飛び出せ! 北の宇宙基地

北の地である北海道で、人工衛星の開発などを行っている 北海道工業大学 佐鳥研究室の活動日記です。

読書メモ(電磁界の生体効果と計測)

2007-03-30 22:13:09 | 佐鳥新の教授&社長日記
書 名: 『電磁界の生体効果と計測』
著者名: 電気学会 高周波電磁界の生体効果に関する計測技術調査専門委員会 編
出版社: コロナ社




1.個人的な感想
人間が生きる為の動物実験ではあるが、生きた動物にマイクロ波を照射するとどういう変化を経て死に至るかという、恐ろしい研究結果も書いてあった。

2.レーザー光の治療効果
低出力レーザー光には、創傷の治癒促進効果と鎮痛・消炎効果があるという。
これらの発現機構は正確にはわかっていないが、創傷の治癒促進にはレーザーが特定の酵素の活性を高めコラーゲンの新生を活発化させる結果として考えられており、また鎮痛と消炎については自律神経への刺激が血行を促進させることで治療効果が発現されると考えられている。

3.ハイパーサーミア
腫瘍部を加熱して治療する温熱療法を「ハイパーサーミア」という。
41-45℃に人体に適用可能な温度域で殺細胞効果が認められる。この効果は42.5℃以上で急激に増大する。
温熱効果とレーザー治療を組み合わせたレーザーサーミアという治療法で大きな効果が報告されている。腫瘍の殺細胞効果は単独で用いた場合よりも約5倍程度に増大するようだ。


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第1章 電磁界と生体
1-1  概説
1-2  電磁界の定義と基礎事項
1-3  電磁界の生体への効果
1-4  生体の電気的特性と計測

第2章 静電磁界と生体
2-1  概要
2-2  静電界の生体影響
2-3  静磁界の影響
2-4  静磁界と計測

第3章 ELF電磁界と生体  (注:ELF = Extremely Low Frequency)
3-1  概要
3-2  生体周囲のELF電磁界
3-3  ELF電界の生体影響
3-4  ELF電界の生体暴露量計測
3-5  ELF磁界の生体影響

第4章 高周波電磁界と生体
4-1  概要
4-2  RF電磁界およびマイクロ波の生体への吸収
4-3  RFおよびマイクロ波の生体効果
4-4  生体への影響
4-5  高周波電磁界の脳・神経系への影響
4-6  自体への影響
4-7  ミリ波・サブミリ波の生体効果

第5章 医療応用
5-1  概要
5-2  治療への応用
5-3  ハイパーサーミア
5-4  計測、診断への応用

第6章 電磁環境計測
6-1  概要
6-2  電磁界のドジメトリ(熱作用、刺激作用の定量的評価)
6-3  近傍界測定法
6-4  SAR測定法
6-5  足首電流・接触電流測定
6-6  ハイパーサーミアによる電磁環境計測



読書メモ(ヒラリーとライス)

2007-03-29 22:40:56 | 佐鳥新の教授&社長日記
書 名: 『ヒラリーとライス・・・アメリカを動かす女たちの素顔』
著者名: 岸本 裕紀子
出版社: PHP新書





コンドリーザ・ライスについて紹介する。

1.経歴
15歳でデンバー大学に入学し、19歳で優等で卒業。続くノートルダム大学院では1年で修士課程を修了。デンバー大学へ戻り、ロシア語をマスターし、リサーチを重ねながら26歳で博士号を取得。そして26歳でスタンフォード大学の助教授に就任。
38歳でスタンフォード大学の教授に就任するが、ほぼ同時に大学のナンバー2である事務局長に抜擢され、大学改革を任される。3年で赤字からの脱却に成功し、その経営手腕が評価される。45歳でジョージ・W・ブッシュの大統領選に参加し、46歳で第I期ブッシュ政権の国家安全保障担当補佐官に就任。50歳で第II期ブッシュ政権の国務長官に就任。


