小林紀興の「マスコミに物申す」

第三の権力と言われるマスコミは政治家や官僚と違い、読者や視聴者の批判は一切無視、村社会の中でぬくぬくと… それを許せるか

安倍総理の「核のない世界の実現」は口先だけでしかない。その根拠を明らかにする。

2019-08-13 00:12:27 | Weblog
 猛暑が日本全土を駆け巡っている今年の夏。その暑いさなかの広島と長崎で、今年も平和祈念式典が行われた。そして今年も安倍総理が式典に参列した。参列しただけでなく、挨拶までした。その挨拶が、広島・長崎市民の怒りを買った。総理は何のために広島・長崎まで足を運んだのか。
 長崎の平和祈念式典では、85歳になる被爆者が総理に向かって語り掛けた。「被爆者が生きているうちに核兵器廃絶の毅然とした態度を示してください」と。が、総理の挨拶は広島・長崎の市民の願いとは程遠いものだった。「核兵器国と非核兵器国の橋渡しに努め、双方の協力を得ながら対話を粘り強く促し、国際社会の取り組みを主導していく決意です」
 で、総理は具体的にどんな取り組みを主導してきたのか。北朝鮮な核開発に対してはトランプ大統領の代理人を務めて北朝鮮に対する経済制裁を強め、北朝鮮から「真っ先に火の海になるのは日本だ」と敵国宣言されながら、北朝鮮が米韓軍事演習に対する抗議としてアメリカには届かないが日本は射程範囲に入る可能性がある短距離弾道ミサイルとみられている飛翔体の発射に対して、アメリカには危険がないからと不問にするトランプ大統領に対して「それが同盟国の安全を保障しているアメリカのスタンスか」と文句の一つも言えないのが、日本の総理の認識なのだ。
 核兵器国と非核兵器国の橋渡しをする」のが日本の役割だというなら、どういう「橋渡し」をするのか、具体的に言ってもらいたい。そして実行してもらいたい。
いちおう核不拡散条約に加盟している国に対しては、「国連での約束事を守ってくれ」と言う権利はあると思うが、不拡散条約に加盟していない国、あるいは条約から脱退した国に対しては核兵器を開発するなという圧力をかける権限はどの国にもない。たとえば「永世中立宣言」をしているスイスは、核兵器を開発しているか否かは不明だが、少なくともスイスは国連には非加盟であり、したがって核不拡散条約にも参加していない。だから仮に自国が他国の核の脅威にさらされるような事態になったら核兵器を開発する権利がスイスにはある。
 私が言いたいのは、核不拡散条約は「我が国は『核兵器にない世界』の実現に向け、(中略)核兵器国と非核兵器国の橋渡しに努め、双方の協力を得ながら対話を粘り強く促し、国際社会の取り組みを主導していく決意です」(平和祈念式典での安倍発言)ことには全くなっていないということだ。実際、今月2日には米国防総省のエスパー長官がロシアとの間で締結していた中距離核戦力廃棄条約(IFN)から離脱して地上配備型の新型中距離弾道ミサイルの開発を行うと宣言、ロシアのプーチン大統領も5日、アメリカが新型核ミサイル開発を行うなら、ロシアも同様の取り組みを行うと発表した。言っておくが、この米ロの核軍拡競争の再開宣言は広島・長崎の平和祈念式典の直前のことだ。安倍さんは世界で唯一の被爆国の首脳として、核大国に対する自らの「国際社会への取り組み」がいかに無力であったのか、をまず広島・長崎の市民に対して率直に謝罪すべきだったのではないか。あっ、そうか。「取り組む」と言ったのは単なる言葉のあやで、実際には何もしませんというのが本音だったのか。日本語の使い方は難しく、交渉相手に対して「検討します」と答えるのは事実上の拒否宣言なのだが、外国人は「検討します」と言われればかなり肯定的な発言だと思ってしまう。日本人と外国人の交渉で生じるパーセプション・ギャップの原因でもあるのだが、少なくとも1国の総理が「核兵器のない世界の実現に向けて、国際社会の取り組みを主導している」と宣言した以上、具体的にどういう取り組みをしてきたか、明らかにすべきだろう。
