飛び出せ! 北の宇宙基地

北の地である北海道で、人工衛星の開発などを行っている 北海道工業大学 佐鳥研究室の活動日記です。

発展の中において発展を超えよ

2007-04-27 00:49:16 | 佐鳥新の教授&社長日記
発展していく過程に私たちの心の中に甘い誘惑が忍び込んでくる。
それは怠惰という誘惑。怠け心という名の誘惑。現状のままでいいのではないかという、そういう誘惑である。
そんな誘惑に負けてはならない。断じて発展から目をそらしてはならない。
発展のなかにあって、発展についていくのみならず、発展のなかにおいて、発展を超えることによって、自らの心に余裕が生まれるということを知っていただきたい。

今に生きながら、心はもう来年に生きてほしい。3年後に生きてほしい。10年後に生きてほしい。50年後に、100年後に、1000年後に生きてほしい。

時間軸の中において、もっと先にある自分を確実に知っていただきたい。そこから現在の自分をたぐりよせるのだ。この順序を間違ってはならない。

発展の中において発展を超えよ。
時間の系列の中において現在を超えよ。


読書メモ(II型超新星爆発の数値シミュレーション)

2007-04-26 09:39:54 | 佐鳥新の教授&社長日記
書 名: 『パリティ2006年7月号』
執筆者: ダグラス・ポスト ローレンス・ボタ
出版社: 丸善





太陽質量の10倍以上の星は、進化の最後に星の中心に核合成されてできた鉄が重力崩壊し、II型超新星として爆発する。

重力崩壊の瞬間、中心の青色の原始中性子星の周りの空洞部分に超高温の原子核流体が生まれる。この数値シミュレーションから、重力崩壊後の1秒もたたないうちに超高温原子核流体が不安定となり、乱流状態になることがわかる。色はエントロピーを示し、高温部は赤い部分、相対的に温度の低い領域は緑色で示されている。中央の青い球体は原始中性子星に対応する。

この計算の外の境界は衝撃波面を示す。衝撃波は重力崩壊で形成された原始中性子星に降り積もる原子核流体の反作用で発生し、外向きに伝播する。図は衝撃波が半径150kmのところまで伝播したときを示している。

流体力学的不安定やニュートリノ加熱、その他の物理機構で衝撃波は更にエネルギーを増やし、数時間後には星の表面に到達する。その際、星の表面が衝撃波で加熱され、超新星として輝き始める。


読書メモ(大宇宙の誕生)

2007-04-25 16:23:24 | 佐鳥新の教授&社長日記
初版は1998年なので、最新情報とはいえないが、文庫本での出版を機に2006年までの宇宙背景放射に関する8年間の成果を盛り込んだ内容となっている。
電波望遠鏡による分子ジェット現象やブラックホール周辺現象などの観測結果が宇宙の美しい写真と共にたくさん載っている。専門家ではなくとも、宇宙の神秘的な一面を垣間見ることができるだろう。

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書籍名:大宇宙の誕生
著者名:福井 康雄
出版社:知恵の森文庫


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第1部 宇宙の始まり
1  もし太陽が小さなボールだとしたら
2  天文学はどのように発達してきたのか
3  宇宙の始まり/銀河の後退
4  銀河と天の川/暗黒の「しみ」
5  オリオン座と大星雲/星は生まれている
6  星の一生/重い星と軽い星 
7  超新星爆発と重い元素
8  細く長く生きる太陽/惑星と生命のふるさと
9  再び暗黒星雲へ/物質のリサイクル

第2部 見えていなかった宇宙を見る
10 分子の放つ電波で「見る」/新しい天文学
11 おうし座の分子星雲/星誕生の場に迫る
12 「星のたまご」探し/より濃いガスへ
13 「星のたまご」から「原始星」へ
14 原始星と円盤
15 原始星の成長とジェット
16 星形成のシナリオ
17 惑星はどのようにして生まれるのか
18 ハッブル宇宙望遠鏡の見た星の誕生

第3部 「銀河のたまご」からブラックホールの新しい顔まで
19 宇宙は永遠のものではない/宇宙は老化する
20 南天へ!
21 ブラックホールとは何か
22 ブラックホール天体SS433
23 銀河系中心のブラックホール
24 ブラックホールを取り巻く円盤/太陽と銀河系中心の意外なつながり
25 宇宙線と分子雲
26 マゼラン銀河に「鍵」がある?
27 マゼラン銀河の星団形成
28 銀河は老化する/宇宙背景放射と遠宇宙
29 マゼラン銀河に「銀河のたまご」発見
30 宇宙の一部としての人間/二つの「壁」
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ハッブル宇宙望遠鏡の誕生日

2007-04-24 23:31:13 | 佐鳥新の教授&社長日記
4月24日はハッブル宇宙望遠鏡の誕生日の17歳の誕生日となる。
ESAからハッブル宇宙望遠鏡打ち上げ17年目を記念としてCarina星雲の写真がリリースされた。この星雲では多くの星が誕生している。



