飛び出せ! 北の宇宙基地

北の地である北海道で、人工衛星の開発などを行っている 北海道工業大学 佐鳥研究室の活動日記です。

科学的思考法 Ver.2 (4)

2009-10-31 09:00:00 | 佐鳥新の教授&社長日記
4.インスピレーションの受け止め方

宇宙に遍満する英知が自分の心の中に飛び込んでくるようにインスピレーションを頂くことがある。新しい着想に巡り合った素晴らしい喜びの瞬間でもある。
ここでひとつ重要な注意点がある。それは、インスピレーションの通りに突っ走ってはいけないということだ。多くの場合、私たちはインスピレーションの全てを受け取っているのではなく、肉体と知識に限定された断片を見ていることを知らねばならない。
インスピレーションを生かすためには、先に述べた足場を固める考え方が十分身についていることが基本となる。もしアマチュアの段階にあれば根無し草やクラゲのようにフラフラと振り回される危険性があることを十分注意しなければならない。

十分な科学的思考力が備わった段階で、インスピレーションを一種のセンサーとして理性的に使い始めると、これは大きな力となる。この段階から理性を超えた悟性(洞察力)が動き出す。悟性は大きな私たちに大きな力を与えてくれる。

悟性の次の段階については「学問のあるべき姿」とでもいうべき考察が仕上がった時にお話したいと思う。

科学的思考法 Ver.2 (3)

2009-10-30 09:00:00 | 佐鳥新の教授&社長日記
3.マネージメント思考の重要性

ここで言うマネージメント思考とは、幾つかの要素を組み合わせたシステムが最適な動きをするように現実的に対処する能力を指している。システム思考には論理的思考力の他に、透徹した理性、バランス感覚、調整能力、交渉力が要求される。
学者はある特定の分野で深い知見を持っているが、しかし、必ずしもマネージメント思考が出来るとは限らならない。
全体システムは個々の要素の集合体ではあるが、しかし、その動的状態はある明確な理念のもとにトップダウンで決めなければならない。逆に、個々の要素を積み上げて全体を構築するボトムアップ的思考法では、残念ながら使えるシステムにはならないことが多い。
常に部分と全体という2つの視点を持たねばならない。第一段階として、要素を担当するエンジニアには、要素部分を担当する責任感と同時に全体との関係(インターフェースとの関係ではない)を常に理解することが重要である。そして、プロジェクトリーダーには、あるべき姿から演繹した、俯瞰的立場からの動的平衡感覚が要求されるのである。

宇宙関連情報: ガンマ線バーストを使って「光速度不変原理」を検証

2009-10-29 12:00:00 | 北海道衛星
フェルミ・ガンマ線宇宙望遠鏡による成果論文の英科学誌「ネイチャー」への掲載について
-ガンマ線バーストを使って「光速度不変原理」を検証-
http://www.jaxa.jp/press/2009/10/20091029_fermi_j.html

 このたびフェルミ・ガンマ線宇宙望遠鏡を用いた超高エネルギーガンマ線バー
ストの観測を通じて、アインシュタインの特殊相対性理論の基盤ともいえる
「光速度不変の原理」が光子のエネルギーによらず高い精度で成り立つことを
検証しました。この成果が10月29日(日本時間)発行の英科学誌「ネイチャー」
(オンライン版)に掲載されました。掲載論文のタイトルは、“A limit on the
variation of the speed of light arising from quantum gravity effects”です。

 宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究本部(ISAS/JAXA)の大野雅功(おおの
まさのり)研究員をはじめとし、広島大学、東京工業大学らが参加するフェル
ミ・ガンマ線宇宙望遠鏡チームは、2009年5月10日に捉えた、73億光年の彼方
で発生したガンマ線バーストと呼ばれる天体現象を使うことで、アインシュタ
インの相対性理論の基礎である「光速度不変原理」を検証しました。

 現代物理学の2大基礎理論は相対性理論と量子物理学ですが、時間・空間を
記述する理論としてこの両者を統一する理論のうちの一つである量子重力理論
の中には、電磁波(光やガンマ線もその一種)の速度が「光速度不変原理」を
破り、その周波数(エネルギー)に依存する事を予言する枠組みがあります。
理論から予想される速度差はごくわずかですが、73億光年の長旅を経ることに
よって、その速度差は測定可能な到着時間差となって現れることが期待されて
いました。

 今回のガンマ線バーストでは、これまでの最高エネルギーである310億電子
ボルト(これは可視光のおよそ100億倍ものエネルギーに相当します)のガン
マ線(光子)を検出しましたが、低いエネルギーのガンマ線に比べて、理論で
予測された到着時間差を観測することができませんでした。これにより「光速
度不変原理」は史上最高の精度で検証され、光速度不変の破れを予言する量子
重力理論の枠組みに強い制限をかけることに成功しました。今回の結果により、
これまで検証が非常に難しかった量子重力理論に対して、初めて観測事実から
制限を与えられたことから、フェルミ・ガンマ線宇宙望遠鏡は天文学だけでな
く素粒子物理学の新しい扉をも開いたと言えるでしょう。


