飛び出せ! 北の宇宙基地

北の地である北海道で、人工衛星の開発などを行っている 北海道工業大学 佐鳥研究室の活動日記です。

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読書メモ(イオンエンジンによる動力航行)

2007-01-29 23:16:09 | 佐鳥新の教授&社長日記
書 名:イオンエンジンによる動力航行
著 書:国中 均  中山 宜典  西山 和孝 (荒川 義博 監修)
出版社:コロナ社


イオンエンジンという惑星探査用エンジンに関して、近年稀にみるほど詳細に書かれている書籍である。著書の最先端の宇宙探査機の開発における鋭い視点から、現場のエンジニアらが現実の設計で考えなければならない設計手法を余すところなく詳述されている。
しかし、本書はイオンエンジンの研究を目指す大学院生および開発実務者にとってのバイブルとなることは間違いなく、名著として歴史に残る書籍といえる。


第1章 推進概要

ロケット推進の原理と電機推進シリーズの解説。


第2章 イオン生成

弱電離プラズマおよび放電現象についての一般論と、直流放電、高周波放電、マイクロ波放電といった放電方式の特徴が説明されている。またイオンエンジンの性能評価に重要な『イオン生成コスト』という概念が説明されている。


第3章 静電加速

イオンエンジンの3枚の電極である、スクリーングリッド、アクセルグリッド、ディセルグリッドの役割と、それらの電極が与える電気的特性が理論的に説明されている。
イオンシースの概念からボーム条件の導出は明快である。書籍としてグリッド設計に関する設計上のポイントが書かれているのは他に例を見ない。
イオンエンジンのグリッド支持部の設計というのは実はエンジンの実用化において極めて重要なポイントになる。通常はこの辺りのノウハウはあまり触れられないものだが、本書ではアメリカの設計事例を通して記述されていた点が興味深い。


第4章 中和

イオンエンジンから推力の担い手であるイオンだけを放出しようとすると衛星全体が負に帯電してしまうため、電気的に中和するために積極的に電子を放出する機構を持っている必要がある。そのための装置を『中和器』と呼んでいる。中和器の原理だけではなく、電子流と主エンジンからのイオン流が合流する領域でのプラズマ現象が説明されている。著者らが中和現象に伴う電磁ノイズの発生機構がE.W.Crawford(1961年)の静電イオン音波でると突き止めた現象は、プラズマ物理学の現象としても非常に深いといえる。


第5章 地上試験

イオンエンジンは宇宙空間で1万時間以上作動しなければいけないので、その耐久性を実時間で確認するためのノウハウがある(加速実験は実証にならないので)。動運転システムについてのポイントは確かに正確であったが、私には現場の苦労を削除した形で説明されているように思われたが、メーカーならば開示しない情報まで惜しみなく放出している点については、私個人としては驚きを隠しきれない思いである。

・ガス絶縁器の設計のポイントが詳述されていた。
・DCブロックの設計のポイントが詳述されていた。
・推力測定方法のポイント。
・多価イオン測定のポイント。
・ビームのエネルギー分布測定のポイント。
・推力方法のドリフト計測のポイント。


第6章 宇宙利用への最適比推力

 ロケットという推進原理の観点から電機推進の最適な使い方についての説明がある。
 これまでの衛星設計から、深宇宙探査にはイオンエンジンが、近地球運用にはDCアークジェットが有効であることが説明されている。


第7章 宇宙動力航法

・国中氏による『電気推進ΔVEGA』の提案は興味深かった。
・ラグランジュ点維持での電気推進の利用は興味深かった。


第8章 宇宙機システムと電気推進

・衛星におけるグランドの取り方に関するポイントは興味深い。
・射場におけるイオンエンジンの推進剤供給方式について詳しく書かれていた。

第9章 イオンエンジンの宇宙運用
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CubeSAT設計会議

2007-01-28 22:08:29 | 佐鳥新の教授&社長日記

日時:2007年1月28日(日)14:00~16:30
場所:道工大8号館8109室
参加:大学教員(4名)、エンジニア(4名)、学部生及び大学院生(北大、道工大)
   ※石村先生はフランスからインターネット経由で参加。

議案

1.衛星データ解析の報告
 ○姿勢制御(松島)
 ○熱解析(榊原)

2.今後の運用方針
 ○今後の実験の要望(戸谷、石村、佐藤)
 ○アマチュア無線家向けサービスの開始時期について(三橋)
 
