【緊急追記】皇位継承問題の有識者会議(政府の諮問)は憲法を無視した。
本文でも書いたように、皇位継承問題を審議していた有識者会議6人(実態はアホ会議)が22日、「最終報告」を出した。なぜアホ会議と決めつけたかはメンバー6人の中に憲法学者が一人も入っていなかったからだ。一人でも憲法学者が入っていれば、こんな「最終報告」はありえなかったはずだ。
まず女性皇族が「結婚後も皇族の身分を保持することとする」という結論である。皇族も妻妾制が認められない現在では、男性皇族が減少することは当たり前だ。その場合の対策は皇室の伝統に従えば結婚した女性皇族は一般国民になるのだから、その伝統を維持することを最優先するならば「皇室公務」を減らすしかない。「皇室公務」は絶対に保持しなければならないこともあるが、除去してもいいこともある。無意味な「皇室公務」を維持するために「結婚後の女性皇族は民間人になる」という皇室の伝統を破るのであれば、ほかにも破っていい「伝統」もあるのではないか。
私自身は本文でも書いたように、結婚後の皇族女性は、自身の家庭生活を最優先したうえで、時間が許す範囲で「アルバイト皇族」として皇室公務をお願いすることはいいと考えている。が、一代皇族として皇室公務を家庭生活を犠牲にしてまでお願いするのは人権無視もいい話だ。そんなことをやるなら、女性皇族には結婚を禁止したほうがまだいい。
この「最終報告」には、女性皇族については「現行制度下で人生を過ごされてきたことに十分留意する必要がある」という「但し書き」が加えられたが、「留意」するのは誰か。「留意」すべき条件も明らかでない。そうなると、女性皇族は結婚をためらわざるを得なくなる。国民の多くが懸念していた眞子さんの結婚が、こうした条件が付くことになると、事実上、国家権力によって「小室圭氏との結婚で皇室公務に支障が生じかねない」と阻止されることもありうる。
皇位継承については「男系男子」を絶対的条件にしている理由は「皇室の伝統」を最優先したからだろう。一方で「伝統」を絶対条件にして、他方では「伝統」を無視する――こんなご都合主義が罷り通っていいのだろうか。
さらに皇室典範では認められていない養子縁組を可能にして1947年に皇籍を離脱した旧宮家(11家)の男系男子に皇族復帰させるという「報告」だ。その一方「皇位継承資格を持たないこととすることが考えられる」という、これまた「但し書き」付きだ。現在、皇族の方たちは男女を問わず、ご自分の趣味の範囲で生物などに関する研究をされている。外交や安全保障、経済政策など政治に関係する研究はご法度だ。人権無視も極まれり、というしかない。政治権力を持ってはならないというのは天皇だけだ。天皇以外の皇族は、普天間基地の辺野古移設についての自由な発言や行動をすることは憲法でも禁じられていない。自然災害やコロナ感染拡大状態についての憂慮のお気持ちを公に発言することは禁じられていないが、政府の対策についての不信や不安の念を発言したり、文書化したりすることは許されていない。
そういうがんじがらめの生活を強いられている皇族に、いまでは完全な民間人になっている旧宮家の男系男子のだれが、いまさら政府の都合で皇族復帰するだろうか。しかも「皇位継承資格を持たないこととすることが考えられる」という微妙な表現、どう理解したらいいのか。
現在、皇室典範では皇位継承者は事実上、悠仁さまだけだ。憲法2条の「天皇の地位は国民の総意に基く」という規定は置いておくとしても、もし悠仁さまに男子の子供が授からなかった場合、どうするのか。その場合は旧宮家に属する男系男子を「皇位継承者」にしてしまうのか。そういう経緯で天皇になった人が「国民の総意に基づいた」と言えるのか。
「国民の総意」という憲法の規定は重い。かつて赤軍派のゲリラ行動によって日航機が乗っ取られたとき、時の福田総理は「人命は地球より重い」と、人質解放を条件にゲリラを北朝鮮に行かせた。欧米諸国からは「ゲリラに屈した」と非難されたが、人質救出を最優先した福田の判断を、私は高く評価している。「天皇の地位は国民の総意に基づく」という憲法の規定と、皇位継承権を男系男子に限定した皇室典範と、どちらが重いか、3歳の子供にもわかるはずだ。
なお、この件について私はNHKと朝日新聞に伝えたが「私の意見は言えません」との対応だった。「報道部門に伝えます」という言葉もなかった。「メディアは死んだ」(23日)