 安倍総理は集団的自衛権行使のための安保法制を強行採決した時には、中国の海洋進出をめぐって「日本は極めて危険な安全保障環境にある」と主張した。また17年9月に衆院を解散した時は、その直前に北朝鮮が襟裳岬上空をかすめるミサイルを発射したことを理由に「日本は戦後最悪の安全保障環境下にある」と主張して衆院選で大勝した。だが、日本にとって安全保障上の最大のリスクは、日米安保条約の下で日本全土に米軍基地をつくらせてきたことだ。他国との同盟関係の構築は、言うなら諸刃の剣のようなもので、安全保障上のメリットもあるが、その反面リスクも負うということを意味する。トランプがしばしば「日米安保は不公平だ」と不満を漏らすように、日米安保は片務的条約で「日本が攻撃されたらアメリカは日本を守らなければならないのに、アメリカが攻撃されても日本は守る必要がない」ことになっている。では在日米軍基地が攻撃されたら、日本は指をくわえて見ていればいいのか。そんなことはありえない。だから北朝鮮の金委員長は「もし米朝間で軍事衝突が勃発すれば、真っ先に火の海になるのは日本だ」と断言しているくらいだ。もし本当に安倍総理が日本の安全保障の唯一の道として日米「片務的」同盟の維持を最重要視するなら、日本はアメリカのために米軍基地を提供することで、北朝鮮からこれだけの軍事的脅威を受けながらアメリカに尽くしているのだから、駐留米軍費用の負担を増額するどころか逆にアメリカから相当の金をもらってもいいはずだと、なぜ言えないのか。物事を論理的に考えることができない首相を抱くと、そういう屈辱に日本人は耐え続けなければならない。
 前にもブログで書いたが、第2次世界大戦後、いわゆる帝国主義戦争(植民地獲得のための戦争)は完全に世界から消えた。国連がその機能を発揮したからでもないし、アメリカが世界の警察官として侵略戦争を防いできたからでもない。あるいは人類が平和の大切さに気付いたからでもない。はっきり言って経済合理性の観点から、世界の列強が植民地支配は割に合わないことに気づいたからにすぎない。例えば日本が朝鮮を支配していた35年間の経済的収支はどうだったのか。誰もその検証をしていないので私も確実なことは言えないが、たぶん収支はマイナスだったのではないかと思う。
 戦争の目的は(特に帝国主義戦争の場合は)、植民地を獲得することによって経済的利益を得ることが最大の目的だったはずだ(戦後も絶えない宗教対立や民族間紛争は経済的目的だけではないと思う)。だが、植民地を支配して、そこで自国の経済的利益に貢献できる産業を興すには膨大な金がかかる。単に産業を起こすだけでなく、植民地の安全は宗主国が保証しなければならず、その費用も膨大に上る。実際、日本は朝鮮を支配下に置いていた35年間、産業近代化やそのためのインフラ整備、教育体制の充実などに膨大な費用を投じてきたはずだ。果たして経済的に割の合う事業だったのか。
 日本の朝鮮支配は戦争による侵略ではなかったから膨大な戦費と犠牲を払っての結果ではなかったが、それでも経済収支はマイナスだったのではないか。まして中国との戦争で満州国をつくったりした行為は、少なくとも経済的合理性の観点から考えると収支は膨大なマイナスだったはずだ。「侵略戦争は割に合わない」ことに、世界の列強はようやく気付いたのが、第2次世界大戦後、帝国主義戦争が姿を消した最大の理由である。現にイラク戦争で軍事的にはフセイン・イラクを壊滅させたアメリカは、フセインを殺した途端イラクから手を引いてしまった。イラクを植民地支配することが、経済的合理性に反することが分かったからだ。
 そう考えると、いま日本を植民地化して経済的合理性を確保できる国があるだろうか。現に日本を従属状態においているアメリカでも、日本の安全保障のための軍事費(在日米軍は日本の安全保障のためだけではないが)を支払いながら、日本からの貿易赤字に苦しんでいる。いまトランプ大統領が対日貿易圧力を強めたり、在日米軍経費の負担増を日本に要求しているのはそのためだ。
 だからこれまでも書いてきたように、日本がとるべき道は二つに一つしかない。一つは日米安保を双務的な関係にして、日本の駐留米軍の規模は自衛隊だけでは不足する最低限にして、過剰な在留米軍は直ちに撤退してもらう。そのうえで自衛隊もアメリカを守る姿勢を明らかにするためにアメリカに自衛隊基地を設ける。これでトランプも文句が言えないだろう。
