まず読者に謝らなければならない。4月2日に投稿したブログ記事『パスモ告発第3弾! ついに小田急電鉄を告訴した』の中で私はこう書いた。
私が小田急電鉄を相手取って訴訟を起こした翌日の3月14日、突如パスモ社は『PASMOご利用案内』の改訂版を出した。その改訂版を見て私はびっくり仰天した。view Suicaと全く同じ安全策を講じた一体型PASMOがあったのである。
さらに4月30日に投稿したブログ記事『小田急電鉄はとうとう墓穴を掘った』の中で「オートチャージ型」と「一体型」の違いについてこう説明した。(ただし一部簡略化したり、読者にとって理解しにくいかもしれないと思った個所は説明を変えたことはご理解いただきたい。その場合も趣旨は一貫しており、趣旨を密かに変えたりする大手新聞社がしばしば取る常套手段は絶対に行っていないことを申し添えておく)
「オートチャージ型」というのは記名PASMOと各私鉄系のクレジットカードとの2枚セットのタイプである。たとえば小田急の駅でこのタイプのPASMOを購入するためには小田急電鉄が発行しているクレジットカードのOPカードも同時に申し込む必要がある(すでにOPカードを持っている人はそのカードから自動チャージする手続きを取らなければならない)。(中略)
では「一体型」とはどういうものか。JRのview Suicaを例にとって説明しよう。JRが発行しているSuicaには2種類あり、一つは券売機で購入する無記名のSuicaで、デポジットを500円払い、やはり券売機で必要額を現金でチャージしなければならない。その代わり紛失してもカードを入手した人が電子マネーとして不正に使用できるのはチャージ残高以内である。これは券売機で購入した無記名のPASMOも同じで紛失による損害はチャージ残高以内で収まる。これに対し「一体型」のview SuicaはJR東日本が発行しているクレジットカードにSuicaがセットされたカードで、それに大手クレジット会社3社(JCB、VISA、MasterCard)の中から一つを購入者が選んで付け加えることができる。たとえば私が持っているAEON(イオン)カードにはVISAも付いている。それはイオン系列のジャスコやサティではAEONカードで決済できるが、デパートで高額商品をカード払いしたくてもAEONカードでは決済できないが、VISAが載っているとVISAカードによる決済ができる。つまりクレジットカードの利便性を高め、AEONカードの利用頻度を増大するのが大手クレジット会社と提携する目的なのだ。
この「一体型」の最大のメリットはカードそのものがクレジット機能を持っているため、紛失してもクレジット補償が適用され、60日以内にカード会社に届ければ損害額がすべて補償される。さらにクレジットカードでもあるためデポジット500円を支払う必要もない。またオートチャージ機能がないSuicaやPASMOと同様コンビニなどで電子マネーとして使えるだけでなく、デパートなどで高額商品をクレジット購入することもでき、リボ払いやキャッシングもできる。言うなら「万能型」のカードなのである。ただしクレジットカードとしても使えるため資格審査は厳しい。もっとも「オートチャージ型」も私鉄系のクレジットカードとセットで申し込まないと購入できないから、資格審査は当然ある。(中略。以下は原文をできるだけ忠実に転記する)
(小田急側弁護士は「答弁書」でPASMOについてこう説明した)
PASMOには、大きく分類すると、利用者の名前を登録して利用状況を管理することのできる「記名PASMO」と、そのような管理ができない「無記名PASMO」に分類できる。
さらに「記名PASMO」については、チャージの方法により、①券売機などの専用の機械に現金をチャージするものと、②券売機などによるチャージのほか、自動改札を通過することで自動でチャージされるもの(オートチャージ機能付き)の2つに分類される。
本件で問題になっているのは「記名PASMO」のうちオートチャージ機能の付いた上記②のものである。
(この弁護士のPASMOについての説明のでたらめさを私は次のように批判した。実はその批判が大きな間違いであったことがPASMOお客さまセンターへの問い合わせでわかった)
この小田急側の弁護士が、この3種類のPASMOのほかにもう一つ「一体型PASMO」というview Suicaと同様クレジット機能を併せ持った極めて安全性の高いPASMOがあることを意図的に隠そうとしたことは歴然たるものがある(この記述がとんでもない誤解に基づいて行ったものだったのである)。すでに書いたが、昨年6月に発行された『PASMOご利用案内』には極めてアンフェアな記述ではあったが、一応「一体型PASMO」もあることが明記されていた。しかし今年3月14日に発行された『PASMOご利用案内』の改訂版を読めば「一体型PASMO」という極めて安全性の高いPASMOがあることが誰にも歴然とわかるように記述されている(これが実は真っ赤なウソであることがパスモ社と年会費無料の「一体型PASMO」を発売した東京メトロへの問い合わせで分かった。実際にはviewSuicaのような「一体型」とは全く異なり、従来の「記名オートチャージ型PASMO」より危険性がより高くなったのが「一体型PASMO」だったのである)