皇位継承についての議論がおかしな方向に進んでいる。なぜか。
安倍元総理は、憲法9条について、「憲法学者の6割が自衛隊は違憲だと主張している。国民の安全と国土を守るために命を懸けてくれている自衛隊員に対して大変気の毒だ。だから憲法に自衛隊を書き込むべきだ」と主張している。
確かに中学生でも、憲法の条文に照らせば自衛隊は違憲と考えるだろう。が、だからと言って自衛隊の存在を否定している人は狂信的な共産主義者を除いていない。かく言う私自身も自衛隊の方たちには感謝しているし、憲法に違反しているから失くすべきだなどとは毛頭考えていない。が、法律が憲法に違反しているケースは自衛隊だけではない。
現行憲法は戦争直後に制定されたし、戦中戦前の用語や慣習をそのまま継承しているケースも少なくない。日本の憲法はアメリカの憲法と同様「硬性憲法」と指摘されているように、改正条件が非常に厳しい。時代に合わせて変えるべきだというなら、9条だけでなく、憲法全文を洗い直すべきだと思うし、憲法審査会も国会議員だけでなく憲法学者も交えて1字1句に至るまで検討し直すべきだと思う。たとえば~
●憲法15条に書かれている「公務員」は「官吏」ではない。
わずか1年で辞任に追い込まれた菅前総理は就任早々コロナ禍対策と日本学術会議会員問題に直面した。いずれも安倍氏が積み残した問題である。コロナ禍対策は、菅氏も安倍体制を支える官房長官として熟知していたから、むしろワクチン接種を急速に進め、諸外国に比べてよくやった方だと私は思っている。
が、学術会議会員問題は、菅氏にとって「寝耳に水」の話だったと思う。はっきり言って、これは安倍案件だったからだ。誰だって、総理に就任早々、事を荒立てるようなことはしたくない。だから、6名の学術会議推薦会員を任命しないなどということは菅氏としてはやりたくなかったはずだ。が、安倍氏がすでに決めていたことで、だから当初菅氏は「私は何も聞いていない」と困り果てていた。が「本命」視されていた岸田氏を外して菅氏を後継指名してくれた大恩人の安倍案件をひっくり返すわけにもいかない。
で、やむを得ず、とんでもない憲法解釈を持ち出して「学術会議会員は特別国家公務員だから憲法15条の規定に従って、国民の代表である総理に任命権がある」と、とんでもない憲法解釈を披露した。しかも、その憲法解釈は内閣法制局が裏付けたと主張した。
が、憲法学者でも何でもない私が、内閣法制局職員とやり合って、その解釈が間違いであることを認めさせた。大体、内閣法制局はバカ集団だ。物事を論理的に考えることができない連中の組織だ。集団的自衛権の解釈にしても、そもそもデタラメだった。
集団的自衛権は国連憲章51条で国際的に初めて認められた「自衛手段」である。国連憲章は、国際紛争を軍事力によって解決してはいけないということを大前提に作られている。しかし、憲章に違反して武力によって国際紛争を有利に解決しようという国を防ぐ絶対的手段を国連が有しているわけではない。
言っておくが、国連憲章はあくまで国際間の紛争しか前提にしていない。国内の権力闘争、支配権争いには効力を及ぼさない。例えば朝鮮戦争やベトナム戦争はなぜ「戦争」と言われるか。戦争とは国際紛争を武力によって解決しようという行為であり、国内の支配権をめぐっての武力衝突は「戦争」とは言わない。現にアメリカが軍事介入したから朝鮮戦争とかベトナム戦争と呼ばれるようになったが、別にアメリカは朝鮮やベトナムと戦争したわけではない。
日本の敗戦後、中国の支配権をめぐって毛沢東軍と蒋介石軍が争ったが、だれもその争いを「中国戦争」とは言わない。が、第2次世界大戦でアメリカがまだ余力を残していたら、間違いなく米軍は蒋介石軍と一緒に毛沢東軍と戦っていただろうし、そうなっていたら「中国戦争」と命名されていた。
第2次世界大戦後、国内紛争に軍事介入してきたのはアメリカと旧ソ連だけで、本当の意味の戦争は4次に及ぶ中東戦争、イラン・イラク戦争、湾岸戦争、イラク戦争だけである。
国連憲章は、国際間の紛争(国と国との紛争)が生じた場合、国連安保理にあらゆる「権能」(経済制裁などの平和的手段および武力制裁)の行使を認めている。が、安保理には拒否権を持つ5大国が常任理事国として巨大な権限を与えられており、安保理が国際紛争をすぐには解決できないケースも想定された。
