飛び出せ! 北の宇宙基地

北の地である北海道で、人工衛星の開発などを行っている 北海道工業大学 佐鳥研究室の活動日記です。

第4章 宇宙コンテンツ配信事業:ロケット及び衛星の適正価格

2006-08-31 22:39:27 | 佐鳥新の教授&社長日記
従来の衛星の製造コストは50kgの衛星バスでも原材料費だけで約5億円、ミッション機器、人件費、打ち上げ費を含めると10~20億円に及ぶ。宇宙業界の誰もがこのコストに疑問を持たないのだが、しかし、冷静にビジネスとして考えた場合には異常な金額といえる。恐らく宇宙技術は軍事技術の延長線上で捉えられており、真の意味でのビジネスとしては考えられてこなかったことが原因であろう。北海道衛星プロジェクトを立ち上げてから3年が経過するが、この間に商工会議所での宇宙ビジネス勉強会やセミナーを通して多くの起業家とディスカッションを重ねてきたが、ビジネスとしての適正な価格は衛星重量1kg当たり100万円前後であろう。つまり50kgの衛星バスならば5000万円で作るべきある。千葉工業大学の鯨衛星「観太君」の費用は4000万円と聞いているが、量産化を射程に入れるならば決して無理な数字ではない。

 次にロケットの打ち上げ費用だが、現在のロケットは2つの点で大きな課題があるといえる。第1に、現在の成功率95%ではビジネスとしてのリスクが大きすぎる。元々ロケット技術はミサイルを改良したものであったので、当初から航空機のように安全性や信頼性を考慮して作られたものではなかったという歴史が未だに尾を引いているように見えてならない。これからの宇宙時代を迎えるためには抜本的な設計思想の見直しが必要でないだろうか。第2には、打ち上げ費用がペイロード(注2)1kg当たり100万円というのは高すぎる。ロケットは輸送手段であるのだから、荷物の10~30%程度が限度であろう。


注1: 衛星バスとはカメラなどのミッション機器を除いた衛星の基本機能の総称。
注2: ペイロードとはロケットに搭載する荷物の総称。人工衛星もペイロードという。


第4章 宇宙コンテンツ配信事業:ビジネスモデル

2006-08-30 22:17:44 | 佐鳥新の教授&社長日記

北海道衛星立ち上げ当初のビジネスモデルは農業衛星リモートセンシングという衛星画像から農作物の作柄評価を行うものであったが、その後の詳細な調査により、現時点での市場規模は約1億円程度であることが判明した。衛星ビジネスを立ち上げる為には10倍程度まで市場が成長するのを待つか、事業の多角化を図るかの何れかを選択する必要がある。そこで我々は子供と女性(主として主婦層)を対象に宇宙からの美しい画像(動画)をコンテンツとして利用し、ゲームや癒し系の番組に編集してデータ配信する事業の検討を始めた。
 宇宙コンテンツ配信事業は次の2点を目的とする事業である。
①私たちの生活の中に「宇宙の視点」を取り込むことにより、宇宙産業を創造し、市場化する。
②人類の幸福と進化に貢献する宇宙コンテンツを提供する。

 宇宙コンテンツ配信事業では、複数の人工衛星が撮影するハイビジョン並みの高精細な画像を地上にリアルタイムにダウンロードし、インターネットで専用プロバイダーへ送る。送られた動画や静止画の素材は、基本的に無料で提供するものとし、画像そのものではなく、それを加工した付加価値の高いコンテンツで新規ビジネスを立ち上げることを狙っている。宇宙からの静止画であればGoogle Mapのようなサービスもあるが、しかしリアルタイム性、つまりライブ感覚で本物の宇宙の中でTVゲームやインターネット・ゲームを楽しめる点が本事業の最大の特徴であり、そこに国際競争力が生まれる。図4-1に宇宙コンテンツ配信事業の概念図を、コンテンツのアイテムを表4-1に示す。


図4-1 宇宙コンテンツ配信事業の概念図

表4-1 宇宙コンテンツのアイテム


このような新規市場を創造し、それを拡大するためには、データを一般公開し本市場への多くの企業の参加を促すことによって競争原理を図ることが重要といえる。
 この事業を実現するためには、軌道上に20~30機の小型衛星を配置する必要がある。当然のことながら、従来のような製造コストではビジネス的に機能しないので、製造面でのイノベーションが望まれることは言うまでもない。新しいビジネスモデルでは宇宙コンテンツ衛星の一部に従来の北海道衛星1号機『大樹シリーズ』を取り込むことを検討している。コンテンツビジネスに必要な画質はハイビジョン画像相当であることが必要条件であり、そのためには衛星と地上間で大容量の通信回線を組む必要がある。この通信回線には北海道衛星1号機のレーザー通信システムを導入する。取得したデータをリアルタイムに地上へ降ろすためには地球の自転を考慮して複数の地上局を世界中に配置する必要がある。地上局の候補地を図4-2に示す。


図4-2 地上局の候補地

また本事業には図4-3に示す2種類の衛星を用いることを検討している。リモートセンシング用の衛星バス(注1)には従来の北海道衛星1号を、動画配信用には10~15kgの衛星バスを使用する。図4-4に動画配信用の超小型衛星バスの構成を示す。このシステムは伸展ブームによる重力勾配安定方式の姿勢制御を行うことで、姿勢制御に必要なリソースを減らし、システムの簡素化を図っていることが特徴である。この方式ではリモートセンシングに要求されるような姿勢安定性は望めないものの動画配信には申し分のない精度であることから、衛星重量の大幅なコストダウンが期待できる。


図4-3 宇宙コンテンツ事業に用いる超小型衛星システム


図4-4 動画配信用の超小型衛星バスの構成


同好会

2006-08-28 07:41:01 | 北海道宇宙連合
どうも加藤です

ちょっと前に軽く触れましたが、「HSU(Hokkaido Space Union)」に所属という形で、「宇宙開発研究会」が正式に同好会として認められました。まあ、認定されてから結構経つんですけど・・。

夏休みに入る前くらいに、道工大webページ内のクラブ紹介にその名が刻まれました。そして、期末テスト終了後にそのページへの書き込みが出来るようになりました。そこで、今まで適当に同好会について色々と書き込んでいましたが、本日、やっとまともに書き上げました。(遅!)