ではパスモ社が「一体型」と称するPASMOはどういう危険性をはらんでいるか、ご紹介しよう。昨年6月発行の『PASMOご利用案内』にも、また今年3月に発行した改訂版にも「PASMOの種類」という項目のページに「クレジットカードとPASMOが1枚(1枚という記述が重要な意味をもつのでご記憶ください)になった一体型(このカードを「一体型」と称したこともご記憶ください)PASMOもございます」という表記があり、脚注には「くわしくは『PASMOオートチャージサービスご案内』をご覧ください」との記述がある。
このパンフレットは実は「一体型PASMO」専用の説明書ではない。A4サイズで6ページ分(実際には1枚を3折りしたもの)だが、表紙を除く5ページのうち約4ページ分は「PASMOご利用案内」にすでに記述されている「オートチャージ型PASMO」の申し込み方やオートチャージの方法を書いたもので、パスモ社が言ういわゆる「一体型PASMO」についての説明はせいぜい1ページほど割いているだけである。その程度の説明だったらわざわざ別のパンフレットを作る必要はないはずなのだが、パスモ社の設立を主導した小田急電鉄が「一体型」は売らないという方針だったため、『PASMOご利用案内』では「一体型」の説明を省いたという事情がある。だが今年に入り東急、東武、東京メトロ、京成の4鉄道が「一体型」を発売したため、まだ9カ月しか経っていないのに改訂版を出さざるを得なくなり、「一体型」についてもある程度説明する必要が生じたのである。が、改訂版での「一体型」に関する記述は「一体型PASMOの「クレジット機能を解約したいとき」「紛失したとき」「使えなくなったとき」の手続きについて記載されているだけである。で、パスモ社が発行した「一体型PASMO」とはどういうものか、『PASMOオートチャージサービスご案内』のパンフレットにわずか1ページほどを割いて説明した記述をベースに検証するしかない。
このパンフレットの表紙に『電車も、ショッピングも、1枚で一緒に『一体型PASMO』できました」とピンクべた白抜きで目立つように表示されている。そして表紙を開いた見開き3ページ分の下部4分の1ほどのスペースを割いてクレジットカードとオートチャージサービス機能付きPASMOが1枚になった「一体型PASMO」の申し込み方法が図解入りで記載されている。その説明によると ①一体型PASMOを選ぶ ②申込書の受取・記入・送付 ③一体型PASMOの受け取り ④お名前の記入 という流れが説明されている。まず一体型PASMOは2種類あり、バスタウンカードと交通事業者系カードの二つがあり、バスタウンカードはJCB、三井住友カード、UFJカードのどれかを選ぶ。また一体型PASMOを発行する交通事業者は東急電鉄、東武電鉄、京浜急行、東京メトロの4社であることが明記されている。 ②の申込書の受取・記入・送付の項では、申込書は駅などで受け取るか、バスタウンカードはクレジットカード会社に、交通事業者系カードは各交通事業者かクレジットカード会社に請求し、申込書に必要事項記入し必要書類を同封のうえ、送付するとの記載がある。 さらに③の一体型PASMOの受け取りには約4週間かかるとの記載がある。 ④名前の記入については裏面に名義人の名前をはっきりと記入するよう注意を促している。
こんな説明をしなければ「一体型PASMO」を申し込めないような人が、クレジット会社の厳しい審査に通るわけがない。それより大切な説明は、「実は一体型と称していますが、viewSuicaのようなSuicaカードにクレジット機能を載せたJRが発行している一体型とは違います。PASMOカードの一体型はクレジット機能がない従来の記名オートチャージ型PASMOにクレジットカードを載せただけのものです。つまり、従来の記名オートチャージ型PASMOは,①PASMOカードと②自動改札機を通過するとき、あらかじめ設定されたチャージ金額を下回ったとき、いったんパスモ社のコンピュータから、これもあらかじめ設定された金額を自動的にチャージし、その金額をあらかじめ登録されているクレジット会社に請求するクレジットカードの2枚型でした。たまたまJRが「一体型」という言葉を商標登録されていなかったため、PASMO利用者をPASMOにクレジット機能が付いたと錯覚させるため「一体型」という表現をしただけで、PASMOに載せたクレジットカードはPASMOと関係なく、そのクレジットカードからオートチャージされるわけではありません。view SuicaのオートチャージはJRが発行しているクレジットカードからオートチャージされるためクレジット補償が適用されますが、PASMOの一体型は従来の2枚型を1枚型にしただけで紛失し第3者が不正にオートチャージしてコンビニなどで電子マネーとして買い物をしても一切補償がないのは2枚型と同じです」とフェアなリスク開示をすべきであった。
ところが、すでに述べた「一体型PASMO」のばかばかしい申し込み方法の説明の後に「こんなとき、どうすればいいの?」という項目を設けQ&A方式でさらに悪質な説明をしている。そのすべてを紹介するのは消耗するだけなので、重要なQ&Aについてだけ紹介しよう。
Q1 一体型PASMOの使い方は通常のPASMOとどこが違うの?