そのため国連憲章51条で、「国連安保理が紛争を解決するまでの間に限って」国連加盟国は自衛のための武力行使を容認することにしている。その武力行使の手段として自国の軍事力(個別的自衛権)だけでなく、同盟国や友好国、あるいは集団的自衛集団(NATOなど)に協力を求める権利(これが集団的自衛権)を認めている。日本の場合でいえば、日本が他国から不当な攻撃を受けた場合、自衛隊という日本の軍事力の行使だけでなく、同盟国であるアメリカに軍事的支援を要請できる権利を日米安全保障条約によって既に持っている。集団的自衛権とは、あくまで自国を防衛するために同盟国や友好国に「助けてよ」とお願いできる権利のことであり、他国を軍事的に支援する「他衛権」を意味してはいない。中学生以下の知能しか持っていないのが内閣法制局なのだ。
同様に、「総理に任命権がある」と解釈した内閣法制局の解釈もバカ丸出しである。その解釈の根拠にした憲法15条は戦前戦中の用語をそのまま引き継いでいるため、内閣法制局はとんでもない解釈をしてしまった。
憲法15条の全文を読んでみろ。こうある。
公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。
② すべて公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない。
③ 公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。
④ すべて選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない。選挙人は、その選択に関し公的にも私的にも責任を問はれない。
確かに国会議員や地方自治体の首長や議員は特別職の国家公務員や地方公務員である。日本学術会議会員も特別職の国家公務員ではあるが、議員や首長ではないから「普通選挙」で選ばれているわけではない。だいいち、憲法15条で定めている「公務員の選定」方法は普通選挙であり、「罷免」方法はリコール権である。大統領制と違って日本の総理大臣が国民の代表と言えるかについての疑問もあるが、仮に国民の代表だとしても、では総理大臣に国会議員の罷免権があるのか。そんな権利があるなら、野党議員は全員罷免してしまえ。
言っておくが、内閣法制局は完全に私の論理に屈服した。当たり前の話だ。中学生だって、私の論理を全員認める。頭は生きているうちに使え。
なお、いま一般に私たちが理解している「公務員」は憲法では「官吏」と書かれている。つまり戦前戦中の用語をそのまま踏襲してしまったために、とんでもない解釈が生まれたということ。
頭は生きているうちに使うべきだが、「バカに付ける薬はない」ともいう。
●ウルトラ右翼は日本から消えろ!
本題に入る。いま皇位継承問題について政府の諮問機関である「有識者会議」が議論している。
ここで言う「有識者」とはバカ丸出しの代名詞である。なぜか。有識者会議のメンバーは6人だが、その中に憲法学者が一人も入っていない。天皇の地位や権限はすべて憲法によって定められているのに、憲法学者が皇位継承問題を論じる有識者会議に一人も入っていないのだ。とりあえず、現在のメンバーを列記する。(学者についてカッコ内は専門分野)
座長 清家篤・元慶大塾長(労働経済学)
大橋真由美・上智大教授(行政法)
冨田哲郎・JR東日本会長
細田雄一・慶大教授(安全保障)
宮崎緑・千葉商科大教授(国際政治)
中江有理・女優、作家
この6人が皇位継承に関する有識者会議のメンバーに選定されたのは今年3月16日。大学教授(元を含む)は4人いるが憲法学者は一人も入っていない。憲法学者を入れるとウルトラ右翼の政治家にとって不都合が生じるからだ。自衛隊については「違憲」と考える憲法学者は安倍氏によれば6割だそうだが、「男系男子」にしか皇位継承権を認めていない皇室典範についてはおそらくほぼ100%の憲法学者が違憲と考えているだろう。まず憲法が天皇についてどういう位置づけをしているか、見てみよう。
第一章 天皇
〔天皇の地位と主権在民〕
第一条 天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。
〔皇位の世襲〕
第二条 皇位は、世襲のものであつて、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する。
〔内閣の助言と承認及び責任〕