 
3.量産型衛星バス開発に関する提案
 ○提案内容(佐鳥)
 ・将来の北海道衛星シリーズ及びHIT-SAT後継機に向けて衛星コンポーネントのモジュール化を行うべきである。期限は2007年6月末までの約半年間。
 ・小型衛星量産化を北海道地区の衛星開発の特徴として打ち出すことが重要。
 ・ミッション要求が出た3日後にFMを完成させる体制の構築を最初の目標としたい。

 ○意見等
 ・この方針で進める。


4.CubeSAT型実験衛星のシリーズ化に関する提案
 ○提案内容(佐鳥)
 ・CubeSATを継続的に打ち上げて実力をつけるべきである。
 ・2008年から年2機ずつ継続的に打ち上げたい。

 ○意見等
 ・この方針で進める。


5.宇宙インフラ衛星の開発スケジュールについて
 ○提案内容(佐鳥)
 ・宇宙産業創造プロジェクトのミッションという位置付け
    NPO宇宙空間産業研究会(主催、CubeSAT開発の責任団体)
    北海道衛星株式会社(モノづくり)
 ・開始時期は2007年7月(モジュール化完了後から)。開発期間は2年(実質1.5年)。
 ・Kuバンド衛星と光通信衛星の2機を同時開発(ミッション機器以外を全て同一設計)
 ・商用衛星にアマチュア無線機のピギーバック方式とする。
 ・海外のロケットを使用する(ロシア、ウクライナ、カザフスタン等)
 ・地上局はアメリカを中心に海外にも設置する。

6.第2回『地上の星実験』に関する提案
 ○提案内容(佐鳥)
 ・完全自動追尾型システムによる長距離光通信実験とする
 ・デジタル変調による10Mbps以上の通信速度を確保することが条件
  (第1回『地上の星実験』での回線設計の評価結果を反映させることとする。)
 ・プロジェクトリーダー: 青柳君
 ・時期:2007年10月

 ○意見
 ・植松電機に40cmの天体望遠鏡がある。予備実験には使えそう。



次回
日時: 2月18日(日)14:00
場所: 道工大8号館8109室
内容: HIT-SAT開発及び運用に関する反省会 
担当は北大の戸谷先生

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読書メモ(電気推進ロケット入門)

2007-01-27 23:05:28 | 佐鳥新の教授&社長日記
書 名:電気推進ロケット入門
著 書:栗木恭一  荒川義博
出版社:東京大学出版会

日本で初めての電機推進に関する本格的な教科書である。日本の電気推進の創始者である栗木恭一先生(東京大学名誉教授)ならではの深みのある名著といえる。電機推進の開発現場レベルからみても使える例題が豊富な点が本書の特徴といえる。


第1章 序論
 電機推進の概念と歴史

第2章 電機推進の基礎
 ロケット推進の基礎的考え方と電気推進の性能に関する基本概念の説明


第3章 放電およびプラズマの基礎

 電離気体の基本的な考え方(統計力学的扱い)、もっと密度の高い状態である電磁流体力学的な扱い方、たとえばプラズマ波動などが説明されている。
 電気推進の現象論を扱うに当たって特に重要なプラズマ乱流拡散でもあるボーム拡散に関する解説がある。


第4章 アークジェットスラスタ

 アークジェットスラスタとはアーク放電によりガスを加熱膨張させることで推進力を得る推進器である。電磁流体としての基礎方程式系およびエンジンの性能を決めるファクターがもれなく説明されている。このタイプのエンジンの実用化に向けた推進剤の選び方に関する考察は宇宙業界なれではの興味深い思想が伺える。


第5章 イオンスラスタ
 
 イオンエンジンの原理と基礎についての解説がある。イオンエンジンは土星より遠方の惑星探査のエンジンとして用いるならば絶大な威力を発揮する推進機といえる。
(私が大学院生の時代にはプリンストン大学のジャーン先生の古典的な書籍しかなかったものだが、わかりずらい概念を日本語で説明してくれているので、羨ましい限りである。)


第6章 MPDスラスタ

MPDスラスタとは、電磁プラズマ加速スラスタ(Magneto-Plasma-Dynamic Thruster)のことで、十分な電力を供給できれば燃焼を伴うロケットエンジンを超えた能力を発揮することができる。


第7章 ホールスラスタ

旧ソ連で実用化された歴史ある推進機に関する理論と国内での研究事例が紹介されている。


第8章 パルス型プラズマスラスタ


第9章 その他の推進
 
 レジストジェット、FEEP(フィープ)、太陽熱発電など。
 (8章と9章は業界的な流行の説明といってよいだろう。)


第10章 電機推進ミッション解析

第11章 電機推進ミッションの実例


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読書メモ(コロナ現象)

