飛び出せ! 北の宇宙基地

北の地である北海道で、人工衛星の開発などを行っている 北海道工業大学 佐鳥研究室の活動日記です。

カップゼリーの中の異物検出

2008-09-29 17:25:49 | ハイパースペクトルカメラ
タイトル: カップゼリーの中の異物検出
研究期間: 2007年
文責  : 北海道工業大学 佐鳥研究室




図1 カップゼリーのハイパースペクトル画像(RGB表示)




図2 カップゼリーの分光スペクトル特性

異物である皮とゼリー及び果肉とのハイパースペクトルグラフを比較すると、600nmから700nm間のデータを比較することにより異物(皮)を検出することは可能である。

宇宙関連情報: ATV はスペースステーションがロシアのデブリを回避するのを助ける

2008-09-27 09:00:23 | 北海道衛星
ATV はスペースステーションがロシアのデブリを回避するのを助ける

ATV Helps Space Station Dodge Russian Debris Europe's Automated Transfer Vehicle (ATV) fired two of its four rocket thrusters Aug. 27 to move the international space station away from the remnants of a Russian spy satellite. It was the first time in five years the space station's orbit has been altered to avoid a potentially disastrous collision at orbital velocity.

According to NASA's daily space station status report, the European-built cargo ship Jules Verne, which is docked at the station's aft end, fired its rocket engines for 5 minutes and 2 seconds, the first such station maneuver since May 30, 2003.

The offending piece of space hardware, catalogued as Object #33246, was part of a Russian satellite formerly known as Kosmos-2421.

NASA projections predicted that, without an avoidance maneuver, the space station and the debris would have come within 1.6 kilometers of each other, creating a 1-in-27 chance of a collision.

Mission requirements call for an avoidance maneuver if there's a greater than 1-in-10,000 chance that a piece of orbital debris could collide with the space station.

Kosmos-2421 was a Russian Navy electronic ocean surveillance satellite that apparently shut down and began breaking apart in March, according to NASA's Orbital Debris Program Office at Johnson Space Center in Houston.

As of June, the satellite had undergone three different fragmentation events that left a total of 500 or more bits of debris floating around an orbit 390 to 415 kilometers above Earth.

The space station typically flies in an orbit with an altitude of about 354 kilometers.

http://www.space-library.com/080910MS-s.pdf

宇宙関連情報: 大樹での大気球第1号機に成功!!

2008-09-23 10:57:46 | 北海道衛星
 大気球の実験場が岩手県三陸から北海道大樹町に移転することは以前の
ISASメールマガジン(2008年3月18日 第183号)でもお知ら
せしましたが、いよいよ、大樹での実験が始まりました。

 大樹町は北海道の南東、十勝平野の南部にあります。広大な耕地では酪農
や畑作が盛んで、牛乳やチーズ、ホエー豚などが特産です。太平洋に面して
いるため鮭、シシャモ、ホッケ、ツブ貝など、海の幸にも恵まれています。
町内を流れる歴舟川(れきふねがわ)は水質日本一に選ばれたこともある清
流で、いまでも砂金が採れます。

 このような大自然の中に、私たちの新しい実験場は、あります。この実験
場では、これまでもJAXAの実験が、航空機などの分野で、以前から行わ
れていました。しかし、今後は大気球の定常的な実験も加わることになった
ため、JAXAと大樹町の連携をもっと強化しようということになり、連携
協力を謳った協定が締結されました。このような協定をJAXAが自治体と
結んだのは初めてです。この協定により、実験場は「大樹航空宇宙実験場」
という名称になりました。

 協定の調印式は5月26日に現地で開催され、立川JAXA理事長や、
伏見大樹町長を始め、地元選出の中川昭一衆議院議員などの地元関係者も多
数加わって、行われました。式典では、地元の小学生100人が「宇宙への
夢を記したメッセージ」を添えた色とりどりの風船を大空に放つイベントも
行われ、その華やかな光景には多くの歓声があがりました。

 さて、大樹での大気球実験ですが、移転後の設備の最終調整や動作確認が
何度も重ねられ、5月末に実験の準備が整いました。そこで6月2日に第1
号機の実施に臨んだのですが、放球の直前にアクシデントが発生し、残念な
がら中止・延期されました。調査の結果、このアクシデントは実験場の移転
とは無関係なことが原因と分かり、なおさら残念だったのですが、これを機
に私たちはシステムの総点検を行い、再挑戦することを決意しました。

