3日目。『荷』昼公演のみ。大友良英さんは本番を初めて観る。今回の音楽は楽器をそれぞれトラックを別々に分けマルチ録音しているので、6つのメインスピーカから別々の音を出せる。未見の方は演劇とは思われぬ臨場感をお楽しみに。……日刊ゲンダイの山田勝仁さんの話では、戦時中、当時17歳の山田さんの父はこの劇の舞台である下北の山で伐採作業に従事していたという。そのときタコ部屋から脱走した若い朝鮮人が山奥に逃げてきたそうで、哀願する朝鮮人に彼は握り飯を渡して逃がしてやったという。劇中「いい日本人もいた」と朝鮮人労働者たちが語るシーン、人柱にされそうになった朝鮮人を現場監督が別の現場に移動させ難を逃れたという逸話があり、あの台詞がどうして出てきたか稽古場でもみんなで考えたが、事実として「いい日本人がいた」ことに励まされた人たちの証言があり、それがチョン・ボックンさんの戯曲に甦り、私たちが舞台で肉声として再現し、それを当事者の声として聞いた息子の山田さんが観るという、循環。演劇という限定されたメディアの、そうでなければできない大切な役割を痛感する。……夜、中津留章仁最新作を観に行くつもりだったが時間が中途半端となってしまい諦める。なんだか疲れがどっと出た感じで、とぼとぼと帰る。今日で全ての入試を終えた息子もぐったりしている。しかしその解放感はいかほどなものか。父ちゃんはまだ宿題がいっぱいあるのだぞ。風呂にゆっくり入る。
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