2007-01-26 22:42:15 | 佐鳥新の教授&社長日記
書 名:コロナ現象
著 書:室岡 義廣
出版社:コロナ社

ひとことで言うと、様々なところに現われている弱電離プラズマ現象の解説書といえる。

○針の先端から発生するコロナ放電をロケット推進に応用するアイディア
 イオンクラフトでも知られるイオン風をイオンロケットに使うアイディアらしいのだが、ロケット方程式の考えが入っておらず、現実的と思われる。

○流動帯電
 ガソリンなど可燃性の燃料の多くは絶縁体であることから、長く伸ばしたホース中に流体を流すと表面での摩擦による帯電が起こることが知られている。これを流動帯電という。ちょっとしたきっかけで放電が発生して火災が発生することもあるらしい。

○オーロラ上空のプラズマ電流
 オーロラ上空では磁力線に沿って太陽から流入した電子による100KAから1MA(メガアンペア)程度の電流が流れている。通常、太陽風のエネルギーは50~200[eV(エレクトロン・ボルト)]であるが、オーロラ特有の発光現象が起こるためには5,000~10,000[eV]まで何らかのメカニズムによる加速が必要だという。
 次にオーロラの色だが、赤は酸素原子から放出される630nmの発光で、同じく酸素原子が電離する際に生ずる557nmの緑の発光などが主体ということ。

○雷の物理量
 積乱雲の帯電量: 20~200[C(クーロン)]
 雷の電流: 10,000~100,000[A]
 雷の電圧: 1億ボルトのオーダー
 
 (検証)
  ①地上での電界強度が1,400[V/cm]になると雷が発生する。
  ②夏期の雷雲の運低は1~3km
   ①、②より V=1,400[V/cm]×(1,000~3,000)×100[cm]
          =1.4~4.2億ボルト

○コロナ放電による植物成長促進実験
 コロナ放電雰囲気内でクローバーを育てたところ、成長速度と生育量の促進作用が見られたという。生育量では約2倍の大きさまで育ったと書かれていた。特許出願はしたそうだが、科学的には解明されていないという。


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読書メモ(VLBI技術)

2007-01-25 23:20:56 | 佐鳥新の教授&社長日記
書 名:VLBI技術
著 書:近藤冨士信  近藤哲朗  高橋幸雄
出版社:オーム社

VLBIとは超長基線電波干渉計(Very Long Baseline Interferometry)といわれる技術で、空間的に離れた位置にある複数個の電波望遠鏡をあたかも1個の大型電波望遠鏡であるかのように連動させて測定する技術である。VLBIを用いると空間分解能を飛躍的に改善することができる。
VLBIを実現するためには、観測時間帯域(数時間=約1万秒)に対して、0.1ナノ秒以下の測定精度が必要となる。これは10の-14乗の安定度を要求するものであり、基準時間源として水素メーザーが使われる。

○直径積
2個の電波望遠鏡で干渉計を組む場合を想定し、それぞれの直径をD1[m]、D2[m]とすると、経験的に直径積S=D1×D2=100[m2]あれば良いことが知られている。中央局が30m級のアンテナを保有していれば、各所に配備するアンテナは3~4mのもので十分となる。

○空間分解能の改善効果
 電磁波の回折理論によれば、直径D[m]、波長λ[m]とすると、空間分解能はλ/D[rad]で与えられる。距離L[m]離れた2個のアンテナを共通のローカル信号で結合した電波干渉計を構成すると、空間分解能はλ/L[rad]に改善される。
 ローカル信号をケーブルで結合する場合にはLは10kmが限度であるが、同期させた原子時計を用いれば1万km以上の基線距離を持つ電波干渉計も可能となる。

○測地VLBIの精度
 地上測量の精度は6桁が限度といわれており、100kmの測定で10cmの誤差が入り込むことは避けられない。それに対し測地VLBIでは10桁の精度が確保できる。これは大陸間距離1万kmを1cmの精度で測定でき、大陸移動(プレートテクトロニクス)の年間数cmという超微速の動きを実際に検出できるようになった。

○データ解析
 相関処理が基本的な手法となる。かなり詳しく書かれている。

○物理モデルと補正の考え方
 ・月と太陽が地球回転に及ぼす歳差運動と章動運動の補正(最も影響大)
 ・大気遅延効果と電離層遅延効果の補正
 ・月と太陽の重力が地球の形状を変形させる潮汐効果の補正(年間で最大±2cm)
 ・重力場による光路の歪みを生ずる一般相対論効果の補正