A1 一体型PASMOは、クレジットカードとオートチャージサービス機能付きPASMOが1枚になったカードです。通常の記名PASMOと同じように、電車にもバスにも電子マネーとしてもご利用できますが、名義人ご本人以外はご利用できません(これは真っ赤なウソ)。一体型PASMOは通常のPASMOと異なり、有効期限があります。(以下略)
「真っ赤なウソ」と脚注を入れたのは、現に私の記名オートチャージ型PASMOも『PASMOご利用案内』に「記名人のみが利用できるPASMOです」と明記していながら、実際には誰でも不正使用できるし、その結果私が被った損害は、パスモ社もオートチャージ用の小田急電鉄が発行しているクレジットカードからも一切補償されなかった。例えば銀行のキャッシュカードは記名本人しか使えないように様々なセキュリティシステムを構築している。それでもATM機の上部に隠しカメラを設置し暗証番号を盗み取ってキャッシュカードを偽造する犯罪が多発し、銀行はセキュリティシステムの不備と認め、損害を受けた人に全額を補償することにした。そしてさらにセキュリティシステムを向上し、ICチップを付加したり手のひらで本人確認ができるようなシステムも構築し、以降犯罪者がATM機で他人の口座から預金を引き出すことは不可能になった。こういうシステムを構築して初めて「名義人ご本人以外はご利用できません」と胸を張って言えるのではないか。誰でも不正使用でき、しかも約款で「記名PASMOは、当該記名PASMOに記録された記名人本人以外が使用することはできない」と記載していながら、実は不正使用できることを前提にしないと約款で詠えないはずの免責事項を設け「紛失した記名PASMOの(中略)使用者の損害については、当社はその責めを負わない」と、完全に矛盾した記載をしている。つまりview Suicaのようなセキュリティシステムを構築せず、ただ売らんがために嘘っぱちの「記名人本人以外が使用することはできない」と、あたかもセキュリティシステムを構築しているかのようなPRをして私鉄沿線の住民に「記名オートチャージ型PASMO」を売りまくってきたのが紛れもない真実だったのである。
次に大問題なのがQ2である。そこには「一体型PASMOを紛失した、障害状態となって使用できなくなったときは?」という質問が記載されている。それに対するA2の中にわざわざ赤字で注意事項が記載されている。まったくの嘘っぱちがここに記載されているので注意して読んでいただきたい。「紛失のお手続き(お申し出)が行われなかった場合に生じた損害については責任を負いかねます」と。では紛失の手続きをとれば損害は補償されるのかというと、すでに述べたように2枚型と同様全く補償されないのだ。補償されるのはPASMOの不正使用ではなくクレジットカードが不正使用された場合だけである。これは明らかに虚偽説明ではないか。
ここまで述べてきたことで小田急電鉄とパスモ社の不正体質が十分明らかになったであろう。ここでPASMO問題に終止符を打つことにする。
なおview SuicaはいまJRだけでなく楽天やビッグカメラなどが年会費無料で発行している。私自身はイオンが発行しているview Suicaを使用している。年会費が無料なだけでなく、カードの使用でためたポイントを一番有効に使えるからだ。JRが発行しているview Suicaは年会費が500円かかるうえ、キヨスクやJRの駅構内の店でしかポイントが使えないから決して有利とは言えない。このブログの読者はパソコンなどで自分にとって最も有利なポイントが付く年会費無料のview Suicaを選ばれるといいと思う。
繰り返すがどんなことがあってもオートチャージ機能が付いたPASMOだけは1枚型(パスモ社は「一体型」と称しているが)であろうと2枚型であろうと絶対に買ってはいけない。