だれのものなのか、とパスモに対して初めて不信感を抱いた。このことがパスモの豊田商事に匹敵するくらいの悪徳商法を解き明かすきっかけになったのである。その悪徳商法を解明するため、駅で『PASMOご利用案内』なるパンフレットを入手し、PASMOのホームページでパスモがPASMOのリスクについてどれだけ情報開示しているか調べ始めた。
⑥ 実はこの間、私はPASMO問題にだけ没頭していたわけではなかった。少し前から預託金商法を野放しにしてきた政府の責任を追及するブログを書いていた。その記事『ネズミ講を禁止した政府はなぜ預託金商法を野放しにするのか』は25日に投稿したが、その続編『詐欺的預託金商法に手を貸した金融機関の罪』に取り掛かっていた。その最中の28日夕刻、盗難されたPASMOの電鉄の駅の主任からとんでもない電話がかかってきた。「小林さんが盗難届を出された時、小林さんのPASMOは明日午前0時までは使用停止できないという説明は受けましたか」と言うのである。
当初私は主任が何を言っているのかわからなかった。だから「どういう意味ですか」と聞いた。すると驚くべき返答が返ってきた。「実はPASMOはクレジットカードなどと違って、使用停止処置が即座にはできないんです。だから盗難にあった日の翌日午前0時までは盗難届を出されて、駅でPASMOの使用停止処置をとってもその日のうちなら駅の改札で限度額2万円まではオートチャージできますし、チャージされた金はPASMOが電子マネーとして使えるコンビニなどで物品を買えるんです。すぐクレジット会社にオートチャージ停止を申し出ていただければなりませんでした。そのことを担当者がご説明しなかったことは大変申し訳なく思います」
⑦ 私は茫然とした。「そんなバカな」というのが、その時抱いた最初の疑問だった。私は電子マネーを使ったこともないし、ほとんど知識もない。そこでとりあえずウィキペディアで「電子マネー」を検索してみた。ウィキペディアの解説の重要の部分を引用する。「電子マネーの発達によって、従来は紙幣や貨幣、あるいは各種クレジットカードやプリペイドカード・キャッシュカードといった様々な物品を一元管理して、携帯性が向上することが期待されているほか、決済の迅速化・確実性の向上も期待されている。他にも認証手段の導入により、紛失時の経済的損失の防止や個人認証手段としての利用、または既存のクレジットカードが持つ社会信用度(クレジット)照明手段など、様々な利便性も指摘される」こうした電子マネーの信頼性・利便性を100%否定してしまったのが電子マネーとしてのPASMOだった。PASMOが生み出した社会的損失は、PASMOの不正使用によって経済的損害を蒙った私のような個人の問題では済まない。私がこの事実を明らかにすることで電子マネーそのものの信頼性が根本的に失われ、セキュリティ問題が完全に解決できるまで少なくとも電子マネーの普及は10年は遅れることになるだろう。パスモとパスモの事業に加担した電鉄会社、電鉄系クレジット会社の罪は重い
⑧ そこでパスモと同社に加担した電鉄会社や電鉄系クレジット会社の消費者無視の悪徳商法を告発し、関係省庁やマスコミ、各政党に通告すべく、私のPASMOが不正使用されてからの経緯をブログで公表することに決めたのが30日の午後3時ごろ。で、私がPASMOとクレジットカードを同時に申し込んだ日を知るため、クレジット会社に電話したとき電話口に出た同社社員は、それまで何人ものクレジット会社社員と話をしてきたが、おそらく社内で一番PASMOのオートチャージの仕組みを熟知している社員だった。その人からまた驚くべき話を聞かされた。その社員の説明によるとクレジット会社のコンピュータとパスモのコンピュータはつながっていず、クレジット会社が私のクレジットカードの使用を停止してもPASMOのオートチャージを止めることはできないという信じがたいような説明を受けた。つまりいかなるセキュリティ対策もPASMOにはないという事実が明らかになったのである。その社員が言うには「だから私どもとしては駅に行って再発行の手続きを取ってくださいとしか言えないんです。当社にはあなたのPASMOの不正使用を止めるいかなる手段もないんです」。もはや何をか言わんや、である。
ここまでが私が財布を盗まれ、PASMOの不正使用を止められなかった経緯である。ここからパスモの悪質ぶりを、同社がパンフレットとホームページで公開している情報はPASMO利用者に対してフェアであるかどうかを明らかにしよう。結論を先に述べれば、もはやパスモは解体し、PASMOの不正使用によって損害をこうむった利用者に、同社の全役員が私財のすべてを投じてでも弁済するしか社会が許さないだろう。
