読売新聞が4月16日、社説欄の全スペースと政治面まで動員して年金制度を改革し、将来の福祉社会を確かなものにするための提言を行った。「その意気や良し」と評価したいのだが、当日の夜同紙の読者センターに電話して「『子どもが3歳になるまで保険料を免除すれば少子化対策としても有効だ』『困窮世帯には保険料を減免する』(いずれも要旨)など良い提言もあるが、不公平な年金制度になるような気がする」と申し上げた。電話に出られた方は「そういうご意見はかなりいただいていますが、厚生年金や共済年金と違って国民年金は収入に関係なく保険料が定額なので、低収入の方も無理なく年金に加入でき、老後の生活を十分とまではいかなくても、ある程度支えられることを目的に叩き台として提案したものです。多少不公平感をお持ちの方もいらっしゃいますが、その点をご理解いただければありがたいのですが」とていねいな説明をしてくれた。
同紙がそういう意図でこの提言をされたことは大いに結構だが、実現の可能性があるかどうか検証することにした。その結果を10日以上過ぎてからブログに載せることになったのはいったん投稿した記事がgooのコンピュータのトラブル(としか考えられない)で、私のブログページの「記事一覧」には投稿済みの記事としてちゃんと表記されているのに、考えられる限りのキーワードで片っ端から検索してみたが、どうやっても読売提言を検証した記事をブログ画面に出すことができず、何回かメールでgooに「私が投稿した記事を読めるようにしてほしい」と申し入れたのだが、返信内容はすべて「迷惑メールと判定し、受信を拒否しました」だった。で、いったんgooブログから退会し、新しいIDとパスワードで再入会したという経緯があり、もう一度投稿する羽目になったのである。
そこで読売提言を可能な限りフェアに検証する前提としてあらかじめ提言内容の基本的な部分を要約しておこう。
① 年金を受給するには、現在は最低25年保険料を払わなければならないが、受
給資格を得るための最低払い込み期間を10年に短縮する。
② 最低保障年金を創設し、10年間保険料を払って受給資格を得た人には月5万
円の年金を保障する。
③ 保険金を満期(40年間)払った人の年金を月7万に引き上げる(現在は6万
6千円)
④ このブログの冒頭で評価したようなきめ細かい援助をしても改革に必要な税財
源は3・2兆円ですむ。
では読売提言をベースにしながら中学生程度の(ひょっとしたら小学校高学年でもできるかもしれない)計算方法で検証することにする。ただしこの計算をする前提として、現在の保険料(月1万4410円)が今後も数十年続くことと、現在の日本人の平均寿命(81.9歳)がやはり今後数十年変わらないことを計算に必要な数値としたことをお断りしておく。さらに読売の提言を何度も読み直した結果、国民年金制度への加入期間を10年にするか満期の40年にするかは、国民の自由選択に任されているとしか解釈できないので、そのことも重要な要素として考慮したこともお断りしておく。
① 年金を受給できる平均期間は
81.9-64=17.9年間
② 加入期間を10年とした場合の保険料総額は
14410×12×10=172万9200円
③ ②の人が65歳以降17.9年間に受給できる年金総額は
5×12×17.9=1074万円
つまり172万9200円払えば1074万円も受給できることになる。掛け
金の6.2倍にもなる大盤振る舞いだ。
④ 次に加入期間を40年(満期)とした場合の保険料総額は
14410×12×40=691万6800円
⑤ ④の人が65歳以降17.9年間に受給できる年金総額は
7×12×17.9=1503万6000円
掛け金の2.2倍だ。
読売の政治面の記事によれば、年金改革提言は編集局、論説委員会などの専門記者による「社会保障研究会」が昨年来、外部の有識者らとの意見交換を通じてまとめたもののようだ。当然⑤までの計算ぐらいはしているはずで、保険金を10年払うのがやっとといった低所得者には、満期払える人と比べてそのくらいの優遇処置はすべきとお考えになったのだと思う。また満期払っても掛け金の2.2倍が戻ってくるのだから満期払える経済力のある人はちゃんと満期払うだろうという前提で提言されたのだろう。しかしここまでの計算なら中学生でなくても小学校高学年の子どもなら十分できる。そこで計算方法を中学レベルに引き上げて再検証してみよう。