第三条 天皇の国事に関するすべての行為には、内閣の助言と承認を必要とし、内閣が、その責任を負ふ。
〔天皇の権能と権能行使の委任〕
第四条 天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない。
2 天皇は、法律の定めるところにより、その国事に関する行為を委任することができる。(以下略)
第2条により「皇位は世襲」と定められている。あらゆる辞書を調べても「世襲」の対象は「子孫」である。皇位継承権を「男系男子」に限定している皇室典範(国会で定めた法律)によれば、現在の皇位継承順位は ①秋篠宮(上皇の子孫ではあるが天皇の子孫ではない) ②悠仁さま(上皇及び秋篠宮の子孫ではあるが天皇の子孫ではない) ③常陸宮(上皇の弟だが、天皇の子孫ではない。天皇にとっては叔父にあたる) つまり現在の皇位継承権者には天皇の子孫は一人もいないのだ。次にあらゆる差別を禁じた憲法14条1項を見てみよう。
すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
憲法14条には「但し、皇位継承権については、この差別禁止の規定から除外する」とは一切書かれていない。14条だけではなく、いかなる憲法の条文にも書かれていない。
現在は天皇も「国民」である。皇室典範という法律を憲法に優先するのであれば、あらゆる国民に対して性差別を憲法に明記すべきだ。たとえば、女性には「遺産相続権を認めない」などだ。そんなことができるか。ど阿呆者ども!
●過去の「伝統」はどうやって継承されてきたか?
ウルトラ右翼のバカどもは、「男系男子継承」は皇室の伝統だという。が、そういう継承は皇室に限ったことではない。大小名をはじめ武家もそうだった(商家や農家については知らない)。
NHKの大河ドラマに『おんな城主 直虎』は、井伊家の一人娘のおとわは名を直虎と改め男装して井伊家の存続のため獅子奮迅の活躍をする物語だが、実際、少なくとも徳川時代には「男系男子」の後継ぎがいない大小名、武家は取り潰しになった。天皇家の場合も、正妻に男子が生まれなかった場合、公家が競って自分たちの娘を天皇に妾として差し出し男子の継承者を生ませた。男子の継承者が幼いうちに天皇が亡くなられた場合は、やむを得ず直系の女性がピンチヒッターとして天皇の座に就いた。
さあ、そこで大バカどものウルトラ右翼に聞くが、天皇の子孫以外で天皇になった男子がいたか。悠仁さまは現天皇にとっては甥にあたる。甥が皇位を継承してケースがあったのか。
まして悠仁さまに男子が授からなかった場合、もう血筋という面からするとほとんど赤の他人同然になっている百年以上も前の男系男子を探し出して天皇に据えるなどというケースが過去あったのか。だいいち、そんな人間を探し出して天皇にしても、国民がいまの皇族の方たちに抱いている敬愛の念を抱けるか。少なくとも私には無理だ。
皇族の方が少なくなりご公務に支障が出ていることは私にもわかる。だったら、皇族の方々の負担を軽減するためにご公務を減らせばいいだけの話だ。女性皇族が結婚されれば皇族から離れるというのも、皇室の伝統ではなかったか。
結婚して皇族から離れた元女性皇族の方に、ご自分の生活に負担にならない範囲でパート皇族としてご公務を手伝っていただくのはいいと思うが、一生皇族として縛り付けるのは「ご都合主義」もいいところだ。
まして旧宮家の男系男子をいまさら皇族に仕立て上げて、果たして皇族としての品位を持っていただけるのか。仮に私が旧宮家の血筋をひいていたとしても、「今日から立ち居振る舞い、皇族としての品位を汚さない生活をしてくれ」と言われても不可能だ。居酒屋にもカラオケにも行けない、ゴルフも自由にはやれない――そんな生活、まっぴらだ。
大バカどものウルトラ右翼よ。お前ら自身が、ある日突然、皇族になったとして、皇族にふさわしい生活ができるとでも思っているのか。
メディアの世論調査によれば、国民の多くは「次の天皇は愛子さまがいい」と考えている。憲法第1条にも「この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く」と明記されている。「日本国民の総意」に基づかず、ウルトラ右翼が勝手にでっち上げた「皇位継承の伝統」を重視したら、いつか日本から天皇を含む皇族がいなくなる。「国民から敬愛されない皇室になんか、国民の税金を使うな」という声が必ず大きくなる。そういう事態を一番喜ぶのは日本共産党だけだ。