2.人間関係のつくり方
ライスに直接会った人に印象を聞いてみると、実に気配りの行き届いた人という感想が多い。オフィスのスタッフに対する仕事の要求レベルは高いが、気配り、フォローは完璧で、マスコミの人たちに対する気遣いも忘れない。ライスを“絶世の美女”と評価する人も多いようだ。


3.ブッシュとライスの共通点
・経営能力に優れていること。
・フィットネスを欠かさず、フットボールや野球が大好きであること。
・信仰心が篤いこと。
・政治信条が同じであること。

よく、ライスのような才女がブッシュの単純さにイラつくことはないだろうか、といった指摘がなされるが、ライスは、「国民に選ばれた大統領としてのブッシュを尊敬している」し、「自分は神の導きで今の仕事をやっている」と信じているのである。
また、ブッシュ個人については、「直感に優れ、物事の本質を掴む力がある」と評価し、だから自分の役割は、「ブッシュ大統領の直感を国民にわかる言葉に置き換え、政策として論理的な枠組みに整理すること」だと考えている。



読書メモ(恐るべき旅・・・火星探査機「のぞみ」のたどった12年)

2007-03-28 00:14:13 | 佐鳥新の教授&社長日記


書 名: 『恐るべき旅・・・火星探査機「のぞみ」のたどった12年』
著者名: 松浦 晋也
出版社: 朝日ソノラマ

この本には面白い表現が多数あったので、その幾つかを紹介する。

1.宇宙研のプロジェクト管理方式

・宇宙研の管理方法の根幹にあるのは、「頻繁に顔を合わせ、普段から意志の疎通を良くし、できるものが自発的にできることを行い、余分な文書を最小限にする」ということだ。

・この方式はモチベーションを持つ少人数が計画に参加する場合に絶大の威力を発揮する。


2.ハレー彗星探査プロジェクト・・・プロジェクト発案者:秋葉鐐二郎先生(東大名誉教授)

・宇宙航空研究所が、1981年に東大から独立して、文部省直轄の組織になることが決まり、その目玉プロジェクトとしてハレー彗星探査プロジェクトが採択された。

・組織改変という予算獲得のチャンスを最大限に生かした結果、ハレー彗星探査機は、それまでのにない大規模な計画となった。それまでのM3S(低軌道への打ち上げ能力300kg)の2倍以上、低軌道に770kgの打ち上げ能力を持つ「M3S- II」ロケットの開発、露払いとなる工学試験機「MT-T5」、本番のハレー彗星探査機「Planet-A」という2機の探査機の同時開発、探査機との通信を行う直径64mパラボラアンテナを長野県臼田町に建設―――これらをわずか5年の間にやり遂げた。


3.衛星重量軽量化について

・それまでの地球周りの科学衛星は、サブシステムごとに自立性があって、そこで閉じたんだけれども『のぞみ』では全体として管理していました。

・「あしたのジョー」では、矢吹丈のライバル、力石徹が過剰な減量が原因で死ぬ。火星探査機Planet-Bの開発においても、1993年の打ち上げ延期に起因する過酷なまでの軽量化が、最終的な惑星探査機失敗に至る設計変更を呼び込むことになったのである。

・このように減量化が進んだということは、逆に言えば最初からもっと予算をかけさえすれば、楽に軽量化できたということだった。火星を目指す苦悶の背景には常に予算不足があり、「金さえあれば楽にできるところを、ミッションが成功するかどうかの、ぎりぎりのせめぎあいにしていた。残念ながら、財政当局には、「ミッションが失敗すれば投下した予算がすべて無駄になる」という論理は通用しなかった。


4.軌道屋『川口淳一郎』

・川口の口から出てくる言葉は、常に短い文章にまとまっており、端的で容赦がなく、明快だ。一語一句に頭の回転の速さに由来する、鋭い刃先が付いているような印象を受ける。今回の取材の過程で、何人かが川口のことを「天才」と形容した。