 そして、8月23日、風のない穏やかな朝、ついにチャンスが訪れました。
早朝4時から作業が開始され、ヘリウムガスが詰められた気球は、午前6時
19分、悠然と舞い上がり、雲の中へと飛び立っていきました。第1号機の
放球に成功した瞬間です! 6月のアクシデントのこともあり、非常に緊張
しましたが、無事に成功し、皆で安堵の握手を交わしました。

 9月5日には、さらに大型の気球実験が行われ、これも成功しました!
ひとえに、大樹町を始めとする関係各方面の方々の御尽力のお蔭と感謝申し
上げます。実験場での作業には、地元の町民7名に参加していただきました。
海上での回収作業には、大樹漁協の漁船や、近郊の港のクレーン船などに参
加していただきました。地元の皆さんとの「ちゃんちゃん焼き」の会では、
鮭、サンマ、トウモロコシ、ジンギスカン、などに舌鼓を打ちながら親睦を
深めました。

 当初の計画では、8月末から9月初めにかけての時期に、さらに2機ほど
実験を実施する予定でしたが、地上の天気と上空の風の両方の気象条件が良
好な機会が無く、実施できませんでした。

 8月末に関東や東海地方に連日記録的なゲリラ豪雨が発生した、いわゆる
「平成20年8月末豪雨」は、記憶にも新しいところですが、この主な原因
はジェット気流が平年と異なり大きく蛇行したことだと言われています。
気球実験に適した気象条件の一つに「ジェット気流がまっすぐ東に吹いてい
ること」があるため、異常気象が発生してしまうと、計画通りの実験実施が
どうしても難しくなってしまう傾向があります。

 大気球は熱機関や推力を持たない、とてもエコな乗り物なのですが、それ
ゆえに気象環境の影響を受けやすいというジレンマを抱えています。私たち
も、放球前の作業を屋内で行えるようにしたり誘導帰還システムの開発を進
めたりして気象環境から受ける影響の低減を目指していますが、そういう開
発のみならず、地球温暖化への取り組みも一層求められているのかもしれま
せん。(JAXAは温室効果ガスに関する「チーム・マイナス6%」に参加
しています)

 なにはともあれ、大樹での大気球飛翔に成功することができました。来年
度からの本格運用に向けて、さっそく準備を進めていきたいと思っています。

出典: ISASメールマガジン 第210号【発行日- 08.09.23】

宇宙関連情報: 微小動物「クマムシ」、宇宙空間で生き延びた

2008-09-20 06:20:46 | 北海道衛星
2008-09-14 微小動物「クマムシ」、宇宙空間で生き延びた

小さな無脊椎(むせきつい)動物「クマムシ」が、強烈な放射線が飛び交う宇宙空間に直接さらされても生き延びたとの論文が、米科学誌「カレントバオロジー(Current Biology)」(9月9日号)で発表された。

 研究を行ったスウェーデンのクリスチャンスタード大学(Kristianstad University)のIngemar Jonsson氏が率いる研究チームによると、宇宙空間で動物の生存が実験で確認されたのは今回が初めてだという。

 緩歩動物とも呼ばれるクマムシは、8本脚で体長0.1-1.5ミリ。約600種が存在し、山頂から深海まで地球上のあらゆる場所に生息するが、湿った地衣類やコケ類に暮らすものが多い。

 クマムシは、マイナス272℃から151℃以上の温度で生存でき、放射線にも強く、数年間の乾燥にも耐え、300気圧の圧力下でも生き延びることができる。

 研究チームは、前年9月に打ち上げられた欧州宇宙機関(European Space Agency、ESA)の人工衛星「FOTON-M3」に乾燥させたクマムシを乗せた。クマムシたちは上空270キロの軌道上で、太陽からの放射線が容赦なく飛び交う宇宙空間に直接さらされた。

 クマムシたちが地球に戻った後、研究者たちはその多くが宇宙の過酷な環境を生き延びたことを確認した。中には地上より1000倍以上強い強烈な紫外線を浴びても死ななかったものもいた。クマムシは地球帰還後に普通に繁殖したという。