興味ある人は見といてください。駄目出しは一応受け付けますが、やわらかく言ってください。

道工大クラブ紹介ページはこちら

第3章 スピンオフ事業 ビジネス編: ハイパースペクトルカメラの製品化

2006-08-08 22:33:34 | 佐鳥新の教授&社長日記
北海道衛星に搭載するリモートセンシング用センサー(ハイパースペクトルセンサー)の開発過程で、大学の研究室でも使用できるカメラ型のものを製作した。通常の人工衛星の場合では軌道上の移動を利用してスキャナーで画像を取り込むように地上を撮影しているのだが、しかし、この方式は実験室では使い勝手が悪い。そこで、内部に走査機構を設けることにより、カメラのように使えるものを開発した。人工衛星や航空機に搭載する際にはスキャンを停止させればそのまま流用できる。ハイパースペクトルカメラは2004年5月から『Cosmos Eye』(図3-4)という商品名で販売している。


図3-4 ハイパースペクトルカメラ『Cosmos Eye』



第3章 スピンオフ事業 ビジネス編: マイクロ波エンジンの製品化

2006-08-07 23:30:54 | 佐鳥新の教授&社長日記
一般に人工衛星の軌道は残留大気や地球が完全な球形ではないことが原因で起こる重力の摂動効果の影響等により、徐々に軌道がずれてくる。軌道のずれ補正するためにはスラスターと呼ばれる宇宙用エンジンが必要となる。宇宙では燃料の補給ができないため、打ち上げ時に搭載した限られた燃料を少しずつ消費せざるを得ず、燃料が尽きたときが衛星としての寿命となる。そのため宇宙用エンジンには燃費の良いものが要求される。一般的に、化学反応(燃焼)を利用するタイプのエンジンよりも、イオンやプラズマを加速・膨張させるタイプのエンジンの方が燃費の面で優れていることが知られている。このタイプのエンジンは電気推進と呼ばれている。北海道衛星には私が1999年~2004年に北海道で開発した「マイクロ波エンジン」というイオンを加速膨張させるタイプの電気推進器の搭載を検討している。
 マイクロ波エンジンはイオンを放出するエンジンヘッドと電子を放出する中和器から構成させる。イオン放出に伴い周囲の機器が負に帯電してしまうことから、通常イオンを大量に加速させる際には、電子も同時に放出し、電気的に中和させながら作動させる。イオンを加速させて推力を得るタイプの電気推進にはイオンエンジンがある。イオンエンジンの場合にはグリッドと呼ばれる複数の穴の開いた2枚の電極間に1千ボルト程度の電圧をかけてイオンを加速している。下流側の電極が軌道から逸れたイオンの衝突で消耗することが寿命要因となることが知られている。それに対し、マイクロ波エンジンの場合には、下流には電極を設けず、中和器から放出される電子雲を仮想的な電極として利用することにより、電極損耗の問題を根本的に解消しているのが特徴といえる。更にイオン生成にマイクロ波放電を用いることで極めて少ない電力(30W以下)で作動させることが可能となり、北海道衛星のような重量50kgの超小型衛星にも搭載することができる。図3-1にマイクロ波エンジンのイメージ図を、図3-2にはエンジンヘッドの写真を示す。


図3-1 マイクロ波エンジンのイメージ図


図3-2 マイクロ波エンジンのプロトタイプのエンジンヘッド

図3-3は作動時のマイクロ波エンジンの写真である。紫色に発光したガス体は燃料のキセノンのイオンで、右側のエンジンヘッドから左側に向かって秒速14kmで放出されている。写真右上の点状に見える発光体が中和器で、ここから電子が放出されてイオンを電気的に中和している。表3-1にマイクロ波エンジンの性能を示す。


図3-3 作動時のマイクロ波エンジン


表3-1 マイクロ波エンジンの性能


川島さん来訪

2006-08-07 01:42:33 | 北海道宇宙連合
本日、道工大にUNISEC事務局長の川島さんがご来訪されたのですが、
2227実験室が汚いとお叱りを受けてしまいました。
本当に申し訳ありません。。。
実験室の掃除には、酒匂さん方式が効果あると川島さんからご教授頂きました。
どんな方式かって(?)それは、試してみてからのお楽しみということで・・・。

ともあれ、実験室以外にも、HIT-SATのフライト品や地上局を見てご帰還されました。
ご満足いただけたのでしょうか?
また、いつでも気軽にお越しくださいませ、今度来るときは実験室もきれいに
なっているハズ(?)です。

こども未来博の特別ゲスト

2006-08-04 21:04:04 | 佐鳥新の教授&社長日記

今日のこども未来博ではゲストに宇宙飛行士の山崎直子さんとJAXAの的川泰宣先生をお招きした。
また未来塾という企画ではUNISECの川島レイさんにカンサットとキューブサットついての講演会もあり、なかなか盛り沢山で楽しい一日であった。


山崎直子宇宙飛行士とJAXAの的川泰宣先生



講演中の川島レイさん



自転車を運転する人型ロボット「村田せいさく君」