○測地VLBIの研究事例紹介
 ハワイ局と鹿島局のアンテナを利用したプレート運動の実測例など。

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読書メモ(テラヘルツ波の基礎と応用)

2007-01-24 23:19:50 | Weblog
書 名:テラヘルツ波の基礎と応用
著 書:西澤 潤一
出版社:工業調査会


テラヘルツ波は周波数が10の12乗ヘルツ以上の電磁波であり、波長は数百ミクロン~10ミクロン程度。遠赤外から赤外と呼ばれる大域の電磁波である。この帯域では分子の回転スペクトルと振動スペクトルが多数存在する。

○肝臓癌組織のテラヘルツイメージングの研究例

○タンネットダイオードを使った透過イメージングシステム。ICカードの内部を透視した実験例が紹介されている。

○YAGレーザーを励起光源とし、LiNbO3結晶を使ったパラメトリック発振器によるテラヘルツ波の発生実験事例。

○連続周波数可変リング型テラヘルツ波パラメトリック発信器の紹介。基本構成はリング型色素レーザーのテラヘルツ版といえる。

○1THz以上の帯域に主要な禁止薬物類のスペクトルが存在することが科学警察研究所と著者のグループとの共同研究で確認。ここでいう禁止薬物類とは麻薬や覚せい剤などが対象となる。郵便物中の非破壊検査には1~3THzが最適。

○東北大学農学部テレヘルツ生物工学寄附講座の研究例として、農産物の鮮度に関する情報を得るために、葉の中に含まれる水分含有量をテラヘルツ波で非破壊的に可視化した事例を紹介している。

○エリプソメトリ型分光という光の偏光を利用した分光計測の紹介。

○全反射減光分光法
プリズムで全反射させた面からごく僅かに電磁波の染み出しが生ずることがしられており、この領域での電磁波をエバネセント波という。エバネセント波の発生領域に試料を配置すると、試料の複素屈折率を計測することができる。

○フォトニック結晶への応用例

○テラヘルツ波の吸収率の違いから水と引火性液体(ガソリン、ベンジン、灯油等)を識別できるという事例。

○有機化学分野でグルコースなどの糖類の分光測定に応用した研究事例。

○生化学分野ではアミノ酸の分光測定に使えることから、DNAと遺伝子診断に応用できる。

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読書メモ(遠赤外線リモートセンシング熱計測法)

2007-01-18 22:22:45 | 佐鳥新の教授&社長日記
書 名:遠赤外線リモートセンシング熱計測法
著 書:岡本芳三
出版社:コロナ社

基礎編と応用編からなる。基礎編では赤外線撮像装置(サーモグラフィー)の原理と伽リブレーションの方法について詳細に記述されている。

応用編から幾つか紹介する。
○自動車タイヤの温度計測へ応用することにより、タイヤの耐久性を改善した事例
○半導体基板の冷却方法と伝達特性の最適化に応用した事例
○燃焼火炎の温度場計測への応用事例
○建築分野:タイル剥離層の検出
○建築分野:住宅壁の温度分布計測による室内の温度ムラの評価
○建築分野:液体漏洩箇所発見のための非破壊検査
○建築分野:モルタル吹き付け斜面の老朽化調査(非破壊検査)
○セラミックスの微小クラックの発見(非破壊検査)

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日本土木工業研究会の特別講演

2007-01-16 22:18:11 | 佐鳥新の教授&社長日記
今日は夕方から日本土木工業研究会の特別講演の講師として講演を依頼されていた。会場は札幌グランドホテル2階のグランドホール。大手ゼネコンの役員クラスの方々が140人も大きなホールに集まった。
昨年9月に打ち上げたHIT-SATのビデオ上映や、宇宙開発のスピンオフとして私たちが研究しているハイパースペクトル技術などの話題を紹介した。
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ダクテッドファンの会議

2007-01-15 19:17:03 | 佐鳥新の教授&社長日記
午後から1時間ほど北海道立工業試験場でダクテッドファンの会議があった。この会議には植松電機さんを中心にノーステック財団、工業試験場、道立農業試験場の研究者らが参加している。

ところで、ダクテッドファンというのは何というと、パッと見た感じがUFOそっくりの飛翔体である。ヘリコプターの親戚のようなもので、中央に円筒形のダクトがあり、その中で2枚のプロペラが回転している。ダクテッドファンはヘリコプターよりも半径方向への拡散流が少ないことから、植松さんらは農薬散布用の新しい飛翔体になると期待している。
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取材

2007-01-06 19:24:07 | 佐鳥新の教授&社長日記
午前中にY社の取材があった。
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