 クマムシが紫外線に耐えるメカニズムは分かっていないが、研究チームによると「クマムシを乾燥に強くしている細胞レベルの仕組みが、全体的な耐性の強さに関わっている可能性がある」という。(AFP)

http://www.spaceref.co.jp/news/5Fri/2008_0_9_14mg.html

宇宙関連情報: 「きぼう」 蛍光灯切れ頻発 半数近く使用不能に

2008-09-19 09:16:21 | 北海道衛星
 国際宇宙ステーション(ISS)に設置された日本の実験施設「きぼう」で、21本ある蛍光灯のうち9本が玉切れで使えなくなっていることが分かった。宇宙航空研究開発機構(JAXA)によると、半分以下になると作業や実験に支障が出るという。
最先端技術を集めた宇宙実験室が、思わぬローテクに悩まされている。きぼうは、3月に船内保管室、6月に主要施設の船内実験室がISSに取り付けられた。
しかし、その直後から蛍光灯の玉切れが相次ぎ、12日現在、点灯できるのは保管室で4本中1本、実験室で17本中11本という。
 蛍光灯はISS内の共通部品で、97年米国製。きぼう以外でも玉切れが続出し、予備品は使い果たした。原因について、きぼう運用チームの横山哲朗サブマネジャーは「保管中に蛍光灯の真空度が落ちたのではないか」とみる。JAXAは玉切れの心配のない発光ダイオードを利用した照明を開発中だが、持ち込めるのは10年以降という。

出典:9月14日2時31分配信 毎日新聞
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080914-00000001-maip-soci

宇宙関連情報: ロケットの空中発射、実用研究に着手 経産省が来年度

2008-09-17 17:02:45 | 北海道衛星
ロケットの空中発射、実用研究に着手 経産省が来年度 2008年9月14日3時7分
http://www.asahi.com/special/space/TKY200809130203.html

 ロケットを航空機に取り付けて上空で発射する「空中発射システム」の実用化研究に、経済産業省が来年度着手する。発射場所の制約を受けず、小型衛星を低コストで臨機応変に打ち上げられる利点があるという。通信、環境観測、災害監視など新たな衛星需要を生む可能性もある。

 重さ100キロ以下の小型衛星の打ち上げを想定し、来年度は航空機への取り付け方やロケットの種類などを検討する。3年間でロケットの形状や航行技術などについて基礎的な試験にこぎ着け、実用化への道筋をつけたい考えだ。来年度予算の概算要求に8千万円を盛り込んだ。

 空中発射だと発射場がいらず、地上設備が最小限ですむ。悪天候による打ち上げ延期も避けやすい。衛星を投入する軌道に応じて効率的な発射地点を選べるうえ、上空なので空気抵抗が小さく、打ち上げに必要なエネルギーも少なくてすむという。

 日本でも最近は東大阪宇宙開発協同組合の「まいど1号」など、小型衛星の開発が盛んだ。だが打ち上げに適したロケットがなく、大型ロケットH2Aが大型衛星を打ち上げる際に「相乗り」させてもらうしかないのが現状だ。

 H2Aは高価で重さ数トンもの衛星を打ち上げる性能をもたせてあり、打ち上げに1回100億円程度かかる。それが小型衛星と空中発射を組み合わせれば、衛星1基あたりの打ち上げ費用を大幅に下げられる可能性があるという。

 米国は90年に空中発射用の「ペガサスロケット」を実用化し、すでに30回以上の打ち上げ実績がある。ロシアやフランスでも開発が進められているという。

カップゼリーのシール付着状態の良部位・不良部位の判定

2008-09-13 07:15:14 | ハイパースペクトルカメラ
タイトル: カップゼリーのシール付着状態の良部位・不良部位の判定
研究期間: 2007年
文責  : 北海道工業大学 佐鳥研究室


シールが規定どおり接着されている箇所(透明)、規定どおり接着されていない箇所(白)を比較した。反射率について10%以下程度の差が現れている。露光モードによる内部散乱を識別する方法も可能といえる。




図1 カップゼリーのハイパースペクトル画像(透明:良 白:不良)




図2 接着状態の良部位(透明)と不良部位(白)

生ジャムに混入した異物の検出2007

2008-09-12 05:44:28 | ハイパースペクトルカメラ
タイトル: 生ジャムに混入した異物の検出2007
研究期間: 2007年
文責  : 北海道工業大学 佐鳥研究室 