⑥ 満期払える経済力のある人が、払い込み期間を10年でストップし、残りの3
0年間は保険金相当額を銀行に積み立て、その積み立て額を17.9年間、均
等に使った場合の計算をしてみよう。
★10年間の払い込み総額は②で計算したように172万9200円だ。
★残りの30年間の積み立て総額は(利息は無視)
14410×12×30=518万7600円
⑦ ⑥の人が月に使える金は
5(年金)プラス(518.7600÷17.9÷12)=7万4151円
つまり読売が英知を絞って計算した満期払い込み者が受給できる最高額の7万 円より⑥の選択をしたほうが毎月4151円も得をするのである。実はこの計
算の結果からとんでもない事態がほぼ100%の確立で生じる。
⑧ 社会保険庁の国民年金課によれば、現在老齢基礎年金を受給している人は24
01万人。ただしその2401万人中国民年金だけを受給している人の数は不
明ということだった。そこで総理府統計局が行っている国勢調査による20~
59歳の総人口6762万人の中で国民年金に加入しなければならない人(厚
生年金や共済年金に加入している人を除いた数)の総数1580万人の割合
(1580÷6762=23.4%)を老齢基礎年金受給者に当てはめると
2401×0.234=562万人
が現在の国民年金だけの受給者と考えてもいいだろう。
⑨ 将来も国民年金受給者の数に大幅な変化が生じないとすると、彼らが20~5
9歳までの40年間のうち10年だけ保険料を払った場合の支払い総額と65
歳以降に受給する年金の総額を計算してみよう。
★支払い総額 172万9200×562=9兆7181億円
★受給総額 1074×562=60兆3588億円
★国の負担額 60兆3588億-9兆7181億=50兆6407億
私の検証はこれで終わるが、読売は年金改革で必要になる税財源は、計算の根拠も明らかにせず、わずか3・2兆円ですむと主張した。今後は年金とか税制などきちんと計算しないとフェアな主張ができないことをご理解されたら、編集局や論説委員会が行った計算を中学生にチェックしてもらうことをお勧めして、このブログを終える。
同紙がそういう意図でこの提言をされたことは大いに結構だが、実現の可能性があるかどうか検証することにした。その結果を10日以上過ぎてからブログに載せることになったのはいったん投稿した記事がgooのコンピュータのトラブル(としか考えられない)で、私のブログページの「記事一覧」には投稿済みの記事としてちゃんと表記されているのに、考えられる限りのキーワードで片っ端から検索してみたが、どうやっても読売提言を検証した記事をブログ画面に出すことができず、何回かメールでgooに「私が投稿した記事を読めるようにしてほしい」と申し入れたのだが、返信内容はすべて「迷惑メールと判定し、受信を拒否しました」だった。で、いったんgooブログから退会し、新しいIDとパスワードで再入会したという経緯があり、もう一度投稿する羽目になったのである。
そこで読売提言を可能な限りフェアに検証する前提としてあらかじめ提言内容の基本的な部分を要約しておこう。
① 年金を受給するには、現在は最低25年保険料を払わなければならないが、受
給資格を得るための最低払い込み期間を10年に短縮する。
② 最低保障年金を創設し、10年間保険料を払って受給資格を得た人には月5万
円の年金を保障する。
③ 保険金を満期(40年間)払った人の年金を月7万に引き上げる(現在は6万
6千円)
④ このブログの冒頭で評価したようなきめ細かい援助をしても改革に必要な税財
源は3・2兆円ですむ。