まずこれまで述べてきたことだが、電子マネーとしてのPASMOにセキュリティ対策が全く施されていないことを箇条書き的に列記しておく。
① オートチャージ式PASMOは金融機関のキャッシュカードやクレジットカードと同じく記名式になっており、『PASMOご利用案内』(以下パンフレットと記す)の9ページに記名PASMOについて「記名人のみが利用できるPASMOです。紛失時には再発行できます」と説明され、その下には小文字で「購入時にお客さまのお名前・性別・生年月日・電話番号の登録が必要です」「紛失再発行には、手数料が必要です」と注意書きが明記されている。しかも駅員の説明によるとPASMOには金融機関のキャッシュカードのようにICチップが搭載されており(キャッシュカードのICチップはカード表面に搭載されているが、PASMOのICチップはカードの中に埋め込まれていて、当然不正使用を防ぐための個人情報が記録されているはずだが、実際には他人(私の場合は盗難者、つまり犯罪者)の不正使用を防止するためのセキュリティ対策は全くとられていない。しかも紛失・盗難の届けを駅に届けてもパスモのコンピュータは何十年か前の中古品のようで、即座にPASMOの使用(列車の運賃自動支払いおよび電子マネーとしてコンビニや自動販売機での物品購入)や改札機でのオートチャージを停止することはできない欠陥コンピュータであることも判明した。この重要なリスク情報はパンフレットやパスモのホームページのどこにも記載されていない。
② PASMOに多くの利便性があることは私も認める(ただし私がPASMOとオートチャージ用の電鉄系クレジットカードの発行を申し込んだときには、まだ電子マネーとして使える店や自動販売機がなかったからだと思うが、クレジット会社の社員から電子マネーとしての機能があるとの説明は受けていない。さらに電子マネーとして広く使用できるようになってからも、クレジット会社から送られてくる請求明細書にはいろいろな保険の勧誘パンフレットやツアー・物品販売のチラシは同封されているが、電子マネーとして広く利用されるようになったことの案内と、それに伴ってリスクも増大したが、リスク回避の手段は全く講じられていないことの注意義務はまったく果たされていなかった。ましてPASMO利用者の個人情報をすべて入手しているパスモからもそうした案内は一切なかった。これは完全に告知義務違反である。利用者一人一人にそうした案内をするにはコストがかかりすぎるというなら、駅の随所に大きなポスターを貼ってPASMOを財布に入れている人に危険性を告知すべきだった。だが、パスモには利用者のことを考慮する人(役員およびすべての社員)は一人もいないようだ。パスモは解体するしかないと、私が考えている最大の根拠である。パスモを社会的に評価できる健全な企業に立て直すには、利用者のほうに顔を向けた役員やかなりの権限を付与されている社員(部課長級)が最低でも数人はいないと無理だが、そういう人が皆無のパスモを健全化することは絶対に不可能である。
③ パンフレットにもホームページにも「PASMOの特徴」が書いてある。この個所でPASMOのメリットを強調するのは決して不正な行為ではない。どの会社も商品の「特徴」として強調するのはメリットだけでデメリットは別の個所に虫めがねを使わないと読めないような超小文字で記載するのが常套手段である。はっきり言えば商品の購入者や利用者にできれば知らせたくないことを、意図的に、購入者や利用者が読む気がしないような超小文字でしかも極めて難解な文章で記載している。そうした行為は、例えばソフトバンクの携帯電話の広告やNTTの番号案内の社員が相手先に直接つなぐサービスの手数料の案内を十分していなかったということで、公取委から摘発されたことは周知の事実である。また生保や損保の、加入者に不利になる可能性についての告知をパンフレットには明記せず、だれも読まないような約款に超小文字で難解な文章で記載してきたことも問題になり、今では加入者にとって不利になる可能性がある重大な情報はパンフレットで、しかもかなり強調して記載するようになった。そうした社会的風潮を私も重視し、パスモのパンフレットは31~42ページにわたって超小文字かつ難解な文章で約款を載せているが、この約款に記載されているかもしれないPASMO利用者へのリスク告知は一切無視することにした(実際私は同社約款には一切目を通していないから約款でリスク告知をしているかどうかも知らない)。