図1 生ジャムの瓶の外から撮影した写真




図2 生ジャムの瓶のから撮影した反射スペクトル特性




図3 生ジャムの中身を撮影した写真




図4 生ジャムの中身の反射スペクトル特性



北海道衛星プロジェクトとハイパースペクトルリモートセンシングの展望

2008-09-11 06:00:30 | ハイパースペクトルカメラ

タイトル: 北海道衛星プロジェクトとハイパースペクトルリモートセンシングの展望
作成日 : 2005年
文責  : 佐鳥新(北海道工業大学)


1.北海道衛星プロジェクトの使命

2003年4月から北海道衛星プロジェクトを立ち上げた。このプロジェクトの使命は、従来の宇宙産業と違う新しい宇宙産業を興すことにある。従来のハードウェアを重視した衛星開発から、衛星データを国民の生活レベルでいかに使うかという利用面、つまりソフトウェア重視の価値観へのシフトが必要である。更にそのソフトは従来のような研究者向けのものでは不十分で、ビジネスとしての採算性まで考え抜いたものになって初めて実社会に受け入れられるのである。
 次に、宇宙産業を立ち上げるに当り考慮しなければならないのは、地域性である。宇宙開発は全地球規模の技術だから地域性は無関係と思われるかもしれないが、しかし、民間レベルで製造技術や利用技術が実社会に広く浸透していくためには地場産業への細かな配慮は不可欠なものとなる。
北海道衛星プロジェクトでは、単に人工衛星の製造だけではなく、そこから派生する要素技術の民生化(スピンオフ)を積極的に奨励して新しい製品開発と新しいビジネスの創出を考えている。今回紹介する「ハイパースペクトルカメラ」はその一例といえる。図1は宇宙産業創出普及のための体制を示している。NPOによる啓蒙、大学発ベンチャーによるモノづくり、企業集団によるビジネス化の3者の連携で推進する。




図1 宇宙産業創出の体制図


2.北海道衛星「大樹」の仕様

北海道を拠点として事業を立ち上げるに当り、やはり農業や酪農への利用面から始める必要がある。北海道では既に15年以上前から衛星画像を農業に応用する研究が行われており、殊に米と麦については実用化されている。
その為、北海道衛星の1号機は重量50kgの農業リモートセンシング衛星(林業でも可)とした。この衛星には可視から近赤外域のハイパースペクトルセンサーを搭載する。また1号機は新聞等による一般公募により『大樹(たいき)』と命名された。

表1 北海道衛星の仕様





図2 北海道衛星の概念図


3.農業衛星ビジネスモデル

過去に北海道内で衛星の画像を使うことによりコメの売り上げが増えるのかどうかの実験を行ったことがある。図3にタンパク含有量マップの一例を示す。




図3 タンパクマップ


関係者によれば、ha当たり8,500円、衛星画像を購入費325円/haを差し引いても十分な採算性がある。一町村あたりでは4~5千万円の収益増になるという。また、新潟県の越路町では吟醸酒用の米のタンパク含有量をコントロールするために衛星画像を利用しているが、ここでは魚沼産のコシヒカリの約2倍の価格で売れると聞いている。私たちは衛星画像を積極的に使うことにより、農作物のブランド化まで視野に入れたいと考えている。
図4に北海道衛星の農業衛星ビジネスモデルを示す。全体のスキームの中で、衛星を製造しカメラで画像を撮るところまでがモノづくりの部分である。次のそのメタ画像を民間企業が画像処理して配信し、農協や農業試験場が中心となって各農家に技術指導を行う。そして、収穫された農産物を契約した商社を通してブランド化して全国に広く浸透させる。あるいは、大手スーパーなどに衛星ブランドのような形で売り込んでいく。ここまで進めることによって農家にとっての魅力がでるので、衛星画像の利用も増えることになる。産学官の推進協議会を作り、このフロー全体の問題点の洗い出しを行い、衛星及びセンサーの開発にフィードバックをかける。このサイクルを回すことで産業化を押し進めていきたい。




図4 農業衛星ビジネスモデル


4.ハイパースペクトルカメラの開発

ハイパースペクトルカメラ(HSC)とは、撮影する画像ピクセルにその位置での光学スペクトル情報を含む画像データを取得するカメラである。形状認識と同時に物性に関わる情報を同時に取得できることが特徴であり、例えば農作物であれば作柄評価に役立つ。HSCの原理を図5に、構成を図6に示す。




図5 ハイパースペクトルカメラの原理




図6 ハイパースペクトルカメラのシステム構成

図7~図9は開発段階で製作したHSC1.51を用いた航空機による撮影実験(予備実験)の結果である。ジャイロと撮像ライン信号との同期をとることによりメタ画像の幾何補正を試みた。




