Blog of SAKATE

“燐光群”主宰・坂手洋二が150字ブログを始めました。

『8分間』東京・座高円寺公演終了。

2014-12-01 | Weblog
『8分間』東京・座高円寺公演終了。
俳優たちは出ずっぱりの劇。しかも似た設定の場面が十回続くわけだから混乱しやすい。初日からしばらくは緊張感の維持で乗り切ったが、観客と出会うことでよりいっそう内容が腹に落ちてくると、また別な集中力が必要になってくる。後半戦、より内容を深め、この不条理だがエンターテイメントである作品をさらなる高みへと連れてゆくべく精進する日々であった。
幕が開いてから、自劇団の上演以外のことも幾つか。散髪。原稿。来年の公演のための打ち合わせや大学での講義等も挟みつつ、観劇もした。

ほんとうに閉館間近となってしまったらしい青山円形劇場で谷賢一作・演出の新作『トーキョー・スラム・エンジェルズ』を観た。谷くんに私から感想聞いていなくて怖いと言われたので嫌われてもいいから言ってしまうと、まず題名が良くない。序盤、山本亨と南果歩のお二人を観ているととりあえず期待させられるが、声に特色のある二人だが、二人とも最初から最後まで声が変わらない。何も変化しない。そういう世界観なのだろう。ストーリー的には今時ネットや本ですぐに得られる以上の情報はない。ドラマなら独自の展開がほしいと思う私が古いのだろうか。マネー取引について興味を引けるよう噛み砕いて言葉にしているのは確かだが、がんばっている牛乳瓶の蓋の話であるが、感心しているのはよほどものを知らない人であろう。男優たちにも見所はあるし円形劇場を活かした気の利いたしつらえもあるが、何か本当のドラマが始まる前に終わってしまったという印象である。これでは壮大な予告編なのだ。言っていることはわかるはずだ。谷くんはもっと才気を出し惜しみせず舞台に叩きつけてほしい。沖縄に職を得た野村くんが忙しければ私がドラマターグをやるぞ。
余談だが私はラーメンを食べたくはならなかった。チャーシューメンにブライオリティを感じているらしい気配もちょっと違うなと思う。私はラーメン通ではないが、麺に集中できなくなるからチャーシュー過多を邪魔に思う人も多いのだ。

KAATで日韓合作『カルメギ』を観る。昨年韓国でいっぱい賞を取って話題になった。脚本・演出協力のソン・ギウン氏は私の『屋根裏』等の共訳者で、日韓演劇交流センター・協会でも仲間である。私が韓国で演出したときも世話になった。日本占領下の朝鮮史をライフワークとする彼らしい日韓史のレンズを通した『かもめ』で、多田淳之介演出も才気爆発、若い韓国俳優たちの瞬発力も鮮烈で、見応えがあった。美術・照明も秀逸。ただ私はボレロの流しっぱなしに違和感があった。ボレロ以外の音楽の使い方は素晴らしいのだが。そもそも私はボレロやカノンを流しっぱなしにする劇に感心したことがない。その意味ではこの劇は例外中の例外だ。でもやはりボレロを使ってほしくなかった。ボレロのせいでどうしても『かもめ』のダイジェスト版に見えてしまう面もある。

自分の東京千秋楽を留守にして能登演劇堂へ行って観たのが『黄昏にロマンス ~ロディオンとリダの場合~』。渡辺美佐子さんと平幹二郎さんの二人芝居。こちらはその全国ツアー千秋楽。稽古中に夫である大山勝美さんを亡くされた美佐子さんがツアーを最後まで走りきった。歌も踊りもある! ロシア戯曲なので洋服を何回も取り替える。華やかで明るい劇であった。しかし後半に戦争の影が姿を見せる。戦中派のお二人だからそれを当然のように体現できる。こんな柔らかさを感じさせる平さんも珍しいし、お互いのいいところをちゃんと出せるコンビだったということだろう。常田景子さんの翻訳もこなれている。
能登行きでは、羽田で演出の西川信廣さんとばったり。能登空港で照明の塚本さんとも合流。能登では可児市文化芸術振興財団の衛紀生さんと久しぶりにお話しする。かつて何度か燐光群の舞台監督をしていただいた村松明彦さんとも再会。
のと鉄道・七尾線を乗り継ぎ金沢へ。金沢市民芸術村の演出講座をやったときお世話になった黒田百合さんたちと来年以降に向けていろいろな話をする。あの講座がもう十年以上前になるとは。中央市場横の居酒屋が素晴らしく、日本海の旬の魚たちにも感謝。

写真は、高円寺駅のプラットホーム。座高円寺の広告が舞台上と同じようなH鋼の柱に。
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