飛び出せ! 北の宇宙基地

北の地である北海道で、人工衛星の開発などを行っている 北海道工業大学 佐鳥研究室の活動日記です。

UVカットフィルムにご注意

2008-07-30 21:47:22 | 佐鳥新の教授&社長日記
最近本州では暑い日が続いているようだが、暑さといえば紫外線が気になる季節でもある。自動車用の窓に貼るタイプのUVカットフィルムが自動車部品販売店で売られているが、本当に効果があるかどうかをハイパースペクトルカメラを使ってUSK君と実験してみた。

紫外線の光源にはブラックライトを用い、
 (1)ブラックライト
 (2)ナイロンシート(透明なOHPフィルム)
 (3)断熱効果とUVカットの効用をうたったフィルム
 (4)UVカット98%の効用をうたったフィルム
について370nm-400nmの紫外線の透過率を測ってみた。

HSC1700の紫外域での分光特性
http://blog.goo.ne.jp/satori-lab/e/5c346c60df3de91f92f6037f40fc0665



この結果を見ると、UVを98%カットするというタイプは一番効いているようではあるが、本来2%しか透過しないはずなのに10倍以上も漏れていることがわかった。
1枚2千円もする「断熱+UVカット」タイプでは半分しか効いていなかったので、これはなんとも悲しい結果となってしまった。更にこのフィルムは800nm-1050nmの近赤外線に対する遮蔽効果も殆んど見られなかったので、熱(=赤外線)をそのまま全部透過してしまう可能性も高い。

もちろん、市販の全ての商品について調べた訳ではないので、UVカットフィルムの効果は気休めだとまでは言うつもりはないのだが、メーカーとして自信があるならば上図のような性能評価試験のグラフを添付するべきではないだろうか。

読書メモ(幾何学概論(石原繁))

2008-07-29 09:43:06 | 佐鳥新の教授&社長日記
抽象論ではなく、かなり具体的な事例を引き合いに出しながら、曲率など微分幾何学的な概念を説明しているのが特徴。分かっているところは、ややだらだらと書かれているようにも感じられるが、概念的に掴みずらい部分に出合った時に本書を参考にしながら読むと勉強がはかどると思う。図書館から借りても良いかもしれないが、手元にあると便利な本である。

----------------------------------
書 名: 幾何学概論
執筆者: 石原繁
出版社: 共立出版


----------------------------------
第1章 曲線
 ・ベクトル
 ・曲線
 ・曲率・捩率
 ・自然方程式

第2章 曲面I
 ・局所曲面
 ・単一曲面
 ・接空間・接ベクトル
 ・第一基本計量
 ・第二基本計量・全曲率
 ・主曲率・平均曲率

第3章 曲面II
 ・曲面の基本方程式
 ・曲面上の曲線・測地線
 ・曲面の構造方程式
 ・ボンネの定理
 ・曲面の写像
 ・等長写像

第4章 多様体
 ・多様体
 ・リーマン空間
 ・テンソル
 ・微分形式
 ・微分形式の曲面論への応用

第5章 リーマン空間
 ・共変微分
 ・曲率テンソル
 ・平行移動・展開
 ・測地的座標
 ・ガウス・ボンネの定理
 ・2次元定曲率空間・非ユークリッド平面
 ・写像・等長写像
 ・変分
 ・リーマン面

第6章 ホモロジー・コホモロジー
 ・複体
 ・ホモロジー
 ・多様体の三角形分割
 ・微分形式の積分
 ・ガウス・ボンネの定理(大域的)
 ・正規直交標構
 ・コホモロジー
 ・ホモロジーとコホモロジー
 ・調和形式
 ・リーマン空間のコホモロジー
----------------------------------


燃焼現象の2次元可視化:メタン火炎

2008-07-23 06:43:04 | 佐鳥新の教授&社長日記
タイトル : 燃焼現象の2次元可視化:メタン火炎
研究期間: 2008年4月
文責   : 佐鳥新(北海道工業大学)