図7 ハイパースペクトルカメラの航空機実験




図8 航空機実験で取得した画像の幾何補正(予備実験)




図9 航空機による画像撮影予備実験

北海道衛星の目的が宇宙産業創出であることから、現段階で開発したHSC1.0の設計をベースに、大学や企業の研究室で手軽に使用できるモデルとしてハイパースペクトルカメラ『COSMOS EYE』を製品化した。COSMOS EYEを図10に、仕様を表2に示す。




図10 ハイパースペクトルカメラ 『COSMOS EYE』

表2 Cosmos Eye の仕様




5.ハイパースペクトルカメラの応用分野

ハイパースペクトルセンサー(HSS)又はハイパースペクトルカメラ(HSC)を光学センサーとしてみた場合、従来のCCDやC-MOSカメラに比べてユニークな画像センサーとなる。HSCではスペクトルのパターン変化から状態を推定できることから、質的変化を捉えることができる。多少のノイズがあったとしても、空間方向とスペクトル方向からの補完処理により精度を上げることができるのも特徴といえる。このように、HSCは外乱ノイズに強く、ソフトを工夫することにより多品種の計測と精度の向上が可能となる点で、新しい光学画像センサーとしての魅力がある点も見逃せない。
 図11と図12は同じ色彩をもつ野菜と果実を画像処理により分類した時の分類精度を比較した例である。マルチスペクトルよりもハイパースペクトルの方が明らかに精度が高いことがわかる。




図11 画像分類に用いた供試体




図12 画像分類の評価結果

HSCを用いれば生鮮食品の鮮度評価に応用することができる。図13は食品の反射スペクトルを測定した一例である。680nm付近の急峻な吸収スペクトルはクロロフィルによる強い光吸収で、レッドエッジと呼ばれる。700nm以上の帯域での反射は植物に特有の反射スペクトルで、体内に熱を取り込まないような働きをする性質を表している。果物の場合には可視域に蛍光と思われる反射スペクトルが見られるが、このスペクトル形状は鮮度に依存して変化する。
鮮度評価については、図14と図15にキュウリの事例を、図16にはプラムの評価例をそれそれ紹介する。顕微鏡で植物の細胞をHSCで観察すると、やはり葉緑素の存在する部分で強い吸収が見られる。このことは、バイオ分野の計測技術としてHSCが役立つ可能性が高いことを示唆している。実用化にはスペクトルデータのライブラリー化が必要である。

今回紹介した事例以外で私のところに問い合わせのあったハイパースペクトル技術へのニーズを表3にまとめることで、本論考のまとめとしたい。




図13 食品の反射スペクトル




図14 食品の鮮度評価:キュウリへの応用例(1)




図15 食品の鮮度評価:キュウリへの応用例(2)




図16 食品の鮮度評価:プラムへの応用例




図17 バイオ応用分野:植物細胞中の葉緑素分布

表3 ハイパースペクトルカメラのニーズ調査




参考文献

1.北海道衛星HP  http://www.hokkaido-sat.jp/ 
2.佐鳥研究室ブログ http://blog.goo.ne.jp/satori-lab/ 





宇宙関連情報: 小型衛星保護フィルム開発

2008-09-10 06:26:50 | 北海道衛星
2008-09-04 小型衛星保護フィルム開発

米国の研究者が、小型衛星を保護する薄いフィルムを開発し、宇宙環境の厳しい温度条件や腐食、そして微小隕石の衝突から衛星を保護することが比較的容易に可能となった。

Prasanna Chandrasekhar率いるAshwin-Ushas社の研究者らは、NASAと共同研究を行った結果の発明となる。研究の目的は、10kgから20kgクラスの衛星を保護する方法を検討することにあった。NASAによると、将来は衛星の大部分は低コストで超小型の衛星が主流になるだろうと考えている。

研究チームは、電荷が与えられると色が変化する柔軟なフィルムで、可変放出エレクトロクロミック素子装置を設計した。
太陽光が照射したり、逆に暗黒の環境といった状況に対応して色が暗い色から明るい色に変化することで、高温や低温から衛星を保護する。さらに赤外線からも保護する。同時に、ゲルマニウムシリコン酸化物の層を加えることで、腐食性のある原子酸素や微小隕石から保護する。

http://www.spaceref.co.jp/news/4Thur/2008_09_04tec.html