 もう一つの方法は日米同盟だけに日本の安全保障を頼るのではなく、環太平洋の集団安全保障体制を構築する。もちろん日本が攻撃されたときだけ他の国々に日本を守ってくれと言った虫のいい話はできないから、他の国が攻撃されたときは日本もその国を一緒に守ることが前提になる。その場合、アメリカを排除する必要はない。
 問題は「核をどうするか」である。核兵器は現実には使えない。北朝鮮が国民の生活を犠牲にしてまで核・ミサイル開発の奔走するのは、核兵器を持っていることが強力な外交的手段になるからだ。ベトナム戦争は北ベトナムが勝利することで国家統一が成ったが、もし朝鮮戦争のように北と南が分裂して朝鮮半島のような状態になっていたらどうなっていたか。アメリカが南ベトナムと同盟を結び、一方、北ベトナムは中国も旧ソ連も「核の傘」で守らないということになれば、北ベトナムは北朝鮮と同様、核・ミサイル開発に狂奔していただろう。そうすることで自国の安全を守る姿勢を示さなければ、アメリカを後ろ盾とする南ベトナムに対抗できないからだ。
 それと同様、日本がアメリカの核の傘から外れた場合、実際には使えない中国やロシア、北朝鮮の核が大きな外交的脅威になる。その外交的脅威に対抗できる方法はほとんどない。実はこのことが日本の外交力にとって最大のジレンマなのだ。つまり実際にはあまり意味のない「アメリカの核の傘」を失う時、日本の外交力は著しく低下する。その場合、外交力を補う方法は二つしかない。
 一つは日本自ら核を持つことだ。日本は「非核三原則」を国是として掲げているが、それはアメリカの核で守られているという前提が失われれば核の脅威からの防御策には全くならない。日本自身が核を持つことによって、他国の核の脅威に対抗するしかない。
 もう一つは、自衛隊はせいぜいゲリラ的な他国からの防衛に対抗するための必要最小限の兵器しか持たず、自衛隊の本来の任務を、全世界の自然災害に対する救援部隊であると位置づけることだ。自然災害から避難民を救助するための装備は全世界でも最高度のものにする。そして実際、そういう活動を積み重ねていけば、日本と日本人、そして自衛隊に対する感謝と尊敬の気持ちが世界中に広まっていく。そういう国を攻撃できる国が世界にあるだろうか。
 幸い、日本はこれまでもこれからも民族対立や宗教紛争に巻き込まれるリスクは皆無と言っていい。いま世界の各地で生じている紛争は民族対立か宗教紛争だけと言ってもいい。クリミア半島や南沙諸島、カシミールなど、領有権問題をめぐる対立はあるし、日本も領土問題は竹島・尖閣・北方領土と三つ抱えている。だが日本の場合、軍事力でこれらの領土問題を解決することは不可能だ。またこれらの領土問題の解決には、アメリカの核の傘も何の役にも立たない。世界の平和のために日本が果たすべき役割を世界に示し、世界を味方につけるしかない。
 実際、核不拡散条約によって核保有が認められているのは米・露・中・英・仏の5か国だけだが、実際には北朝鮮だけでなくインド、パキスタン、イスラエル(※イスラエル自身は核保有を公言していないが、イスラエルの核保有は世界の常識である)などが核兵器を保有している。安倍総理が核不拡散条約を最重要視して、核兵器国と非核兵器国の橋渡しをするというなら、北朝鮮より早く核保有国の仲間入りをしているインド、パキスタン、イスラエルに核を放棄するよう圧力をかけるべきだろう。主張と行動がこれほど異っている総理を、私は見たことがない。
 少なくともトランプ大統領は大統領選挙での公約を何が何でも実現しようとばかげた努力をしている。ばかげているとは思うが、選挙での公約の実現に必死になっていることについては、そういう姿勢が国のリーダーなのだなと、評価しないわけではない。安倍さんが「核兵器のない世界の実現に向けて、核兵器国と非核兵器国の橋渡しに努め、双方の協力を得ながら対話を粘り強く尽くし、国際社会の取り組みを主導していく」と、かっこいいことを言うなら、せめてトランプのように実際にインドやパキスタン、イスラエルの核を放棄するよう、あらゆる手段で実現してもらいたい。何もしていないのに、あたかも努力しているかのようなふりをした演説を許しているのは政治家やメディアの責任でもある。そんな人が憲法を改正する…笑わせるのもいい加減にしてほしい。



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日本郵政グループの組織的詐欺はなぜ生じたのか? 昨年4月にNHKが報じていたことを「知らなかった」では済まされない。

2019-08-05 00:13:59 | Weblog
 かんぽ生命の不祥事が令和時代最初で、最大級の社会的問題になっている。なぜここまで不祥事が拡大してしまったのか。
 郵政3事業を束ねる日本郵政は、今年4月かんぽ株の一部を売り出してかんぽ株の保有比率を89%から65%程度に引き下げた。一気に全発行株数の4分の1の株を放出したことになる。この時期かんぽ株は上場以来の最高値水準にあった。問題は全国の郵便局局員が詐欺まがい(間違い。反社会勢力以上の詐欺行為)で高齢者をだまし、手数料稼ぎに奔走したことを、今年4月のかんぽ株放出時前に、日本郵政グループトップが知っていたか否かということにある。
 実は昨年4月24日、NHKは詐欺にあった被害者からの通報だけでなく相当数の内部告発を根拠に『クローズアップ現代』で、この詐欺商法を報道していた。今年ではなく、昨年だよ。しかもNHKは番組制作にあたり、郵政グループトップへの取材を申し入れていたが、取材に応じたのは日本郵便の佐野公紀常務執行役員で、佐野氏は取材に対して「信頼を失う行為が、少なくない数、起こっている。会社として非常に深刻。郵便局に対しての信頼を失ってはいけない。改めないといけない」と、NHKに寄せられた情報を肯定する発言をしている。昨年4月には日本郵便の常務執行役員が確認している社内の不祥事(また間違えた。反社会集団同様の詐欺行為)を、郵政グループのトップが全く知らずに今年4月に高値でかんぽ株を放出して、その株を購入した株主に対して巨額の損害を与えたことについての責任を取らないということは、日本郵政グループは山口組など暴力団以上の悪質詐欺集団と断定せざるを得ない。
 暴対法では末端の組員の犯罪行為に対しても、組トップの責任を追及できるように、いまなっている。反社集団そこのけの詐欺行為を組織的に行ってきたことが明らかになった以上、日本郵政グループに対しても暴対法を適用すべきだ。とまでは私も極論するつもりはないが、日本郵政グループトップの責任は免れ得ない。おそらくかんぽ生命株を購入した株主からは損害賠償請求の集団訴訟が起こされることは間違いない。
 ただ多少、日本郵政とくに中核の日本郵便には気の毒な面があったのも事実である。日本より早く郵便事業の民営化を始めてきたヨーロッパでも、郵便事業の赤字体質には悩まされてきた。例えば1994年に民営化されたスウェーデンは、同様に赤字に悩むデンマークと2009年に郵便事業を統合、直営郵便局を順次廃止して地域の食料品店やスーパーなどへの業務委託を進めると同時に(現在はほぼ100%業務委託を完了、直営郵便局は全廃されている。はがきや封書の料金も大幅にアップし、郵便物の集配も今では週1日に減らしている。これほどサービスを低下しても赤字は減らず、両政府からの補助金なしには事業継続が不可能になっている。
 国鉄民営化の結果を見てみよう。それまでは赤字垂れ流し路線でも、国や地方自治体が赤字を補填していたが、民営化によって自助努力で何とかしろ、ということになった。結果JRは赤字路線の廃止や第3セクターへの移行によって新幹線など儲かる路線にサービスを集中することにより経営体質を改善できた。第3セクター路線は国鉄時代の統一距離制乗車賃から切り離され、乗車賃の引き上げや地域の魅力を独自に盛り込むなど、国鉄時代とは一味違う経営努力によって黒字路線化に成功してきた。そうしたことが郵便事業にはできなかった。封書やはがきなどのユニバーサル・サービス事業は世界中どこでも統一料金制をとらざるを得ない宿命にあったからだ。