1.概要

燃焼現象の2次元可視化法へハイパースペクトルカメラの撮影画像を応用することができる。1998年~1999年にハイブリッドロケットの燃焼反応領域を特定することを目的といて、紫外域のレーザー誘起蛍光法(LIF)によるOHや液晶チューナブルフィルターを用いたC2スワンバンドの2次元可視化実験を行った。反応領域ではOHとC2の発光分布に相関が見られたことから、C2をトレーサーとした可視域による計測が可能であることが分かっている。
その当時からの課題として、液晶チューナブルフィルターには、センサー部は小さいものの制御用パソコン等を含めると全体の実験装置が大掛かりになるという欠点があることから、ハイパースペクトルカメラのようなコンパクトで汎用性の高い計測器が望まれていた。

今回の実験では、温室効果ガスの一種でもあるメタンの燃焼火炎実験装置を用いてハイパースペクトルカメラ(HSC)によるメタンの火炎(全長約10mm)の撮影を行った。




図1 実験装置の構成




図2 発光スペクトル




図3 単波長表示による燃焼場の2次元可視化



2.展望

この実験を行った時点では露光モードが開発されていなかったので、やや不鮮明な画像となっているが、ハイパースペクトルカメラの有用性については十分確認することができた。露光モード(2008年4月下旬に開発した撮影機能)を用いて20-30回の撮影を行えば、無理なく鮮明な分光画像が得られるだろう。

更に、ハイパースペクトルデータをアーベル変換することにより、軸対称を仮定した火炎の空間分布(発光スペクトル特性)を取得することができることから、燃焼反応の理論モデルを評価できる可能性が十分期待できる。


コンクリートの塩分濃度の評価

2008-07-22 07:29:20 | 佐鳥新の教授&社長日記
タイトル: コンクリートの塩分濃度の評価
研究期間: 2007年7月
文責  : 北海道工業大学 佐鳥研究室 (竹内佑介)


1.概要

 塩分濃度の違いによるコンクリートの劣化をスペクトル分析による非破壊検査の可能性を調査する。塩分濃度の異なるコアサンプルAとコアサンプルBを用意し、両者の分光スペクトルに違いが見出せるかどうかを調べることを主たる目的とする。

それぞれのコアサンプルは測定箇所によって色が異なることから、測定エリア全体での平均スペクトルを用いで評価を行う。このような画像処理による平均化処理は、コンクリートを粉末状にしてスペクトル分析(成分分析)を行うことと実質的に同じ作業であることを付記しておく。

 

図1 右:コアサンプルA (塩分濃度 低)   左:コアサンプルB (塩分濃度 高)




図2 最大値で規格化した分光スペクトル特性の比較

 コアサンプルA及びコアサンプルB、それぞれのエリアを平均化し最大値で規格化した分光強度分布を図2に示す。

上グラフで見るように、約422nm~約580nmの波長範囲において変化が見受けられる。この波長間のスペクトルデータを基準とし、コサイン距離を比較する手法により今回のHSDと比較処理を行う画像解析を行った。図3に画像処理画像を示す。尚、赤色に近いほど比較したスペクトルデータに近いことを示している。



図3 コンクリート塩分濃度の可視化


2.結論

本実験において各エリアの平均値をとった場合、コアサンプルA及びコアサンプルBにスペクトルグラフでの違いを見ることができる。しかし、エリアごとに比較を行うと同じコアサンプル内でもスペクトルグラフに違いが見られる。



放電プラズマの2次元可視化:大気圧アルゴンプラズマ

2008-07-21 18:37:15 | 佐鳥新の教授&社長日記
タイトル: 放電プラズマの2次元可視化:大気圧アルゴンプラズマ
研究期間: 2008年4月
文責  : 佐鳥新(北海道工業大学)


