Blog of SAKATE

“燐光群”主宰・坂手洋二が150字ブログを始めました。

『8分間』初日。

2014-11-21 | Weblog
燐光群最新作『8分間』本日初日。

以下、当日パンフレットの私の文章より。

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ご来場ありがとうございます

いま皆さまの目の前にあるプラットホームは、「関東地方の架空の駅」という設定になっている。
そうはいっても観ている方の意識の中で、それぞれ見知ったどこか具体的な駅に当て嵌めたり、特定されたりしていくのかもしれない。
まあ、どうしても私の知っている駅に似てきてしまうというのも確かだ。私の最寄り駅は、過去十年同じである。それ以前の九年間も、最寄りではないけれど微妙に最寄り駅より離れている程度だったので頻繁に利用はしていた。もう二十年にわたってほぼ私にとっての、最寄り駅。
私鉄である。鈍行しか停まらない。隣の駅が近く、視認できる位置だ。いちおう閑静な住宅街。沿線では人気の駅らしく、「住んでみたい街」人気投票では常に上位に入っているらしい。
なにしろプラットホームの幅は狭く、一番狭い端っこは四メートルしかない。柱は、茶色の塗料をぶ厚く塗ってはいるが、H鋼。おもちゃのような駅である。滅多に誰も見ないのだろうが見上げれば、ホーム上唯一の構造物である吹き抜け天井の屋根は部分的にプラスチックの波板だったりする。
線路に対するホームの高さは、路面電車でない駅にしては、かなり低い部類だろう。ホームの真横にある踏切からは、その気になれば横断中にホームに上がることができるはずだ。広告の看板やレールに隣接する建物も、普通より「近すぎる」気がする。ホームから街の気配を感じたり覗いたりすることができる。街との一体感はある。
もう二十年くらい昔になるのか、この駅の一つだけしかない改札が改築されて地下になる前は、プラットホームと繋がったレールとレールの間の位置に、改札があった。つまり、踏切を半分渡って、改札を通って入る。踏切の遮断機が下りたら、もうプラットホームに行けないのである。そんな時代もあった。
私が杉並区在住三十年余なのは隠しても仕方ないので、まあ杉並区である。隣接する四駅内を転々と引っ越してきた。『神田川の妻』という居住地近辺の劇を作ったこともあるので、およそ特定はされるだろう。そのせいかこの劇はどこか、『神田川の妻』に続く「東京杉並版『わが町』」であるような気がする。なにしろ杉並区の劇場〈座高円寺〉で初演されるに相応しい。
鈍行しか止まらないために急行の駅との調整によってダイヤは決まってくる。最新の時刻表の変更で、十時から五時までの間、その一時間内の発車時刻はほぼ同じになった。分の欄に同じ数字が縦にずらりと並ぶ。一時間以内での調整なので少し短い間隔で次の電車が来る場合もあるが、半分以上が「8分間隔」である。駅のホームに着いて、たった今、前の電車が発車したというようなときは、「ほぼ8分、少なくとも8分待てば次の電車が来る」のである。この駅の利用者の中には、無意識も含めて「8分間」の感覚が染みついているはずだ。
ところで、アメリカのSF映画『ミッション・8ミニッツ』という、同じように「8分間で何かが起きる」というものがあるのだが、私はこの映画を飛行機の中で観たはずなのだが、その存在自体を忘れていたし、この劇とは内容的に関係はない。
ただ、「8分間」というのが、何か、この劇でも起きるこの現象にはぴったりの長さなのである。もう半世紀近く前に書かれた筒井康隆さんの『しゃっくり』では10分の設定なのだが、それではちょっと長すぎる。
なんのことだかわからないかも知れないがご了承ください。御覧になればすぐわかるのです。開幕の8分ちょっと後に。

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公演情報は以下の通り。

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燐光群最新作

8分間

作・演出○坂手洋二

11月21日(金)~30日(日) 座・高円寺1

12月5日(金)~7日(日)AI・HALL(伊丹市立演劇ホール)
12月9日(火) 岡山市立市民文化ホール
12月12日(金)・13日(土)愛知県芸術劇場

http://rinkogun.com/happunkan.tokyo.html

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昼間。駅のプラットフォーム。
階段を駆けてきたが目の前で車輌の扉が閉まる。
間一髪、間に合わなかった。
8分間。これから8分間。
次の鈍行を待つ。
この時間帯、鈍行の間隔は、いつも8分間。
8分間を待つ。
ふだんと変わらぬ暮らしの中の一コマのはずだった。

円城寺あや 岡本舞 大島葉子 川中健次郎 猪熊恒和 大西孝洋 さとうこうじ 
杉山英之 東谷英人 荻野貴継 武山尚史 松岡洋子 樋尾麻衣子 田中結佳 長谷
川千紗 秋定史枝 根兵さやか 桐畑理佳 川崎理沙
鴨川てんし・中山マリ(ダブルキャスト)

照明○竹林功(龍前正夫舞台照明研究所)
音響○島猛(ステージオフィス)
美術○じょん万次郎
衣裳○大野典子
音楽○太田惠資
振付○矢内原美邦
舞台監督○多和田仁 三津久
テクニカルアドバイザー○森下紀彦
演出助手○城田美樹
文芸助手○清水弥生 久保志乃ぶ
美術助手○福田陽子
衣裳補佐○ぴんくぱんだー・卯月
イラスト○三田晴代
宣伝意匠○高崎勝也
協力○浅井企画 T-ARTIST DULL-COLORED POP (有)スタッフ・テン
制作○古元道広 近藤順子 鈴木菜子

座・高円寺1 開演時間
平日・土曜 19時開演
日曜・祝日 14時開演
※ただし、25日(火)・27日(木)・29(土)は14時の部もあり。

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坂手洋二とゲストによるアフタートーク これからぞくぞくと決定していきます
本公演の前売券をお持ちの方、ご予約の方はご入場頂けます。

まず、11/24(月)14時の部のゲストは 竹下景子さんです!
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