本文でも書いたように、皇位継承問題を審議していた有識者会議6人(実態はアホ会議)が22日、「最終報告」を出した。なぜアホ会議と決めつけたかはメンバー6人の中に憲法学者が一人も入っていなかったからだ。一人でも憲法学者が入っていれば、こんな「最終報告」はありえなかったはずだ。
まず女性皇族が「結婚後も皇族の身分を保持することとする」という結論である。皇族も妻妾制が認められない現在では、男性皇族が減少することは当たり前だ。その場合の対策は皇室の伝統に従えば結婚した女性皇族は一般国民になるのだから、その伝統を維持することを最優先するならば「皇室公務」を減らすしかない。「皇室公務」は絶対に保持しなければならないこともあるが、除去してもいいこともある。無意味な「皇室公務」を維持するために「結婚後の女性皇族は民間人になる」という皇室の伝統を破るのであれば、ほかにも破っていい「伝統」もあるのではないか。
私自身は本文でも書いたように、結婚後の皇族女性は、自身の家庭生活を最優先したうえで、時間が許す範囲で「アルバイト皇族」として皇室公務をお願いすることはいいと考えている。が、一代皇族として皇室公務を家庭生活を犠牲にしてまでお願いするのは人権無視もいい話だ。そんなことをやるなら、女性皇族には結婚を禁止したほうがまだいい。
この「最終報告」には、女性皇族については「現行制度下で人生を過ごされてきたことに十分留意する必要がある」という「但し書き」が加えられたが、「留意」するのは誰か。「留意」すべき条件も明らかでない。そうなると、女性皇族は結婚をためらわざるを得なくなる。国民の多くが懸念していた眞子さんの結婚が、こうした条件が付くことになると、事実上、国家権力によって「小室圭氏との結婚で皇室公務に支障が生じかねない」と阻止されることもありうる。
皇位継承については「男系男子」を絶対的条件にしている理由は「皇室の伝統」を最優先したからだろう。一方で「伝統」を絶対条件にして、他方では「伝統」を無視する――こんなご都合主義が罷り通っていいのだろうか。
さらに皇室典範では認められていない養子縁組を可能にして1947年に皇籍を離脱した旧宮家(11家)の男系男子に皇族復帰させるという「報告」だ。その一方「皇位継承資格を持たないこととすることが考えられる」という、これまた「但し書き」付きだ。現在、皇族の方たちは男女を問わず、ご自分の趣味の範囲で生物などに関する研究をされている。外交や安全保障、経済政策など政治に関係する研究はご法度だ。人権無視も極まれり、というしかない。政治権力を持ってはならないというのは天皇だけだ。天皇以外の皇族は、普天間基地の辺野古移設についての自由な発言や行動をすることは憲法でも禁じられていない。自然災害やコロナ感染拡大状態についての憂慮のお気持ちを公に発言することは禁じられていないが、政府の対策についての不信や不安の念を発言したり、文書化したりすることは許されていない。
そういうがんじがらめの生活を強いられている皇族に、いまでは完全な民間人になっている旧宮家の男系男子のだれが、いまさら政府の都合で皇族復帰するだろうか。しかも「皇位継承資格を持たないこととすることが考えられる」という微妙な表現、どう理解したらいいのか。
現在、皇室典範では皇位継承者は事実上、悠仁さまだけだ。憲法2条の「天皇の地位は国民の総意に基く」という規定は置いておくとしても、もし悠仁さまに男子の子供が授からなかった場合、どうするのか。その場合は旧宮家に属する男系男子を「皇位継承者」にしてしまうのか。そういう経緯で天皇になった人が「国民の総意に基づいた」と言えるのか。
「国民の総意」という憲法の規定は重い。かつて赤軍派のゲリラ行動によって日航機が乗っ取られたとき、時の福田総理は「人命は地球より重い」と、人質解放を条件にゲリラを北朝鮮に行かせた。欧米諸国からは「ゲリラに屈した」と非難されたが、人質救出を最優先した福田の判断を、私は高く評価している。「天皇の地位は国民の総意に基づく」という憲法の規定と、皇位継承権を男系男子に限定した皇室典範と、どちらが重いか、3歳の子供にもわかるはずだ。
なお、この件について私はNHKと朝日新聞に伝えたが「私の意見は言えません」との対応だった。「報道部門に伝えます」という言葉もなかった。「メディアは死んだ」(23日)
皇位継承についての議論がおかしな方向に進んでいる。なぜか。
