共有すべきものとして
岡山出身の作家・棟田博の代表作『拝啓天皇陛下様』。
かつて渥美清主演・野村芳太郎監督で映画化され、「国民的喜劇」として成功を収めた。
主な舞台となっている歩兵第十連隊は、現在の岡山県営グランドや岡山大学の位置にあった。登場する旭川の中洲の「中島」は、私たちの岡山公演の会場のすぐそばである。親しみのある世界だ。
原作者・棟田博氏が遠い姻戚であることは知っていた。曾祖父の弟にあたる人が養子に行った先が、棟田家である。じつは棟田博氏も、同じ棟田家に養子で入っていたのである。そんな経緯もあって、いつか『拝啓天皇陛下様』を劇化することが、私の永年の夢であった。
某公立劇場のレパートリーとして上演を提案したこともあるが、『天皇と接吻』の直後だったためか、またぞろ天皇制についての芝居をやるのかと警戒されたということでもないだろうが、その時は実現しなかった。
今回のタイトルは『拝啓天皇陛下様 前略総理大臣殿』である。
『拝啓天皇陛下様』の愛読者である、現代を生きる官僚が、この時代の「生きにくさ」「宮仕えの辛さ」を、「かつての時代」に思いを馳せながら耐えていく、という物語だ。
倉本聰さんが棟田博作『サイパンから来た列車』をもとに『歸國』を書いたように、先達の刻みつけた忘れがたき人々の世界への憧れを基底に、苦難の現在を生きる者を救済し励ましていく、そのような試みとして、過去と現在を出会わせようと思った。
私は、「昭和」の終わりの時期、「天皇崩御」に際しての、表現者・市民に対する「自粛」強要に反対し、あえて数々の「反自粛」の表現活動を敢行した。そんな自分が作る『拝啓天皇陛下様』は、憲法によって「象徴」とされた「天皇」が代を重ねていくことの意味を、あらためて問う劇になるはずだと思っていた。
しかし、「平成」を過ぎ、「令和の世」になり、私たちの現在は、まったく予想外に歪んだ形に推移しており、天皇制についての論考は継続しつつ、新たに世界の構造の変化そのものを見据えなければならないと考えた。
登場する「現代を生きる官僚」は、私と棟田博氏と同様に、岡山県北に出自がある。その方の奧さんも、岡山出身である。
その人は、二年前、この世界から消えた。その人が、そして奧さんが、私たちに届けた言葉は、今を生きる人間が受け止めるべき「事実」としての「情報」であり、今を生きる人間が共有すべきものとして存在していると考えたい。
そのような考えに基づき、私は、『拝啓天皇陛下様 前略総理大臣殿』の世界を構築したいと思った。
その人は黒澤明監督の『生きる』が好きであったという。
そして私は、『拝啓天皇陛下様』の世界もまた、ひとつの『生きる』であることに思いあたり、驚いている。
……
以上、開幕のご挨拶です。(パンフレット掲載の文です)
座高円寺での公演は、22日(日)まで。
そのあと、名古屋、伊丹、岡山です。
ご来場をお待ちしています。
写真 左より、杉山英之、大西孝洋。
撮影・姫田蘭。
……
岡山出身の作家・棟田博の代表作『拝啓天皇陛下様』。
かつて渥美清主演・野村芳太郎監督で映画化され、「国民的喜劇」として成功を収めた。
棟田博氏が遠い姻戚であることは知っていた。
曾祖父の弟にあたる人が養子に行った先が、棟田家である。
じつは棟田博氏も、同じ棟田家に養子で入っていたのである。
『拝啓天皇陛下様』を劇化することが、私の永年の夢であった。
『拝啓天皇陛下様』の愛読者である、現代を生きる官僚が、「玲和」を迎える世の「生きにくさ」「宮仕えの辛さ」を、かつての時代に思いを馳せながら耐えていく。
倉本聰さんが棟田博作『サイパンから来た列車』をもとに『歸國』を書いたように、先達の刻みつけた忘れがたき人々の世界が、私自身の現在と交錯する。
燐光群『拝啓天皇陛下様 前略総理大臣殿』
作・演出◯坂手洋二
この作品は、棟田博氏の『拝啓天皇陛下様』等の著書から着想を得て、部分的に引用させていただいています。
