Blog of SAKATE

“燐光群”主宰・坂手洋二が150字ブログを始めました。

サミット期間中「リスクを減らしたい」福島第一原発作業休止。ではオリンピックのときは?

2016-05-24 | Weblog
半月のあいだ日本にいなかったのだが、その間に違和感のあったニュースの一つが、東京電力が「なるべくリスクを減らしたいので、伊勢志摩サミット中、福島第一原発の作業を休止する」というニュースだった。
汚染水処理やパトロールなどは継続するが、原子炉建屋付近での大型クレーンを使った作業や汚染水保管タンクの建設など大部分の作業は停止。東京電力は「要人が集まるサミットの期間中、なるべくリスクを減らしたいと当社の判断で決めた」とし、「テロ対策」として、不審者の侵入やトラブルを念頭に「作業が少なければ異変に気付きやすい」と休止の理由を説明したという。
東電は「余計なニュースが起きないようにということで、国からの要請はない」と説明しているが、「汚染水漏えいなどで政府に恥をかかせるわけにはいかない」という配慮があるのではとの見方も出ているそうだ。そもそもそうした判断に、国からの圧力がないはずがないとも推測されるが、逆にいえば、安倍首相がオリンピック誘致の演説で言った「アンダーコントロール」を、東電が否定したとも言えるわけだから、理屈としては、日本政府こそが「アンダーコントロールできているんだから稼動しなさい」と言うべきなのかもしれない。
まあ、矛盾だらけの、ぐじゃぐじゃである。
私は東京五輪・パラリンピック開催自体に反対する者だが、もしも強行された場合、その期間中も、作業自粛にならなければおかしいことになる。かなり長い期間になる。作業休止期間中は休業補償は出ないケースが多いらしい。働く人たちの生活にも影響する。
そして、今現在、そもそもサミットの期間中でない「ふだん」は、リスクがあっていいというのだろうか。
オバマ政権で科学技術政策を担当するホルドレン大統領補佐官が、五年前の東京電力福島第1原発事故の直後、放出された放射性物質の影響で、最悪の場合、東京での被ばく放射線量が「数週間で100ミリシーベルトかそれを超える」恐れがあるとの予測値を他の米高官らに示していたことが最近わかったという。海外からの日本への「不信」は、原発事故のはじめから存在しており、「日本へ行く」ことのリスクは海外の人間の方が強く意識している。
先月の熊本地震の際、余震が長く続く間も川内原発を停止させなかったのに、サミットではあっさり「なるべくリスクを減らしたいから止めます」と言ってしまうのである。免震重要棟が未だ設置されておらず直下に活断層が存在する疑いがある川内原発が地震に晒されることに、リスクはないのか。
稼動している原発そのものも危険であるが、休止していたところで、地震があれば燃料の存在自体が危険である。核燃料は冷やし続けなくてはならない。日本中が「危機」の温床なのである。
今後、東京五輪・パラリンピックについて、原発・放射能リスクが強く指摘されていくことは想像できるが、それ以前に、
2020年夏のオリンピックの東京への招致に関連して、日本側が国際オリンピック委員会(IOC)委員側・国際陸上競技連盟に協賛金を支払ったことが、露見している。
フランスの検察当局は、誘致に関わる会社の口座に2013年、2回にわたって、東京オリンピック招致の名目で日本の銀行の口座から合わせておよそ2億2000万円が送金されたことを把握しているという。オリンピック開催地の選定を巡っても、贈収賄などの疑いで捜査中だというのだ。東京五輪・パラリンピック招致委員会の理事長だった日本オリンピック委員会(JOC)竹田恒和会長は「当時の事務局で招致を勝ち取るには必要な額」として送金したことを明らかにしている。イギリスのガーディアン紙は「東京が選出された過程に深刻な疑義がわき上がった」としている。悪質と認められれば、オリンピック開催地の権利を剥奪される可能性もあるということだ。しかし代替地はあるのか。
報道だけ見ていると、まして海外にいて考えると、日本でオリンピックを行うという計画に、リアリティをほとんど感じられない。そもそもオリンピックというものが自分が子供の頃に感じたような夢や広がりのあるものでなくなっているということだろう。
そして日本に帰るということは、他国から見れば、わざわざ「リスクのある場所」に戻るということだ。しかし私たちは基本的にそこに生きている。
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