安倍元総理は、憲法9条について、「憲法学者の6割が自衛隊は違憲だと主張している。国民の安全と国土を守るために命を懸けてくれている自衛隊員に対して大変気の毒だ。だから憲法に自衛隊を書き込むべきだ」と主張している。
確かに中学生でも、憲法の条文に照らせば自衛隊は違憲と考えるだろう。が、だからと言って自衛隊の存在を否定している人は狂信的な共産主義者を除いていない。かく言う私自身も自衛隊の方たちには感謝しているし、憲法に違反しているから失くすべきだなどとは毛頭考えていない。が、法律が憲法に違反しているケースは自衛隊だけではない。
現行憲法は戦争直後に制定されたし、戦中戦前の用語や慣習をそのまま継承しているケースも少なくない。日本の憲法はアメリカの憲法と同様「硬性憲法」と指摘されているように、改正条件が非常に厳しい。時代に合わせて変えるべきだというなら、9条だけでなく、憲法全文を洗い直すべきだと思うし、憲法審査会も国会議員だけでなく憲法学者も交えて1字1句に至るまで検討し直すべきだと思う。たとえば~
●憲法15条に書かれている「公務員」は「官吏」ではない。
わずか1年で辞任に追い込まれた菅前総理は就任早々コロナ禍対策と日本学術会議会員問題に直面した。いずれも安倍氏が積み残した問題である。コロナ禍対策は、菅氏も安倍体制を支える官房長官として熟知していたから、むしろワクチン接種を急速に進め、諸外国に比べてよくやった方だと私は思っている。
が、学術会議会員問題は、菅氏にとって「寝耳に水」の話だったと思う。はっきり言って、これは安倍案件だったからだ。誰だって、総理に就任早々、事を荒立てるようなことはしたくない。だから、6名の学術会議推薦会員を任命しないなどということは菅氏としてはやりたくなかったはずだ。が、安倍氏がすでに決めていたことで、だから当初菅氏は「私は何も聞いていない」と困り果てていた。が「本命」視されていた岸田氏を外して菅氏を後継指名してくれた大恩人の安倍案件をひっくり返すわけにもいかない。
で、やむを得ず、とんでもない憲法解釈を持ち出して「学術会議会員は特別国家公務員だから憲法15条の規定に従って、国民の代表である総理に任命権がある」と、とんでもない憲法解釈を披露した。しかも、その憲法解釈は内閣法制局が裏付けたと主張した。
が、憲法学者でも何でもない私が、内閣法制局職員とやり合って、その解釈が間違いであることを認めさせた。大体、内閣法制局はバカ集団だ。物事を論理的に考えることができない連中の組織だ。集団的自衛権の解釈にしても、そもそもデタラメだった。
集団的自衛権は国連憲章51条で国際的に初めて認められた「自衛手段」である。国連憲章は、国際紛争を軍事力によって解決してはいけないということを大前提に作られている。しかし、憲章に違反して武力によって国際紛争を有利に解決しようという国を防ぐ絶対的手段を国連が有しているわけではない。
言っておくが、国連憲章はあくまで国際間の紛争しか前提にしていない。国内の権力闘争、支配権争いには効力を及ぼさない。例えば朝鮮戦争やベトナム戦争はなぜ「戦争」と言われるか。戦争とは国際紛争を武力によって解決しようという行為であり、国内の支配権をめぐっての武力衝突は「戦争」とは言わない。現にアメリカが軍事介入したから朝鮮戦争とかベトナム戦争と呼ばれるようになったが、別にアメリカは朝鮮やベトナムと戦争したわけではない。
日本の敗戦後、中国の支配権をめぐって毛沢東軍と蒋介石軍が争ったが、だれもその争いを「中国戦争」とは言わない。が、第2次世界大戦でアメリカがまだ余力を残していたら、間違いなく米軍は蒋介石軍と一緒に毛沢東軍と戦っていただろうし、そうなっていたら「中国戦争」と命名されていた。
第2次世界大戦後、国内紛争に軍事介入してきたのはアメリカと旧ソ連だけで、本当の意味の戦争は4次に及ぶ中東戦争、イラン・イラク戦争、湾岸戦争、イラク戦争だけである。
国連憲章は、国際間の紛争(国と国との紛争)が生じた場合、国連安保理にあらゆる「権能」(経済制裁などの平和的手段および武力制裁)の行使を認めている。が、安保理には拒否権を持つ5大国が常任理事国として巨大な権限を与えられており、安保理が国際紛争をすぐには解決できないケースも想定された。
そのため国連憲章51条で、「国連安保理が紛争を解決するまでの間に限って」国連加盟国は自衛のための武力行使を容認することにしている。その武力行使の手段として自国の軍事力(個別的自衛権)だけでなく、同盟国や友好国、あるいは集団的自衛集団(NATOなど)に協力を求める権利(これが集団的自衛権)を認めている。日本の場合でいえば、日本が他国から不当な攻撃を受けた場合、自衛隊という日本の軍事力の行使だけでなく、同盟国であるアメリカに軍事的支援を要請できる権利を日米安全保障条約によって既に持っている。集団的自衛権とは、あくまで自国を防衛するために同盟国や友好国に「助けてよ」とお願いできる権利のことであり、他国を軍事的に支援する「他衛権」を意味してはいない。中学生以下の知能しか持っていないのが内閣法制局なのだ。
同様に、「総理に任命権がある」と解釈した内閣法制局の解釈もバカ丸出しである。その解釈の根拠にした憲法15条は戦前戦中の用語をそのまま引き継いでいるため、内閣法制局はとんでもない解釈をしてしまった。
憲法15条の全文を読んでみろ。こうある。
公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。
② すべて公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない。
③ 公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。
④ すべて選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない。選挙人は、その選択に関し公的にも私的にも責任を問はれない。
確かに国会議員や地方自治体の首長や議員は特別職の国家公務員や地方公務員である。日本学術会議会員も特別職の国家公務員ではあるが、議員や首長ではないから「普通選挙」で選ばれているわけではない。だいいち、憲法15条で定めている「公務員の選定」方法は普通選挙であり、「罷免」方法はリコール権である。大統領制と違って日本の総理大臣が国民の代表と言えるかについての疑問もあるが、仮に国民の代表だとしても、では総理大臣に国会議員の罷免権があるのか。そんな権利があるなら、野党議員は全員罷免してしまえ。
言っておくが、内閣法制局は完全に私の論理に屈服した。当たり前の話だ。中学生だって、私の論理を全員認める。頭は生きているうちに使え。
なお、いま一般に私たちが理解している「公務員」は憲法では「官吏」と書かれている。つまり戦前戦中の用語をそのまま踏襲してしまったために、とんでもない解釈が生まれたということ。
頭は生きているうちに使うべきだが、「バカに付ける薬はない」ともいう。
●ウルトラ右翼は日本から消えろ!
本題に入る。いま皇位継承問題について政府の諮問機関である「有識者会議」が議論している。
ここで言う「有識者」とはバカ丸出しの代名詞である。なぜか。有識者会議のメンバーは6人だが、その中に憲法学者が一人も入っていない。天皇の地位や権限はすべて憲法によって定められているのに、憲法学者が皇位継承問題を論じる有識者会議に一人も入っていないのだ。とりあえず、現在のメンバーを列記する。(学者についてカッコ内は専門分野)
座長 清家篤・元慶大塾長(労働経済学)
大橋真由美・上智大教授(行政法)
冨田哲郎・JR東日本会長
細田雄一・慶大教授(安全保障)
宮崎緑・千葉商科大教授(国際政治)
中江有理・女優、作家
この6人が皇位継承に関する有識者会議のメンバーに選定されたのは今年3月16日。大学教授(元を含む)は4人いるが憲法学者は一人も入っていない。憲法学者を入れるとウルトラ右翼の政治家にとって不都合が生じるからだ。自衛隊については「違憲」と考える憲法学者は安倍氏によれば6割だそうだが、「男系男子」にしか皇位継承権を認めていない皇室典範についてはおそらくほぼ100%の憲法学者が違憲と考えているだろう。まず憲法が天皇についてどういう位置づけをしているか、見てみよう。
第一章 天皇
〔天皇の地位と主権在民〕
第一条 天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。
〔皇位の世襲〕
第二条 皇位は、世襲のものであつて、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する。
〔内閣の助言と承認及び責任〕
第三条 天皇の国事に関するすべての行為には、内閣の助言と承認を必要とし、内閣が、その責任を負ふ。