 通信というユニバーサル・サービス事業は、郵便物と電話の二つが主流だったが、いまはメールが加わり、しかも主流になりつつある。しかも郵便物にとってかつての競争相手だった固定電話は、道路1本隔てても隣接自治体地域への電話料金は市外料金が適用されている。固定電話の場合、地域ごとに設置されている交換機を経由するから、自動的に市外通話料金が計算されてしまうからだ。そうした地域料金制を郵便物の場合、採用できない。しかも郵便物の集配業務はほぼ100%労働集約型の業務だ。将来ドローンが集配業務を行うようになるかもしれないが、各家庭のポストへの配達は不可能になり、登録先のコンビニやスーパーでの集配にせざるを得なくなる。現在の郵便局はそのまま残すにしても、郵便局での郵便業務は激減できる。もちろん速達は廃止して(配達日を週1日にしている国は速達を廃止している)、小包を除き一般郵便物の料金は大幅にアップして統一する。小包の場合は現在でも料金を距離制にしている(郵便局の窓口でないと小包類は発送できないからだ)。
 そうやって郵便事業の赤字を解消しない限り、全国各地の郵便局は郵便事業の赤字を埋めることができない。かんぽ生命の詐欺商法が蔓延した根本的な原因は郵便事業の赤字体質をどうするかという政策を考えずに、ただ民営化して競争原理を持ち込めば郵便局のサービスもよくなり、体質も強化されるだろうと安易な考えで行った郵政民営化による。ノルマに追われ高齢者をだましてまでかんぽで利益を上げざるを得ない状況に職員を追い込んだのは、まさに政治の貧困による。 もちろん郵便局職員の大幅削減も避けられないし、統廃合も大胆に進める必要もあるだろう。これまで親方日の丸体質でやってきた付けは、当然払わなければならない。
 その一方で、はがきや封書の料金引き上げを規制してきた総務省も、発想を転換する必要がある。総務省の公務員もよく考えてもらいたい。先に書いたように郵便物の集配業務は、将来はドローンで行うようになるかもしれないが、現時点ではまだ典型的な労働集約型業務である。あなた方総務省の職員が、自分が郵便物を配達すると考えたとき、はがき1通62円、封書1通82円の報酬で配達業務をやれると思いますか。それも最終配達職員の手取り料金ではなく、最終配達するまでに相当のコストがかかっているはずで、仮に最終配達のコストを3分の2としてもはがき40円、封書55円程度の配達コストで郵便事業を賄えると思いますか。そういう状態を放置してきたことが、今回の組織的詐欺行為の底流にあったことを、総務省はしっかり認識してもらいたい。まず郵便物の集配コストにどのくらいかかっているかの徹底的調査と、現在の集配体制の見直しによるコスト削減、郵便局の統廃合やそれに伴う人員整理など、可能な限りの手を打って、将来も郵便物が減り続けることが必至な郵便事業をどう立て直すかの抜本的対策を構築することだ。
 なお、郵政トップの引責辞任は免れ得ないとしても、郵政グループを反社会集団にしてしまったことは、単に引責辞任だけでは済まされない。これほど多くの被害者を組織的に出した行為は、たとえ意識的な行為ではなかったとしても、その犯罪性を問わないということはありえない。少なくともNHKが昨年4月にかんぽ生命の詐欺的商法を明らかにしていながら、今年7月10日での記者会見でかんぽ生命の植平光彦社長は「4月の(かんぽ生命株)売り出しのタイミングで問題は認識していなかった」と責任逃れの発言をしている。少なくとも昨年4月にNHKはかんぽ生命の佐野常務執行役員の証言をとっている。佐野常務が承知していて、植平社長は知らなかったですませられる話か。
 ノルマに追われて高齢者に詐欺を働いた郵便局職員は、気の毒だとは思うが、自分が犯した犯罪行為でどれだけ多くの人を苦しめたか。人員整理の最初のターゲットになることは覚悟すべきだろう。ノルマに追われたあなたたちも被害者であることは私も認めないわけではないが、自分がノルマに追われて犯した罪は少なくとも法律が認める「正当防衛」ではない。

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