東京公演◯座・高円寺1
11月13 日(金)〜22日(日)
受付開始○開演の40分前 開場○開演の30分前
11/13(金) はプレビュー。◎は託児サービスあり(要予約)。
坂手洋二とゲストによるアフタートークを予定しています。
ゲストの皆様は、以下の通りです。
〈アフタートーク・ゲスト〉
16日(月)寺脇研(映画評論家・プロデューサー)
17日(火)前川喜平(現代教育行政研究会代表・元文部科学事務次官)
18日(水 19時)望月衣塑子(東京新聞記者)
19日(木)西堂行人(演劇評論家・明治学院大学文学部教授)
20日(金)菱山南帆子(市民運動家)
21日(土 19時)森達也(映画監督・作家・明治大学特任教授)
一般 4,200円
発売開始○10月25日(日)
燐光群、座・高円寺チケットボックスで販売。
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ペア 7,600円(公演前日までのご予約・ご購入のみ)
U-25(25歳以下)/大学生以下 2,000円
高校生以下 1,000円 ※U-25以下は受付で要証明書提示
以上は、10月18日(日)より、燐光群でのみ販売。
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【前売扱所】
◆燐光群オンラインチケット http://rinkogun.com/Ticket.html
■ご観劇の前々日までにWEB上でご予約頂き、セブンイレブンでチケットをお受け取り頂けます。
■事前精算(手数料はお客様負担)。要会員登録(無料)。※早割期間中はお客様自身でお席をお選び頂くことはできません。
◆ご予約・お問合せ■燐光群/(有)グッドフェローズ
■03-3426-6294
■当日精算Web予約フォーム https://www.quartet-online.net/ticket/hkzr
◆座・高円寺チケットボックス(月曜定休)
■03-3223-7300(10:00〜18:00) 窓口(10:00〜19:00)
■オンラインチケット https://za-koenji.jp
■※座・高円寺の劇場回数券「なみちけ」もご利用いただけます(4枚つづり 一般用12,000円/学生及びシルバー用10,000円)。
開演後はお入り頂きやすい席へのご案内となります。お早めのご来場をお勧めします。
未就学児のご入場はご遠慮下さい。
東京以外の公演もあります。
↓
[名古屋]11月24日(火)・25日(水)愛知県芸術劇場
[伊丹]11月27日(金)〜29日(日)AI・HALL
[岡山]12月1日(火)市民文化ホール
【CAST】
猪熊恒和 大西孝洋 鴨川てんし 川中健次郎
円城寺あや 中山マリ 宮島 健 樋尾麻衣子
杉山英之 荻野貴継 武山尚史 山村秀勝
町田敬介 西村順子 Tanikawa Shogo
【STAFF】
照明○竹林功(龍前正夫舞台照明研究所)
音響○島猛(ステージオフィス)
舞台監督○森下紀彦
美術○加藤ちか+じょん万次郎
衣裳○小林巨和
擬闘○山村秀勝
演出助手○村野玲子 中山美里
文芸助手○清水弥生 久保志乃ぶ
宣伝意匠○高崎勝也
撮影○姫田蘭
協力○浅井企画 オフィスコットーネ
制作○古元道広 近藤順子
制作インターン○加藤七穂
Company Staff○桐畑理佳 田中結佳 宗像祥子 鈴木陽介
宮島千栄 内海常葉 秋葉ヨリエ
主催○有限会社グッドフェローズ
提携○NPO法人劇場創造ネットワーク/座・高円寺
助成○文化庁文化芸術振興費補助金(舞台芸術創造活動活性化事業)|独立行政法人日本芸術文化振興会
ネットで見たい方は詳細はこちらへどうぞ。
↓
http://rinkogun.com/Haikei.html
http://rinkogun.com