参考論文
“A limit on the variation of the speed of light arising from quantum
gravity effects”(量子重力効果による光速の変化に対する制限)

論文責任者:
大野 雅功(おおの まさのり:ISAS/JAXA),
Jonathan Granot(ジョナサン グラノー:イギリス, ハートフォードシャー
         大学),
Sylvain Guiriec(シルヴァン ギリエック:アメリカ, アラバマ大),
Veronique Pelassa(ヴェロニカ ペレッサ:フランス, CNRS/IN2P3/LPTA)
ネイチャー誌に掲載(オンライン版10.1038/nature08574)

日本人著者
JAXA:大野雅功 高橋忠幸 尾崎正伸
広島大学:大杉節 深沢泰司 水野恒史 山崎了 片桐秀明 高橋弘充 上原岳士
     花畑義隆
東京工業大学:河合誠之 浅野勝晃 中森健之
早稲田大学:片岡淳
SLAC国立加速器研究所:釜江常好 田島宏康 内山泰伸 田中孝明 林田将明
ペンシルバニア州立大学:当真賢二

日本フェルミ・ガンマ線宇宙望遠鏡 web page
http://www-heaf.hepl.hiroshima-u.ac.jp/glast/glast-j.html

ISAS/JAXA の web page
http://www.astro.isas.jaxa.jp/news/article/2009/1029/index.html


光速度不変の原理とガンマ線バースト
フェルミ・ガンマ線宇宙望遠鏡によるガンマ線バースト観測
GRB 090510の発見と光速度不変原理の検証
http://www.jaxa.jp/press/2009/10/20091029_fermi_j.html#ref

出典: JAXAプレスリリース配信サービス

科学的思考法 Ver.2 (2)

2009-10-29 09:00:00 | 佐鳥新の教授&社長日記
2.壁を乗り越える技術: 仮説を立てて次の足場を見出す

数少ない足場と思える事実からもう一歩踏み出すためには、新しい環境条件を仮説として導入する。この段階では仮説が事実であるかどうかはわからない。仮に事実であったとして、そこからどういう結果が導かれるかを演繹的に考えてみる。頭をうんと働かせて、出来るだけ多くの結論を導いた方が良い。

次はそこで導かれた結果が現実の現象の中で見出されるかどうかを実験して確かめてみることだ。確認できれば、仮説は事実となり、足場がもう一箇所増える。しかし、よくあることだが、実際にやってみると予想に反する結果となることが多いものだ。こういう時は、精神的に落ち込む必要はなく、「仮説のような事実は存在しないことを確認した」と客観的に考えるべきである。落ち込むのは感情に流された非理性的な行為であり、対象とする現象と自分との関係をもう一段階高い視点から見下ろすような、“もうひとつの目”を持つことが重要である。

精神力が十分でない段階では(アマチュアの段階では)、目の前に飛来するインスピレーションに飛びつく傾向が多いものだが、理性的に状況判断した上で使い切ることができなければ、単に混乱するだけなので注意が必要だ。(もっとも、アマチュアは自分が混乱している事実にすら気づかない場合が多いようだが。)

科学的思考法 Ver.2 (1)

2009-10-28 19:56:16 | 佐鳥新の教授&社長日記
平成17年に書いた「科学的思考」の改訂版である。想定する読者は前回等同様に私のゼミの学生と北海道宇宙連合の学生達である。

現在、私の立脚点である当為の科学の思想から当時の考え方を振り返ると、それなりに方向性は正しかったものの、思想的未熟さを感じざるを得ない。そこで、今回は部分的ではあるが若干の修正を加えてみることにした。

1.足場を固めながら前に進む

すべての思い込みを排除し、自分の目で確認した事実に基づいてひとつひとつ組み立てることが基本である。思い込みとは感情である。感情に流されずに方針を見出す力を理性という。プロは理性を働かせるが、アマチュアと自称「○○研究家」という方の多くは、どうも経験に基づく感情的判断にプロ意識を感じていることが多いようだが、これは錯覚にすぎないことをはっきり言っておきたい。

プロを目指すのであれば、カタログに書いてある数値をそのまま信用するのではなく、まず目の前の部品がその数値を出すのかどうかを自分の目で確かめなければならない。そして、それを計測する機器が正しい数値を示しているかどうかを複数の機器の数値との比較によって確認しておかねばならない。プログラムであれば、この変数にはこういう数値が入っている筈だと思うのではなく、その数字が本当に入力されているかどうかを確認しなければならない。初心者のようだが、このプロセスを怠るようになればそれ以後の成長は期待できない。常に、意識して己の理性を働かせ、暗黙の先入観を排除し、自分が確認した事実にもとづいて理詰めで組み立てる思考力(論理的思考能力)が要求される。よく「誰々が言ったから・・」という人がいるが、このような方々は残念ながらここで話している土俵にすら乗っていないといえる。

宇宙関連情報: 金星探査機「PLANET-C」の名称の決定について

2009-10-23 15:33:09 | 北海道衛星
金星探査機「PLANET-C」の名称の決定について
http://www.jaxa.jp/press/2009/10/20091023_akatsuki_j.html

