A PIECE OF FUTURE

美術・展覧会紹介、雑感などなど。未来のカケラを忘れないために書き記します。

memorandum 349 愛

2016-08-26 23:05:14 | ことば
 わたしたちが、自らの文明的進展の中で忘れ去ったもの、あるいは、貨幣経済の陰に隠されて見えなくなっているもの、それをわたしは「倫理」と言いましたが、むしろ、そこに与えられる言葉は「愛」というほうが適切かもしれません。
 言葉が介在しなくとも、通じ合えるものがあるとすれば、それは「愛」しかあり得ないからです。そして、言葉は究極のところ、自ら消え去ることを望んでいると言えるのかもしれないと思うのです。
 ある意味で、ことばが隠蔽し続けているのは、「愛」だからです。

平川克美『言葉が鍛えられる場所』大和書房、2016年、227頁。

動物は、言葉がなくても意思疎通している。
人間もまた言葉がなくても通じ合える時があるが、それを平川氏は「倫理」=「愛」という。
私たちは言葉に「愛」を潜ませて、日々誰かと通じ合おうとしているのだろう。
人間の関係が進展することとは、言葉がいらなくなる関係性になることなのかもしれない。