A PIECE OF FUTURE

美術・展覧会紹介、雑感などなど。未来のカケラを忘れないために書き記します。

memorandum 283 雨の中で

2016-05-08 22:20:03 | ことば
どうして君は、自分自身に対してもかけがえのない友となってやらないのか。もちろん、ぼくは真面目に言っている。もう少し自分を好きになってやったら、自分と仲よくしてやったらどうか、と。なぜなら、ものごとは何でも、始めにどんな態度を取るかによって決まってしまうことが多いからだ。
(・・・)
 ほら、雨がちょっとふってきた。君はまだ通りにいるので、傘を広げる。それでいい、それだけのことなのだ。「また雨か、なんということだ、ちくしょう!」と言ったところで何の役にも立つまい。そう言ったところで、雨のしずくや、雲や、風が変わることはまったくないのだ。どうせ言うのなら、「ああ! 結構なおしめりだ!」と、なぜ言わないのか。君の気持ちはよくわかる。そう言ったところで、雨のしずくはまったく変わらないだろうから。その通りだ。でも、そう言うことは君にはいいことなのだ。からだのなかに張りが出てきて、ほんとうに温まってくる。なぜなら、それこそが、どんなに小さなよろこびでも、よろこびの動作のもつ効き目なのだから。君がこうしていさえすれば、それが雨にあたっても風邪を引かない秘訣である。

アラン『幸福論 (岩波文庫)』神谷幹夫訳、岩波書店、1998、211-212頁.


「またか、なんということだ、ちくしょう!」
あぁ、 結構なことだ・・。