Blog of SAKATE

“燐光群”主宰・坂手洋二が150字ブログを始めました。

清水邦夫『楽屋』に出てくる三好十郎『斬られの仙太』

2021-04-18 | Weblog

新国立劇場で三好十郎作『斬られの仙太』上演中である。

多くの人が『斬られの仙太』の名前を知っているのは、日本戯曲史上最多上演回数を誇る(らしい)清水邦夫作『楽屋』の中で、登場人物の一人がその一場面をなぞってみたりするからである。しかしどんな話なのかを知っている人も少ないのではないか。

『楽屋』を観た多くの人が、『斬られの仙太』を大衆演劇の演目と勘違いしてしまうのだが、『斬られの仙太』は、新劇の範疇であろう。

清水さんがお亡くなりになったまさのそのときに『斬られの仙太』がものすごく久しぶりに上演中であるということは、偶然にしてもできすぎている。

 

新国立劇場版『斬られの仙太』は、幾らか刈り込んでいても四時間二十分の大作だが、それは少しは停滞する場面はあるものの、すっきりも見られるようになっている。

その進行のテンポに貢献もしているが、印象的なのは、舞台造形である。

ほぼ全面の八百屋舞台(傾斜している)のことは誰もが言及するが、じつは、舞台最前部の蹴込み部分が土手状になっていて、そこも人が立てるようになっていて、そのすぐ奥はいったん人が隠れられるように低くなっている。この立体構造が、使い出があるし、効果的なのだ。

で、この方式は、私が『バートルビーズ』で開発したものと同様だ。この形状は、じつは「遠近法マジック」が使えるのだが、『斬られの仙太』では、その使い方はしていない。劇場が大きいこともあるが、新劇なので不条理感は追究しなくていいということもあるのだろう。

 

それにしても新国立劇場の今期のシリーズ名(?)らしい「人を思うちから」というフレーズ、センスないし(寒気がするレベルの人もいるだろう)、宣伝のやり方としてもひどくはないか。だって、ポスターに、タイトルよりも遥かに大きな字で書かれているのである。

そりゃ劇の中に思いやりの心もあるだろう。だが、他に多くの視点がある。時代と人間を冷徹に見る目もある。それが社会性というものだ。なにもかも「人を思うちから」にまとめられてしまった日には、ださすぎるし、現実を見る目が曇る。

観てよかったとは思うのだが、歴史の中で『斬られの仙太』という戯曲がどう位置づけられているのか、描かれている課題は、戯曲の中ではどういうもので、それを現在上演するときにはどう認識しあるいはどう転じたのか、といったことが、求められて然るべきるという気はするのである。

 

緊急事態宣言で千秋楽がなくなる。

ひどすぎないか。

言いなりになりすぎていないか。

やらせてあげればいいじゃないの。

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朝四時からのお通夜

2021-04-18 | Weblog

昨日深夜のことである。

たまたま打ち合わせが長引いて夜中にこの間一緒に仕事というかトラブル解決をしている某君と電話でずっと話していた。これはそもそも遅い時間からの電話だったが、あまりに遅くなっていた。まあ、それでも必要な話だった。だいたい話は終わった。

そこに割り込んでくる電話があった。

誰からかと思うと、そんなにちゃんと話したことはまだない、有名な俳優の名が表示されているのである。Facebook友達ではあるから、Messengerだ。

時刻を観ると、しかし、朝四時である。深夜というのは嘘で、もう早朝である。

朝四時の急襲である。

某君にことわって切り、かかってきた電話に出た。

その俳優氏は、多少は酒も入っているのだろうが、口跡は相変わらず鮮やかで、ハイテンションである。考えてみると今日本でいちばんハイテンションな俳優のような気がする。

こちらもハイテンションになる。一杯くらいしか飲んでいないのだけど。しかも何時間も前にである。

話は面白い。

だが、しかし、朝四時である。

だからこそ面白いのかもしれない。

どうやら、初めてちゃんと話したような気がしない。お互いにである。

俳優氏は、言いたいことがいっぱいあるのである。

こちらも話しているうちに元気になる。

 

楽しく話し、朝五時になる前には電話を切らせてもらったが、さて。

まるで現実の出来事のような気がしない。

その俳優氏の「なりすまし」であることは、まあ、あり得ない。だって、真似しがたいハイテンションである。

なんだかまるで、本当のことじゃないみたいな時間が過ぎていったのである。

 

その人は、もちろん、私が書いた清水邦夫さんの訃報を見て、電話をかけてきたのである。

ああ、これは、お通夜なんだ、と当たり前に思った。

 

書かなくてはならないものがいっぱいある。

さらに増えていく。

それでも今夜もZoom会議だった。みんなもやることがあるのに会議に出てくれている。ありがたい。

 

しかし、さすがに限界である。

書かなくてはならないものが増えていく。

とにかく書いていくだけである。

書かねばならないし、書きたいはずだ。

 

私は書く。そうだ。ハイテンションをいただいたのだ。

 

 

 

 

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