Carina星雲



ハッブル宇宙望遠鏡



ハッブル宇宙望遠鏡の仕様
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所属:   NASA、ESA
波長域:  可視光、紫外、近赤外
軌道高度: 600km
軌道周期: 97分
打ち上げ日:1990年4月24日
落下時期: 2010年(軌道修正をしない場合)
質量:   11トン
WEBサイト: http://hubble.nasa.gov/
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出典: http://www.esa.int/esaSC/SEMBZBMJC0F_index_1.html


読書メモ(ガンマ線バースト---ショートバーストの正体)

2007-04-24 11:43:56 | 佐鳥新の教授&社長日記
書 名: 『パリティ2007年1月号』 pp.53-54
執筆者: 坂本 貴紀
出版社: 丸善


ガンマ線バーストは全天で1日2回から3回起こっている、硬X線からガンマ線領域での爆発現象である。バースト本体の継続時間の特徴から、大まかに2秒より長いロングバーストと、短いショートバーストの2種類に分類できることが知られている。ロングバーストについては、1998年に発見されたバーストに伴う残光を地上の可視光や電波の望遠鏡で詳細に観測することにより、太陽の数十倍の質量をもつ星の爆発であることが明らかになった。一方、ショートバーストについては、バーストの位置速報に成功した例が非常に少なく、残光検出に成功した例がなかったため、その正体は全く謎であった。

 スウィフト衛星のガンマ線検出器BATによって、2005年5月9日に観測されたショートバーストGRB 050509B は、ガンマ線での継続時間が約50ミリ秒で、スウィフト衛星のX線望遠鏡XRTによるX線での即時観測により、ショートバーストからの残光が初めて発見された。



図1 ショートバースト本体の光度曲線とその母銀河

 GRB 050509B、GRB 050709、そしてGRB 050724の観測で明らかになってきた生ーとバーストの特徴をまとめると、ショートバーストは赤方偏移1以下というロングバーストと比べると近傍で起こっており、バースト本体として放出されるガンマ線のエネルギーもロングバーストと比較すると小さい。ショートバーストの母銀河は楕円銀河でも不規則銀河でもありうるため、ショートバーストを作り出している天体の年齢スケールとしては10億年にも及ぶ。また、ショートバーストは近傍で起こっているため、ロングバーストと同様、星の爆発が起源であれば、近傍で起こった超新星の残光の増光が観測されるはずであるが、実際にはそのような観測例はない。

 以上の事実から、ショートバーストはロングバーストの起源として考えられている星の爆発ではなく、中性子星と中性子星、あるいは中性子星とブラックホールの合体によってつくられているのではないかという説が有力になっている。


読書メモ(重力レンズで探す地球外惑星)

2007-04-20 09:26:21 | 佐鳥新の教授&社長日記
書 名: 『パリティ2006年10月号』 pp.41-44
執筆名: Bertram Schwarzschild (佐藤文衛 訳)
出版社: 丸善

1.従来の系外惑星発見の方法

従来は惑星の引力が中心星をゆり動かすことによって引き起こされる、中心星のドップラー偏移をとらえることによって惑星の存在を明らかにしていた。この方法で1995年以来、約200個の系外惑星の存在が明らかになっている。

一報、これとは全く異なる手法----重力マイクロレンズ-----による発見が可能となった。この手法はとりわけ地球のような惑星の発見に有利である。


2.重力レンズによる惑星発見の原理

観測者と明るい背景星を結ぶ視線のそばを手前の恒星が通過するときに重力レンズ現象が起こり、それによって背景星の像がゆがむ。もし、レンズ現象の特徴的なパラメータであるアインシュタイン半径RE(図1の真ん中の図に示されている)が分解できないほど小さい場合は、レンズ星の通過に伴って背景星の増光、減光が観測される。レンズ星から距離RE程度に付随する惑星は、光曲線上の短いバンプとして検出される。


図1 マイクロレンズで惑星をみつける


3.観測例

2005年8月10日、天の川銀河のバジル内でマイクロレンズによって増光していた明るい恒星が、増光のピークを過ぎて徐々に減光していく途中、その光度曲線上に短いバンプが観測され、暗いレンズ星に付随する惑星の存在が明らかになった。7月下旬にこの恒星が増光を始めたときは、すでにOGLEチームはこの星を4年間にわたって切れ目なくモニターしていたところだった。OGLEは、MOAと国際的なネットワークであるPLANETと協力し、この星の光度曲線とそこに現れるかもしれない惑星によるバンプを詳細に観測した。このバンプによるモデルフィッティングから、惑星の質量は5.5地球質量、軌道半径は地球の2.6倍と求めた。


図2 2005年8月10日に観測された光度曲線上のバンプ


読書メモ(宇宙に浮かぶ広がった赤い光)

2007-04-19 07:01:56 | 佐鳥新の教授&社長日記
書 名: 『パリティ2006年4月号』 39頁
執筆者: Phillip F. Schewe、Ben P. Stein (田島俊之 訳)
出版社: 丸善