そうした前提でパスモが強調した「PASMOの特徴」の5つを検証する(パスモのパンフレット3ページに記載。なおホームページで紹介されている「PASMOの特徴」もほぼ同一である(ホームページでは6つの特徴が紹介されているが、パンフレットに記載された5つの特徴のうち一つを二つに分けただけで実質的には同一である)。問題なのは同社が強調した「PASMOの特徴」の二つに重大なウソが書かれていることである(ウソは告知義務違反ではない。故意の虚偽情報を利用者に伝えた詐欺行為である。当然告知義務違反どころではない重大犯罪である)。が、フェアに検証するためパスモが強調した5つの「特徴」を一応列記しておこう。
★ 電車もバスもタッチするだけで。(定期入れから出さずに。PASMOを駅の改札機やバスの読み取り部にタッチするだけでご利用いただけます)
★ のりこしも、改札機の自動生産でスムースに。(チャージしてあれば、定期券ののりこし運賃も、改札機にタッチするだけで自動的に清算できます。精算機で精算する必要はありません)
★ お財布代わりに使えて、お買い物も便利。(下記マーク{省略}のあるお店や自動販売機でもご利用いただけます)
★ 紛失の際もご心配なく。(万一紛失しても再発行できるので、安心です。もよりの駅やバス営業所にお申し出ください。
★ カードを繰り返し使うから、環境にもやさしい。(チャージしたり定期券を継続購入したりすれば、同じ1枚のカードを繰り返し使えます)
もう賢明な、このブログの読者はパスモが主張する「特徴」すなわちPASMOのメリットが、利用者にとってのメリットではなく、事業者すなわちパスモと鉄道会社、オートチャージをする電鉄系クレジット会社にとってのメリットでしかなく、事業者メリットのあくなき追求のためには利用者の犠牲もやむなしという判断が最初から事業者3者の合意のもとになされていた(実はPASMOの危険性については電鉄会社もクレジット会社も熟知していたことを私は既に確認している)ことから、PASMO利用者を食い物にしてきたのはパスモだけでなく、電鉄会社も電鉄系クレジット会社も共同正犯なのである。
もう賢明な読者はしつこいと思われるかもしれないが、パスモが強調した5つの「特徴」のうち3番目と4番目がPASMOの最大の問題であることを最後にもう一度再確認しておく。
まず3番目。「お財布代わりに使えて、お買い物にも便利」という事業者にとってのメリットは、PASMO利用者の全く知らされていない巨大なリスクの上に生じていることは、すでに書いた私が受けた被害で明らかである。私が盗まれたPASMOは駅に盗難にあったことを届け、使用停止処置を取ってもらったにもかかわらず、実際にオートチャージが不可能になるのも、またチャージされた金で物品を購入できなくなるのも翌日の午前0時からで、それまではPASMOの紛失・盗難届が出されていてもPASMOの不正使用はストップできないのである。電子マネーは最近携帯電話などいろいろな形で普及しつつあるが、電子マネーのチャージはその所有者しか知らない暗証番号を使わないとできないのが一般的である。もし携帯電話を拾った人が暗証番号など知らなくても自由にチャージ出来たりしたら社会的に大問題になる。PASMOはまさにそういう性質の電子マネーなのだ。不特定多数の第3者が全く自由に、ただ駅の改札を通過するだけでチャージでき、しかもPASMOに内蔵されているICチップに記録されている真の所有者の確認も受けずに本物の現金と同様に使えてしまうのである。こんな危険極まりない電子マネーを経済産業省はなぜ認可したのか不思議だ。
次が4番目の「紛失の際もご心配なく」という虚偽記載である。最近大手スーパーはクレジットカードで支払いをする時、一定の金額まではノーチェックでOKになっている。クレジットカードの場合はすでに書いたが紛失あるいは盗難の届けをクレジット会社にすれば、過去2ヶ月間に不正使用された金額はすべて補償されることになっている。だからスーパーも一定の金額までの支払いについてはノーチェックでクレジットカードの利用を認めているのである。ところがPASMOの場合、紛失あるいは盗難によって第3者が不正使用しても、一切補償がない。それなのに「紛失の際もご心配なく」と、いけしゃあしゃあとウソをついているのである。これは船場吉兆などの賞味期限偽造をはるかに上回る悪質極まりない虚偽記載である。なぜか。船場吉兆が売った賞味期限切れの食品は、船場吉兆の料理長がいつまでだったら間違いなく腐ったり食中毒を起こしたりはしないという絶対の自信を持って賞味期限を改ざんしていた。だから賞味期限切れの船場吉兆の食品で食中毒を起こしたといったケースは一つもない。それでも船場吉兆は、客が食べ残した料理を使い回ししていたことも発覚し、廃業に追い込まれた。その船場吉兆のケースに比べ、パスモはPASMOが不正使用されないためのセキュリティ策も一切整備せず、クレジットカードのように不正使用された時の補償もせず、「紛失の際もご心配なく」と謳ったのである。船場吉兆とどっちが悪質か、もはやこれ以上多言の必要はあるまい(了)