Blog of SAKATE

“燐光群”主宰・坂手洋二が150字ブログを始めました。

観劇前に『バートルビー』を読んでおきたい皆さまに。そして「 I would prefer not to 」和訳について。

2015-08-29 | Weblog
当日パンフレットにも記したように、燐光群新作『バートルビーズ』は、観劇前に、原作にあたる『バートルビー』を既に読んでいても、じゅうぶんにお楽しみいただけます。
かといって、読んでおかなければならない、ということでもありません。
ただ、事前に読んでおいたほうがいい、という意見もあります。(Corich舞台芸術で満点をくださったハンドルネーム・ハンダラさんも「原作は、読んで置いた方が良い」とのこと)
ともあれ、事前に読んでおきたい皆さまに、『バートルビー』の出版されている状況をお知らせします。

インターネットで検索すれば、原文「Bartleby, the Scrivener: A Story of Wall-street」Herman Melville」が、いくつかヒットして、読めます。

翻訳出版されていて現在手に入れやすいのは、
ハーマン・メルヴィル 『代書人バートルビー バベルの図書館9』 ホルヘ・ルイス・ボルヘス編、酒本雅之訳、 国書刊行会、1988年
ハーマン・メルヴィル 『幽霊船 他一篇』 坂下昇訳、岩波文庫、1983年
ハーマン・メルヴィル 『書写人バートルビー』 柴田元幸訳、『モンキービジネス 2008 Spring vol.1』所収、ヴィレッジブックス、2008年
ジョルジョ・アガンベン 『バートルビー 偶然性について』 高桑和巳訳、月曜社、2005年 これには高桑訳の「バートルビー」全文および同論考「バートルビーの謎」が併録されています。
まだ発売されていない近刊に、光文社古典新訳文庫『書記バートルビー/ベニート・セレーノ』(メルヴィル/牧野有通・訳)があります。

「書写人バートルビー ―― ウォール街の物語 」ハーマン・メルヴィル 訳 柴田元幸
「バートルビー」ハーマン・メルヴィル 訳 留守晴夫
以上2点の和訳も、インターネットで読めます。

さて。

『バートルビー』の決め台詞というべき「 I would prefer not to 」は、英語で言えば実はごく短く、一息で言ってしまえる長さである。
日本語ではどうしても、長めの訳になってしまう。
『バートルビーズ』では、幾つかの言い方を併用している。
「日本人的な曖昧さ」を表現しているということかもしれないし、タイトルが複数形であるように、「バートルビー」が一人ではないので、登場人物の数だけ違う言い方が出てくる、ということかもしれない。
同じ人物でも違う言い方をすることがある。
一つの言い方に限定しなかった根拠は、他にもいろいろある。
それはまあ、観ていただいてご判断いただきたいと思う。

そして。

他にも、入手しづらいので上には挙げていないが、多くの翻訳者たちが『バートルビー』を訳している。
その皆さんが「 I would prefer not to 」をどう訳しているかだけ、以下に紹介したいと思う。わかるものは翻訳年も記した。(山田真実さんが調べてくれました)

柴田 元幸 「そうしない方が好ましいのです」2013
酒本 雅之 「せずにすめばありがたいのですが」1988
坂下 昇 「僕、そうしないほうがいいのですが」1979
高桑 和巳 「しないほうがいいのです」2005
留守 晴夫 「その気になれません。/その気になれないのです」
杉浦 銀策 「その気になれないのですが」1983
木村 榮一  「せずにすめばありがたいのですが」 2008
土岐 恒二 「あまり気が進みません」1979
原 光 「やりたくないのですが」1995
田中 西二郎 「気が進みません」1966
阿部 知二 「ごめんこうむりましょう」1961
北川 悌二 「「行きたくはありません」1960
寺田 建比古 「いたしたくございません」1972
林 哲也 「したくありません」1948


写真は、『バートルビーズ』で、原作世界の法律事務所長(鴨川てんし)と、バートルビー的人間である現代日本の若い娘(宗像祥子)が交錯する一瞬。


……………………

『バートルビーズ』
詳しい内容はブログのこの記事で。
http://blog.goo.ne.jp/sakate2008/e/0a9790c0e840b5d41f25e7528c90e4c0


劇団HP
http://rinkogun.com/
詳細はこちら
http://rinkogun.com/Bartlebies.html
オンラインチケットの連絡先
http://rinkogun.com/Ticket.html
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