宇宙に浮かぶ“赤い長方形”と呼ばれる天体現象

初期惑星状星雲HD44179では、拡散した“赤い長方形”と呼ばれる天体現象が観測されている。台湾の中央研のチェンは、この拡散赤色放射(extended red emission, ERE)は、宇宙空間の微小なダイヤモンドによって生じていると主張している。

彼らは、EREは蛍光灯の動作と類似したものではないかと考えている。実験では、ナノメートル大のダイヤモンドに最初に強力な陽子ビームを照射して欠陥をたくさんつくり、800℃まで加熱して宇宙の条件とだいたい合うようにした。ここで黄色や青の光をダイヤモンドに照射すると、ERE型のルミネッセンスが生じた。
ダイヤモンドはおそらく、宇宙の炭素に富んだ領域あたりで作られていると考えられる。



発光スペクトル



初期惑星状星雲HD44179


鮮度センサーモジュール完成

2007-04-18 09:38:46 | 佐鳥新の教授&社長日記

昨年から産総研、サークル鉄工、北海道衛星㈱、エイティーエフ、北海道工業大学佐鳥研究室の共同研究として、サークル鉄工の大葉選別機に鮮度センサーを搭載する事業を行ってきた。鮮度センサーは北海道衛星搭載用ハイパースペクトルカメラのスピンオフとして開発したものだ。これはその工業用センサー版といったところだ。

試行錯誤もあったが、昨日遂に完成した。前回の実験では台の上に置く大葉の位置がばらつくために安定な計測ができないという問題点があったが、サークル鉄工の方々の努力で解決することができた。

人間だと鮮度計測時に若干の手振れが発生するのだが、機械の場合には非常に安定な計測ができるという、予想以上に良好な試験結果が得られた。




大葉選別機に実装した鮮度センサーモジュール


読書メモ(低軌道衛星通信システム)

2007-04-17 07:50:53 | 佐鳥新の教授&社長日記
内容的にはやや古いのだが、低軌道通信衛星の考え方が網羅されているので、とても勉強になった。
オーブコムだけは唯一成功したものの、これだけ多くの検討がなされたにも係わらず、イリジウムは倒産し、第9章で紹介されているシステムの多くは、ビジネスモデルの見直しに迫られている現実はやや悲しいものがある。もっとも、その背景として言えることだが、これらのプロジェクトの構想段階では、これほどまでに携帯電話が爆発的に普及するとは誰も考えていなかったのだ。


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書 名: 低軌道衛星通信システム
著者名: 伊藤泰彦 監修
出版社: (社)電子情報通信学会



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第1章 概説
1.1 衛星通信システムの変遷
1.2 新しき動き
1.3 Non-GSO衛星の経済性
1.4 低軌道衛星システム運用の要点

第2章 軌道構成と特性
2.1 天球座標系
2.2 円軌道
2.3 だ円軌道
2.4 軌道要素
2.5 地球の扁平性による摂動
2.6 外気圏の構造
2.7 軌道構成法
2.8 低軌道衛星通信システムで採用されている軌道構成

第3章 低軌道通信衛星
3.1 衛星構成
3.2 衛星打ち上げ
3.3 通信ペイロード
3.4 衛星資源管理システム

第4章 地上局の構成
4.1 移動局
4.2 陸上地上局

第5章 低軌道衛星通信システムの無線技術
5.1 回線設計
5.2 多元接続方式
5.3 変復調方式
5.4 周波数オフセット制御技術
5.5 タイミング制御技術
5.6 送信電力制御
5.7 回線割当て方式
5.8 スポットビーム・衛星間ハンドオーバ
5.9 衛星ダイバーシチ
5.10 ユーザ位置検出
5.11 GPS

第6章 パーソナル衛星通信の電波伝搬
6.1 LMSS伝播環境と通信品質
6.2 衛星見通し率と樹木による減衰
6.3 信号強度の確率分布と伝播チャネルモデル
6.4 状態の遷移特性と3状態マルコフモデル
6.5 広帯域伝播モデルとディジタル伝送特性
6.6 衛星ダイバーシチによる高稼働率化

第7章 低軌道衛星通信システムを支える陸上ネットワーク
7.1 陸上ネットワークの分類
7.2 実時間通信を行うシステムの陸上ネットワーク
7.3 非実時間通信を行うシステムの陸上ネットワーク

第8章 低軌道衛星通信と周波数共用
8.1 概説
8.2 Non-GSO/MSSシステムのサービスリンクにかかわる周波数共用
8.3 Non-GSO/MSSシステムのフィーダリンクにかかわる周波数共用
8.4 Non-GSO/FSSシステムにかかわる周波数共用
8.5 まとめ

第9章 計画中の低軌道通信衛星システム
9.1 イリジウム
9.2 ICO
9.3 テレデシック
9.4 スカイブリッジ
9.5 オーブコム
9.6 各低軌道衛星システムの比較

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