・宇宙開発関係者の間では「軌道屋は変人の巣窟」「軌道屋は普通の人とはちょっと違う」と、などとよく言われる。「あいつら頭の中で四次元世界が見えているんだよ」などと説明する人もいる。

・軌道力学の解析は、数学的な才能に加えて、宇宙空間の3次元の中の時間的な変化をも頭の中で思い浮かべる絵画的、映画的な才能の両方を必要とする仕事だ。抽象的思考能力と絵画的直感の双方を兼ね備えた「軌道屋」たちに、周囲が畏怖とやっかみの両方を感じるのは理解できることである。故に日本に於ける軌道力学のトップである川口が、「天才」という単語で語られたとしてもたいした不思議ではない。



(目次)
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序章 あんよはじょうず

第1部 長い旅支度

第1章 惑星に向かって

第2章 ロケット打ち上げ能力と探査機重量の狭間で

第3章 トラブルの種子と、27万人の想いと

間章


第2部 恐るべき旅路

第4章 打ち上げオペレーション

第5章 地球脱出

第6章 長く曲がりくねった軌道

第7章 「のぞみ」は駆け抜けた

あとがきにかえて
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鮮度センサーの実験

2007-03-26 23:10:09 | 佐鳥新の教授&社長日記
今日は滝川の大葉工場で自動選別機に鮮度センサーを取り付ける実験を行った。実は前の実験では私たちの製作した基板を取り付けたところ、予備を含め5枚用意した基板が全部は存してしまったのだった。

 何らかの原因により選別機本体側から過大電圧(50V~100Vと推定している)が進入し、DC/DCコンバータやICを焼き切ってしまったのだ。通常はアース不良などでラインフィルター等から徐々にたまった電荷で帯電したりすると起こりうる現象ではあったのだが、決定打が見つかっていない。前回は選別機側で外部インターフェースとして使用しているオムロンの製品との相性で発生することまでは突き止めたので、入出力側共に完全にアイソレートする対策を施した上での再チャレンジとなった。

 セッティング終了後、ビリビリした緊張の中で選別機のスイッチが入れられた。結果は全く問題なく作動し、関係者一同、ホッとした。

 いろいろ調整箇所はあったが、うまく計測できるところまでは確認することができた。最終的なデータ取りの日程は29日に決まった。



精神発達曲理論

2007-03-24 01:33:57 | 佐鳥新の教授&社長日記
今回の帰省に伴い、父が1985年頃から研究している精神発達曲の理論の定式化を手伝うことになっていた。

父が考案した精神発達理論には2つのポイントがある。
(1)精神発達には能力(学習能力、知力、哲学的思考など)に応じたピークが存在すること。
(2)ある才能が発揮された年齢をTとすると、それに0.8を乗じた年齢にその人の人生の転機が存在する。

私が学部の3年か4年の時にこの理論の骨子について教えてもらい、その時に数学モデルを作った時から続いている。人間の能力にピークが存在することに関しては記憶の忘却効果を退化率と定義して、精神発達を精神成長率のグリーン関数として導入したように記憶している。

 マジック・ナンバーの“0.8”は経験則ではあるが、その当時に現象を説明するために作図していた図(精神発達曲線)を幾つかの数学的な仮説から導くことを手伝った。その際に確か統計力学の考え方を少し入れて指数関数依存性を導いたと記憶している。

 最近は新たに精神達曲線からある一定の規則のもとに導き出される経験則を発見したということだったので、やり方を教えてもらったところ、一般的解が存在することがわかったので、ザッと計算して公式を1個作ってきた。「この公式はすごく良く合っている」と喜んでもらえた。