では読売提言をベースにしながら中学生程度の(ひょっとしたら小学校高学年でもできるかもしれない)計算方法で検証することにする。ただしこの計算をする前提として、現在の保険料(月1万4410円)が今後も数十年続くことと、現在の日本人の平均寿命(81.9歳)がやはり今後数十年変わらないことを計算に必要な数値としたことをお断りしておく。さらに読売の提言を何度も読み直した結果、国民年金制度への加入期間を10年にするか満期の40年にするかは、国民の自由選択に任されているとしか解釈できないので、そのことも重要な要素として考慮したこともお断りしておく。
① 年金を受給できる平均期間は
81.9-64=17.9年間
② 加入期間を10年とした場合の保険料総額は
14410×12×10=172万9200円
③ ②の人が65歳以降17.9年間に受給できる年金総額は
5×12×17.9=1074万円
つまり172万9200円払えば1074万円も受給できることになる。掛け
金の6.2倍にもなる大盤振る舞いだ。
④ 次に加入期間を40年(満期)とした場合の保険料総額は
14410×12×40=691万6800円
⑤ ④の人が65歳以降17.9年間に受給できる年金総額は
7×12×17.9=1503万6000円
掛け金の2.2倍だ。
読売の政治面の記事によれば、年金改革提言は編集局、論説委員会などの専門記者による「社会保障研究会」が昨年来、外部の有識者らとの意見交換を通じてまとめたもののようだ。当然⑤までの計算ぐらいはしているはずで、保険金を10年払うのがやっとといった低所得者には、満期払える人と比べてそのくらいの優遇処置はすべきとお考えになったのだと思う。また満期払っても掛け金の2.2倍が戻ってくるのだから満期払える経済力のある人はちゃんと満期払うだろうという前提で提言されたのだろう。しかしここまでの計算なら中学生でなくても小学校高学年の子どもなら十分できる。そこで計算方法を中学レベルに引き上げて再検証してみよう。
⑥ 満期払える経済力のある人が、払い込み期間を10年でストップし、残りの3
0年間は保険金相当額を銀行に積み立て、その積み立て額を17.9年間、均
等に使った場合の計算をしてみよう。
★10年間の払い込み総額は②で計算したように172万9200円だ。
★残りの30年間の積み立て総額は(利息は無視)
14410×12×30=518万7600円
⑦ ⑥の人が月に使える金は
5(年金)プラス(518.7600÷17.9÷12)=7万4151円
つまり読売が英知を絞って計算した満期払い込み者が受給できる最高額の7万 円より⑥の選択をしたほうが毎月4151円も得をするのである。実はこの計
算の結果からとんでもない事態がほぼ100%の確立で生じる。
⑧ 社会保険庁の国民年金課によれば、現在老齢基礎年金を受給している人は24
01万人。ただしその2401万人中国民年金だけを受給している人の数は不
明ということだった。そこで総理府統計局が行っている国勢調査による20~
59歳の総人口6762万人の中で国民年金に加入しなければならない人(厚
生年金や共済年金に加入している人を除いた数)の総数1580万人の割合
(1580÷6762=23.4%)を老齢基礎年金受給者に当てはめると
2401×0.234=562万人
が現在の国民年金だけの受給者と考えてもいいだろう。
⑨ 将来も国民年金受給者の数に大幅な変化が生じないとすると、彼らが20~5
9歳までの40年間のうち10年だけ保険料を払った場合の支払い総額と65
歳以降に受給する年金の総額を計算してみよう。
★支払い総額 172万9200×562=9兆7181億円
★受給総額 1074×562=60兆3588億円
★国の負担額 60兆3588億-9兆7181億=50兆6407億
私の検証はこれで終わるが、読売は年金改革で必要になる税財源は、計算の根拠も明らかにせず、わずか3・2兆円ですむと主張した。今後は年金とか税制などきちんと計算しないとフェアな主張ができないことをご理解されたら、編集局や論説委員会が行った計算を中学生にチェックしてもらうことをお勧めして、このブログを終える。