〔天皇の権能と権能行使の委任〕
第四条 天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない。
2 天皇は、法律の定めるところにより、その国事に関する行為を委任することができる。(以下略)
第2条により「皇位は世襲」と定められている。あらゆる辞書を調べても「世襲」の対象は「子孫」である。皇位継承権を「男系男子」に限定している皇室典範(国会で定めた法律)によれば、現在の皇位継承順位は ①秋篠宮(上皇の子孫ではあるが天皇の子孫ではない) ②悠仁さま(上皇及び秋篠宮の子孫ではあるが天皇の子孫ではない) ③常陸宮(上皇の弟だが、天皇の子孫ではない。天皇にとっては叔父にあたる) つまり現在の皇位継承権者には天皇の子孫は一人もいないのだ。次にあらゆる差別を禁じた憲法14条1項を見てみよう。
すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
憲法14条には「但し、皇位継承権については、この差別禁止の規定から除外する」とは一切書かれていない。14条だけではなく、いかなる憲法の条文にも書かれていない。
現在は天皇も「国民」である。皇室典範という法律を憲法に優先するのであれば、あらゆる国民に対して性差別を憲法に明記すべきだ。たとえば、女性には「遺産相続権を認めない」などだ。そんなことができるか。ど阿呆者ども!
●過去の「伝統」はどうやって継承されてきたか?
ウルトラ右翼のバカどもは、「男系男子継承」は皇室の伝統だという。が、そういう継承は皇室に限ったことではない。大小名をはじめ武家もそうだった(商家や農家については知らない)。
NHKの大河ドラマに『おんな城主 直虎』は、井伊家の一人娘のおとわは名を直虎と改め男装して井伊家の存続のため獅子奮迅の活躍をする物語だが、実際、少なくとも徳川時代には「男系男子」の後継ぎがいない大小名、武家は取り潰しになった。天皇家の場合も、正妻に男子が生まれなかった場合、公家が競って自分たちの娘を天皇に妾として差し出し男子の継承者を生ませた。男子の継承者が幼いうちに天皇が亡くなられた場合は、やむを得ず直系の女性がピンチヒッターとして天皇の座に就いた。
さあ、そこで大バカどものウルトラ右翼に聞くが、天皇の子孫以外で天皇になった男子がいたか。悠仁さまは現天皇にとっては甥にあたる。甥が皇位を継承してケースがあったのか。
まして悠仁さまに男子が授からなかった場合、もう血筋という面からするとほとんど赤の他人同然になっている百年以上も前の男系男子を探し出して天皇に据えるなどというケースが過去あったのか。だいいち、そんな人間を探し出して天皇にしても、国民がいまの皇族の方たちに抱いている敬愛の念を抱けるか。少なくとも私には無理だ。
皇族の方が少なくなりご公務に支障が出ていることは私にもわかる。だったら、皇族の方々の負担を軽減するためにご公務を減らせばいいだけの話だ。女性皇族が結婚されれば皇族から離れるというのも、皇室の伝統ではなかったか。
結婚して皇族から離れた元女性皇族の方に、ご自分の生活に負担にならない範囲でパート皇族としてご公務を手伝っていただくのはいいと思うが、一生皇族として縛り付けるのは「ご都合主義」もいいところだ。
まして旧宮家の男系男子をいまさら皇族に仕立て上げて、果たして皇族としての品位を持っていただけるのか。仮に私が旧宮家の血筋をひいていたとしても、「今日から立ち居振る舞い、皇族としての品位を汚さない生活をしてくれ」と言われても不可能だ。居酒屋にもカラオケにも行けない、ゴルフも自由にはやれない――そんな生活、まっぴらだ。
大バカどものウルトラ右翼よ。お前ら自身が、ある日突然、皇族になったとして、皇族にふさわしい生活ができるとでも思っているのか。
メディアの世論調査によれば、国民の多くは「次の天皇は愛子さまがいい」と考えている。憲法第1条にも「この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く」と明記されている。「日本国民の総意」に基づかず、ウルトラ右翼が勝手にでっち上げた「皇位継承の伝統」を重視したら、いつか日本から天皇を含む皇族がいなくなる。「国民から敬愛されない皇室になんか、国民の税金を使うな」という声が必ず大きくなる。そういう事態を一番喜ぶのは日本共産党だけだ。