 今回の父との会話で印象的だったのは、「現代は過度な『実証主義』が先行しすぎており、本来見るべきものを見失っている。当為の科学のような視点が大切かもしれない。」という主旨の感想を話していたことだった。
(ここからは私の個人的な感想なのだが)確かに分子生物学や大脳生理学は大きな学問分野ではあるが、しかし、根本的にそのアプローチ(発想の原点)からは、精神発達という大きな幹を捉えきれないのかもしれない。

 祖母の7回忌ということでの帰省ではあったが、有意義なひと時を過ごすことができた。精神発達理論が早く出版できると良いと思う。


参考書: 「生きる力を育てる―若き教師のために」

『ハイパースペクトル技術の可能性』 9.その他の分野への応用

2007-03-22 09:52:29 | 佐鳥新の教授&社長日記
9.その他の分野への応用

 赤外領域のスペクトル分析を応用すれば建築分野におけるコンクリートの劣化(中性化)を非破壊的に検出することが可能である。東京大学の安岡研究室の研究事例を図9-1に示す。現在のリフォーム業界では、コンクリートの内部剥離が起こると壁の表面分布の熱伝導に変化が生じることに着目し、赤外線カメラを用いた赤外線サーモグラフィーによる壁の温度分布のモニタリングが行われている。図9-1の技術はリフォームだけではなく、トンネル内壁の欠陥検査や橋桁の検査など土木・建築分野全般への応用が期待できる。



図9-1 コンクリートの劣化予測に関する研究事例(東京大学安岡研究室)


回路基板の検査にハイパースペクトル技術を応用する研究として図9-2に示した大阪電気大学の岡本らの事例がある。



図9-2 回路基板の部品実装検査への応用事例
(参考文献:岡本、富永(大阪電気大学)「スペクトルカメラを用いた回路基板への応用」)

基板上に実装する部品のスペクトル特性の違いから、単純な画像認識では識別が難しいゴミの同定や結線不良の早期発見に役立つと思われる。

この技術の延長として、異物検査へのハイパースペクトル技術が応用が期待できる。例えば食品業界では、ソーセージなど加工食品内部に混入した髪の毛の検出が非常に大きな課題となっており、現状では未だ決定打が存在しない。

リサイクル業界への期待もある。例えばガラスのリサイクルとして鉛ガラス、ソーダ石灰ガラス、ほうけい酸ガラスの3種類を分類するハイパースペクトルによる分析技術が完成すれば実用化が可能と思われる。

 ITSへの応用を検討している事例を紹介する。次世代の無事故の自動運転システムを開発するために、人とそれ以外のもの(例えば道路、ガードレール、樹木等)とを識別するための特殊センサーにハイパースペクトルカメラに着目し、2006年度には自動車業界では国内最大手の企業が私たちの研究室と共同研究を行った。

 ハイビジョン用ディスプレイの画質の評価にハイパースペクトル技術の応用を検討している企業もある。彼らは人に優しい質感のある画像の特徴をスペクトル的に捉え、数値化して定量的に評価することを狙っているのである。



『ハイパースペクトル技術の可能性』 8.バイオ分野への応用

2007-03-20 07:07:39 | 佐鳥新の教授&社長日記
バイオ分野では遺伝子操作した変異株の同定技術としてハイパースペクトル技術が期待されている。一般に突然変異株を探す作業は数万点の株の中から探すという非常に手間のかかる作業ではあるが、ハイパースペクトル技術を用いて突然変異株に特有な性質を可視化すれば一度に数十以上の検査が可能となる。マルチスペクトルではあるが、変異株を分離した研究例を図8-1に示す。



図8-1 バイオ応用事例


北方圏衛星利活用推進シンポジウム

2007-03-19 23:40:26 | 佐鳥新の教授&社長日記

今日は北海道大学の学術交流会館で北方圏衛星利活用推進シンポジウムが開催された。私は「北海道衛星の取り組み」というタイトルで約40分間の講演を行った。北海道だけではなく、JAXA、NEDO、経済産業省(霞ヶ関)からも多数の参加があった。



パンフレット



会場の様子