Blog of SAKATE

“燐光群”主宰・坂手洋二が150字ブログを始めました。

串本町スペシャル 『わが友、第五福竜丸』

2023-12-22 | Weblog

燐光群創立40周年記念公演 『わが友、第五福竜丸』大千秋楽公演の会場・串本町文化センターは、もともとのホールの形状が、真っ白な反響板がホール完成後に付け加えられたということで、かなり特殊な状況でした。可能な限り隠し、かわして、いつもと同じに近いように舞台を仕込んだことは、お伝えしたとおり。私たちはその特別なやり方を「串本町スペシャル」と言っていました。

最初は、大臣柱の内側をぐるり「コ」の字で囲む反響板が目立って困ると思いました。上部は跳ね上げられましたが、横は東西に折るしかありませんでした。折っても真っ白なので、照明はハレるし、どうしたものかと、ギリギリ「大臣柱にはもともとこういう真っ白な板がついた構造だったのだ」と思える形に、仕上げました。照明も、極力当たらないように絞ってくれました。

さて、横の、大臣内側の反響板を、奥に向けて折ると、当然、その分、舞台横の袖の部分が、客席に近いところが使えなくなります。フェンス前の位置で、袖からの出入りがあり、どうしてもそこは三尺ほどあけなければならず、全体の奥行きを奥側にずらさなければならなくなります。しかしそれだといろいろと田の部分で帳尻が合わず、不都合が出てくるのです。こまりました。

ところが。

横の板にはドアのように、ちょうどドアサイズで外側に折れる形状になっていて、そこを折り、フェンスと高さもほぼ同じ、なんだかおさまりのいいデザインで、三尺くらいの奥行きを稼げることになったのです。奥行きを変えずにすんだのです。

まあ、ドアのように開いた形の所からの出入りも、考えようによっては、なんだか面白い、のです。

そうして「串本町スペシャル」は、ほんとに、楽しい部分もある「スペシャル」に、なりました。

 

 

 

あらためて、この公演のために尽力して下さった皆様に、ほんとうに感謝しています。

 

 

燐光群『わが友、第五福竜丸』既に終了した上演情報です。

https://rinkogun.com/portfolio/20231117_wagatomo_dai5fukuryumaru/

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画 『かづゑ的』 の衝撃

2023-12-22 | Weblog

熊谷博子監督の映画 『かづゑ的』。

試写で観せていただいたが、その衝撃がなかなか消えない。

瀬戸内海にある国立ハンセン病療養所、長島愛生園。本作はそこに暮らすハンセン病の回復者・宮崎かづゑさんを追ったもの。彼女は10歳で瀬戸内海にある国立ハンセン病療養所・長島愛生園に入所してから約80年、島で暮らしてきた。病気の影響で手の指や足を切断し、視力もほとんど残っていないが、周囲の手を借りながら自分で買い物や料理を行っている。76歳のときにパソコンを覚え、84歳になって初の著作となる「長い道」を出版した。

熊谷監督は「かづゑさんの部屋で話しながら、この人生を撮って残しておかねばと心に決め、2016年から愛生園に通いはじめた」という。それから8年間、かづゑさんの人生に伴走した。

かづゑさんたちの夫婦寮があったのは、新良田海岸。

私が渡辺美佐子さんに出ていただいて燐光群『お召し列車』で描いた世界は、唯一のハンセン病罹患者のための定時制高校・長島・新良田教室にまつわることである。

新良田の浜の鮮やかな海の風景に、ドキドキした。しかしそんな私の感慨を越えて、海は、ひたすら美しい。

瀬戸内は、日本海や太平洋に比べると海の透明度は低いが、この穏やかさ、包容力は、確かに内海ならではのものである。

 

これ以上のことはネタバレになるから言えない。

 

ラストシーンのかづゑさんの台詞は、劇作家には、書けない。

 

 

3月2日(土)公開 / 上映時間:119分 / 製作:2023年(日本) / 配給:オフィス熊谷

 

 

https://www.beingkazue.com

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする