小林紀興の「マスコミに物申す」

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携帯電話の共同基地局構想がようやく実現するかも~

2023-11-30 07:00:56 | Weblog
11月30日、日本経済新聞が携帯電話の共同基地局建設に乗り出すことを明らかにした。私に言わせれば「いまさら」の感がないではないが…。

●共同基地局建設がなぜ今まで実現しなかったのか
実は私は10年以上前から「共同基地局」建設をブログでも提案してきたし、総務省の携帯電話担当部署にも提案してきた。
きっかけは2011年3月11日に発生した東日本大震災である。この時はまだ楽天は携帯電話事業に進出しておらず、携帯電話市場はNTTドコモ、au、ソフトバンク(Yモバイルを含む)の3社が独占していた。とくにドコモが圧倒的なシェアを誇っていたが(ドコモ回線をまた借りした格安携帯各社も含む)、被災地でのドコモ回線がパンク状態になり、数少ない公衆電話の前に長蛇の列ができた。
大震災の後、ソフトバンクがテレビCMで「一番つながりやすかったのはソフトバンク」とPRした。
で、私はソフトバンクの広報室に電話をして「ソフトバンクが一番つながりやすかったというのは事実かもしれないが、それはたまたまソフトバンクに割り与えられた電波帯に余裕があったからに過ぎない。もしこのCMを見てソフトバンクの利用者が急増して電波帯域の利用範囲を超えた場合、責任がとれるのか。自社の電波帯域を勝手に増やすことができるか、さもなければ一定の利用者数に達したら新規加入を断るとでもいうのか」と抗議した。
その後、ソフトバンクはこのCMをやめた。

と同時に、総務省の携帯電話事業担当部署にも電話して共同基地局建設を提案した。私の提案の具体的内容はこうだ。
① 何でもかんでも「民のほうが効率的」とは限らない。共同基地局の運営は民に任せてもいいが、共同基地局計画は官が主導したほうがいい。
② 従来のような電波帯の割り当て方法は廃止して、「早い者勝ち」で携帯電話の電波帯を利用させるべきだ。そうすれば東日本大震災の時にドコモの携帯電話がパンク状態になり、ソフトバンクはつながりやすいといった使い勝手の悪さも改善できる。
③ さらに、携帯各社の資金力に関係なく、極めて効率的に日本全国の隅々まで加入携帯電話会社を問わず利用者が公平に携帯電話を利用できるようにすべきだ。

その後、2022年4月23日、知床沖観光船沈没事故が生じた。もちろん最大の責任はしけの中「お客さんがいるから」と遊覧船「カズワン」の出港を強行させた有限会社知床遊覧船にあるが、この時船長が持っていた携帯電話はau。が、遭難海域はauの電波が届く基地局の範囲外だった。船長は乗客からドコモの携帯電話を借りて海上保安庁などとの連絡を試みたようだが、すでにエンジンは停止、観光船は浸水しつつあった。結局、乗客24人、船長、甲板員1人の計26人の尊い命が犠牲になった。
この時共同基地局が設置されていたら、船の沈没は免れ得なかっただろうけど、何人かの命は救われた可能性は否定できない。

●共同基地局は電波の割り当てをしてはならない
東日本大震災、知床沖観光船沈没事故の教訓として、携帯各社への電波の割り当ては絶対にしてはならない。
日本経済新聞社の記事によれば、住友商事が建設予定の共同基地局建設構想は、まず25年開催の大阪万博の会場に、高速通信規格「5G」向けに携帯各社に割り当てられた周波数に対応した共同基地局を設置し、その後、全国展開するという。
実はこうした事業は「プラットホーム・ビジネス」として地上波のテレビ等や放送衛星(BS、CS)ですでに行われている。また小田急電鉄はJR東日本の特急電車の乗り入れをかなり前から行っており、この場合は小田急電鉄の線路がプラットホーム化していることになる。
ショッピングセンターやデパートも専門店に売り場の専用使用を進めており、これも一種のプラットホーム・ビジネスと言える。また最近人気が高いアウトレットは売り場のすべてを専門店に専用使用させており、プラットホーム・ビジネスに特化した小売業と言える。
これらのプラットホーム・ビジネスは、例えばテレビの場合、あらかじめテレビ局に電波帯域を割り当てる必要がある。そうしないとテレビ各局は番組編成ができなくなるからだ。
また小売業の場合も、専門店に売り場面積を専用使用させないと、専門店は出店できない。
このように従来のプラットホーム・ビジネスはあらかじめ利用各社に電波帯や専門店の売り場スペースを確保する必要があるが、携帯電話の場合は携帯各社に使用電波帯域を割り当てなければならない理由がない。そういうケースに交通ICカードがある。
交通ICカード(スイカやパスもなど)は利用電車やバスに利用範囲を割り当てたりしていない。カードごとに利用交通機関の利用範囲を割り当てたりしたら、交通ICカードは絶対に普及しなかった。
だから携帯電話も交通ICカードのように、携帯電話の利用度(回数及び使用時間)に応じて共同基地局の運営会社(今名乗りを上げているのは住友商事1社だが)に使用料を支払うようにすればいい。そうすれば格安電話会社もドコモなど大手の電波帯域を借りる必要がなくなるし、サービス競争が激化して、そのメリットは確実に利用者に還元されるようになる。
また従来のように携帯各社が基地局を個別に設置した場合、携帯各社は基地局の整備、メンテナンスなどの年数千億円を投じざるを得ない。資金力が最も豊富なドコモが有利になるのは当然で、現に全国の基地局数もドコモが圧倒的に多い。ドコモはほぼ日本全国をカバーしているのではないだろうか。
また共同基地局も、新たに建設する必要性はあまりないと思う。携帯各社がすでに建設している基地局を効率的に利用して、携帯電話用の電波帯をすべてカバーできるように改良すればコストは劇的に安くなる。
ドコモは反発するかもしれないが、競争条件をフェアにするためにも、総務省が住友商事の共同基地構想を指導して携帯電話各社が公平に共同基地局を利用できるようにしてもらいたい。
さらに言えば、共同基地局の整備、運営は独占事業になるため、住友商事1社にゆだねるのではなく、少なくとも数社が出資する新会社を作らせるべきだと思う。とくにこの新事業には絶対に日本郵政を参加させるべきだ。全国を網羅している郵便局が携帯電話の効率的な利用についての簡易基地局になりうるからだ、