1.概要

ハイパースペクトルカメラの技術シーズは、佐鳥が宇宙科学研究所でマイクロ波イオンエンジンの放電室内部診断の分光実験を行った際の放電プラズマの2次元可視化の技術に起因している。従って、パルス現象は無理だが定常な現象であれば、プラズマを含む様々な分野の基礎研究に応用することができる。

そのような背景のもとに、今回は大気圧のアルゴンプラズマをハイパースペクトルカメラで撮影した。




図1 放電プラズマ実験装置の構成




図2 アルゴンプラズマからの発光スペクトル




図3 アルゴンプラズマの可視化(RGB)




図4 アルゴンプラズマの可視化(256階調)




図5 アルゴンプラズマの可視化(2値化)


2.展望

(1)航空宇宙分野
   イオンエンジン、MPDアークジェット、DCアークジェット、ホールスラスタ

(2)大気圧プラズマ処理と高度化技術への応用研究
   銅とエポキシ樹脂の新しい接着方法
   液晶パネル端子電極部の洗浄
   半導体実装部品の電極部洗浄による接合信頼性の改善
   リント配線板のめっき前処理への応用
   PPS樹脂の接着強度改善
   大気圧プラズマによる大型液晶基板の洗浄
   高分子材料のぬれ性制御と接着性改善
   高分子材料に対する大気圧プラズマ処理
   撥水性付与処理
   銅張り積層板向け処理
   フッ素系樹脂材料に対する大気圧プラズマ処理
   繊維、紙、木材のぬれ性改質(紙のプラズマ処理、木材表面のはっ水性化)
   大気圧プラズマによる綿布帛への透湿防水性付与
   大気圧低温プラズマによる粉体処理
   化粧品原料用有機、無機顔料超微粉体への大気圧プラズマによるシリカ薄膜堆積
   大気圧プラズマCVDによる単層カーボンナノチューブの配向成長制御
   プラズマCVDによる単層カーボンナノチューブ合成
   大気圧プラズマCVDによる無機物膜堆積(低温Siエピタキシャル成長)
   大気圧プラズマCVDによる酸化物膜堆積
   非晶質炭素膜の食品包装容器への応用
   大気圧プラズマによるSiエッチング技術
   SiO2エッチング技術
   マイクロ波励起大気圧非平衡プラズマを用いたシリコン酸化膜の超高速加工
   プラズマCVMによる超精密加工
   生体適合性色素粒子へのマルチ機能薄膜創製
   磁性体粒子の磁気特性改善と防錆
   映像デバイス用蛍光体粒子のイオン、紫外線遮蔽膜形成
   大気圧プラズマによる滅菌およびバイオ分野への応用
   

内部反射による皮下の血管の可視化

2008-07-20 21:19:44 | 佐鳥新の教授&社長日記
タイトル: 内部反射による皮下の血管の可視化080717
実験日 : 2008年7月17日
文責  : 佐鳥新(北海道工業大学)


1.概要

分光画像の分野では常識的な手法ではあるが、表面で反射した成分(表面反射とか鏡面反射という)と、いったん内部に侵入して中で吸収と散乱を経過した後に再び表面に出てくる反射光(内部反射という)を区別すことによって、物質内部の情報を得ることができる。

今回は人間の手の皮膚を検体として、ハロゲンライトに直線偏光をかけて撮影を行った。偏光画像を取得する際の注意点として、入射光の方向に対してハイパースペクトルカメラの光軸が平行になるような配置にする必要がある。この入射角に対して撮影結果が敏感に影響を受けるので注意が必要である。




図1 偏光撮影の方法




図2 偏光撮影画像  上:表面反射成分 下:内部反射成分




図3 偏光の違いによる皮膚の分光スペクトル特性


2.実験結果と展望

偏波面の違いを分けることにより表面反射と内部反射を分離し、内部反射の画像から血管など皮下組織を観測することができた(図2)。これは図3の分光スペクトルの測定結果においても内部反射成分のヘモグロビンの吸収帯(550nm付近)での吸収量が表面反射よりも大きいことからも言える。