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)では、2010年度に金星探査機「PLANET-C」の
打ち上げを予定しています。これに先立ち、金星探査機「PLANET-C」の名称を
下記のとおり決定しましたので、お知らせいたします。



1. 名称   金星探査機「あかつき」

2. 決定理由
 ・名称は、金星探査機「PLANET-C」の開発に携わるプロジェクトチームで検
  討を行い決定しました。
 ・「あかつき(暁)」とは、日の出直前の東の空が白み始める頃を指し、金
  星が最も美しく輝く時間です。金星探査機「PLANET-C」は、2010年の冬、
  まさに明けの明星として「あかつき」の空に輝く金星に到着します。この
  探査により惑星気象学を新たに創出しようというイメージにも合致します。
  一日の始まりである夜明けを意味するこの言葉には、情景の美しさだけで
  はなく物事の実現への力強さがあり、ミッション成功への想いと決意が込
  められています。
 ・また、今回は事前に名称を公開することで、衛星の打上げ、及びその後の
  運用に向けて、皆様により身近に感じていただけるようにとの意図があり
  ます。

別紙
http://www.jaxa.jp/press/2009/10/20091023_akatsuki_j.html#at


発表日:平成21年10月23日 発表:宇宙航空研究開発機構


出典: JAXAプレスリリース配信サービス

特別講演会「宇宙サロン」のご案内

2009-10-07 16:46:57 | 佐鳥新の教授&社長日記
日本機械学会宇宙工学部門長の松永三郎先生から特別講演会「宇宙サロン」の情報が入りましたので本ブログにて紹介します。


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No.09-118宇宙サロン
『宇宙旅行に行こう!~乗り物、泊る所、着る物の最新情報~』
(宇宙工学部門 企画)

<開催日> 2009年11月 6日(金)13.00~18.00

<会場>
東京工業大学 大岡山キャンパス 石川台3号館3階304会議室
交通手段等々はホームページ
http.//www.titech.ac.jp/other/access.html )でご確認下さい。
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司会.古谷 寛(東京工業大学)

13.00~14.00 (1)
 「ここまで来た世界の有人宇宙開発.政府主導から民間宇宙旅行の
時代へ」(インターネットによるテレビ講演)
 アメリカ,中国,インド,ヨーロッパ,ロシア各国が次世代の有人
宇宙計画を推進する中,アメリカでは民間企業による有人宇宙開発
進出も活発化している.
最新の有人宇宙開発の動きをサブオービタル宇宙開発,オービタル
宇宙開発の2つの視点からご紹介する.
 The Space Tourism Society Japan 理事長
 AeroMod Engineering, Inc. Stress Engineer  五月女 剛
14.00~14.10 休憩(10分)
14.10~15.10 (2)
 「宇宙ホテルでの衣食遊~NewSpace市場を拓く」
 宇宙ステーションや宇宙ホテルなど,宇宙に滞在する宇宙旅行に
なると,宇宙旅行機では制限があった宇宙での衣食遊の機会が広がり,
宇宙における新たなビジネスチャンスが生まれます.
宇宙ホテル開発の動向と宇宙での衣食遊についてご紹介します.
 スペースフロンティアファンデーション アジア圏代表  大貫 美鈴
15.10~15.20  休憩(10分)
15.20~16.20 (3)
 「宇宙服開発の最前線~有人宇宙活動を支える技術開発」
 厳しい宇宙環境で人間が安全に自由な活動ができるためには高度な
技術的要求に答えなければならない.
将来の月や火星探査に向けて,新しい宇宙服の開発が進められている.
 東京工業大学 総合理工学研究科 物質化学創造専攻
 助教  グバレビッチ・アンナ
懇親会 (参加希望される方のみ)
16.30~18.00
 講師を囲むささやかな懇談の場を設けさせていただきます.
時間延長可能.持ち込みも歓迎いたします.
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<定員> 50名
(先着順で満員になり次第締め切ります.会員外の方も歓迎いたします.)

<参加費>
会員:2 000円,会員外:3 000円,学生員:無料,一般学生:500円
懇親会費:1 000円
参加費・懇親会費は当日会場にてお支払い下さい.

<申込方法>
「No.09-118宇宙サロン参加申込み」と題記(電子メールの場合はSubject名)し,
(1)氏名,(2)会員資格・会員番号,(3)勤務先・所属部課名,(4)連絡先
所在地・電話番号・FAX番号・電子メールアドレス,(5)懇親会への出欠,
を明記し,申込先あてに電子メールまたはFAX,郵送でお申し込み下さい.

<申込先>
日本機械学会 宇宙工学部門担当 遠藤 貴子
〒160-0016 東京都新宿区信濃町35番地 信濃町煉瓦館5階
電話 (03)5360-3504/FAX (03)5360-3507/E-mail:endo@jsme.or.jp

<問合せ先>
古谷  寛
(東京工業大学・大学院総合理工学研究科 人間環境システム専攻)
〒226-8502 横浜市緑区長津田4259-G3-6
電話 (045) 924-5608/FAX (045) 924-5580
E-mail:furuya@enveng.titech.ac.jp