飛び出せ! 北の宇宙基地

北の地である北海道で、人工衛星の開発などを行っている 北海道工業大学 佐鳥研究室の活動日記です。

宇宙関連情報: スペースシャトル発射台修理

2008-07-19 08:03:20 | 北海道衛星
修理作業が始まったスペースシャトルの第39A 発射台画像は米フロリダ州ケネディ宇宙センタ(KSC)にあるスペースシャトル(S/S)用第39A 発射台の修理作業。第39A 発射台は5 月31 日、S/S「ディスカバリ(STS-124)」打上げ実施時、S/S ロケット噴射圧により、発射台の北側に伸びるフレーム・トレンチ(ロケット噴射を逃がすための噴射口の構造壁用耐熱タイル)が崩壊を起こす事故を起こしてた。

この発射台は元々は、1960 年代にアポロ計画のため隣接する39B 発射台といっしょに建造された。S/S はアポロ宇宙船用のサターンロケットの組立て作業にも使われた巨大なアセンブリ・ビル([ 編注] VAB,Vertical Assembly Building)で宙吊りにされ、外部燃料タンクや固体ロケットブースタ取付け作業が実施され発射に向けた準備が行われる。VAB で発射形態に組立てられたS/S は次に、巨大なトレーラ([編注]スクローラと呼びましたね)に乗せられVAB から39A か39B 発射台のどちらかに運ばれる。このようにS/S の打上げを行うためには必ず、VABを使わなければならないことが、未だ持ってこの2 つの発射台が使われ続けている原因となっている。

KSC は、ほぼ東京23 区と同じ広大な敷地面積をもつが、大部分は湿地帯であり、発射台として使える部分はわずか。そのこともあり、この2 つの発射台はS/S の退役が予定されている2010 年以降も、次期主力ロケット用に上部構造物部分が改装され継続使われることとなっている。NASA によると現在、修理作業が行われている第39A 発射台のフレーム・トレンチ部分は1960 年代に陸軍工兵隊(陸軍がこのような公共建築物を建設するというのは奇異に思えるかもしれないが、陸軍工兵隊は現在でもハリケーン「カトリーナ」被災地で擁壁の建設作業に従事するなど、日本人にとっては意外な活動にも従事)によって建設が行われたもので、以降、半世紀近くに渡ってそのまま使われ続けたというから驚き。

http://www.space-library.com/080713MS.pdf

プリント基板のスルーホール不良箇所検出のための予備検討

2008-07-19 07:07:07 | 佐鳥新の教授&社長日記
タイトル: プリント基板のスルーホール不良箇所検出のための予備検討
研究期間: 2007年度
実施者 : 北海道工業大学 佐鳥研究室


1.実験の背景と目的

プリント基板には基板の表面と裏面とを導通させるための銅でメッキした小さな穴を各所に設けるが、これをスルーホールという。プリント基板の製作工程では、最初に基板にビア、部品穴、基準穴などをあけ、この後ビアにはスルーホールのための銅めっきを小施す。感光性の樹脂皮膜(フォトレジスト)にフォトツール上のパターンを転写し、エッチングによってパターン外の銅箔をとばす。この後、残った感光フィルムを剥膜し、銅箔を露出させて、これが回路を形成するという工程により製造するのが一般的である。 

 プリント基板の検査では、エッチングの工程でスルーホール内にメッキした銅が溶けることによる不具合が発生することか知られている。一般に、
(1)完全に溶けて断線するケース
(2)スルーホール内の銅箔の一部が溶けてしまうケース
(3)スルーホール内にクラックが発生するケース
(4)スルーホール内にエッチング液が残っているケース
などの不良があると言われている。

 今回は部分的に銅箔が溶けた状態を模擬した検体を製作し、分光スペクトル的に正常部と識別可能かどうかを調べることを目的とした予備実験を行った。


2.実験

 基材の露出が違う各サンプルを、ハイパースペクトルカメラによって撮影しスペクトルの違いを評価する。実際のスルーホールは1mm未満と小さいことから、今回は基材と銅の比率を変えた検体をスルーホールの模擬材として用意した。この検体をハイパースペクトルカメラで撮影し、画像処理により検体全体の平均スペクトルを計算した。

 NO.1:基材が100%露出。銅泊は0%
 NO.2:基材が約20%露出。銅泊は約80%
NO.3:基材が約10%露出。銅泊は約90%
 NO.4:基材が数%露出。銅泊はほぼ100%
 NO.5:基材の露出無し。銅泊が完全に100%




図1 部分的に欠損を含むスルーホールを模擬した検体




図2 検体の平均スペクトルの求め方

実験結果を図3に示す。反射率の大きい銅成分が増えるに従って(NO.5→NO.1)反射率の絶対値は増大する傾向にある。銅含有率の変化に伴うスペクトル形状の変化を調べるために、スペクトルの最大値(700nmの反射率)で規格化してみると、図4のように450nm-600nmの範囲で変化が現れた。




図3 スルーホールを模擬検体の分光反射率




図4 最大値で規格化した反射率



3.考察

銅含有量を表す指標として、まず変数X=R(550nm)/R(700nm)を定義する。Xとサンプルの銅含有率の相関をプロットした結果を図5に示す。図から分かるように、Xと銅含有率は非常に良い精度で1次式による表現が可能となることが分かる。このことは、分光スペクトルの変化からスルーホールの欠損が原理的に判定できることを意味している。




図5 スルーホール内の銅成分の含有率の推定


4.実用化への展望

今後の応用に関する展望として、Xのように2波長の関数で指標が作れることから、通常のカラーCCDをセンサとして用い、各ピクセルのRGBの成分からX=G/Rという変数とその関数から指標を作れば同様な検出が可能となる可能性が高いといえる。但し、実際の撮影条件下に合わせた検量線を作るためには、CCDから得られるRGBの情報だけで判断するのはやや危険であり、事前準備としてハイパースペクトルカメラで撮影した分光画像から得られるスペクトル情報を網羅的に調べておく必要があると思われる。